あと、高校生活に慣れることもあるので次も遅れる可能性があります。
毎週日曜更新全然できないなぁ。
「……お…ろ、……起きろ、亮介」
「むあ?」
体を揺らされる感覚と共に、意識が深い海のような睡魔から掬いあげられる。昨日、グランに用意されたベッドルームはクイーンサイズベッドが二つ置いてあり、ゆったり寝られたので無理やり起こされて眠気が晴れない。ぼやける視界がどんどん覚めてきて、響の姿が映りだす。だが、その姿を見て一気に目が覚める。
「……何そのかっこ?」
「ん? グランに世話になるわけだし、何もしないわけにはいかないだろ。それにこの服着てみたかったんだ」
響が着ていたのは執事が着る燕尾服と言う奴だった。銀のトレイを持っていてその上にはパンと紅茶がのっていた。
「飯。少ないけど我慢しろよ」
「あ~い」
「俺は先に食べた。グランのところに行っているから早く来いよ」
○
「グラン~、いる~?」
私の高い声がグランの屋敷〝紅魔館〟の玄関に響く。ドタドタという音と共に髪がぼさぼさで、明らかに寝巻のグランが跳び出す。寝起きなのか涙目だ。
「は、早すぎない? まだ日が沈んでないよ。わざわざ日傘なんかさして……」
「私は響や亮介を完全に信用してないのよ。あなたや私は吸血鬼だから夜しか動けないから、不利じゃない」
私の意見を聞いて、グランは苦笑いして口を開いた。
「……響さんは僕よりも頭いいからね。ミニーアが分からないのも無理はないじゃないかな?」
「何よそれ、遠回しに私のこと馬鹿だって言ってる訳?」
私はグランの両頬を両手でつかんで引っ張る。
「いはいいはい、ひょういうこといっへるふぁけふぁふぁいよー」
涙目のままで両腕を上下にして、バタバタするグラン。その様子がとてもかわいく見えてさらにいじりたくなったその時、
「おうおう、出会ってすぐにいちゃいちゃとか新婚夫婦か」
玄関を入ってすぐの中央階段から亮介が降りてきて、そんな言葉を言ったものだから、私とグランは顔を真っ赤に染めてお互いに離れる。
「きょ、響はどこ!?」
「え、えっと、奥のリビング!!」
私とグランは恥ずかしさから少し走りながら目的の部屋に向かう。その時、
「やっぱ相思相愛カップルをいじるのは楽しいな」
と聞こえたのは気のせいだと思いたかった。
○
「遅かったな、グラン。ん、ミニーアもいるのか?」
「へへ、おまたせ~」
「いるわよ」
亮介から逃走してきた私達は、リビングにある長方形の机の周りに設置されている椅子の一つに座っている響を見た。肩で息をし、改めて響を見て疑問に駆られた。
「何よその格好」
「別にグランの従者になったわけじゃないぞ。ちょっとやってみたかったんだ」
響は紅茶のティーカップを片手に英字新聞を読んでいた。その様子は中々さまになっていた。
「やりたい事ってそれか?」
亮介が入口の扉にもたれかかりながら、響に尋ねる。
「まぁ、その一つだな」
新聞を折りたたみ、用意されていた三つのティーカップに紅茶を注ぎ入れ、私を含めた三人に渡す。飲んでみると、グランほどではないが、すごく風味が効いておいしかった。
「どうだ? 初めて入れたんだが」
「これ初めてなの!? おいしいよ!」
「……なんか負けた気がするわ。二人に」
心の底からそう思ってしまう。ティータイムで勝てそうにない。
「ミニーアに来てもらったのはありがたい。ここでグランに俺の目的を言っておこうと思う」
その言葉が放たれた瞬間、日が沈んだのか、カーテンが閉め切った部屋がいっそう暗さを増す。机に肘を置いた響の様子はさながらカリスマあふれる一流吸血鬼のように見える。
「グラン、俺はスカーレット家の中でお前が持つ〝ある権利〟を要求したい」
「その権利は?」
グランの言葉に響は口を開いた。その権利の内容は私やグランはもちろん、亮介まで驚いていた。
「そんな権利要求してどうするの? あなたに得なんてないじゃない」
「得かどうかは俺が決めることだ。俺にとっちゃこれほどいい要求もない」
グランは首をかしげ、意図がくみ取れないという顔をする。
「それで、グラン。お前はその権利を俺に渡してもいいと思ったときに渡してもらえればいい。それまで俺たちはお前に恩を売るだけだ」
「……そう」
グランは響の表情を見て納得したように頷いた。亮介を見ても一切疑わない感じがした。
「もうあなたたちの規格外に突っ込む気力すら潰えたわ」
「早すぎんだろ。俺たちが来たのは昨日だっつーの」
「まぁ、仕方ないさ。どんなところでも俺の考えが理解されたことは少ないからな」
「ふふふ、僕も響さんに同意するよ。やりすぎると理解されずに逆に気味悪がられちゃうもんね」
男子三人が大きく笑う。ついていけていない私がおかしいのだろうか。最低でも亮介には同じような心境があるのかと思っていたけど……。
