東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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今回、短めです。時間かけた割には長くなくてすいません。
そして、遅れてすいません。

これからもよろしくお願いします。


安倍晴明と北水軌響

外はすっかり暗くなり、狼が吠えたような遠吠えさえ聞こえる。月が輝き、星が周りで必死に存在を主張している。緩やかな水の音が聞こえる下流付近にある洞窟の中から黒い煙が出ている。それは火から出る煙。

 

「えっと……魚、焼けたよ?」

 

「……おう」

 

濡れてまだ乾いていない服を着た二人は、火を対極に座っている。火の周りにはアユが串焼きにされており、あぶらが滴り落ちている。そのうちの一本を取って口に運ぶ軌響。一方、晴明は口にするどころか触れようとしない。

 

「多めに取ってきたから……」

 

食べるように促すが晴明は眼をそらしたままである。軌響はどうしようかとうんうん唸っていると、

 

「お前は俺を非難しないのか?」

 

いきなり晴明が言ってきた言葉に軌響は眉を寄せるしかなかった。

 

「どうして?」

 

「俺は……女だぞ?」

 

眼をそらしたまま。だが、声の高低で落ち込むようなそんな感情が晴明の中を渦巻いていることが分かる。

 

「それが、どうかしたの?」

 

軌響自身はその感情を理解できていなかった。

 

「どうしたって……ッ」

 

表情が怒りに変わった晴明が言葉をつづけようとしたその時、

 

「まさか、『女性だから』とか?」

 

確信を突かれ、押し黙る。現在の平安時代は男尊女卑が続いている時代。そういう思想になるのは一般的である。しかし、軌響の育った環境は普通ではない(・・・・・・)

 

「僕を拾ってここまで育ててくれた人は男性だったけど、その周りで強かった人は女性の方が圧倒的に多かった。だから僕は女性が弱いなんて思ってない。なにより身近にものすごく強い人いるから」

 

軌響は自分の言ったことが普通の思考とずれていることを理解しているので、すこし肩を狭ながら続ける。

 

「君が女性だってことを言いふらす気もないし、女性だからって馬鹿にする気もない。これだけは分かってほしいな」

 

「……ありがとう」

 

次は晴明が肩をすくめる。そして、少し焦げ始めた魚を取り、食べ始めた。

 

「ところで、僕が女の子だと思わなかったの?」

 

「最初は思ったけど、あの鎌鼬と会話しているのを聞いて男だとわかった」

 

「……うん、そんな感じはしてた。別に期待とかしてないから、うん」

 

若干涙目になる軌響はもそもそと魚の残った身を食べた。

 

「それで、君は僕ともう一度戦いたい?」

 

「いや、遠慮する。そんな気分じゃない」

 

「わかった」

 

晴明は本心から言っているように見える。なので、軌響は安心して気を抜いた。

 

「今夜はもう遅いから僕はここで寝るよ。君は自由にしていいから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不思議な奴だった。

 

実力は申し分ない。それなのに妖怪を倒そうとせずに救おうとしている。普通なら可笑しいと思う。だが、こいつの理由を聞くと納得せざるを得ない。

 

『恩人の為』

 

分からなくはない。安倍家は一子相伝制の家系で、家計は男の身のはずだった。けど、母様は俺を生んですぐに死んでしまったし、父様は他に嫁を取ろうとしなかったらしい。俺は女だったから、安倍家は俺を後次にしようとしたが、女ではなく男として育てた。しかし、だれも責任を取ろうとしなかったので、育ててくれる人は伯父しかいなかった。

 

「はぁ……」

 

軌響は安眠している。俺が先ほどまでこいつ自身の命を狙っていたというのに何をのんきな。そう思っていたときにかわいい寝言を出した。ほんとうに男かどうか疑うくらいに。

 

「俺も寝るか」

 

私はずっと伯父を親のように慕っていた。陰陽術も伯父に教わった。今思い返せば、伯父は〝妖怪を倒す〟という単語を使わなかった。

 

(妖怪は人間にとって敵。それは確かなことだ。でも倒すべきかどうかは……)

 

俺はそんなことを考えながら眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、弁明はありますか? 軌響」

 

「……えっと……あの……その……」

 

翌日。理由があると軌響に着いてきた晴明は、汗だくになりながら軌響の家にいた女性に怒られている軌響を見ていた。

 

「相手はそこまで強くなかったはずです。それが朝帰り。それに……」

 

晴明のほうを見た女性、鏡夢はため息をしながら続ける。

 

「どこのものとは知らぬ女性を連れ込む。あなたはいつそこまで大人になったのですか?」

 

一瞥しただけで晴明を女性だと見抜いた鏡夢に、二人は眼を見開いた。

 

「なんで晴明が女性だと分かったの!?」

 

「一目見れば分かるでしょう。軌響。あなた分からなかったのですね?」

 

睨まれさらに委縮する軌響。少し彼女が怖くなった晴明だが、鏡夢発議に晴明に目を向ける。

 

「あなたが平安京最強の陰陽師 安倍晴明ですね?」

 

しっかりとした動きで頭を下げる。その動きが切れあ儀を持っているように思え、思わず身を引く。

 

