東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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テスト期間間近ということもあり、おそらく遅れるでしょう。
すいません、すいません。


力、技、速、守。寸、龍、零、鏡。

「くそっ、あいつ、次会ったらぶった切ってやる!!」

 

鼻を真っ赤にして憤怒の表情で山の斜面を歩く女性が一人。赤き着物はさながら血に濡れたようだ。

 

「おい、そこの女!! それ以上前に出ると我々天狗の領地に入ることになる。死にたくなければ立ち去れ!!」

 

二名の白狼天狗が目の前にあらわれ、注意を促す。天狗は社会的な思考を持つので、自らの領地に入るもの以外の生物は積極的には襲わない。しかし、逆に入れば天狗すべてを敵に回すことになる。

 

「ちょうどいい。少し憂さ晴らしにつきあってもらおうかッ!!」

 

小さき戦士が剣の修行をどうやってしたのか。普通の人間ならば、普通に剣をふるうだろう。だが、小さすぎた彼女は振るうだけでは敵には勝てない。筋力で勝てないならば速さで勝てばいい。彼女は速さだけを求めた。それにより生まれたその剣は、

 

「シッ!!」

 

神速の域。切った後の構えからコンマ数秒後に白狼天狗二人は崩れ落ちた。

 

「怖ろしい切れ味だな。しかも固い。なにより手になじむ……」

 

何回か手をふるった後に鞘に納める。そこから進む足取りに迷いはない。

 

「そこの女を敵と断定する、全員行けぇ!!」

 

十数人の白狼天狗が一気に襲いかかる。だが、神速の剣技に追いつけるのは速さに特化した鴉天狗のみ。彼女が刀を鞘から抜いた瞬間、全員が吹き飛ばされる。

 

「強い……!! だが、怯むな。こちらには犬走(いぬばしり)総隊長がおられるのだ。負けることはない!!」

 

周りの天狗たちの士気が上がる。剛妙丸が『廼怪花』を構え直す。それに反応した一匹の白狼天狗がいた。

 

「それは『廼怪花』か!?」

 

「知っているのか?」

 

その白狼天狗は表情を恐怖に変えた。その刀をまるで忌み嫌うかのように。

 

「全斬剣槍。あらゆるものを、どんなに硬くても斬り裂く。それは妖怪でも例外ではない……ッ」

 

製造年月日不明。製作者不明。あまりに切れ過ぎるがゆえに、使用者すらいなかった。代々、使われずに流れていた時に、ある人物が興味本位で開けたという。その時、この剣の柄と鞘との間に紙が挟まっていたという。そこにはこう書かれていた。

 

『なんじはあやしきはななり。すなわちききかいかい』

 

廼はなんじ、すなわちという意味を持つ。ここから取れる意味は一体どういう意味を持つのか。

 

「とんでもないものを渡してきたものだ。だが、これならあいつを切れるのか。良いことを聞いた」

 

剛妙丸は口角を上げた。刀に対して恐怖はない。それは剣を持つものの、いや剣に陶酔したものの意識。

 

「……ここは私がやろう。これほどの剣士なかなか会えん」

 

明らかに迫力が違う一人の白狼天狗が出てきた。外見は人間で言う四十歳前後。その男は背中の刀身が白い剣を引き抜き、大きく紅葉が描かれた盾を逆の手にはめ直す。

 

「名乗れ、人間」

 

二人が構え直す。覇気が二人から漏れ出し、周りの白狼天狗が息をのむ。

 

「少名 剛妙丸。いざ」

 

「白狼天狗戦闘部隊総隊長 犬走 (あけぼの)。参る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たりま~せんよ。ほらほら~、鬼さんこちらー手のなる方へー」

 

「このッ!?」

 

剛妙丸が攻め込んでいる方向とは真逆に位置する場所では、ミライトは幾人かの哨戒鴉天狗と戦っていた。一人の鴉天狗が特徴とも言えるほどの素早い動きで太刀をふるう。しかし、そのスピードを圧倒するほどのさらにに速いスピードでミライトは攻撃をよけ続ける。

 

「……ッ!! ふざけるなっ、ふざけるなよ、お前ぇぇ!!」

 

ミライトの動きはある程度の熟練者でなくても分かるような動きをしていた。ある程度の武術を積まないと哨戒の役職にすらつけない天狗の場合、怒りを誘うのにはもってこいな動き。

