隻狼は刀を鞘から抜く。
刀には樋、または血流しという工作がされており、これにより普通の刀よりも軽くなっている。
隻狼は刀を両手で持ち、腰を深く落として顔の横に刀を斜めにして構える。
この構え方は『柳』の構えに似ており、本来は敵の攻撃を受け流す、受け止める場合の構えである。
「その構え...懐かしく感じるな」
「参る」
隻狼は走りだし、早速一心に連続で刀を振り下ろす。
一心は攻撃を弾き反撃するも、その反撃すら弾かれた。
隻狼は葦名流を極めており、登り鯉、下り鯉、流水を取得している。
さらに彼は弾くタイミングが完璧で、弾いた時の衝撃は剣聖といわれる一心といえども苦しめる。
「流石じゃ隻狼...弾きの正確さは全く変わらぬ」
すると一心は隻狼と距離を取り、不死斬りを鞘にしまい力を溜める。
そして葦名十文字を繰り出した。
しかし隻狼は完璧に弾き、その直後一心に攻撃する。
「ぐっ...」
一心は直ぐ様葦名一文字を仕掛けるが、隻狼は回避し彼の背中へ回り込み攻撃。
「ぐあっ!」
一心は距離を取るため後ろに下がるも、隻狼は迷わず彼目掛けて走る。
そして決して休ませぬように、彼は攻撃を続ける。
(休む暇を与えぬか...流石わしを斬った男じゃ)
一心は不死斬りを鞘にしまい、黒い気を刀に纏わせた。
「!」
「くらえぃ!!」
一心は黒い気を纏わせた不死斬りを、強い踏み込みと同時に振り下ろす。
しかしその瞬間隻狼は忍義手から紫色の鉄傘を広げ彼の攻撃を弾き、しかも弾いた直後傘を閉じて一回転し鉄扇と刀を同時に攻撃。
一心の腹に八の字を刻んだ。
「かはっ...!」
すると一心は再び不死斬りを鞘にしまい、力を溜めて抜刀し秘伝竜閃を放つ。
隻狼は陽草の印という左手の人差し指を立てて、それを右手で掴み右手の人差し指を伸ばす構えをする。
忍義手には鴉の羽を束ねた忍具『霧がらす』を装着していおり、一心の竜閃を受けた瞬間黒い霧と鴉の羽を残してその場から消える。
「!」
そして竜閃を放った方角とは別の所に隻狼が現れ、一心に突進し刀を横に払う。
彼は防ごうとするも間に合わず、一撃食らった。
「ぬぅぅ...」
隻狼はそのまま攻撃を続けるも、一心攻撃を紙一重で避け反撃する。
隻狼は反撃を弾いて刀を構え、突きを仕掛けるも一心は突きを見切り刀を踏みつけられた。
「はぁ!」
一心はお返しとばかりに突きをするも、彼もまた不死斬りを見切り踏みつけた。
「ぐっ!」
一心は不死斬りを引き戻し、鞘にしまう。
そして黒い気を纏わせ、葦名十文字を繰り出した。
隻狼は一心の技を完全に弾くも、不死斬りに纏わせた黒い気は彼の体を傷つけ体力を奪う。
隻狼は不死斬りに黒い気を纏いながら戦う一心を見て、眉にシワを寄せる。
今目の前にいる一心は、かつて相手した一心ではない。
隻狼はこの言葉を体全体で感じていた。
「...」
「隻狼よ、今のわしは...葦名にいた時とは違う。冥界にて強者と戦い、鍛えられた」
一心は黒い気を纏った不死斬りで構える。
「...今度は敗けぬぞ」
一心がそう話すと、隻狼は刀を構える。
「.....斬って見せます...一心様」
一心は不死斬りを鞘に戻し、抜刀して下段攻撃を行う。
すると隻狼は回転しながら飛び上がり、足の甲で一心の頭を攻撃。
仙峯寺拳法 仙峯脚である。
「ぐっ!」
隻狼は回し蹴りで追撃を行う。
しかし一心は蹴りを防ぐと、掌底打ちを行い隻狼を突き飛ばした。
隻狼は後ろに転がるも、すぐに体勢を立て直した。
そして刀を鞘に戻し力を溜めて一気に抜くと、その瞬間一本の細い線が一心の肩を斬り裂いた。
「ほぅ...竜閃を取得していたか...だが!」
一心も不死斬りを鞘にしまい、黒い気を纏わせ抜刀し 黒い刃を隻狼へ飛ばした。
