片頭痛を患い、少々寝込んでいた時期があったもので。
投稿ペースはこれ以上落ちないようにします。
かぐや姫が住んでいるというお屋敷。豪華であることはだれもが覚悟しているはずなのだが、実際に見るとその迫力は違う。
「ひ、広い……」
「これは驚きですね」
入口に体格の良い門番が二人。軌響はかぐや姫からきた手紙を差し出すと、どうぞとあっさりと通してくれた。邸の入口に歩いて行く途中で池に掛けられた小さな石橋を渡る。鯉が一匹、二人を歓迎するように跳ねた。
「お待ちしておりました、軌響様、鏡夢様」
一人の老人が二人を迎えに来た。その人はもう髭も髪も真っ白に染まり、あとは老後を待つだけという感じの雰囲気を持っていた。
「私はさかきの
頭を下げながら、奥へと案内される。襖の量は数えるのすら面倒になってきた頃、端に見えてきた大きく荘厳に飾り付けられた襖。
「かぐやはこの奥におります。だいぶともの好きな子なので粗相があることをご了承ください」
彼は襖を横から開ける。さらに二人は揃って中に入る。中は普通の造りで、奥に簾があること以外に特に気になるところはない。
「よくおいでくださいました。私がかぐや姫ですわ」
「「…………」」
その声音に違和感を大きく感じ、二人で黙りこくってします。
「かぐや様。私達は特に気にしませんので、口調を軽くしてもらって構いませんよ」
「……いいの? ならそうするわよ。っていうかこの簾邪魔よね」
簾を上げて、一人の女性がこちらにやってくる。腰を超えるほどの滑らかな黒髪を掻き上げながら、やってくるその女性は〝容姿端麗〟という言葉では表せないほどの美しさを持つ女性が。
「噂通りでございますね。どうやら軌響も放心しているようですし」
「……はっ!? こ、これはすいませんでした!!」
かぐや姫の美しさに呆けていた軌響は今、やっと気づいたらしく頭を振っていた。
「では用件をお聞きいたします。月の使者から守る、でしたか?」
「ええ、そんなところよ。でも。守るのは無理ね。月の力はあなたの想像を絶してるわ。簡単に言うと私を他の場所へ逃がしてほしいの」
ふむ、と鏡夢は思案する。そこで軌響が提案をする。
「移転札を使うのは?」
「それはむしろ使わないほうがおかしいでしょう。ただ、〝今、逃げないということ〟は月からの人で連れて行きたい人がいると考えるのが道理。
かぐや姫は軌響と鏡夢の様子を値切るように見ている。鏡夢はその眼を一瞬盗み見ていた。
「かぐや姫様、この札を。これは
「どれくらい持つ?」
「軌響に特殊な結界を貼らせます。その中に閉じ込め、あなたがその札で脱出すれば、使者側があなたを追跡できないようにします」
軌響がぎょっとしているが鏡夢はそんなことを気にもせず、意見を続ける。
「何かご意見は?」
「特にないわ。そちらで自由にして」
「分かりました。早速ですが、軌響。結界を張ってきてください。特別強力なものを」
「ちょっと待ってよ!? この屋敷全体って厳しいよ!?」
この屋敷自体はとてつもなく広い。言葉どおりに。いくら軌響の霊力でも少々つらいものがある。
「つべこべ言わずに行きなさい。こちらはこちらで用があります」
「ひどい……」
軌響はなくなく部屋から出ていく。鏡夢は軌響がいなくなるのを確認すると、彼女がここに来た本題を話す。
「私がここにきた本当の理由をお話しましょう」
「……どういうこと?」
「ただ一つ、聞きたい事があります。月の使者としてくる人物はストロ兄弟、綿月姉妹、綿月直輝、八意永琳の五人で間違いないですか、蓬莱山様?」
