冥界に剣聖あり   作:ポン酢おじや

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葦名流 最終試験?

妖夢と一心の特訓が始まってから既に2週間。

彼女は葦名流をほぼ全て会得していた。

葦名一文字、登り鯉、下り鯉、幹の息吹 陽、流水、葦名一文字 二連。

これだけの技をたった二週間で会得した妖夢は、剣聖一心から見ても優秀と言わざるを得ない。

 

そしてある日、一心は彼女に葦名流の最後を伝授しようと彼女と共に道場へ立つ。

 

「...さて魂魄」

「はい!」

「ここまで見事じゃ。わずかな期間でよくぞ葦名流を極めた」

「あ、ありがとうございます」

「そして...これがわしの教えられる葦名流最後の技じゃ」

「最後...」

「とは言うても...かつてお主と刃を交えたわしならわかるが...簡単に会得できてしまうだろう」

「え?そうなんですか?」

「最後に教えるのは...奥義、葦名十文字じゃ」

「十文字..」

 

一心は木刀と鞘を持ち、木刀を鞘にしまった。

 

「居合い...!」

「そう、葦名流最後の技は居合いじゃ」

 

一心はしばらく居合いの構えをすると、掛け声と共に木刀を鞘から抜く。

凄まじいスピードで彼は木刀を右横、そして縦に斬る。

用意していた打ち込み台には十字が刻まれ、粉々に砕け散る。

 

「葦名十文字...より速く、より疾く斬るのを突きとめる技じゃ」

「.....」

「かつてお主が見せた居合い...あれ程の抜刀が出来るならば容易な技よ」

「そ、そうでしょうか」

「まずは...やってみせい」

 

妖夢は言われた通り、木刀を鞘にしまい居合いの構えをとる。

 

そして掛け声と共に木刀を抜いた。

 

妖夢の十文字はより正確に、そして素早かった。

 

打ち込み台は一心の打ったものより綺麗な十文字を刻み、後ろに倒れた。

 

それを見て一心は大笑いする。

 

「カカカカカカッ!!魂魄!見事じゃ!!」

今まで聞いたことのない嬉しそうな声に、妖夢は少し驚いてしまう。

 

「え、あ、ありがとうございます」

「見事な十字、素早さ、あのエマよりも上かもしれんぞ」

「あ、あはは。どうも」

「...葦名流の奥義を極めたな!まさかここまで速く全てを極めるとは」

「...速かったんですか?」

「おう!葦名の者達よりも遥かにな!」

「ち、ちなみに一番速かったのは...誰なんですか?」

 

妖夢の質問に、一心は揚々と答える。

 

「間違いなく隻狼じゃ」

「隻狼?」

「隻腕の狼...あれほど不思議な奴いなかった」

「隻腕...」

「あやつは一日で葦名流を極めた。まだまだ無駄は多かったが...」

「い、一日!?」

「そしてわしを完膚無きまで斬った男じゃ」

 

その言葉に妖夢は愕然とする。

今目の前にいるこの怪物を斬った。

それだけでその隻狼という男がどれだけ強いか理解できる。

 

「カカカッ!さぁて魂魄。技は全て教えた...だが」

「だ、だが?」

「実戦で使えなければ意味は無し。今夜...外にてわしと戦うのじゃ」

「!」

「無論真剣...葦名流を使いこなせぬならば...お主を再び斬ってやろう」

「...」

「いいか魂魄」

「は、はい」

「迷えば、敗れる。それを肝に命じよ」

 

一心は木刀を元にあった場所に戻し、道場からでる。

 

残された妖夢は今夜再びあの男に挑む機会がいきなりやって来て、嬉しい感情と同時に恐怖が混じっていた。

 

「...勝てるのかな...」

 

(迷えば...敗れる)

 

「...勝てる。私なら。迷えば敗れる...そう教わった」

 

妖夢は打ち込み台の片付けをして、道場から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢は幽々子に夕食を作り終える。

しかしその食事に一心の姿はなく、恐らくもう外で待機しているのだろう。

 

「うーん、やっぱり妖夢のご飯は美味しいわね」

「.....」

「...行くのね?」

「はい」

「...彼を貴方につけて正解だったわ。今の貴方ならどんな敵でも倒せるわよ」

「そう...でしょうか」

 

妖夢の明らかな不安の表情に、幽々子は溜め息をつく。

すると幽々子は妖夢に手招きをする。

 

「妖夢」

「は、はい」

 

妖夢は幽々子に近づくと、彼女は妖夢の頭をギュッと抱きしめた。

 

「貴方なら大丈夫」

「.....」

「一心ちゃんに見せてやりなさいな。貴方の成長」

「...はい」

 

幽々子はゆっくりと妖夢を離すと、彼女から不安の表情は消えていた。

そして立ち上がり、一礼してから部屋を出る。

 

