東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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書き方を少し変えたので違和感があるかもです。
ちょっとばかし長めに作ったのでお楽しみあれ。次も遅れるッす。
では、また。


六章 幻想郷に来た吸血鬼の先祖
後世の伝説〝Scarlet silver blood〟


巨大な広葉樹が広がる森。木の根にはコケが生え、リスやイタチが走り回っている。木と木の間にできた自然の道の中に、倒れて中が腐りきって外かくだけとなった木を二人の影が跳び超える。

 

「なぁ、響。こんな森で何しようって言うんだ?」

 

「目的地に行くために歩いてるだけだ」

 

一枚の鏡を空中に浮かせ歩く響。彼が持つ鏡は、自らの位置を中心に動く伸縮自在の地図のような鏡『案内鏡図(ナビゲーター)』と呼ばれる鏡。その精度は響の技なら申し分ないと思っている亮介だが、疑問を持つような顔をする。

 

「俺はともかく、お前は空を飛べばいいじゃん」

 

「飛べない理由があるんだよ。それぐらい察せ」

 

表情や行動は一切変えず、歩き続ける。その様子を幾度となく見てきた亮介は、頭を掻きながらついていく。

 

「あと5マイルか。ちょっと遠いな。少し走ろう」

 

「おう」

 

走るというよりはジャンプを繰り返すように走る。亮介はふと思い浮かんだ質問を投げかける。

 

「5マイルって何キロ?」

 

「8キロ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから二十分ほどたった頃……。

 

案内鏡図(ナビゲーター)』を片手に走っていた響がいきなり減速し、歩き始めた。それにつられて亮介も走ることをやめて、歩き出す。

 

「ついたのか?」

 

「あぁ、見えてきたぜ」

 

森の丘の上にたどり着いた二人に見えた景色は、豪華な町だった。簡単に想像するなら十六世紀ヨーロッパあたりの町並みで、その町並みを少し古くしたような感じだった。西洋のレンガ造りの家々が並ぶ綺麗な中心通りが中心に見える。しかし、そこから感じるのは人間の気配ではなく、妖怪の気配を大きく感じた。

 

「あれって人間の街じゃないよな」

 

「よくわかったな」

 

亮介は心底驚くような声と表情で自分を見る響に仕方ないと思いながらも言い返した。

 

「馬鹿にしすぎだ」

 

「そりゃ悪かったな。……今は6世紀前半。この時代はあまり詳しくないんだが、帝国主義が大きく力を得ている時代であり、貴族制の全盛期に近い時代。西洋妖怪も貴族に似た制度が多くあって、その一番上の位に着くのが吸血種(ダンピール)の中の鬼、吸血鬼(ウ゛ァンパイア)さ」

 

響はその町並みを見渡すように顔を動かし、亮介に向き直る。その表情は今まででも何度か見た、おもちゃを見つけたような子供のような顔。その顔をするときは大体面倒事であり、亮介にとって楽しいことが起きる前兆でもあった。

 

「じゃ、ここは……」

 

「おそらくお前の予想道理のはずだ。ここは吸血鬼の町。まさに吸血鬼の通り町(ウ゛ァンパイアロード)って感じだな」

 

「な~るほど。んで、なんでわざわざイギリスになんか来たんだよ(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

歩き出した二人は町の入口である門に顔を向けながら、話を続ける。

 

「お前も知ってるだろ。東方の中の吸血鬼と言えば有名な人物は?」

 

「!! レミリア・スカーレットか!?」

 

「正確には彼女が生まれる前だがな。だから、スカーレットの先代か先々代かどちらかが今の当主のはずだ。 そいつに会いに行く」

 

「な~る。そりゃ楽しみだな~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖怪の町ってのは本当みたいだな~。翼が生えたやつばっかり。けど、黒い感じに白い爪ばっかだな」

 

「当たり前だ。それが普通で、俺が例外なんだよ」

 

