東方雲狼劇   作:鏡狼 嵐星

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亀投稿すいません。しばらくはこれぐらいになりそうです。


恩人の顔、妖怪、真実

「凶淵居合……だと!?」

 

ケルムの一言以前にその技を見た全員が固まっている。名前はわずかに違うものの、それはかつて剣の腕で最強だった男の技であった。

 

「貴様、どうやってその技を知った?」

 

「何故でしょうか。当ててみてください」

 

ここに降りて初めて口を開いた姫の質問を答える気がないのか、はぐらかす。

 

「答える気がないのか。ならば聞きだしてやる」

 

依姫が剣を抜いたのと同時に、月の都の六人全員が構える。六対二。圧倒的な戦力差である。

 

「軌響。稼ぐ時間はせいぜい十数秒。負けないように」

 

「はい!」

 

軌響と鏡夢は背中合わせになり、周りを警戒する。一秒が数分にも感じられるほどの濃密な殺気のぶつけ合い。一輝内ではないので、軌響側が圧倒的に不利である。そして、まず最初に動いたのは、

 

「ハァッ!!」

 

依姫。響無に真正面から斬りかかる。土色の剣を下から上柄へ打ち上げ、相殺する。しかし、一人当たり三人相手であることを忘れてはならない。その隙を見逃さなかった歌鳴出が正確に鏡夢の剣の手元を狙う。一瞬早くその気配を察知した鏡夢だったが、能力で作ったとはいえ、所詮土。無残にも砕ける。

 

「鏡夢っ!!」

 

軌響がわずかに後ろを向く。そういった戦場でのよそ見は自殺行為であることは、この中で十数年という最も短い時しか生きていない彼がそれに気づくにはあまりに経験不足だった。視線がずれた一瞬のうちに軌響の懐に飛び込むファルム。

 

「むんッ」

 

軌響自身も正雨を防御に使うが、体格どころか、威力のケタが違う。ファルムの巨大な拳に吹き飛ばされる。横っ腹に入った一撃。骨がきしみ、肉が裂けるような痛みをこらえながら霊力を使い、無理やり空中に浮く。

 

「くっ、『大気の断剣士《アトモス・グラディアトール》』」

 

鏡夢が空気から何かを引き出す。一見何も見えないが、確かに何かを握っている。それをファルムに向けて投げつける。しかし、それを直輝が真剣白羽取りでつかんで止める。

 

「ふふ、させないよ」

 

ファルムはそのまま軌響に特攻。軌響自身も霊力を正雨に喰わせ、拳の乱打の威力を減らすが、押し切られる。刀をはじかれ、地面に押し倒される。鏡夢はその様子を歯ぎしりしながら見てる。さすがの彼女も助けには到底入れない。

 

「よそ見なんていいのか?」

 

真後ろの死角にいたのは剣を構えた状態のケルム。さすがに避けられるような場所ではない。

 

「……致し方ありませんね。数秒なら持つと思ったのですが」

 

ケルムが剣を放ったその刹那。響無が一瞬発光したかと思うと、

 

「ガッ!?」

 

ケルムの胴体から鮮血が吹き出る。さらにはファルム自身もわけがわからないまま吹き飛ばされる。

 

「いったい何がッ、んな!?」

 

驚かざるを得ないだろう。なぜなら鏡夢の両腕が一片の曇りもない銀色の刀身に代わっており、彼女の髪もまるで鉄のような光沢を放っている。そして、その眼は速く動いているわけでもないのに光が残留し、眼があった位置に線を描いている。

 

()って()って()ちつくす。私は剣。私が切れぬものなどあってはならない。私を作るは最強の剣士。その意志に、思いに従って見せよう。一刀鋭焉(いっとうえいえん)

 

見る者を魅了する美しき銀色。その剣の色は、輝きは、かつての男が持っていた刀身を。その眼は剣の鍔を。月の民に思い出させた。

 

「お前、まさか、ラグナシア……なのか?」

 

「ここまでしてやっとお気づきですか。呆れてものも言えません」

 

普通刀が人と化し、しゃべることはあり得ないのだが、そんなことを気にしても仕方がない。豊姫が笑みを浮かべる。

 

「ふふふ、じゃあ、あなたに月に来てもらうほかないわね~。あの後二人がどうなってるのかも教えてもらわないと」

 

