深夜廻戦   作:フールル

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 ドーモ、ドクシャ=サン、フールルです。
 久々の更新! 
 たくさんの感想、お気に入り登録、評価付けありがとうございます。
 デイリーランキングに上がるとは思ってもいませんでしたので。
 
 今回はほぼ戦闘オンリー。
 日を跨いで継ぎ足し継ぎ足し書いたので、その時の自分のテンションを思い返すのが難しいの、なんの。
 しっかりとした描写書ける人は凄いなー、爪の垢を煎じて飲んだら描写と間の取り方上達しねーかなー。

 ってことで、どうぞ。


十夜目

《ナニをした!?》

 

 狼狽える呪霊の言葉が直接脳裏に響く。

 

 ま、そうなるよな。

 

 胸中に呟きながらも、真希は暇なく游雲を振るう。

 打ち据える胴体。

 先ほどまでビクともしなかった手応えが、今はある。

 

 腕一本持って行って、コレか。

 素面なら勝てる見込みは薄かったな。

 ハルが腕を一本切り落とし、特級呪具を持ってしてもなお花御の身体は硬かった。

 切り落とされた腕もすぐに生え直され、左腕を生やした花御が三節棍による猛攻を捌く。

 依然として変わらない戦況。

 真希と花御が白兵戦を繰り広げ、真希の後ろでハルが隙を伺う。

 傷を与えればたちまちに回復される。されど、呪霊も術式が使えない故に攻めあぐねていた。

 一見拮抗しているように見えるが、そうではない。

 花御の精神(メンタル)は、たった一本腕を負傷しただけで追い詰められていた。

 腕、一本。

 反転術式を用いずとも簡単に肉体の損傷を回復することが出来る呪霊にとって、軽傷にも取れない筈の傷だった。

 花御は自身の硬さに自負がある。

 事実、花御の硬さは特級呪霊でもトップクラスであり、真希が游雲を用いてもなお痛打を与えるには一歩足り得ない。

 あの瞬間、真希と入れ替わるように飛び込み、腕目掛けて鋏を向けたハルに対してもなんら脅威とは思っていなかった。

 強い呪力を秘めていようとも、ちょっとやそっとの術式効果を付与されていようとも大した傷にはならない。

 此処にいるその他大勢と変わらない。そう油断した。

 向けられた鋏は予想とは反し肉体を切りつけるのではなく、花御の腕の前で空を切った。

 そして──腕が落ちた。()()()()()()()()

 術式による切断ではない。

 腕が切られ、落ちることが至極当然のことのように現実に起きたのだ。

 

 自身の知り得ない理外の理。

 この場でもっとも危険視すべきは今対峙している人間ではなく、鋏を持った少女。

 隙を見計らって殺さなければ。

 

結の縁

 

 向けられた殺意をハルから真希へと結ぶ。

 呪霊からの注意が薄れたのをハルは見取った。

 縁を結び直せるのは頭と四肢が付いたモノ。それは()()()()()()()()

 呪霊がハルを害そうとするなら、まず真希を倒さなければならなかった。

 もっとも、それが出来ればの話であったが。

 

 打って捌かれ、躱して、回復され、一進一退の白兵戦が続く最中、真希は目の前の呪霊が頭部の攻撃に対してのみ、やけに防御の手が厚いことに気づいた。

 思い返せば、一本目の腕を切り落とした際も頭部への打撃によって出来た隙によるものである。

 ヒト型の形を取り、頭部が弱点。如何にも分かり易い。

 ハルが後ろに居なければ、なんとかその守りを掻い潜る必要があったのだろう。

 だが、ハルが居るなら状況は大きく変わる。

 頭部へ攻撃を振るう。弱点を守るように入る腕。

 

 引っ掛かった! 

 

 内心笑みを零し、振るう三節棍を頭部から脚部へ向ける。

 フェイントだ。

 がら空きの脚部に打撃を打ち込めば、呪霊のバランスが崩れる。

 片膝を地につけ体勢を崩した呪霊。頭部への守りを捨てないのは弱点を晒さない為か。

 呪霊の思惑を外す様に真希は後退する。ここで無理に弱点に向かって攻撃する必要はない。

 すぐには攻撃に転じられない状況でハルがいるからだ。

 

裁呪・離縁式

 

 また腕が一本、地に落ちた。

 自身が大きな勘違いをしていたことに花御は気づいた。

 

 落とされた腕を見て、再び呪力が零れ落ちるのを花御は知覚した。

 否、落とされたのは呪力ではない。

 もっと自身にとって大事なモノ。

 世界との繋がり、自身を繋ぎとめる楔。それを切っているとでも言うのか。

 

 呪霊の成り立ちは今更説明するものではない。

 呪霊として形をなした後もなお人々との負の感情の受け皿としての繋がりを、世界に存在するための繋がりを切られたら、呪霊はどうなるのだろうか。

 