 

「うわっ、危なーい。よっとー」

 

天狗の子供でも勝てるのではないかと思えるほどの雑な動き。明らかに初心者の動きである。そんな戦ったことすらないような男に、必死に鍛錬してきた自分の技が破られる、攻撃をすべて避けきられてしまう。苛立たないわけがない。

 

「そろそろいいですかーね? 『龍尾黒狩(りゅうびこくかく)』」

 

刀を前に振った天狗を体を左に傾けることにより避ける。脚を勢いをつけるために地面に水平に振り、体を横に回す。彼がつぶやいた技名が終わると同時に彼に真っ黒の尻尾が出来上がり、それで天狗を吹き飛ばす。

 

「続けーていきますよ、『龍腕衝波(りゅうわんしょうは)』」

 

黒い尻尾が消え、右腕に灰色の小手のようなものが出来上がる。それを吹き飛んでいった天狗の方向に向けて拳を突き出す。するとそこから不可視の力が飛び、飛んで行った天狗にとどめを刺した。

 

「もんだーいなーし。そろそろ準備運動もいいですし、本気でやーりますか~」

 

三人ほど残っていた鴉天狗は思わず息をのんだ。それは仕方のないことだろう。明らかに戦闘初心者に軽くやられてしまった人物が自分とほぼ同じ実力なのだから。

 

「ちょっくら吹き飛ばさせーてもらいやすぜ。『龍翼嵐巻(りゅうよくらんかん)』」

 

灰色の小手が消失。背中に純白の翼をつくりだす。その翼は大きくうねり、巨大な風を起こす。

 

「うわぁっ!?」

 

天狗の一人が悲鳴を上げる。鴉天狗すら吹き飛ばされるほどの風圧。それほどの風は風というより嵐といった方がいいだろう。

 

「おんやぁ?」

 

しかし、横から入ってきた別の風により、その嵐の威力が弱められてしまう。

 

「この妖焔山で勝手なことをしてもらっては困るんだよ。龍の力を持つ人さん」

 

鴉天狗特有の黒髪と狐のように細い目、やけに頬を緩めている男が降りてくる。その彼が持っているのは選ばれた鴉天狗のみが持てる紅葉型の扇子。

 

「僕は射命丸 久遠(くおん)。今、ひいてくれるなら何もしなくていいんだけど、どうだろう?」

 

「残念ですーね。あの人との契約ですしねー」

 

「そうかい。なら実力行使さ」

 

静かな殺気が二人から漏れ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お知らせします!!」

 

妖焔山頂上付近。日本の城ような形の豪邸が一軒、日本のように白ではなく赤で染められた特徴的なその屋敷にあわただしく入ってくるものがいた。

 

「侵入者を捕らえられへんって話やろ? 分かりきっとるがな」

 

一本のキセルを吹かす妖しい雰囲気を持つ女性。着ている着物を肩からおろし、谷間がはっきりと見えるぐらいスタイルの良く、長い灰色の髪を指でくるくると回すその様子は大人の女性ならではの雰囲気があった。

 

「侵入者二人に関しては曙と久遠を行かせてある。問題あらへん。それと鬼の一般部隊に襲撃されてない方角の守備を任せいな」

 

「し、しかし、それではっ!?」

 

入ってきた情報伝達の天狗が驚きの声を上げる。それもそうだろう。襲撃されている全く別の場所に天狗よりも実力のある鬼達を置くと言われたのなら。だが、女性はやれやれと首を振る。

 

「最初の妖力の数に対して、妖力を使わないたった二人の襲撃。おとりと考えるのに十分な素材がある。あてやったら、防御が減るであろう別の方角から攻めるでな」

 

地面にある畳に手を突くように寝転がっていた体制から、女性には似合わないような胡坐に変える。

 

「早く伝えてきいな。いつ襲撃されるかわからんのやから」

 

天狗は言われるや否や自分の意見などを押しつぶし、その女性の命令をつたえるために空を飛ぶ。その様子に笑いを殺すように女性は肩を震わせる。

 

「これだけ分かりやすい誘導を使うっちゅうことはよほどの馬鹿か、それとも……」

 

「天魔様っ!! お伝えしたい事が!」

 

