東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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これから私立受験、公立受験勉強となりますので、投稿ペースは落ちます(断言)
それでも忘れないでください。


眠りにつく最初の人物

響は洞窟の前に胡坐を掻きながら座り、鏡の中から取り出した酒を二杯の盃に入れ、一杯を自分が、もう一杯をいるであろうもう一人の人物の前、つまり洞窟の前に置く。

 

「……何故、僕がここにいると?」

 

「「ッ!!」」

 

屠自子と私はは四年ぶりに聞いた心から慕っていた、いや、今も慕っている人物の声を聞いて、背筋を震わせる。

 

「まず最初に、俺はあんたが丁未(ていび)の変で消えたと言っていたが、実際は違う。あんたは消えるタイミングを狙ってたんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

最後をわざとらしく強調するように言う響に思わず私は眼を細めてしまう。

 

「神子には秘密にしてたが、俺は離れにあるあんたの私室に何回か出入りさせてもらってる。部屋は埃っぽいことをのぞけばとても奇麗に対照的だった。一部分をのぞいて」

 

私はその言葉に思い当たりがあった。兄さんは対照的な絵や置物をとても気に入っていたが、部屋のある物だけが左右対称じゃなかった。

 

「机だよ。あんたの机は箪笥のような引き出しが五つついていた。右に三つ、左に二つ。左右対称を好んでいたらしいあんたなら普通そこも左右対称にするはずだ。そう思って、右の引き出しの一番下の段を調べていたら面白いものを見つけたよ」

 

響は笑いをこらえるように、クックッという声を出しながら懐からある者を取り出す。それは、一冊の本だった。

 

「こいつの中には仙術が驚愕するほどびっしり書き込まれてた。そして、最後の著者の名前にあったのは〝始皇帝〟。今の隋から三つも前の国の王の名だ。こんな資料を持ちこめる奴なんてそうそういない」

 

そしてと続ける。

 

「仙人ってのはその性質上、欲の塊である普通の人間と会うのを極端に嫌がる。だから、仙人が人間に仙術を教えるときは、その仙人本人が認めた相手であるはずだ」

 

響は自分の持っていた佐kさず気を一気にあ煽る。

 

「まとめると、『あんたは丁未の変以前から仙術に興味を持ち、丁未の変を使って居なくなったように見せかけた。そして、普通の人間にでも仙術を教え、始皇帝の仙術の書を持っている人物を尋ねた』ってとこだろ」

 

私と屠自子は息を飲み込む。

 

「そんな仙人心当たりは一人だけだ。隋の一つ前の国、魏の時の時代にここに来ていた邪仙、霍 青娥。あいつの仙人としての実力は異常に高いからな」

 

一拍置いた後、パチパチと拍手が聞こえる。もちろん一人分の。

 

「すごいね、ほぼあっているよ。まさか君みたいな子がいるとは思っていなかったよ。紫死雲外鏡さん?」

 

洞窟から聞こえた気がるそうな声に響は一つため息をついた。

 

「青娥の教え子ってことから少し疑ってたが…………、言っていたか、あんにゃろう」

 

私は到底信じる気になれなかった。兄さんが私たちをどうも思っていなかったと……?

 

「……太子様、私が言えたセリフではありませんが、落ち着いてください」

 

「わかっています」

 

私は兄さんのちゃんとした気持ちを聞かなければならない。

 

「一つ気になるのは、大徳ほどの役職に就いていたあんたならこんな証拠潰して置いているということなんだが?」

 

「いろいろと鈍い妹には兄貴がヒントを与えておかないと行けないと思ったからね。能力もさることながら考えすぎなんだよ、神子は」

 

自分の頬がどんどんと赤くなっていくのを感じる。兄さんにこんな風に褒められたことのなかった私としては心の底からうれしかった。

 

「その言葉、本人に届いているといいな」

 

響が一瞬だけ私たちに視線を送る。私たちは気付かれていたことも含め、自然に笑顔を造っていた響に驚いた。

 

