東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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私立合格ぅ!! 次は公立だァ!!
ってなわけで、受験勉強が忙しくなります。
次回もおそらく遅れるでしょう。
それでも待っていただけるのなら、感激の嵐です!(じぶんのみ)
では、また。


仮面は思い出の表情

「青娥、丹を飲ませてください」

 

「はい、言うと思って用意しておきましたわ」

 

三つの容器に銀色の液体〝水銀〟を入れたものを私、屠自古、布都の三人の前に置く。改めてみると一層気味悪く見える色もさることながら、何かの不思議な力が見えるような気がしてならない。

 

「響と亮介はどこなのじゃ?」

 

布都がいるはずでいない二人の人物の名前を叫ぶ。私も響にはお礼を言いたい。彼のおかげで兄さんに会えたのだから。

 

「彼らはあなたたちの最後の修行が終わるまで自分の部屋にいるそうよ。二人の意思は決まってるみたいだから」

 

「そう……ですか……」

 

私が言葉を詰まらせると、布都と屠自子は私に笑顔を向けて口を開いた。

 

「「私たちはあなたにどこまでも付いていきます(のじゃ)」」

 

二人は何の迷いもなく、私の能力にも反応しない純粋な気持ちでそう言ってくれた。

 

「……布戸、屠自古。私はあなたたちが私の部下であってくれたことを、心から誇りに思います」

 

「「ありがたきお言葉!!」」

 

私の前に頭を下げてひざまずく。青娥はその様子をいつもよりやさしそうにほほ笑んだ後、部屋の隅へと下がる。それを合図とするように、私たちはそれぞれの容器を取る。

 

「いただきましょう」

 

一気に中身を煽った。味は血を舐めたときのものに似ており、それの濃いようなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、猛烈に暇だ。とにかく暇だ。響はなんでか知らないが、一人で黙々と木を削ってるし。

 

「なぁ、響、なんか暇つぶせることないか~?」

 

現在進行形でやることがないので、床をゴロゴロ転がることにした。

 

「お前が想像してるようなことは今はない。暇なら手伝え。あと、転がんな」

 

うつぶせの状態で転がるのをやめて、響の手元を見る。

 

「そういえば、さっきから何してんだ?」

 

もともと三つほど持ってきていた赤い木材の一つを削っていて、もうすでに少し形を持っていた。中が削られた半球状のような形でところどころ波打っている。それを波を打っている側から見ると、人の顔に見えた。というか、中途半端に削られていることから結構怖い。

 

「仮面削り」

 

「そのまんまかいっ!!」

 

思わず突っ込んでしまった。

 

「なんでそんなもん作ってんだよ?」

 

「神子たちへの置き土産に」

 

響の意外な一言に俺は言葉をつなげなくなった。響がそんなことをするなんてものすごく珍しいからだ。

 

「今お前の考えていること当ててやろうか? 『何で俺がこんなことしてるんだ』とか考えてんだろ」

 

「ぎくっ」

 

俺の様子に大きくため息をつくと、自分の作業を続けたまま話す。

 

「俺らも一年世話になったわけだし、俺は少しでも世話になったらお礼はしている。ただ、お前が気付いてないだけ」

 

なんかひどいいいようでござる。

 

「それに、尸解仙として目覚めるのに千年はかかるはずだ。それまで、俺らのことを覚えていられるかどうかは分からない。なら、少しでも覚えててもらおうと思ってな」

 

そんなことを言いながら黙々と削る響に、少しだけ元の世界の小学校時代のような無邪気さが出ているように感じた。ちょっとだけ驚いた。

 

「俺もやる!!」

 

「……集中できるのか?」

 

「やってみる!!」

 

「……そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど三つのお面を削り切ったとき、青娥が床から現れ、仕上げが終わったことを告げた。俺と亮介は床から体を出して、ゆっくり歩いていく青娥についていった。

 

「具合は?」

 

「あと数十分すれば長い眠りにつくと思われますよ?」

 

亮介はあっさり言った青娥の一言に少し気を落としたみたいだ。まぁ、仕方ないと言えば仕方ないが。

 

「……三人とも眠りについたことを確認したら、俺らはここを出る。後のことは任せるぞ、青娥」

 

「はい、お任せくださいな」

 

ある部屋の襖の前に着く。青娥は襖の取っ手に手をつけると自分の体ごと動かし、ふすまを開けた。

 

「「……」」

 

三人は布団の上に寝かされていた。まるで皮膚がついた骸のような体で。一目では生きているか定かではないような表情をしていた。

 

「さすがは丹、と言ったところか。体全体に気がまとわれてる」

 

「始皇帝に飲ませたときよりも効果はでてるみたいですわ。ほぼ尸解仙になれるでしょう」

 

その時、うっすらと神子と布都が目を開ける。

 

「おお……、きょう……に……りょう……すけ……か……」

 

「大丈夫だったか?」

 

俺が声をかけると、布都はいつものように鼻で笑った。

 

「くくっ……なめるで……ないわっ……たいしさまの……まえで……よわねなど、ゴホッ、ゴホッ!!」

 

「おいおい……」

 

布都はやせ細った顔でもわかるぐらいの満面の笑みを浮かべ、ゆっくりと目を閉じた。

 

「……ゆっくり休め、布都」

 

手を合わせて、彼女の安らかな眠りを願う。亮介は隣に横たわる神子の手を握っていた。

 

「すいま……せん……、めが……もう……ほとんど……みえなくて……」

 

「気に済んな」

 

「だいぶ……めいわくを……かけま……したね……りょう……すけ……」

 

「気に済んな」

 

「わたしは……あなた……たちに……あった……とき……うん……めいだと……おもい……ました」

 

「そうか」

 

「きょう……、そして……りょうすけ……。ほんとう……に……ほん……とう……に……ありが……とう……!」

 

「おう」

 

「さいご……に……たの……みが……あり……ます……」

 

「なんだ?」

 

「わたし……たちが……めざ……めたら……むか……えに……き……て……ね……?」

 

「ああ、もちのろん」

 

亮介の最後の言葉を神子が聞けたのかどうかは、俺にも分からなかった。けど、二人とも満足そうだった。

 

「青娥、三人が起きたらこれを渡してやってくれ」

 

「お面、ですか?」

 

「ああ、俺と亮介で作った置き土産だ。不器用なあいつみたいに少し変な形になった、不思議な表情をした仮面さ」

 

その仮面の表情は三つとも、泣いているようで笑っていた。

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