冥界に剣聖あり   作:ポン酢おじや

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あれから...

二人の戦いが終わって既に一日たっていた。

 

妖夢はいつもの鍛練を終え、正座し休んでいたしていた。

 

「.....」

 

あの後、隻狼は一心の魂を連れて冥界を出ていった。

一心の魂は幻想郷にある中有の道、三途の川、そして裁判所へというルートで向かう筈だ。

 

妖夢は正座をやめて、少し足を緩み一息つく。

 

「.....」

 

妖夢は二人の戦いを最後まで見届けて、その凄惨たる勝負に肝を冷やした。

 

そして一心、隻狼の二人の戦い方を心に刻み、何回か心中にて対決した。

しかしどちらも妖夢が惨敗し、まだまだあの二人には程遠いと痛感する。

 

 

「...お夕飯の用意しなくちゃ」

 

妖夢は竹刀を戻し、汗を拭いて着替え台所へと向かう。

 

すると縁側には、幽々子が空を見ながら何もせず座っていた。

一心がいなくなってからは、何もせずずっとこうしていることが増えた。

そして食欲も前と比べ、減っている。

とはいってもほんの少しだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事の時間になると、妖夢は料理をテーブルの上に置いていく。

 

いつもは一心と酒を飲んでどんちゃん騒ぎだったので、今日の食事はやけに静かだと妖夢は感じていた。

幽々子もそれは同じだったようで、積極的に妖夢に話しかけて盛り上がろうとしている。

妖夢も主を心配させたくはないため、なるべく楽しそうに答えた。

 

 

 

 

幽々子が食事を終えて寝ると、妖夢は後片付けをして一人縁側にて空を見上げる。

 

「...寂しいな」

 

ふと無意識に妖夢は呟いてしまう。

すると顔を赤らめ、幽々子に仕える身としてそんな恥ずかしい言葉はいってはいけないと活をいれる。

 

「.....」

 

それでも、妖夢は自分の師がどうなったか知りたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隻狼よ」

「...はい」

「迷えば敗れる...わかっておるな」

「...はい...ですが」

一心は銃を持ち、引き金を引く。

 

パン

 

軽い音が周囲に響き渡り、銃から発射された弾は棚の上にあるお菓子の箱に当たる。

 

「はい当たり~」

 

屋台の中にいる鉢巻きを巻いた中年の男が、倒されたお菓子の箱を一心に手渡す。

 

「カカカッ!!どうじゃ!隻狼!」

「.....一心様、そろそろ向かわねば閻魔が怒りまする」

「構わぬ!今回は奴等の不手際と認めておるしな」

「...しかし」

「お主に敗れ、どこに連れてかれると思いきや...まさか祭りとはな!」

「...いえ、ここは中有の道といい、三途の川へと通じる道...避けては通れぬ道なのです」

「なら仕方あるまい!地獄の連中には中有の道にて迷ったと伝えればよい。それにしても『しゃてき』という訓練はつくづく面白い!」

「...訓練ではありませぬ」

一心は銃の先端にコルクを詰めて、再び棚の上にある景品を狙う。

引き金を引くと、袋に命中し後ろに落ちた。

 

「はい当たり~おじちゃん上手いねぇ」

「カカカッ!短筒しか撃ったことはなかったが...飲み込んでやったわ!」

一心は屋台のおじちゃんに落とした袋を渡す。

 

「しかしあんたも珍しいね。普通死んだら人魂になって喋れもしないんだが...あんたは完璧に人の姿だ」

「カカカッ!だからこうして楽しめる」

「たまーにいるんだよ。人魂にならずに生前の姿をしたまま霊になる奴」

「ほう」

「余程生前に何か凄いことしたんだな」

「カカカッ!」

 

すると一心の目の前に置かれていたコルクが無くなった。

 

「おう隻狼!銭を貸せぃ!こるくとやらが無くなってしまったわ」

「一心様、そろそろ行かねば」

「む...ならばそろそろ店を変えるか。ではな主人」

「ああ、毎度あり。また寄ってくださいな」

 

一心は銃を置いて、隻狼と共に屋台を離れる。

 

ここは中有の道。

三途の川の川へと通じる道であり、常に多くの屋台が開いている。

この屋台は地獄の収入を少しでも増やそうと閻魔達が考えたものであり、屋台をやっている者達は全員地獄へ落とされた罪人達だ。

「さぁて、次はどこへ入るか」

「一心様、そろそろ三途の川へ。死神が待っております」

「カカカッ!待たせておけぃ!おう、あれはなんじゃ!?」

 

一心は近くにある屋台に向かって走り出す。

隻狼は頭を悩ませながらも、一心から離れるわけにもいかないのでついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢は縁側にて座っていると、門の方から足音がする。

そこには霊夢とレミリア、そして付き添いの咲夜が歩いてきた。

 