妖怪が人間の近い状態でいる最も大きな理由は、自らの力をしっかりと見せるためである。人間型とバケモノ型だと、人間の視点から見れば、言葉や容姿がしっかりと分かるため、より恐怖を感じやすいのだ。そのため、妖怪の形には響などの人間型、旧鼠などの半人型、一般的に人間でない妖怪は化物型と呼ばれる三種類となる。

 

「それになんか後ろにいろんな種類の妖怪がついてるな。貴族制ってことは奴隷か?」

 

「いや、全員ではないが、そういう奴もいる。ほとんどが中級の西洋妖怪だ」

 

妖怪の貴族制。そして、そこに奴隷制度を盛り込んでいるため、普通よりも位付けがきつい。

 

「ちなみに、西洋妖怪の中でも狼妖怪が一番下に着いてるやつが多いぜ」

 

「げっ、何その情報、聞きたくなかったわ~」

 

亮介がげんなりした瞬間、進んだ方向に広がる中央広場のようなものから大きな音が聞こえた。周りの吸血鬼たちが騒ぎだす。

 

「なんだなんだ!?」

 

「行ってみよう。向こうの広場だ」

 

走って中央の広場に向かう。広場に出ると、建物から上がる煙の中に140cmほどの一人の少年が横たわっていた。銀髪の髪に、赤眼。服はもうすでにボロボロになっており、到底見てられるものではない。さらに特徴的なのはその翼である。二本の黒い翼骨の間に宝石のような羽が生えていた。わずかに体が上下している。

 

「おい、もう立てないのか? 吸血鬼の恥さらしが」

 

「ムククク。まったくだぞ。サンドバッグにもならないのか?」

 

煙の立っている方向の逆方向から二人の男の吸血鬼が歩いてくる。二人とも茶髪でイケメン顔、周りに女の妖怪を侍らせていて、いかにも持ててますオーラを醸し出していた。

 

「……」

 

「待て、亮介」

 

すぐにでもかけだしそうとしていた亮介を響が制する。

 

「なんでだ!? あんな奴ら五秒で沈められんのに!!」

 

「落ち着け。ここは吸血鬼の町だ。吸血鬼の言い分が優先されるし、お前はここでは普通奴隷に位置する存在だ。そんな奴が暴れても意味ない」

 

「じゃ、お前が……」

 

「わかってる。俺も助けたくないわけじゃない。ただ、『郷に入れば郷に従え』だ。軽率すぎる行動派失態を招く」

 

自らの感情をあまり表に出さない響が目に見えるほど怒ってるのかは亮介にもよくわかった。茶髪の二人が銀髪の少年に近づき、兄だと思われる身長がわずかに高い男が手を上げる。そこに大きめの妖力弾を造り出す。響が歯ぎしりしながら右手を挙げたとき、一人の乱入者が現れる。

 

「何してんのよっ!? バラム・バルバトス、ブエル・バルバトス!?」

 

長く淡い金髪揺らし、降り立った少女。赤をメインとしたドレスを身にまとい、完璧に近いプロポーションを持っていて、周りの男性の視線を集めた。背中の蝙蝠型の翼から吸血鬼であることが判断できる。そして、彼女の持っている武器が異質だった。まるで歪んだ剣のようだったが、見方を変えると杖のようにも見える黒い棒。しかし、纏う妖力の量は段違いに多かった。

 

「なんだ、ミニーアじゃないか。何か用かい?」

 

「気安く名を呼ばないで!! あなたたち、グランに何してるのよっ!?」

 

ミニーアと呼ばれた少女は改めて自らの武器を握りなおすと、二人の吸血鬼に向き直る。倒れている少年吸血鬼はグランと言う名前らしい。

 

「ムクク。何って、ただいたぶっているだけじゃないか」

 

「なんでグランをいたぶる必要があるの!? 絶対グランはあなたたちに何もしてない!!」

 