「おのずと分かります。さて、舞台を整えるとしましょう。『凶淵 蠱白(こはく)』」

 

剣となった腕をそのまま振り下ろす。そこから出る銀の斬撃だが、それはただ迫り来るだけだった。

 

「これぐらい易いけどねっ」

 

それを直輝が拳で消し飛ばし、歌鳴出がそのまま特攻し、鏡夢の首を狙う。魔法が炸裂する時に出る火薬よりも静かな音。

 

「剣士に銃なら分かりますが、剣に銃は悪手ですよ」

 

しかし、ラグナシアと言う剣に斬れぬものはない。魔法の弾を腕の剣でもなく、剣と化していない喉に触れた瞬間に二つに裂ける。

 

「『妖断 刀無吹(とうむぶき)』」

 

鏡夢が息を吸い込み、そのまま吐き出す。月の民を除く、それ以外の草や木が刈り取られ、豪華だった庭は整理されていない荒れ地のようになった。

 

「……やっとですか、少し遅れ気味ではありませんか?」

 

空を見上げ、つぶやく。そこには月の隣に浮かぶ、赤黒い太陽があった。その太陽は秒という時間すらかけず、結界ごと地面に着地する。

 

「むうッ!?」

 

誇大な土煙の中からその煙を纏いながら突っ込んできたナニカ。それの標的となったファルムはそれをどうにか受け流す。その塊は跳ね返り、落ちた場所へと戻る。

 

「へぇーえ、へぇーえ。想像よりはやるな?」

 

その隣に瞬間的に現れた鏡。そこから出てきた人物は隣の土煙が晴れると同時に地面に足をつけた。

 

「苦労をかけたな、ラグナ」

 

「いつものことでございます、主様」

 

ラグナシアが主と呼び、黒い髪の強力な力を持つ男と共にいる紫銀色の髪の少年。小柄でありながらもその雰囲気を薄れることなく、いる彼は間違いなく

 

「響……?」

 

同じ紫銀の色を持つ翼を持つその人だった。

 

「まったく、厄介な輩が来たもんだな。『移転 妖焔山』」

 

懐から出した一枚の札を軌響の方へ見向きもせずに投げる。光と共に空へ打ち上げられるのと、同時にケルムが叫ぶ。

 

「貴様、貴様ぁっ!! なぜ妖怪の貴様が響の、亮介の姿をしている!?」

 

「姿をしているも何も、本物だっつーの。ついにボケたか、あいつ。昔からよく怒る奴だったもんなぁ」

 

ケルムだけではない。周りも中々な殺気を滲みだしている。恩人の姿をした憎むものが出てくれば誰だってそうなるのは自明の理ではある。

 

「月が頭が固いのは昔からだ。ラグナ、来い」

 

「御意に」

 

響の右半身の少し後ろに片膝を地面につき、頭を今日の右手の近くに差し出す。そして、鏡夢の刀となったはずの髪の毛に気にもせず、手を置く。

 

「『創想鏡夢天創滅』」

 

その瞬間、響の手から太陽が昇った。そう思えるほどの銀色の発光。眼を細めた月の民たちが見たのは、鏡夢の位置にあったはずの体が光る何かとなり、響の体にくっついていることだけだった。

 

「ふう、即席だが、うまくいったな」

 

わずかに高くなった響の声。髪にかかっているはずの紫は眼をこらさなければ見えず、足まで伸ばされたそれは鏡夢を思い起こす。右手に握られた彼の愛刀と同じようにわずかに濡れているような白い肌が目立った。

 

「さて、やるか。けりをつけるとしよう」

 

「やっとか。待ちくたびれたぜ」

 

肩を増すように体をほぐす亮介。戦う準備満タンと言ったところだが、相手はいまだに状況を飲み込めていない。

 

「……一つ聞かせてもらおうか、妖怪。君たちは君たちの顔をした英雄が僕たちの知り合いにいるんだけど、何を知ってる?」

 

「さっきから何度も言ってるが本人だ。団長、あんたそんなにおつむが弱かったっけ?」

 

亮介の挑発するような物言いに、普段は笑っているはずの顔が歪む。

 

「それなら、本物だってことを証明するような証拠はあるのかしら~?」

 

「菓子を食べるのが好きで、妹とは違って家にいる方を好む姫様の豊姫。お前と交わした最後の約束守れなくて、すまんな」

 