「行って参ります」

 

妖夢はそう呟き、白玉楼の外へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢は楼観剣と白楼剣を持ち、白玉楼の門を開ける。

するとそこには、空を見つめる一心の姿があった。

 

「魂魄よ。迷いは晴れたか」

「はい」

「...よき顔じゃ。では参れ」

 

一心はゆっくりと不死斬りを抜く。

妖夢も楼観剣を鞘から抜き、一心へ刃を向ける。

 

「参ります」

 

妖夢は一心に向かって走り出す。

そして一回転しながら、リーチの長い楼観剣で彼を攻撃する。

一心は難なく弾く。

しかし妖夢は弾かれても攻撃を止めない。

彼女はさらに攻撃するも、二回目の攻撃は強く弾かれる。

そして一心は弾いたと同時に反撃してきた。

左下から右上に斬り、妖夢に防御されると右上から左下に斬り下ろす。

 

「くっ!」

 

一心はこの反撃に下り鯉を使っている。

しかし妖夢は下り鯉を、同じく葦名流『流水』で衝撃を減らす。

 

すると一心は不死斬りを両手で持つと、妖夢に横に払う攻撃をすると同時に彼女の後ろへとすり抜ける。

 

そして大きく不死斬りを振り上げた。

 

「!」

 

葦名一心の一文字。

妖夢は避けることもできたが、この一撃は受けることを決意。

 

「ぬぅん!!」

 

一心が力強く振り下ろすが、妖夢は渾身の一撃で彼の一文字を弾き返した。

さらにそのまま攻撃し、一心の腹を斬りつける。

 

「ぐっ!」

 

初めて一心に傷をつけた。

これならいける。

妖夢は楼観剣を振り上げ、強く踏み込むと同時に刀を振り下ろした。

 

「はぁ!!」

「むん!」

 

一心は妖夢の一文字を防ぐも、彼女はもう一度刀を叩き込んできた。

葦名一文字・二連である。

 

さらにこの技は腕の衝撃によるダメージを減らすという効果もあるため、先程の一心の一文字による衝撃は緩和された。

 

すると一心は肘で妖夢の腹を突き、さらに突きによる攻撃を仕掛ける。

 

妖夢は吹き飛ばされるも、楼観剣で彼の突きを弾いた。

 

彼女は直ぐ様連続で攻撃して来ると思っていたが、一心は距離をとり不死斬りを鞘にしまう。

 

「くっ!」

 

妖夢は白楼剣を抜いて、二刀流になる。

一心の不死斬りが鞘から抜かれると、彼女は凄まじい速さで十字に斬られた。

 

何とか防御に成功するも、十文字の衝撃は妖夢の腕にかなりのダメージを与えていた。

 

(流水をしてもまだ痺れが消えない...わかってはいたが、稽古の時は手加減してくれたんだ。これがこの人の本気..!)

 

妖夢は一心と距離をとると、深呼吸をしてゆっくりと喋り始めた。

 

「一心さん」

「.....」

一心は答えない。

勝負に集中しろとでも言いたい表情だ。

しかし妖夢は話をやめない。

 

「私はこの勝負...葦名流皆伝の最終試験とは思っていません」

「む...」

「貴方に負けた時からずっと考えていました。いつかやり返してやると!」

 

妖夢は二刀を構える。

 

「葦名流をも取り込んだ今の私で!貴方を破る!」

「!...カカカッ!面白い!」

 

一心は刀を握り直す。

「よかろう!ならば斬って見せよ!魂魄妖夢!」

「参ります!葦名一心!」

 

妖夢は楼観剣を顔の前に出し、祈るように目をつぶる。

 

「魂魄『幽明求聞持聡明の法』!」

 

妖夢の後ろに漂う人魂が、妖夢そっくりに変形しはじめる。

 

「カカカッ...また不思議な技を」

 

妖夢は自分に変化した人魂と共に一心を攻める。

人魂は白楼剣を手に、素早い攻撃で彼を攻める。

 

「ぬぅ...!」

 

しかし一心はその全てを弾き、人魂の隙を突こうと構える。

しかしその瞬間人魂は元に戻り、その後ろから妖夢が葦名十文字を放つ。

 

一心は防ぎきれず、十文字を受けてしまった。

 

「ぐっ.....」

 

しかし一心は倒れず、一文字を放つ。

妖夢は一文字を避けて、彼の背中を攻撃。

 

「やるではないか」

 

一心は後退する。

初めて彼が退いた。

 

妖夢はこれを逃さず、直ぐ様居合いの構えをとる。

 

「現世斬!」

 

妖夢は突進し、間合いをとらせない。

さらに居合いからの一撃を加え、休みをさせぬよう攻撃。

 

「ぬぅ...」

「まだまだぁ!」

 

妖夢はすぐに一心の方を向き、楼観剣を大きく振り上げる。

 