「霊夢さん...レミリアさん...咲夜さんも」

「こんばんは妖夢」

霊夢は妖夢の隣に座ると、レミリア達も霊夢の隣に座る。

 

「どうしたんですか?こんな夜中に」

「ここいつも夜じゃない」

「そ、そうですけど」

「あいつが死んだって聞いてね。ってことでお酒持ってきなさい」

「へ?」

 

するとレミリアが妖夢の方を向く。

 

「お酒よお酒。死んだら人って酒飲むんでしょ?」

「いや必ずしも飲むわけでは...」

「いいから持ってきなさい!」

「は!はい~!」

 

妖夢は急いで台所へと向かい、お酒を持ってくるために走る。

 

妖夢はいくつか酒を持ってくると、霊夢は直ぐ様コップで酒を飲み始めた

 

「...ぷはぁ...あー、いいお酒ね」

レミリアはお酒をチビチビと飲んでおり、対して霊夢は直ぐに自分のコップに酒を注いで飲み始める。

 

「それにしても、あの一心が倒されるなんてね」

「.....」

「どこの誰?あの怪物を倒したなんて常識はずれの奴は」

「...隻狼と呼ばれる、かつて一心さんを倒した人間です」

 

人間という言葉を聞くと、レミリアはため息をつく。

 

「霊夢といい、あの黒白魔法使いといい...人間ってヤバイ奴はとことんヤバイわね」

「ははは...それには同意しますね」

「ちょっと何よ、私が化け物みたいじゃない」

「ちゃんと理解してるようでよかったわ」

 

レミリアと霊夢が睨み合っていると、妖夢は二人の会話を聞いて少し笑顔になる。

 

「.....」

 

すると霊夢は妖夢の表情をみて、軽く息をはいた。

 

「ま、落ち込んでなくてよかったわ」

「え?」

「あいつは賑やかな奴だったからね...静かすぎるここに似合わないほどに」

「そう...ですね」

「喧しい奴がいなくなると、それはそれで寂しくなるのよね」

 

霊夢の言葉を聞いて、相変わらず勘がいいと妖夢は思う。

 

「...確かに寂しいです...けど、私はあの人からいろんな物を受けとりました」

「.....」

「それで私は...決めたんです」

 

すると頬が少し赤く、コップに入っていた酒を飲み干したレミリアが妖夢に話しかける。

 

「へぇ、半人前が何を決めたのかしら」

「半人前...」

 

妖夢はレミリアの言葉に文句を言いたかったが、堪えて続きを話す。

 

「私は...あの人を飲み込んでやるって。それでもっと強くなるんです」

 

それを聞いた二人は、大笑いし始めた

 

「あははは!どこかで聞いたような台詞ねぇ!」

「完全にあいつの影響受けてるじゃない」

「そ、そうですかね」

 

すると霊夢は立ち上がり、庭へ歩いて妖夢を見る。

 

「さて、お酒貰って気分いいし...妖夢、貴方にちょっと稽古つけてあげるわ。一心を飲み込むって言うからにはそれなりに強くなったんでしょうね」

「え!?」

「それはそうでしょう霊夢。あの一心を飲み込むって宣言したんだもの。霊夢程じゃなくても私並みには強くなってる筈よね」

「ちょ、ちょっと待ってください。一心さんがいなくなってまだ一日ですよ!?」

 

するとレミリアは妖夢の服を掴み、立っている霊夢の前に放り投げる。

 

「痛っ!」

 

妖夢は庭に放り投げられ、倒れる。

「さぁ妖夢。今回は弾幕ごっこじゃないわよ...真剣試合って奴ね」

「あ、あの...ま、まだ私は修行不足でして...」

「関係ないわ」

「あ、あの霊夢さん...酔ってます?」

 

恐怖の笑みを浮かべる霊夢に、妖夢は涙目で震える。

 

「た...」

 

 

 

 

 

「た、助けて師匠ぉぉぉ!!!」

「逃がさないわよ妖夢ぅぅ!!」

 

 

 

 

その瞬間、霊夢の夢想封印が妖夢に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三途の川

 

「ここか」

「はい」

 

隻狼と一心はようやく三途の川に到着し、辺りを見渡す。

 

「霧が濃いな」

「...ここはそういうものだと聞いています」

すると二人の前方から、女性が乗っている一隻の小舟が近づいてくる。

女性は長く赤い髪を二つに分けて結んでおり、着ている服は着物に似ている何かで、腰に何か布のようなものを巻いている。

 

小舟が二人の前で止まると、その女性は鎌を持ちながら船を降りた。

 

「やぁやぁ、あんた達が四季様の言ってた人だね?私は小野塚小町。あんたを迎えにきたよ」

すると隻狼が女性に対応する。

 

「...この方を頼む」

「はいよ。さっさと仕事を終わらせようじゃないか」

「...一心様、この小舟にお乗りください」

 

一心は隻狼に言われるがままに、小舟に乗った。

 