「グラン様ぁ~~~!!」
玄関がある方の扉からメイドが一人飛び込んでくる。急いでいたのか汗だくだった。
「ど、どうしたの?」
「フェルナンデス卿からミニーア様がここにいないかと連絡蝙蝠からメッセージが……ってミニーア様!?」
メイドは私を見た瞬間に慌てた表情で私に詰めよった。
「フェルナンデス卿がすぐに帰ってきてほしいと!!」
「お父様が? ……分かったわ、すぐ行く」
すぐに身支度すると、グランに一言お礼と謝罪を言ってからグランの家を飛び出した。このときに髪の毛が少し痛んだが気にしなかった。
○
家に帰って最初に感じた違和感は門番である
「お父様!!」
お父様の書斎に入ると、お父様は机に向かっていて頭を抱えていた。
「ミニーア! すまないね、グラン君のところにいたはずなのに」
「いえ、別にかまいません。それで何があったのですか?」
「……
お父様の言葉を信じられず、根掘り葉掘り聞いたところ、いつも通り門番をしていた
「いったいどこに……」
お父様の呻きが放たれたその時だった。
「これはこれはなかなか騒がしいことになっておるのう。フェルナンデス卿?」
最も現れてほしくない人物の一人が現れたのは。
「「!!」」
虚空から溶け出すように現れたのは一人の老人。派手な衣装に身を包み、白くなった髪の毛と禿げ出した頭を隠そうともせず、剣を隠した杖をいつも持ち歩く吸血鬼の中で最も強力な一家〝バルバトス家〟当主、パズズ・バルバトス卿だった。
「……何の用でございますか、パズズ卿」
「ハハハ、別に大した用はないのだよ。君たちが今騒いでいる
何気ないように言ったパズズ・バルバトスの言葉は、私達にとてつもないほどの驚きと不安感がよぎらせた。
「なぜ彼女があなたの家に?」
「なに、彼女から訪ねてきたのだよ。『バルバトス家に従いたい』とね」
書斎にあるソファに遠慮なく座り込み、中から出したパイプを吹かす。
「ふざけないでください、バルバトス卿。彼女は私達フェルナンデス家に一生仕えてくれると言ったんですよ?」
「まぁ、そう熱くなるなミニーアくん。我々もそのことはよーく知っておる」
強気の私の口調も軽く受け流す。
「私もそういったのだが、聞かなくてね。私の家の中にたてこもってしまったんだよ。それもなぜか独房の中にのう」
「今すぐ迎えに行きます。良いですよね、お父様?」
私の意見をお父様は口を動かして待つように言った。パズズ・バルバトスが何を言いたいのかはっきりさせるとも言った。
「そこで提案なのだよ。君の娘であるミニーアくんを我が息子に嫁がせてもらえないかね? そうすれば彼女は君たちの元から離れないぞ? それまでは彼女の衣食住は補償しようではないかね」
思わず耳を疑った。そう、この老害はこういいたいのだ。『
「返事は、三日後までとしよう。では、良い返事を待っておるぞ?」
また虚空へと消えた。その瞬間お父様が机を大きく叩いた。
「くそっ、何か変だと思ったんだ!! やはりあの男かっ!!」
私は何も考える気になれなかった。
○
「……なるほど」
「何がだよ?」
「なんでもねぇよ」
耳の穴に片手の人差し指突っ込んでそんなこと言ってたら気になるじゃねぇかよ、まったく。グランはさっきから窓の外ばっか見てるし、つまらん!!
「ミニーア、大丈夫かな……?」
「だから新婚夫婦、その妻のほうか、お前」
俺のコメントに顔を真っ赤にして机に突っ伏した。響と違って純情でいじりがいあるわ~~。ん?
「おい、何か飛んできたぞ。あれ、蝙蝠か?」
窓に向かって飛んできた蝙蝠は窓に衝突して下に落ちた。とりあえず窓を開けて中に入れた。
「これはミニーアの使い魔だ。どうしたんだろ?」
『グラン、聞こえる?』
蝙蝠からミニーアの声が聞こえてきた。どういう仕組みになってんだこれ?
『あのね、グラン。私ね、バルバトス家に嫁ぐことになったわ』
その言葉にグランは固まり、俺はずっこけ、響は肩をすくめた。
『それだけだから、じゃあね』
帰ろうとした蝙蝠をグランは引きとめてこう言った。
「ミニーア、僕は君と約束した!! 君が自分でそれを決めたのなら僕は何も言わないさ。けど、違うのなら僕は君を許さないよ」
『……ええ、分かってる』
蝙蝠はあっさり帰って行った。グランは意気消沈したみたいな顔になったのかと思ったが、表情は一切変えてなかった。結構意外だ。
「僕はもう部屋にいくね。あとは自由にしててよ」
グランはいつもと変わらない様子で部屋に帰って行った。響を見たが頬を掻いた状態で俺の目を見た。その時見た眼はいつかの光を、面倒事だが楽しいことを引き込む響の表情を持っていた。
「まったくチャンスが来るのは奇想天外のタイミングしかないんだな。さすがにこれは予想外だったぜ」