取り繕っていたはずの外側が崩れるように。そんなはずはないと思うその心を無残にも打ち砕く。亮介自身は意図していない。それでも揺れた心は戻らない。一度ひびが入れば治らない。

 

「お前がッ、お前が響なのか!? 妖怪に殺されたはずのお前なのか!?」

 

冷静なんて殴り捨てたのであろう妹姫は、涙と共に問い詰める。響自身は表情をそこまで変えていない。

 

「根本から勘違いしているみたいだから言っておくが、俺たちは最初から人じゃない。月の都に入る前からな」

 

さも当然のように。

 

「おかしいと思わないお前らもお前らだ。妖怪ですら相手にしたくない猪を一撃で倒す。妖怪を助ける。判断材料はいくらでもあった」

 

感覚を確かめるためなのか、剣を片手で回しながら。

 

「最初から月に行く気はなかった。妖怪にとって暮らしにくそうだし、何より楽しくなさそうだ。お前には悪いがな依姫」

 

左手で指を鳴らすのと同時に周りの風景がねじ曲がり、闘技場のような外見に代わる。

 

「恨みもあるだろう。言いたい事もあるだろう。全てを持ってぶつかってこい。受け止めてやる」

 

周りをわずかにだが認識する余裕のあった彼女だが、ケルムと歌鳴出がいることだけが認識できた。だが、そんなことどうでもよかった。

 

「響……きょぉ……ぁっ、なんでぇ、お前なんだぁぁぁッッッ!?!?」

 

涙を吹き飛ばして、月の天才剣姫は牙をむいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁさぁ、とっとやろうぜ」

 

数秒のうちに景色が変わったと思ったら、見知らぬさびれた建物がところどころにある荒れ地に変わっていた。

 

「亮介、お前が何者であろうとお前には月に帰ってきてもらう。お前の育てた兵士も首を長くして待っている」

 

「あー、いたねぇ、そういうやつら。でも、そんなに強くなってなさそうだな」

 

ファルムはひょうひょうと答える相手に不快感を感じていた。努力をむげにされることは武術家である彼にとって侮辱である。

 

「お? そんなに不機嫌になんなよ。俺自身やっと響の言ってたことを理解出来たんだ」

 

頭を掻きながら尻尾を揺らすその様子は、圧倒的高みから見下ろす王者を彷彿とさせた。

 

「あいつは最初月は面白くないって言っただけだったんだがな。昨日、その理由を教えてくれたんだよ。月に行けば、響曰く『進化がない』そうだぜ」

 

彼の体から妖力がにじみ出し、殺気が漏れ始めているのが分かる。

 

「俺はてっきり強くなってないのかと思ったが、違う。お前らは根本的に次の地点へ来ちゃいないんだ」

 

狼としての妖怪の本能か、それともただ戦いやすいのか。

 

「いくら年がたとうが今のお前らが、俺に勝てる確率はゼロだ。団長も、ファルムも、豊姫も。一歩を踏み出せないのならお前らはいつまでたっても壁を越えられねえよ」

 

体の体勢を低くし、獲物を狙う狩人のごとく、眼を爛々と輝かせる。

 

「負けたくなきゃ、死にたくなきゃ、それを超えろ。超えることができりゃ、月に帰るのを考えなくもないぜ」

 

零の狼の狩猟が始まった。




作「どうもどうもどうも、作者でございます」
響「ここに来るのが久しぶりな気がするんだが」
亮「確かに」
グ「い、いきなり呼ばれたけどここってどこなの?」
作「強いて言うなら、ザ・ワールド?」
響「世界ってそのまんまじゃねえか」
作「いや、だってここ以外時間止まってるし」
亮「え、そうなの?」
作「作者の能力は世界一ィィィィィィ!!!!」
グ「きょ、響さん、この人怖い」
響「さすがに、な」
作「その反応ひどくね!?」
グ「な、なんかごめんなさい?」
作「いやね、確かにそういうのを演じてるからいいよ? でも、そんなチワワみたいにおびえないで頂けます?」
グ「は、はぁ」
響「気に済んなバカがうつる」
作「これは手厳しいねぇ。では、また次回。あ、そうそう。こんなところで言うのもなんですが、別の作品を作ろうと思ってます。今のところはそんだけです」
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