先ほどの天狗が入ってきた外からではなく、その屋敷の内側の部屋から甲高い声が上がる。そしてすぐに襖が開けられ、入ってきたのは慌ただしく服装も乱れた女性の鴉天狗。黒ぶちの眼鏡を押し上げながら、キセルを加えた女性〝天魔〟の前に膝を突く。

 

「どうしたんや、ほたな? そんなに慌てて」

 

「天魔様のおっしゃったとおり、侵入者に責められた方向と別の方角を念映していたところ、さらに二名の襲撃者がおりました!! 哨戒天狗はほぼ一瞬で倒され、真っ直ぐここへ向かってます!」

 

その言葉に天魔は表情を気難しいものに変えるがすぐに笑顔に変える。念映とは彼女が使える能力で妖力の玉を飛ばしている場所を見ることができる技である。その精度は申し分ない。

 

「ほたな、お前から伝えてほしいことがある」

 

「はい、何でしょうか!?」

 

天魔はキセルを置き、後ろを振り返る。その先はただの壁ではなく、簾が掛かっているスペースがある。姿は確認できないものの、その先には天魔よりも位の高いものがいることがうかがえる。

 

「鬼の四天王、出してええか?」

 

その単語にほたなと呼ばれている天狗が肩を震わせた。鬼の四天王。鬼の中でも最も強い実力を持った四人の鬼のこと。それの出撃命令を取らなければならない人物。この山で、いや妖怪の中で最強と謳われる鬼、鬼子母神がそこにいるのである。

 

「…………」

 

言葉はない。あるのは沈黙。

 

「沈黙は了承と捉える。いつも通りやな。ほたな、鬼の四天王の出撃命令を出しな、超特急でな」

 

「は、はい、姫海棠の名において、すぐにでも!!」

 

ほたなは大きく翼を開き、先ほどの天狗よりも速いスピードで跳んでいく。残った天魔はもう一度キセルを(くわ)えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラッ、もっと来いよ!! 強いんだろお前らァ!?」

 

傾斜が高く、崖も多いこの場所で木々を飛び回る狼。地形もあってか、それに対処しようとする鬼は、反撃しようにもトリッキーな動きに翻弄されている。

 

「くそっ、速過ぎる。何なんだよこいつは!?」

 

一人の鬼がいらだったようにめちゃめちゃに攻撃を始める。しかし、すぐに現れた妖怪に両手を抑えられる。いくら動かそうとしても動かない。

 

「くっ、くそぉ。動かない、何故だ!?」

 

「全体的にパワー足りなさすぎ。それと戦いに焦りはつきものだ。だが、それを表に出すなよ」

 

両手を押さえていた右手とは逆の左手の肘を後ろに下げ、何かをつかむような手を逆さに変え、真っ直ぐ打ち込む。その衝撃により後ろの空気がわずかにぶれる。ほんの少しだけの間があった後、周りの鬼たちの一部も巻き込んで吹き飛んだ。あまりの威力に周りの鬼たちが後ずさむ。

 

「へぇ~、聞いた通りの強さだねぇ。腕が鳴るよ」

 

「まったくさね」

 

鬼たちの軍勢が潮が引くように後ろに下がり、二つに分かれる。そこから出てきた二人の鬼。一人は額に一本の紅い角が生え、天の川をイメージしたのだろう着物をじめんにすらし、豊満な胸を締め上げて着こんでいた。逆にもう一人の鬼は小さい体で、頭の左右に角を持つ幼き少女。

 

「おっ、大将のお出ましか?」

 

「正確には違うが、まぁ、ここの大将っちゃ大将だね。あたしは鬼の四天王が一人、『力の鬼』星熊 勇儀さ」

 

着物を着た女性が大きく声を張り上げる。

 

「同じく鬼の四天王『技の鬼』伊吹 萃香だよ。侵入者」

 

紫色のヒョウタンから何かを飲みながら、少女が自己紹介する。

 

「侵入者じゃねえ。清水 亮介だ」

 

亮介はその気迫におびえるどころか気分を高揚させて、名を名乗る。その様子を見て、二人は笑いだす。

 

「くくっ、そういう強気な態度嫌いじゃないよ。さっきの動きから見るに相当のやり手みたいだし」

 

「悪いけど手加減はしてられないから二人で行かせてもらうよ?」

 

「カッ、かまわねえ。むしろどんとこいだ!!」

 