「!」
「...わしの竜閃には程遠いわ!」
隻狼は竜閃を防ぐも、あまりの衝撃と黒い気によって吹き飛ばされる。
彼は直ぐ様体勢を立て直し、忍義手に火吹き筒を装備した。
一心は隻狼の近くに移動し、連続攻撃を仕掛ける。
そして最後に下段攻撃すると、隻狼は飛び上がり一心の頭を強く踏み込んだ。
そして地に降りる瞬間火吹き筒を彼に向ける。
火吹き筒からは巨大な炎が放出され、一心の体は炎に包まれた。
「ぬぅ!」
さらに隻狼は刀を横に払い炎を纏わせ、そのまま炎上した一心を攻撃し始める。
「小賢しい真似を...」
一心は燃えながらも、隻狼の攻撃を防御し反撃する。
だが炎により一瞬だけ隙ができると、隻狼は刀を鞘に戻し火を纏った葦名十文字を繰り出す。
その一撃で一心は大きく体勢を崩すと、隻狼はそこを逃さず刀の柄頭で彼の胸を押し喉目掛けて突きを仕掛ける。
しかし彼はさせまいと手で刀の軌道を反らし、喉ではなく肩を貫かせた。
「まだじゃ...」
隻狼はすぐに刀引き抜くと、一心の血が大量に吹き出す。
「まだじゃ!隻狼ぉ!!」
一心は強く地面を踏み込み、その衝撃と爆風で体を燃やしていた炎を消し去る。
そして十文字槍を地面から左手で取り出し、肩にのせる。
「血が滾ってきたわ!」
一心が槍を取る間に隻狼は忍義手に錆び丸を装着した。
一心は十文字槍を連続で振るい、隻狼に攻撃を仕掛けるも全て弾かれる。
まるでこの攻撃は熟知しているように。
この時彼の中ではあることが確信に変わった。
(やはりな...隻狼はわしと初めて戦った時の動きを全て覚えておる...ならば同じ技は通じぬか)
隻狼は弾いた瞬間忍義手から錆び丸を出して、一心に連続攻撃を仕掛ける。
さらに錆び丸からは毒の霧を生み出し、辺りに撒き散らしていた。
「ぐっ...」
一心は辺りに散らばる毒の霧を吸い込んでしまい、体力を徐々に失う中毒状態となってしまった。
「かっ...は...毒か...!」
すると隻狼は一心が隙を見せるやいなや刀を彼の頭目掛けて振り下ろす。
しかし一心は攻撃を弾き、後ろに下がって不死斬りを鞘にしまい黒い気を纏わせる。
そして広範囲に薙ぎ払いうも、隻狼はギリギリで弾いて見せた。
「ぐっ...」
隻狼は完璧に刀で防いだが、防御した後刀を地面に刺していなければさらに後ろに吹き飛んでいただろう。
そしえ再び黒い気が隻狼の体を深く傷つける。
すると一心は隻狼目掛けて十文字槍を振り下ろすが、彼は簡単に避けた。
しかし一心は避けられるのを予想し、直ぐ様一回転して勢いをつけた十文字槍で下段攻撃を行った。
だが隻狼はそれすらも避けて、一心の頭を踏みつける。
「おのれ...」
一心は銃を取り出し連射するも玉は隻狼に全て弾かれ、ならばと文字槍で突くも見切られ踏まれてしまった。
一心の腕もそろそろ痺れが取れなくなってきている。
「やりおる...だが」
一心は十文字槍を構え、後ろへ飛び上がりながら隻狼に向けて槍を思いきり投げる。
「!」
隻狼はその場で飛び上がり槍を回避するも、その直後槍を踏み台にして居合いの構えをしている一心が飛んできた。
「せやぁ!」
一心は葦名十文字を繰り出し、隻狼を地面へと吹き飛ばす。
新たな技に隻狼は完璧に弾けなかったものの、どうにか防いだ。
地面に降りた一心は、そのまま隻狼へ突進し十文字槍で追撃する。
しかし隻狼は左下から右上に刀を払うと、後ろに回転して距離を取った。
「ほぉ...寄鷹の者達の技か」
そして隻狼に銃を連射し、黒い気を纏わせた葦名一文字を繰り出す。
しかし隻狼は一文字を弾くと、背負っている赤の不死斬り『拝涙』を鞘から抜いて薙ぎ払う。
「ぐおっ...!」
赤の不死斬りは一心の体を大きく傷つけ、体勢を崩した。