「さてと、俺は去るとしますか。今のおれは邪魔でしかないようだからな」

 

「……どういうことだい?」

 

「あんたの言葉は全部届いてるはずだぜ。あんた最愛の妹にな」

 

響はそういうと立ち上がり、自分の使用していた盃を鏡にしまうと、もうひとつの空の盃を取り出しておく。たくらむような笑顔を一つ作るとこう言った。

 

「最後くらい一緒にいてやれよ。あんたの妹があんたのことをどれだけ思ってたかしっかり聞くと良い」

 

その言葉を言い終わった瞬間、鏡が現れ、響はそこに消えた。

 

「……?」

 

響は私にチャンスをくれたのだろうか、いや、そうとしか思えなかった。私は意を決した。

 

「……屠自古、ここにいてもらえますか」

 

「はい、もちろんです」

 

物陰から歩き出し、響の置いてくれた盃の前に座る。巨大な着物を着て、烏帽子を深くかぶり、体が全く見えない兄さんは体を震わせた。

 

「兄さん、私はあなたのことを恨んだり、疑ったことはありません。だから、兄さんは何も言わずそのお酒を飲んでください」

 

自分の盃と兄さんの盃に酒を注ぐ。無理やり兄さんに盃を握らせる。私は一気に煽る。響の持っていたお酒は基本的に強いお酒が多かったが、今回はあまり強くなかった。

 

「……なぜ、こんな駄目な兄貴を信頼するんだい? 自分の目的の為に家族を捨てたような男をさ」

 

兄さんは俯き、そんなことを口にした。

 

「もし兄さんがそんな男なら、青娥をこっちに向かわせることをしないでしょ? 私達が仙術に興味を抱いていることを兄さんが知らないわけないとも思っていましたし」

 

「ふふっ……、かなわないなぁ……。妹が天才だと兄は困る……」

 

酒を一口も飲むことをせず、兄さんは後ろ向きに倒れる。

 

「兄さんッ!?」

 

私が兄さんを背中に手を回し、起き上がらせる。大きな烏帽子がずり落ち、兄さんの顔があらわになる。痩せこけ、元の顔の輪郭はない。

 

「びっくり……したか……? 僕は……仙食と丹を……使って……尸解することに……したんだよ。……もう長くない」

 

「兄さん……!!」

 

ぎこちない笑顔を見せる兄さんに涙がすぐにでも出てきそうになる。しかし、ぎりぎりで止める。

 

「僕の……死体は……青娥が……回収して……くれるから……大丈夫……だよ……?」

 

気付いたら、私はほとんど無意識に兄さんを抱きとめていた。

 

「いいじゃないですか。しばらくお別れなんですから、甘えさせてくださいよ」

 

兄さんは震える手で私の目じりをなぞる。その時、自分が泣いていることに気付いた。

 

「ふふっ……、昔と……何にも……変わらない……ね」

 

「兄さんはだいぶ変わりましたね」

 

私と兄さんは泣かないように笑った。手を握り合って分かった。兄さんの力がどんどんと失われていることが。

 

「じゃ……ま……た……ね……、み……こ……」

 

「はい、またいつか会いましょう。兄さん」

 

目を閉じた兄さんを私はしばらく抱きしめたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまえもなかなか洒落な贈り物するな」

 

響がめっずらしい行動に出たと思ったらこういうことだったらしい。

 

「青娥、すぐ行くのか?」

 

響の鏡をのぞきこんで、盗み見していたので状況は全部筒抜けなので、俺は青娥に疑問を吹っ掛ける。

 

「今行くほど、私は鬼畜だと思いますか?」

 

「「思う」」

 

「酷い!?」

 

つーか、自覚なかったのか。そっちの方が驚きだわ。

 

「わーれーにーもーみーせーろー!!」

 

「あなたはだめよ」

 

布都が顔を青娥に押され、バタバタと腕を振っている。

 

「青娥、三人分の丹を用意しとけ。二人が帰ってきたら、迷わず飲むことを決めるだろう」

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