「断命剣!『冥想斬・一文字』!」

 

この技は本来なら楼観剣に気を込め、目の前の敵を気で形成された刃で斬るものだったが、葦名流の踏み込みを加えることで威力、リーチを格段に増強させ敵が避けられないようになっていた

 

一心も巨大な気で構成された楼観剣を避ける事はできないと踏み、両手で不死斬りを握り全力で受け止める。

 

あまりの強さと衝撃に、彼でさえ片ひざを地面につける。

 

「ぬぁぁぁ!!」

 

一心は妖夢の攻撃を受け流すが、地面に妖夢の刀が触れた瞬間地震と疑うほどの衝撃が辺りの地面を走る。

 

しかし一心は好機とみて、走って妖夢に接近する。

彼は不死斬りで攻撃するが、妖夢の白楼剣によって阻止される。

 

しかも攻撃が弾かれた瞬間、一心の周りに残像が出来るほどの速度で走り出す。

一心の目には、妖夢が6~7人に増えたように見えている。

 

しかもその残像全てが刀から手を離さず鞘にしまって移動している。

 

そして動きが止まった瞬間、残像全てが一心に襲いかかり葦名十文字を放った。

 

流石の一心も防ぎきれず、あまりの衝撃に空へ飛ばされる。

そして地面に体がつく瞬間巨大な桜の花の幻影と共に、妖夢が上から兜割りを仕掛けた。

 

「空観剣『六根清浄斬』!」

 

楼観剣が一心の兜に当たり、彼が地面に叩きつけられた瞬間大量の煙が舞う。

 

妖夢は煙から出て、刀を構える。

 

 

 

 

「はぁ....はぁ....」

 

流石の妖夢も、残像に加え全力の葦名十文字を使うのは骨が折れるらしい。

 

煙が晴れ始めると、そこには兜を脱ぎ捨てた一心が立っていた。

 

「.....流石じゃ」

 

兜では防ぎきれなかったのか、額からは血が溢れ一心の顔の半分は血で濡れている。

 

「さぁて...ここまで鍛え上げた我が弟子に...褒美をくれてやらんとな」

「まだ...立つんですか」

 

妖夢は楼観剣を構える。

すると一心は不死斬りを鞘にしまった。

 

「刀に気を込め刃にする...見事じゃ。葦名...いや日本で出来るものはいなかろう」

 

一心の不死斬りに、黒と白の気が放出しはじめる。

 

「しかし、その技...飲み込んでやろう」

 

一心は不死斬りを抜くと、その刀身には巨大なドス黒い気を纏っていた。

 

「な...な...」

 

一心は不死斬りを大きく振り上げる。

その姿は妖夢が先程一心にくらわせた断命剣『冥想斬』に酷似していた。

しかし気も刃の大きさも妖夢とは比較にならない。

受けるのは勿論避ける事すら無理だ。

 

 

「そ、そんなのあり...?」

「むぅぅん!!」

 

一心は振り下ろすと、当たり一面に大きな風と衝撃が走る。

黒い気は全てを斬り裂き、地面を抉った。

 

妖夢のすぐ横には巨大で太い一本の長い線が刻まれている。

 

一心はわざと外したのだ。

 

「ふぅむ...中々じゃ」

「ず、ズルいです!私の技を真似るなんて!」

「カカカッ!強くなる為ならわしはあらゆる技を飲み込む...」

「け、けどぉ!これ葦名流の皆伝試験でしたよね!?」

「これを試験ではないと決めたのはお主じゃ」

「んぐ...」

「...魂魄妖夢よ」

 

一心は不死斬りを鞘にしまい、妖夢の前に立つ。

そして彼女の頭を撫でた。

 

「皆伝じゃ!お主は葦名流を全て使いこなしておったぞ!それに加えあの見事な技の数々!素晴らしき女よ!」

「.....」

「わしはお主の技に惹かれ、思わず飲み込んでしまった...許せ」

「...まぁ...いいですけど」

「カカカカカカッ!死んだ後でこれ程の剣士に巡り会えるとは...わしは嬉しいぞ!だが...まだまだわしを斬るには鍛練が足りん」

「むぅ...く、悔しい」

「しかし...いずれは...」

「え?」

 

一心は妖夢の頭をくしゃくしゃと回し、まるで娘を可愛がるように喜んでいる。

対して妖夢は負けたからか真似されたからか苛立っているが、彼の喜びの表情につられたのかどこか嬉しそうだった。

 

「さぁ、西行寺に伝えに行こうではないか」

「は、はい」

 

二人は白玉楼へと入っていく。

 




葦名流を知った妖夢と一心の真剣勝負が書きたかっただけですはい。
いつか槍もった一心とも戦わせますので、ゆっくりとお待ち下さいな。

老衰一心も登場させたい。どっちかというと剣聖ってこっちだし
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