「...お主は乗らぬのか」

 

隻狼は一心が小舟に座るのを見届けるが、自分は乗ろうとはしなかった。

 

「はい、別の船がありますゆえ」

「そうか」

一心はため息をして、隻狼の顔を見る。

 

「...これを渡れば...わしは死ぬのだな」

「...はい...皆が地獄にて貴方の到着を待っています」

「ほう!皆とな」

「葦名の者達です」

 

それを聞くと、一心は大笑いする。

 

「カカカッ!あやつらか!そうかそうか...再会が楽しみじゃ!」

「...また向こうでお会いしましょう。一心様」

「おう、ではな隻狼」

 

小町は二人の会話が終わると、小舟に乗って船を押し出す。

 

小舟が進むにつれて隻狼の姿がどんどん霧で隠れていき、一心は完全に消えるまでじっと見ていた。

すると小町が鎌で船を漕ぎながら、一心に話し始める。

 

「さて、あんた名前は?」

「んん?閻魔から聞いておらぬのか」

「詳しくは聞いていないのさ。隻狼が連れてる人を三途の川に渡らせろとしかね」

「そうか。ならば...わしは葦名一心じゃ」

 

葦名という言葉を聞いて、小町は腕を組んで悩み始める。

 

「葦名?どっかで聞いたことがあるような」

「ほぉ、葦名という名を知っておるのか」

「あ、思い出した。むかーし葦名って場所で魂導く仕事をしたね」

「導く?」

「死んだ魂をここまで導くって事。といっても臨時だったから一日限定だったけど..いやーあの時の仕事は過去一番忙しかった事を覚えてるよ」

 

小町はため息をして、その時の状況を話す。

 

「ほう...」

「なんかその時戦争中だったのかすんごい人が死んでね...魂がわらわらと沢山いてさ」

「戦ならば死人は出る」

「ここだけの話...実はその時死んだ魂は全て回収したんだけど...あまりに多すぎて三途の川に連れて行けずに逃げた奴もいるんだよね」

「逃げた?」

「逃げたっていうかどっか行っちゃったんだよね。魂ってふわふわしててちゃんと統率しないとはぐれちゃうんだ...めんどくさくて集中してなかった私も悪いけどさ」

 

すると小町は笑いだす。

 

「まぁ一日限定の仕事だったし、他の死神に任せればいいやって思って逃げた魂は放って置いたんだ!あっはっはっは!」

「カカカッ!お主も悪じゃな!」

「今じゃいい思い出さ!...ま、その逃げた魂もちゃーんと他の人に回収されたと思うから大丈夫大丈夫。もしも回収されてないならずーっとさ迷う事になってるだろうけど」

「カカカッ!」

「あっはっはっは!」

 

二人は笑いながら、船を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三途の川の先にある是非曲直庁本部

ここは三途の川を渡った魂に裁きを下す場所であり、四季映姫が勤める場所でもある。

 

 

映姫は是非曲直庁本部の資料室にて、過去の魂回収の記録を見ていた。

 

「ふぅむ...葦名...葦名...あ、やっと見つけた」

 

映姫は一心が死んだ日付の葦名の魂回収記録の資料を見つけ、ページをめくりながら読んでいく。

 

「全く...まずはこの時期で魂回収の仕事をしていた死神に話を聞く必要がありますね...今後こういうことがないように言い聞かさないと」

 

そして映姫は担当死神の名前が書かれているページを見つけた。

 

「どれどれ...古い資料のせいで文字が掠れて読みにくいですね。お...の...づか...こ.....」

 

映姫は自分のいった、当時の担当死神の名前に疑問を抱いた。

 

「...おのづか...こまち?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか...ね」

 

映姫は資料を一旦閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




剣聖 葦名一心
心中に息づく、類稀な強者との戦いの記憶

今はその残滓のみが残り、
記憶は確かに狼の糧となった

隻狼に敗れ、死神から逃れ、一心の魂は長く現世でさ迷った
やがて冥界にたどり着き、漂う多くの魂を集め、かつての己の肉体を得る

そして冥界に住まう剣士に出会い、その者に己の全てを託し、安堵して地獄へと逝った







どうも、ポン酢おじやです。

この度はここまで『冥界に剣聖あり』を読んで頂きありがとうございました。
お気に入り、評価、感想、しおり等をしてくれた方々には感謝しかありません。
全部で15話と短いとは思いますが、皆さんのおかげでなんとかこの小説を終わらせることができました。

 
これを読んで少しでも葦名一心の魅力を感じていただけたら嬉しいです。

 では皆さん、最後に隻狼本編にて
・回復なし
・ノーダメ
・艱難辛苦
・鐘憑き
・体力、体幹全て非表示
・アイテム使用不可
・流派技なし
・忍具なし
・雷返し禁止
・回生禁止
を条件に本物の一心様に会いに行こう!(血反吐)

 
では、ノシ

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