「理由なんて必要かい? 恥さらしには恥さらしらしいようになってもらわないと」

 

何も悪気がないように意味の通っていない言い訳を繰り返す二人に、言い返す気力がなくなったミニーアは自らの剣を前に突き出し、妖力をためる。

 

「あなたたちには何を言っても無駄みたい。なら、力で示してあげる。いくわよ、『ダーインスレイウ゛』」

 

「はぁ、君は頭がいいはずなのだがね……。ブエル、ペントゥを呼べ。サートゥ、彼女を押さえておいてくれ」

 

バラムはネックレスのアクセサリーを引き抜き、ブエルは指輪を取る。そして、その二つを地面に向けて投げる。そこから現れたローブを着込んだ二人の小さな少年が、それぞれの両手を蛇に変えてミニーアに突っ込む。彼女は迎え撃とうとするが、いきなり現れた黒い狼の妖怪によって防がれる。その妖怪はローブ少年たちの頭をつかみ、地面に叩きつけた。

 

「女性にそれはないんじゃないk、ぐふッ」

 

台詞を言い終わらないうちに、もう一人現れたおそらく吸血鬼であろう少年は黒狼の顔面を蹴り飛ばす。

 

「アホ! 他人様に口突っ込むんじゃねえ!!」

 

一言罵声を浴びせた後、バラムとブエルの方へ向くと上品に頭を下げた。

 

「うちの馬鹿が失礼しました、バラム様、ブエル様。正義感が強い馬鹿力野郎なもので」

 

懐を探ると、出てきたきんちゃく袋をバラムに投げ渡す。

 

「金貨が二十枚ほどしかありませんが、で許していただけますか?」

 

「ムクク、なかなか話が分かるね。兄さん、今回は引かない?」

 

「う~ん、そうだな、君、名は?」

 

「キョウ、というものでございます」

 

「へぇ、また、会おうよ、キョウ」

 

周りの女性たちに何かをしゃべったあと、ローブの少年二人をアクセサリーに変えて自らの手中に収めた後、去っていった。

 

「ゴホッ、ガッ、グ……ッ」

 

建物のがれきの下に倒れていた少年がいきなりせき込む。ミニーアはそれにいち早く反応し、グランの背中を持ち上げる。

 

「大丈夫、グランっ!?」

 

「……ミニーア……?」

 

消え入りそうな声で呟く少年を抱き上げる。それと同時に吹き飛ばされた黒狼が瓦礫を吹き飛ばし、こちらに跳んでくる。

 

「痛かったか?」

 

「いんや、全然」

 

上下関係のないような会話に違和感を覚えながらも、ミニーアは二人にお礼を言うことにした。

 

「ありがとう、名も知らないはずなのに……」

 

「気にするな」

 

「お前が言えたセリフじゃない」

 

黒狼がお礼を言ったことに対し、吸血鬼の少年は突っ込みを入れる。

 

「……まぁ、いい。お礼はいいから、ある情報だけ教えてくれないか、ミニーアさん」

 

「?」

 

「スカーレットの名を持つ吸血鬼について」

 

その話題を出した瞬間、ミニーアとグランは表情を固め、ミニーアが口を開く。

 

「その質問に答えてあげたいけど、まず、あなたの名前は?」

 

「そりゃ失礼しました。おれは北川 響。こっちは清水 亮介だ。グランさんとミニーアさんでいいんですよね?」

 

紫色の翼をもった吸血鬼はそう名乗った。しかし、ミニーアは疑いの目をやめることなく睨み続けていたが、グランが彼女を制して、体を起こす。吸血鬼の特徴である圧倒的な再生力が、発動した時に起こる煙がわずかに立ち上る。

 

「その、質問には……二つ、同時に答えられます」

 

息を整えて少し微笑みながら、口を開く。

 

「彼女はミニーア・フェルナンデス。そして、僕はグラン・スカーレット。君たちが探す吸血鬼だよ」

 

「「……ゑっ?」」

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