鏡夢は息を吐くように名乗られもしていない、おそらくここに来て名乗っていないはずのかぐや姫の名前を言い当てた。
「そこまで詳しくわかってるってことはあなた、人間じゃないわね。それも私が生まれる前に存在してたって感じ。あなた、何?」
生きている者を見ている目ではない。だが、その眼は鏡夢にとって何かを感じるものではない。
「私は月の都に主様の意思でいただけと言っておきます。質問の答えは?」
「一人、抜けてるわ。月の都で遠距離武器で永琳の次に腕の立ち、勝つ永琳の一番弟子。名を
「ほう、分かりました」
その情報が真であると判断すると、立ち上がった。
「それだけ聞ければ十分でございます。では、私は軌響の手伝いをしてきますので」
あっさりとした口調で出ていく鏡夢を、かぐや姫こと蓬莱山 輝夜は見ていた。
「だいぶとてつもないのを呼んじゃったわね。まぁ、こっちとしたらありがたいんだけど」
輝夜は近くにある円が他の窓から外を見上げる。
「永琳……、歌鳴出……」
とても退屈そうに、とても悲しそうに。
○
平安京も静まり、フクロウの鳴き声が聞こえる。あれから数日たった深夜。屋敷の壁の上には何人もの武装した男たちが立っている。敷地の中にも何人かが徘徊しており、空気が張り詰めている。
「無駄だって言ってるのに……」
輝夜が漏らすようにため息とともに話す。彼らは帝が送ってきた兵士である。しかし、月の一兵士にもかなわないことを彼女と鏡夢だけが知っている。
「あの、僕がこの格好する意味あるんですかぁ?」
輝夜の横からおずおずと着物を身に纏った軌響が姿を現した。
「何言ってるのよ。私の近くに男がいたらだめなんだから、あんたには女装してもらうしかないのよ」
「うぅ~、これは仕事。やらなきゃならないこと~」
涙目になりながら輝夜の後ろに着く。鏡夢も着物に身を包み、輝夜の後ろに眼を閉じて座り込んでいる。
「もう時間はないわ。逃げるなら今よ」
「仕事をほっぽり出して逃げるわけにはいきませんので」
「ぼ、僕も主様の為なら!」
輝夜はため息を吐いたが、その顔は笑顔だった。その時、外にいた男たちが騒ぎ始めた。何人かが空を指さしている。それにつられて空を見てみると、
「な、なにあれ!?」
形的には円盤に近いが、飛行機の翼のようなものが両端に生えている。銀色のそれは不気味な雰囲気を作っていた。
「撃て、撃てぇ!!」
男たちが一斉に弓から矢を放つが、全てが当たっても傷一つ着かない。その物体は一瞬にして屋敷内に出現し、輝夜以外の場所に巨大な風が巻き起こり、輝夜とその近くにいた人物以外が吹き飛ばされる。屋敷の外見は見るも無残になり、立っている者はいない。すると、物体から脚が出て、地面に着地し、搭乗口なのであろう場所が開いて中から人が出てくる。
「相変らわず汚い所だ」
「くふははは。そういうな、兄ちゃん」
青髪で腰に剣を刺した長身の男。赤髪の体がでかく、筋肉質な上半身がほぼ裸の男。
「ここに降りてくるのは久しぶりね~」
「……」
ふわふわしたイメージが合う、白と紫のドレスを身に纏った女性。黄色のスカーフを紙に着け、紫色の髪をひとくくりにした剣を持つ女性。
「ここにもう一度来るとは思ってなかったね」
「……姫様」
両方が銀髪をしていて、中肉中背なことは似ているが表情が違う男女。
「ここが地球……」
空色に近い色の髪を肩口まで伸ばし、高身長の男子。その腰には赤と黒色の短銃、白と青色の長銃が下げられている。銀髪の男性が前に出て頭を下げる。