隻狼はそこを逃さず一心の上から襲いかかり、彼の胸を突き刺す。
「ぐぬぅ...!」
すると辺りに黒い雲が集まり、大雨、突風、雷を引き起こす。
「まだじゃ!まだわしの首は落ちてはおらぬ!」
一心は十文字槍を上空に掲げ、降ってくる雷を受け止め纏わせた。
「かあっ!」
一心は十文字槍で薙ぎ払うと、隻狼は飛び上がり雷を受け止め横に振るう。
しかし一心ももう一度飛び上がり、雷を受け止めた。
「さぁどうする隻狼!」
すると隻狼は霧がらすを発動し、雷攻撃を受けた瞬間上空へと移動し雷を返す。
「!」
一心は上空で雷を受けようとするも、霧がらすの攻撃が速すぎて飛ぶ時間さえなかった。
一心は打雷してしまい、全身に強烈な痺れと衝撃が走る。
「ぐぉおっ!!」
一心は地面を強く踏み込み、痺れを全て地面に流す。
「かはっ...はぁ...はぁ...雷返しを返すか...カカカッ!」
一心は十文字槍を振り回し隻狼に渾身の一撃を加えると、秘伝竜閃を二連続繰り出した。
「はあぁぁい!!」
隻狼は竜閃を弾くと、腰を深く構え突進する。
一心に突き攻撃をすると彼を踏み台にして上空へ飛び、回転しながら二連続薙ぎ払う。
「ぐぅっ!」
一心は十文字槍で薙ぎ払い、その直後黒い気を不死斬りに纏わせ薙ぎ払う。
しかし隻狼はそのどちらも弾き、赤の不死斬りを抜いて力を溜める。
「かぁぁ!!」
一心はさせまいと飛び上がり、十文字槍を隻狼目掛けて振り下ろした。
しかし
隻狼は不死斬りを思いきり薙ぎ払うと、十文字槍ごと一心の腹を斬り裂いた。
「がはっ!!」
二つに斬れた十文字槍は地面に落ち、霧となって消える。
一心は地面に落ちて、不死斬りに斬られた箇所を触った。
「.....」
血が止まらなかった。
不死斬りで斬られると、傷は再生しないらしい。
「はぁ....はぁ...」
隻狼は不死斬りを鞘にしまい、刀を抜いた。
そしてゆっくりと一心に近づいていく。
「.....」
一心は起き上がらない。
その顔は驚きと言うよりも、呆れに近かった。
「.....死んで強さを求め...冥界にて鍛え上げたが...まだ届かぬのか」
一心は不死斬りを支えに、ゆっくりと立ち上がる。
「.....一心様」
「隻狼よ...これで...最後じゃ」
一心は不死斬りを構えながらゆっくりと隻狼に向かって歩く。
すると不死斬りが黒い気を纏い、段々と濃くなっていく。
そしてとうとう燃え始め、一心のもつ黒い不死斬りは黒い炎に包まれる。
体の至るところが傷付き、胸や腹からは不死斬りによって傷つけられた場所から血が溢れる。
しかし歩く一心の姿からは今までの勇ましく荒い雰囲気とは一変し、まるて水のように静かだ。
隻狼はその姿を見ても、刀を構える
「一心様...まだ、強さを求めますか」
「それがわしじゃ」
「.....それほど傷ついてもまだ...戦いますか」
「...何が言いたい」
「...最早貴方に守るべきものも、果たすべき目的もありませぬ...それでも、強くありたいのですが」
「.....」
「...俺は...貴方を救う為ここに来ました」
「救う...?」
「貴方は強さに捕らわれている。貴方を...強さという鎖から解き放ちに来たのです」
一心は不死斬りを強く握りしめ、その顔は少しばかり怒りが見えた。
「カカカッ...解き放つか...」
「一心様」
「ならば倒してみせよ...言い聞かせてみせよ...貪欲なまでに強さを求める心中のわしに」
「.....」
「隻狼、再びこのわしの首を斬ってみせよ」
「.....参ります、一心様」
隻狼が使う形代の計算はしておりません(!?)
かっこいいからそれでよし
ちなみにお気に入りは傘と霧がらすです。