 花御の背筋に冷たいものが走る。

 ()()は相手をしてはならない。

 自身に向けられた凶刃。世界から間引かれる弱者(ヒト)と間引く強者(呪霊)

 自身の中にあった価値観が引っ繰り返る。

 逃げなくては。独りで()()を相手にすれば祓われる。

 

 腕を落とされるや否や呪霊は反転し、逃亡を図った。

 位置の交代を行っていた真希達は一歩、出遅れてしまう。

 

 流石に気づくか。

 

 逃げる呪霊の背中を追う真希は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 あのまま戦い続ければジリ貧に陥っていたのは呪霊であり、術式を使えない以上戦況をひっくり返すことは難しかった。

 環境は逃亡する呪霊に味方をしている。

 遮蔽物が多く、視線を遮りやすい森では、術式の攻撃ならともかく術式を用いて逃げに徹されると流石のハルでも完全な無効化は厳しい。

 五条の話によると相手は徒党を組んだ特級呪霊の一派。

 この襲撃も組織的な意味合いを含んだ威力偵察の可能性がある。

 仲間との合流か。術式による戦線離脱か。

 どちらにせよ、ここで逃がすわけにはいかない。

 

「っち」

 

 呪霊の術式によって具現化した木の幹が真希に襲い掛かる。

 圧倒的な物量。

 正面から受ければ叩き潰される。

 横にステップを刻み、躱す。

 チラリと後方を確認すれば追いかけているハルも無事躱していた。

 先の罠まみれの森を振り返るとこのまま距離を取られたまま、追いかけるのは危険だ。

 木の幹ならともかく、爆発する木の実などを投げ込まれては洒落にならない。

 なんとか相手の手を妨害出来れば良かったのだが……真希に中遠距離攻撃に適した手札はない。

 

 投擲用の呪具でも持ってくるべきだったか? そもそもこんな状況なんて読めねぇよ。

 

 苦い顔をした真希だったが、天が真希に味方をした。

 呪霊の突き進んだ先、偶然にもそこは視界が開けた川縁でそこに鉢合わせる様に二人の男が呪霊を挟み込むように藪から飛び出してきた。

 東堂と虎杖である。

 足を止めざる得ない呪霊。

 追いつく真希とハル。

 

「良からぬ呪力に向かっていたがまさか(マイフレンド)から逃げていたと」

「アレ、ハル先輩なんですか?」

 

 したり顔で頷く東堂。

 ミーティングルームで抱いた印象と違う、と呪霊を挟んで見えるハルに困惑する虎杖。

 無害で小動物チックな先輩がまさか化物みたいな禍々しい呪力を纏うとは思いもしなかったのだろう。

 その言葉に二人の上級生は共感を覚えるが、逐一説明をしている場合ではない。

 目の前の呪霊を祓ってからゆっくり説明すれば良い。

 三人が三人とも打ち合わせもなく、しかし妙に息のあったタイミングで呪霊に飛び掛かる。

 挟み込まれて逃げることも出来ずに応戦する呪霊。

 ハルを警戒してか術式を用いることが出来ず、そこを数で叩かれては一溜まりもない。

 東堂と虎杖の呼吸が妙に合うことを察知した真希は、自分の動きが彼らのリズムを乱しかねないと二人の補助に回るように立ち回りを替える。

 

「頭部が弱点だッ!」

「「応ッ!!」」

 

 ついに捌ききれず、両腕を剥がされた呪霊。

 大きく露わになった隙、東堂の呪力が乗った右拳が炸裂する。

 後ろに大きく仰け反る呪霊。

 此処だな。

 真希は後退する。東堂もタイミングが分かっていたのか後退する。

 入れ替わるように飛び込むハル。

 虎杖は──仰け反る呪霊に一撃ぶちかまそうと踏み込んで、腕を引いていた。

 かなり集中している様子で、後方に下がった東堂と真希に気づいていない。

 悠仁はハルの術式を知らない。

 焦りの表情を見せる真希の視線の先で虎杖の拳が呪霊の鳩尾に打ち込まれた。

 瞬く黒い呪力の閃光。

 呪霊の下半身が吹き飛び、衝撃に水面すら大きく波を立てる。

 

不義游義

 

 余韻を開けずと虎杖の姿が消える。

 ドボンと水しぶきを上げて落ちる呪霊。

 その呪霊の側でハルは足を止めた。

 

「もう……腕はいらないかな」

 

 代わりに首を貰うね。

 子供の腕ぐらいなら落とせそうな赤い刀身が呪霊の首へと差し込まれる。

 

裁呪・離縁式

 

 金属を擦り合わせる鋭い音が辺りに響き渡った。

 

 