「私は北水 鏡夢。軌響の師匠の一人で軌響の伸びを見ているものです」

 

「師匠? 鏡夢さんは軌響と歳は同じかそれ以下に見えるんだが?」

 

疑いの目を向けられた鏡夢はまぁ妥当ですねとという表情をする。

 

「せ、晴明。鏡夢は天狗十匹を瞬殺しちゃうぐらい強いんだよ。あ、あまりそんなこと言わないほうが……」

 

天狗。それは妖怪の中で上位の妖怪であり、人と一緒で知識や戦術を持っており、早々勝てるわけはない。

 

「なるほど。こいつが言うなら本当なんだろうな」

 

軌響は自分の実力よりも上。なら軌響自身が震えあがるほどの人物なら。納得せざるを得ない。

 

「ほう。なかなかですね。軌響よりも素質がありそうです」

 

「鏡夢、ひどいよ!?」

 

そんなひと悶着があった後、鏡夢は改めて晴明に聞きなおした。

 

「あなたは妖怪殲滅派だと聞いているのですが、なぜ人妖平等を掲げる軌響といるのですか?」

 

聞かれると思っていた質問。

 

「まぁ、俺はその考えを曲げてないし、それは正しいと思ってる。だが、俺の恩人がそれが正しいと言っていたかどうかが今になって分からなくなった。それを確かめたい」

 

「……私はどれが正しいとも、どれを推奨もしません。好きなだけ使ってやってもらって構いません。それぐらいしか使い道ありません」

 

「さっきから何!? 僕、何か悪いことした!?」

 

軌響が不憫だが晴明はあえて無視することにした。

 

「俺はそろそろ帰る。たまに来るから、よろしく頼む」

 

「いつでも」

 

晴明は特に何もなく、あっさりと帰った。鏡夢は部屋の奥に入り、一枚の紙を持ってきた。

 

「軌響。あなた宛ての依頼です」

 

「ほへ? ん、了解。えっとなになに?」

 

半分に折られた紙を開け、それを読んでいくうちに表情を曇らせていく。

 

「どうしたのですか?」

 

「……依頼主がかぐや姫だって」

 

かぐや姫といえば、平安京で知らぬ者はいない絶世の美女。何人もの貴族が求婚に言っていると言うが、お茶だけだされて返された者もいるらしい。

 

「内容は?」

 

「かぐや姫が月に帰るらしいから、それを止めたいと都全域に帝から伝令が出たらしい。それで、かぐや姫がある条件をつけたして来たんだって」

 

軌響が鏡夢に向けて手紙を向ける。その下に大きな文字でこう書いてあった。

 

『風見 幽香に戦いを挑み、彼女の所持品を持ってくること』

 

「……だってさ」

 

平安京の南に存在する巨大な花畑。そこの管理者である妖怪。平安京付近では最強の妖怪である。

 

「軌響。話術札だしなさい。主様に連絡します」

 

軌響が懐から赤い札を取り出して渡す。受け取ったすぐ後に起動する。

 

『軌響か? こんなに連続で連絡してくるとは珍しい』

 

「私です、主様」

 

『ラグナか。何があった?』

 

「かぐや姫から依頼がきました。内容はかぐや姫自身が月へ帰るのを阻止すること。参加条件に風見 幽香の所持品が必要となってます」

 

端的に内容をまとめ、連絡する。少々の沈黙があった後、会話が再開する。

 

『軌響、ラグナ。風見 幽香にはお前らだけじゃおそらく勝てない。だが、軌響にはかぐや姫の守護に入ってもらいたい。だから、卑怯ではあるだろうが、亮介を向かわせる。その間、軌響には別の仕事を依頼する。ラグナはその間、妖焔山にいてくれ』

 

「はい!」

 

「軌響、移動の準備をお願いします。持っていくものをまとめておきなさい」

 

軌響が家の奥に消え、誰も聞いていないことを確認すると鏡夢は小声で話した。

 

「月からの使者。あの人たちが来るのでは?」

 

『たぶんな。迎えが来るってことはかぐや姫は月の重要人物ってとこだろう』

 

「……どうするので?」

 

『俺と亮介で戦う。過去の因縁、とまではいかないだろうが決着はつけておくべきだ』




作「どうもん、作者ですん。響のゲストは豊聡耳 神子さんですん」
神「よ、よろしくお願いします」
亮「固くなるなよ?」
響「鏡狼がいる時点で無理だろ……」
作「ひでえな」
神「あの、この方は?」
亮「俺たちの悪友、かな?」
響「なんか、微妙な奴」
作「さらにひでえ。関係ないけどさ、今回のゲストの頭文字、神奈子とかぶってるん  だよね」
亮「確かに」
神「?」
響「神子、わかってないから。その辺までだ」
作「神子さんは聖徳太子なんだって?」
神「はい、そうですが?」
亮「知らなかったのかよ」
作「……亮介、物部氏と蘇我氏の仏教争いの名前は?」
亮「え? え~っと、え~っと、え~っと」
響「丁未の変」
作「正解! 俺でも知ってたぞこれ」
亮「う、うっせえ」
神「その戦も懐かしいですね……」
作「そろそろ終わりですん。次回は青娥予定ですん」
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