「蓬莱山 輝夜様。綿月 直輝と他月の代表たちがあなたをお迎えにあがりました。どうぞ、お乗りください」
「嫌よ」
「わがままはもう十分でしょう?」
「嫌なものは嫌。軌響!!」
後ろにいた軌響はその声に反応し、地面に手を突き立てる。その瞬間、地面に不思議な文様が現れ、結界が張られる。
「これは……」
直輝が空を見上げた刹那、鏡夢が腕を振り上げ、直輝に突撃する。それを察知して受け止めた直輝だったが、タイミングが遅く、吹き飛ばされる。
「永琳! あなたは私に仕えてくれると言ったわよね!?」
赤と青の生地を織り交ぜた服を着た銀髪の女性に問いかける。
「私に仕えているというのなら、私と共に来なさい! 逃げるわよ!」
手を前に出し、誘うように叫ぶ。その声に永琳は歩みを進める。
「姫様。私は姫様の配下以前に月の民です」
輝夜の前に近づく。
「だから私は姫様と共に行かなければならない」
目の前に立つ。輝夜自身は少し苦い顔をしている。軌響は身構えるが、永琳自体が笑顔になる。
「ですが、行く先は姫様が決めてください」
輝夜の前にひざまずき、輝夜自身の手の上に自分の手を置く。
「わが身は姫様のものです」
輝夜は少しだけ狐に化かされたような顔をするが、笑顔に変わり、その手を握る。その光景を見た一人の少年が瞬間的に腰の銃を抜き、結んだ手を狙う。
「ハァッ!!」
軌響が正雨を引き抜き、霊力を爆発させて本人ごと吹き飛ばす。しかし、その少年は吹き飛ばされる瞬間に後ろに跳び、着地する。
「……強いな、君」
「お褒めにあずかりどうもです」
二人がそれぞれの武器を構えたその時、
「歌鳴出。あなたは来ないの?」
その少年はゆっくりと笑みを浮かべるが
「私が生きている理由は目的を果たすため。そのためだけの命。それを達成するためにここにいますので」
暗い目。それだけを追い求め、周りも見ずに命を使い続ける。ただ貪欲に。その意思を考えさせられる声と眼。
「……そう」
着物の隙間から一枚の札を出し、大声で叫ぶ。
「
輝夜、永琳が光に包まれ、空へ飛び上がる。数秒のうちに暗い空の彼方に消え去る。
「まさか、こんな手で来たか。ファルム、結界を壊せ!!」
ケルムがファルムに催促する。ファルム自身もそれにすぐさま反応し、結界に殴りかかるが。
「『大地の貫騎士《アチャドール・アース》』」
鏡夢は地面に手をつけ、引き抜く。土でできた剣を。土であるはずなのに濡れたように光るそれを。
「『凶淵居合 魔像歌仙』」
ファルムにはなったその剣を、月の人物はすべて見届けた。ファルム自身も驚きから、体を吹き飛ばされた。
「軌響、加減も能力の制限も解除します。たった数十秒ですが、全力で稼ぎなさい。ここで負けるのはあの人への最大の侮辱ですよ?」
「はい!」
作「お久しぶりですね、作者です」
青「同じくお久しぶりな青娥ですわ」
亮「ん?青娥はともかく、鏡狼は久しいのか?」
響「知らん」
作「いやいや、まさか寝込んでしまうとは思ってなかったもんで」
響「お前でも風邪ひくのな」
青「良ければよいお薬でも」
作「いやいいっすよ」
亮「やけに仲いいな。どしたの」
作「いや~、出てもらうためにこの前の響の写真を出したら、喜んでもらえてな」
響「てめっ、まだ持ってやがったのか」
作「? あぁ、すでに十数枚青娥の手に渡ってるから」
響「おい!?」
青「ふふふ、中々かわいらしい顔をなさるんですのね」
響「鏡狼、後でしばく」
作「うげ、三十六計逃げるに如かずってな。次回はグラン予定だぜ。そんじゃな~」