 空気に掻き消える呪霊の姿。

 終わったか。

 その様子に真希は大きく息を吐く。

 虎杖と東堂の方に目を向けると嬉しそうにガッツポーズを取りながら拳を合わせている。

 体育会系溢れるその光景に真希は思わず笑みを零した。

 数時間前まで初対面だったとはとても思えない。

 

「東堂、助かった。下手したら悠仁の腕が巻き込まれかねなかった」

「え゛ッ!?」

 

 そんなに不味い状態だったの。

 真希の言葉に面を食らった表情を浮かべる虎杖。

 そんな虎杖を横目に真希は自身の疑問を優先した。

 会場入りした東堂は呪具なんて持っていなかった筈だ。

 ナニと悠仁の位置を変えたんだ。

 と真希が尋ねればしたり顔で東堂はポケットから幾つかの碁石を取り出した。

 

「呪具にもならんが此奴に俺の呪力を込めている。仮にも鋏を持った(マイフレンド)と戦うのだ、準備を怠るなんてことを俺はせん」

 

 そういえば、此奴ハルと戦うつもりだったな。

 呪霊騒ぎでそのことが真希の記憶から抜け落ちていた。

 集団戦どころではないこの状況下で東堂も何処か満たされている様子から、徒にハルを煽ったりはしないだろう。

 真希は東堂の様子からそう結論付けた。

 ところで、ハルはどうしたのか。

 こういう機会だと喜びを分かち合おうと会話に参加してくる筈だ。

 チラリと真希がハルを見れば、ハルはまだ川の真ん中で一人突っ立ったままである。

 うん? 

 違和感を覚える。

 呪霊を祓ったはずなのに、何故ハルは鋏を持ったままなのだろうか。

 不意に嫌な予感が脳裏に走った。

 ハルの視線が()()()()()()()()()()

 

「悠仁! 避けろ!」

 

 陽炎の様にゆらゆらと空気に掻き消えるハルの姿。

 真希が声を上げた瞬間、虎杖の背後に姿を現したハルが鋏を突き出した。




 誤字、脱字報告ありがとうございます。以下敬称略。
 赤頭巾、ショーンズ、甲乙、etymology、小麦粉20000、ぽんぽぽ。

 本文では説明しきれたか怪しい離縁式。
 文章のテンポ考えると……難しいですねっ!

 そんなわけでチラッと紹介します。
 本作では呪霊の成り立ちについては原作の設定のままですが、その後の在り方についても少し独自解釈を入れます。

 簡単に説明すると、呪霊として成った後も人々の呪(負の感情)との結びつきは依然として繋がった状態で、それが現世に存在できる楔となっている。です。
 例えに出すならアンビリカルケーブルですかね。供給元がヒト。供給先が呪霊。

 裁呪・離縁式はその繋がりを断ち切る術式です。
 断ち切られた呪霊は繋がりが薄くなることにより存在の格が堕ち、弱体化は避けられないという具合です。
 花御が呪力が切り落とされたと誤認したのもまさか存在が削り切られているとは思ってもいなかった為です。二回目で流石に気づきましたが。

 次に何故、腕が落ちたのか。
 これに関しては縁切り要素ですね。
 手を切るという行為は縁切りの神にとって大きな意味合いを持ちます。
 存在の成り立ちがヒトとは違う呪霊は、繋がりを手に結われた状態で縁を切られるとその切られた結果によって肉体の方に過程がフィードバックするというモノとなります。
 縁(繋がり)が切られたから手が落ちる。
 手が切り落とされたから縁(繋がり)が切れる。

 その二つの中からハルは呪霊に対してどっちが楽かを選んで、存在を削り落とします。

 割と無茶苦茶?
 うーん!! ごめんなさい!
 山の神戦の糸要素を呪術廻戦風に解釈すると……説明下手かなぁ。

 ちなみに縁(繋がり)は縁に類する力を持つものでしか見ることが出来ないので、やられた側からしたらナニが起こったかわからない理不尽の極みです。

 で、最後。
 ちょっと考えてくださいな。

 自身の境内の周りのお化けを容赦なく切り殺して、掃除する綺麗好きな神様。
 鋏を返そうとしたハルちゃんに対しての挨拶が切り掛かりと物騒な神様。
(賽銭入れたのに……)。
 そんな神様が魂に宿儺を飼った虎杖をスルーしますか?
 もしかしたら、宿儺の方からハルに向けて興味を持って、悪縁が成ってしまったかもしれません。
 どの道、自身のお気に入りの巫女の側に地雷を抱えた人がいたら……。
 あなたがコトワリ様だったらどうしますかね。

 ってことで、まだ一見落着にはならない交流会編!
 あんだけ、前振りしたんだ暴走くらいしなきゃ!
 ってことで、VSハル(内面コトワリ様) 始動!
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