冥界に剣聖あり   作:ポン酢おじや

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八雲

「まずは...酒じゃあ!!」

 

一心と妖夢が帰ってくるや否や、広い客間にて三人の小さな宴会が行われた。

妖夢の葦名流皆伝のお祝いである。

 

「お疲れ様妖夢」

「ありがとうございます幽々子様」

「どうしたの?浮かない顔して」

「えーっと...何と言いますか」

 

葦名流皆伝したが、勝負には負けた。

二度も負けるなんて、とても主人には言えなかった。

 

そんな妖夢とは裏腹に、幽々子は全てお見通しである。

幽々子は妖夢の耳に近づき、こっそりと話す。

 

「一心ちゃんに負けちゃった?」

「ッ!?」

「大丈夫よ妖夢。またいつかやり返せばいいじゃない」

「...幽々子様をお守りする立場としては...」

「もう妖夢、そんな難しく考えないの。今はお祝いしましょ、ね?」

「うう...」

 

妖夢は目の前に並べられた料理をみる。

するとあることに気がついた。

 

「そういえばこの料理はどうしたんです?」

「藍ちゃんが作ってくれたわ」

「藍さんが?」

「今も台所にいるんじゃないかしら」

「わ、私手伝ってきます」

「ちょっと、宴会の主役がどこへ行くのよ」

「でも藍さんに任せっきりも申し訳ないですし...それに」

「それに?」

妖夢は幽々子の前に置かれた料理の皿をみる。

大皿7~8枚が置かれており、全て綺麗に平らげられていた。

この皿は一心と妖夢が来る前に既に置いてあったものだ。

 

実は幽々子はかなりの大食いである。

 

幽々子が食事をするときは、いつも台所が大慌てだ。

恐らく今回も台所にいる藍は焦っているだろう。

 

「では行ってきます」

「あ、ちょっと...もう」

 

妖夢は部屋を出て台所へと向かってしまった。

 

「あの子ったら」

「カカカッ!よいではないか...真面目な魂魄らしい」

「もう、そもそも免許皆伝の試験なのに何で貴方が勝ってるのよ」

「わしもあれは葦名流を確かめる試合と思うてたが...カカカッ!どうも血が滾ってのう」

「まったく...」

「しかし...葦名流を見事に会得し使いこなしていた...あの娘はこれからも強くなるぞ」

「当然でしょ...あの子だもの」

「カカカッ...」

 

すると襖が開き、一心の知らない女性が入ってくる。

 

「はーい、こんにちは幽々子」

「あら紫。貴方も来たの?」

「妖夢ちゃんの葦名流皆伝のお祝いにね...って早速主役いないじゃない」

 

その女性は金色の髪に毛先をいくつか束にして布で結んでいる。

紫色の見慣れない服を着ており、幽々子とはまた違った不気味さと妖艶な雰囲気を出していた。

 

「誰じゃ」

「ああ、これは失礼。私は八雲紫...お見知りおきを、葦名一心さん」

「ほぉ、わしを知っておるか」

「かの剣聖にお会いできるなんて光栄ですわ。あの動乱の時代の、しかもあの怪物だらけの葦名を支配していた人ですもの」

「あの時代...?」

「あぁ、気にしなくてもいいですわ。説明が面倒になるだけですし」

ヘラヘラと笑いながら疑問の答えを隠す彼女に、一心はほんの少し不愉快になる。

しかし酒を飲んでその不愉快な気持ちを紛れさせた。

 

「それにしても...何で死んだ貴方が冥界にいるのかしら」

「わしにもわからぬ...仏に見放されたか」

「三途の川渡ったの?」

「カカカッ!記憶にないな!」

「ならなんで閻魔の裁判受けてない人がこんなところに」

「その裁判とやらに受ける価値無しと見なされたか...あるいは人ではないからか...」

「竜胤...それに関わったからかしら」

「!ほぉ...その名をよく知っておるな」

「これでも賢者と呼ばれる私よ?知ってて当然」

 

一心はまさかこの死人が募る冥界で、竜胤の名を聞くことになるとは思わなかった。

すると紫は、一心の顔をみて呟く。

 

「...貴方は聞きたくない?貴方が死んだ後の事」

 

一心はその言葉にピクリと反応し、酒をもった手が止まる。

 

「.....」

「気になるんじゃない?私なら教えてあげられるわよ」

「...いらん」

「...そう?」

「.....わしは敗れた。知る権利もない」

一心は酒を飲み干すと、溜め息をつく。

 

「しかし...わしはこれから何をすればいいのか」

「そうねぇ...これからも妖夢ちゃんの稽古続ければ?」

「カカカッ...わしが教えることはもうない。後は魂魄次第よ」

「ならだらっとすればいいじゃない。戦国時代じゃそんな時間もなかったでしょ?」

「カカカッ!そうか、それもいい」

「...とか言いながら納得いかない顔ね」

 

再びピクリと反応する一心。

すると彼は顔を隠すように、お酒を一気に飲む。

 

「.....」

「なら私から退屈しないプレゼントをあげましょうか」

「ぷれぜんと?なんじゃそれは」

 

紫の言葉に幽々子が反応する。

 

「あら紫、幻想郷の住人でもない人にプレゼントだなんてどういう風の吹き回しかしら」

「友達の従者を強くしてくれたお礼よ」

「ふーん...本当かしら」

「どうせ彼にたいした時間はないわ。あの黒白閻魔が裁判を受けていない彼を放って置くわけないし...それにあの子の修行に丁度いいかも」

紫は一心の顔に近づき、不気味な笑みを浮かべながら話す。

 

「近いうち貴方に数人のお客さんを送るわ。その子達とここ冥界で存分に戦いなさいな」

「ほぉ...」

「ちなみに、どれも妖夢ちゃん以上の強さ...貴方に勝てるかしらね」

「...カカカカカカッ!このわしに『勝てるか』か...面白い...八雲とやら」

「何かしら」

「受けて立とうではないか。その客とやらを全て食ろうてくれる」

「あらあらあら...それは楽しみねぇ」

一心はこれ以上ないほどの笑みを浮かべた。

魂魄以上の強人と戦える。

まだ強くなれる。

そう思うと一心の心は、喜びと期待に埋め尽くされた。

 

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