三人が構えを取ると同時に周りの鬼たちは迷惑にならないように離れる。

 

「ますます気にいったよ。どこまでやれるか、試してみようじゃないか!!」

 

「行くよ? すぐに倒れないでね?」

 

「そっくりそのままテメェらにその言葉返すぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人ほどの鬼が一人の少年に金棒を振り回して襲う。しかし、その少年はそのことに気にもせず、真っ直ぐ頂上へ向けて歩く。

 

「おらぁ!!」

 

一人が真正面から金棒をふるう。少年に当たった、はずなのに。

 

「……」

 

気付けば後ろに立っていいる。これに似たやり取りをもう何回続けたことか分からない。一人の鬼が疲労で膝に手を突く。

 

「……」

 

何も言葉を発さず、反応も見せない。戦いを好む鬼たちにとってそれは最大の侮辱。相手にすらされない、そのこと自体が鬼たちの精神を蝕む。

 

「このやろぉぉ!!」

 

一人の鬼が金棒を少年に向かって投げる。その思いもむなしく、ただ少年の体をすり抜け、地面に突き刺さった。その行為に少年はため息をつき、振りかえった。

 

「「「ッ!?」」」

 

同情、いや哀れみに近いその表情を見たとき、全員の血管が破けた。

 

「ふざけんなよ、この餓鬼ィ!!」

 

金棒を投げた鬼が少年の頭を握りつぶすように捕まえようとするが、ただ空を切る。

 

「「なめんじゃねえぞぉ!!」

 

二人の鬼が金棒をクロスさせるように、頂上に向かって歩きなおし始めた少年に向けてふるう。それも当たらない。

 

「くそっ、くそっ、なんでだよ、なんで当たらないんだよおおおおおお!?」

 

そんな声も聞こえていないのか少年は真っ直ぐに、何があっても真っ直ぐにあるいている。しかし、なぜか横に跳びのく。

 

「チイッ!!」

 

刹那、少年がたっていた場所が何か黒いものが天狗を超えるほどのスピードで過ぎ去った。

 

「……普通の奴なら呆気なく首を飛ばされるな、これ」

 

この山に入って初めて口を開いた少年は、三人の鬼の傍に一瞬の間にあらわれた黒髪の男に視線を向け直す。

 

「あんたが『速の鬼』か?」

 

「そうだ。俺が『速の鬼』杵鎚(きねつち) 日向雅(ひゅうが)。お前の首を取る奴の名だ」

 

動きやすそうな膝の上ほどまでしかな裾を持つ、半袖の真っ黒の着もの。額ではなく、少し上の方に白っぽい長い角を生やしている。そして一般的な金棒とは少し違い、鉄パイプほどの細さの棒を持っていた。

 

「それと、『守の鬼』もそこにいるんだろ?」

 

「……気付いておいででしたか」

 

木の後ろから現れた華奢な体格をした女性。脚ほどまで伸びているピンク色の髪を揺らし、左右に申し訳なさそうに角が二本。

 

「『守の鬼』茨木(いばらき) 夏箋(なつふだ)と申します」

 

明らかに敵意を向けられた顔を、その少年は銀色の剣を取り出す。

 

「出来れば『技』と戦ってみたかったが、わがままは言ってられない。行くか」




作「今回も始まりましたってか。ゲストは卑弥呼氏です」
卑「あ、あの、亮介さん、ここは?」
亮「心配すんな。変なとこじゃねえ」
響「コイツ相手に恐怖しないほうがおかしい」
作「毎回思うんだけど、お前怖いな!? 俺そんなに変か!?」
響・亮「「うん」」
作「ひでぇ……」
卑「え、えっと、私はそうは思いませんよ?」
亮「卑弥呼は優しいな」
作「美少女にそんなこと言われたら沈むわけにはいかないな!!」
響「すぐに復活した。何なんだよお前? きもいわ」
作「……響、お前は少しお痛が過ぎたかねぇ?」
響「な、なんだよ!? そんな手をワキワキさせながら近づいてくんな!!」
作「ふふふ、ここでは俺から逃げられんぞー!」
響「りょ、亮介!! 助けろぉ!!」
亮「うん無理」
卑「あわわわ、響さんが……」
作「響が少し面白くなるのは次だー。あ、あと次のゲストは神奈子予定だぞ」

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