冥界に剣聖あり   作:ポン酢おじや

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指導開始

次の日

一心はあれからさらに酒を飲み、いつの間にか酔い潰れていた。

兜も刀も装備したまま、食事をした場所で倒れ布団を被せられていた。

 

「...うぅむ」

 

一心は体を起こすと、そこにはお茶をのむ幽々子がいた。

 

「...粗相をしたな」

「いいのよ。貴方の話も聞けたし」

「...魂魄は...」

「まだ寝てるわ。もう、どれだけ深い傷負わせたのよ」

「カカカッ...わしの刀は亡霊すら苦しめる事が証明されたか」

 

一心は直ぐ様立ち上がり、部屋を出るため襖を開ける。

 

「様子を見てこよう」

「お願いするわ」

 

一心は再び妖夢の部屋へと向かう。

 

 

 

 

一心はゆっくりと襖を開けると、そこには幽々子の言う通り妖夢が布団で寝ていた。

しかし苦しむ様子はなく、近くに変えた後の包帯があるが血がついていなかった。

それを見るや一心は襖を閉めて、音を立てぬように幽々子の部屋へと戻る。

 

 

 

「あら、どうだった?」

「...カカカッ...治りが早すぎるわ」

「人間じゃないものあの子」

「...魂魄と刀を交えた時も思うたが...あの容姿で其処らの剣士など歯が立たぬ程の力を持っていた。半霊というのは人間よりも遥かに強いのか」

「半人半霊はそういうものよ」

「カカカッ!今更わしが教えることがあるか?」

「その半人半霊を打ち負かした貴方だからこそよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢はゆっくりと目を開ける。

体を起こすと、昨日までの痛みは無くなっていた。

こういう負傷した時すぐに治るのはありがたい。

 

妖夢はすぐに服装を整え、刀を装備する。

部屋を出て、主人である幽々子の所へと歩き出した。

 

「失礼します幽々子様」

「あら妖夢。もう大丈夫なの?」

「お陰さまで」

「なら良かった。じゃあ一心さん、あとはよろしくね~」

 

幽々子がそういうと、一心は立ち上がる。

 

「さて、ここには道場はあるか」

「こちらです」

 

妖夢と一心は部屋を出る。

 

しばらく歩くと、葦名にもあった道場に似た場所へとたどり着く。

 

壁には木刀や竹刀、棒や長刀用の棒が飾られ、稽古をするには十分すぎる広さもある。

 

「うむ、中々じゃ」

「では、よろしくお願いします」

「おう!まず...お主はどのような鍛練をしておる?」

「素振り千回、体力作り、筋力強化などです」

「まず素振りを見よう」

 

妖夢は飾ってある木刀を掴むと、一心の前で素振りをして見せる。

木刀が振り下ろされ、強い風の音が道場に響き渡る。

 

「ふむ、...まだまだ踏み込みが足りぬ」

「踏み込み...」

「お主は腕のみで刀を振るうだけじゃ。そこに足を加えれば...木刀でも石すら砕ける」

「.....」

「やってみせい」

 

妖夢は一心の言う通りにやるも、先程と変わらない。

 

「うーん...」

「カカカッ!どれ!手本を見せよう」

 

一心は木刀を妖夢から受けとると、その場でゆっくりと木刀を振り上げる。

 

「今からするのは葦名流の基じゃ」

 

一心は右足で床を強く踏み、木刀を振り下ろす。

その瞬間妖夢の髪が風でなびき、足の衝撃は彼女の全身を震わせた。

 

「す、すごい衝撃ですね」

「葦名一文字。そう呼ぶ」

「葦名...一文字...」

「これを極めろ。まずはそこからじゃ」

「は、はい!」

 

 

 

妖夢は葦名一文字の鍛練をしているうちに、もう夕食の時間となってしまった。

 

「ふむ、ここまでじゃ」

「ふぅ...ふぅ...」

「見事。今日だけで葦名一文字を極めるとは」

「まだ...まだです」

「では、西行寺のところへ戻るとするか」

「りょ、了解です」

 

一心は彼女の成長に驚いていた。

葦名一文字は基礎とはいえ、短時間でここまで極める者はそうはいない。

素質は十分。

幽々子が言っていたもう一押しと言うのもわかる気がした。

 

そんな一心の期待とは裏腹に、妖夢はかなり疲れていた。

ただの素振りならこれほど疲れることはないだろう。

しかし一文字は全身全霊を一撃で叩き込む技。

 

半人半霊といえども、かなりきつい。

 

(これが葦名流...この人の剣術...疲れるけど...とても興味深い事は確かだ)

 

妖夢が祖父から学んできた剣術は、『あらゆる物を斬る』事を目標にした剣術だ。

その課題の中には雨、空気、時や光を斬る事が含まれる。

葦名流はもしかしたらその目標へ近づくための第一歩になるかもしれない。

 

妖夢はそう予感していた。

 

 

 

 

 

 

 

二日後

 

妖夢の葦名一文字は、誰が見てもかなり鍛えられたと判断できた。

その日一心は彼女の前に、腰まであろう高さの丸太を用意した。

 

「よし、魂魄」

「はい!」

「木刀で、これを割れい」

「木刀でですか」

「お主なら出来る筈じゃ」

 

妖夢は言われた通り、木刀を持ってゆっくりと振り上げる。

 

「...はっ!!」

 

妖夢は強く踏み込み、木刀を振り下ろした。

木刀が当たった瞬間、衝撃で丸太は真っ二つに割れる。

踏み込みの衝撃は、道場の床を軽く凹ませるほど強かった。

 

「カカカッ!見事じゃ!」

「これが葦名一文字...」

「さて...一文字を会得したならば...次は鯉じゃな!」

「鯉?」

一心は別の木刀を持つと、妖夢の前で構える。

 

「魂魄!まずはわしを斬ってみよ!」

「は、はい!」

 

妖夢は一心と同じく木刀を構え、彼に斬りかかる。

 

「やぁ!!」

「ぬん!!」

 

一心は妖夢の攻撃を弾いて見せる。

その瞬間彼女の体には強い衝撃が起こり、後退りしてしまう。

 

「う...い、今のは」

「登り鯉...これも葦名流じゃ」

「登り鯉?」

「襲いかかる刃を弾く...鯉が滝を登るようにじゃ」

「鯉が滝を...」

「魂魄、もう一度じゃ」

「は、はい!」

 

妖夢は言われた通りに、もう一度一心に斬りかかる。

すると彼は同じように弾くが、先程の全身に渡る衝撃はない。

しかし一心が弾いた直後に反撃し始める。

その反撃を受け止めた瞬間、妖夢の両腕にかなりの衝撃が走る。

 

「くぁ...!」

 

妖夢は木刀を落としてしまい、震える腕をみる。

 

「これは下り鯉じゃ」

「下り...」

「刃を弾き返し、そこへ苛烈に畳み掛ける...滝を下る鯉のようにな」

「...」

「ただ防ぐのでは足りぬ。弾き、さらに削る...そうして死闘を越える...」

「成る程...」

「さぁ構えぃ」

「は、はい!」

 

 

妖夢の特訓は、確実に彼女を強くしていく。

 




次回!リベンジ一心!
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