アンケートの集計を待たずに書き上げたよ。
ってことで乙骨編開幕です。
ここにあったじゅじゅさんぽネタは後書きに移動しました。
一夜目 (序)
初めてあなたを目にした時私は怖いとか危ないとかそういうのじゃなくて……ただ、羨ましい。って思っちゃったんだ。
「悪い憂太。あたしら悟に呼ばれてるから昼飯、遅れるわ」
「え?」
校内に呼び鈴が響き、午前の授業が終了する。
昼飯時、席を立った乙骨に真希が声を掛けた。
真希の横にはパンダと狗巻。
その様子から呼ばれたのは他の二人も含まれているのが伺える。
「うん、分かった。先に食堂に行って待ってるね」
「おう」
乙骨に背を向けながらひらひらと手を振りながら教室を後にする三人を見送った後に、乙骨はチラリと自分の後方の座席に目を向けた。
一人の少女が席に座ったまま此方を見ている。
唾を飲みこみ、乙骨は精一杯の笑みを浮かべて少女に話しかけた。
「ハルちゃん、食堂に行こう」
「……うん」
ちゃんと自分は笑みを浮かべれただろうか。
一人分距離を空けて後ろを歩く少女を確認しながら乙骨は静かに息を吐いた。
友達の友達。
乙骨とハルの関係を示す言葉があるとしたらこの様に表現されるのかもしれない。
東京都立呪術専門学校に編入してから短くない時が過ぎた。
幼い時から里香に呪われ、マトモな人間関係を築く術を学び損なった乙骨は有体で言えばコミュ障であった。
積極性に欠け受動的に、そして人との関係を築くことを恐れていたのを早々に治すことは無理な話である。
だからこそ、同級生である三人が自ら近づいてきて友好な関係を築けたことは僥倖であった。
食堂のテーブルに向かい合う様に座ったハルという少女について乙骨はどう接すれば良いか、分からない。
呪術を生業とした家の出ではないという共通点はあるものの、自分から異性の同級生と友好な関係を築くことは編入して多少マシになったとはいえ、まだハードルが高く感じられた。
なんともいえない沈黙が二人の間に走る。
ただ黙々と箸を進める。
友達である三人が居たら、日常会話などで盛り上がるのだが……それを今は望めない。
話題。……話題。
みそ汁を啜り、ご飯を口に入れながら乙骨の頭はぐるぐると回転するが、ハルの興味を引くような話が浮かんでこない。
真希さん、狗巻君、パンダ君早く来て!
打つ手なし。
友達に縋ることを選んだ乙骨は牛歩の様に箸を進める速度を遅くして、ただただ時が過ぎるのを待った。
「通夜かよ」
「しゃけ」
「いや……流石にアレはないかな」
二人に見つからないように物陰から覗く三人は同じ感想を抱いた。
五条に呼ばれているなんて嘘をついてまで、乙骨とハルを二人きりにしたのだ。
それは何時までも距離を縮めない二人を慮っての行動だったのだが……上手くいかなかった。
「どうすれば良いんだ? 尻蹴っ飛ばすか?」
「荒療治でなんとかなる話なのかなって感じだよね。あのハルが仲良くしないなんて」
「しゃけ」
コミュ障の乙骨に反し、もう一方のハルは本来コミュ力の塊みたいな存在であり、誰とでも友達になれるような優しい少女であった。
乙骨の編入前にそれを知り、仲を深めた三人が今のハルの行動を不可解に思うのは避けられないことだ。
問題は自分達が考えているよりも根深いのか。
同級生に”お前ら仲良くしろよ”と言うのは子供扱い過ぎるのではないだろうか。
頭を捻る三人の後ろに一人の人影が迫る。
「あっれー? 皆、なに面白い事してるの?」
「げ」
「うわっ」
「梅」
このろくでなし教師が今の二人を見ればいい玩具にされる予感がしたからだ。
僕にも見せて、見せてー。と、悪乗りする五条の姿に真希は頭を抱えた。
「なるほど……事情は概ね把握した。ここは僕に任せてくれ、三人とも」
「……余計なことするなよ」
「しゃけ」
呪術高専の学長が頭を悩ませる制御の利かない自由人。
愉快犯の五条を止めようとすれば無駄な労力を使うことになる。
それを知っている三人は成り行きに任せるしかないと諦めた。
「呪本……ですか?」
「そ、呪本」
首を傾げるハルに五条は頷く。
昼休憩が終わり、午後の授業が始まろうとした時、ハルは五条に呼ばれて談話室で話を聞いていた。──何故この場にいるのだろうと首を傾げる乙骨と共に。
「事の起こりを一から十まで説明するのは省くよー。呪霊被害の原因と思われる本をハルちゃんには回収してきて欲しいんだ」
「五条先生、私が担当する仕事を乙骨君と同伴させるつもりですか?」
ハルの言葉に乙骨は内心傷ついた。
嫌われてはいないとは思っていたのは自分の思い違いであったのか。
実習の同伴を嫌がられたことは初めてであった。
……実際は単なる乙骨の勘違いであったが、ソレを分かるには乙骨はハルの事を知らな過ぎた。
普段、ハルが担当する仕事は一級クラス以上。
まだまだ力不足な乙骨を思ってのハルの優しさである。
「うん、今回の規模は高く見積もっても四級以下。呪霊被害も
「え?」
その程度の規模なら呪術師が出なくても補助監督で済む話なのではないだろうか。
疑問に思ったハルがそれを口に出せば、五条は苦笑しながら頭を掻いた。
「やー、実はちょっとめんどくさい状態みたいでね。失せモノ探しのプロであるハルちゃんに頼んでみようではないか! ってのが僕がこの話を持ってきた経緯だよ」
「……僕の役割はなんですか」
狗巻に同伴した際は多種多様な呪術の一端を知るためであった。
なら今回はなんだろう。見学なのか、サポートなのか。
それを乙骨は五条に尋ねる。
「サポートだよ。場所は図書館、見ての通りハルちゃんは小さい。一冊の本を探すのに一人では手間取るかも知れないと思ってね」
「分かりました」
なるほど。
隣に座るハルを横目に見ながら乙骨は頷く。
傍から見てもハルは小さい。
幼いとも形容できるようなその見た目では確かに図書館で本棚を相手に探し物をするのは頼りないものだろう。――それに、左腕がない。
左腕、二の腕の半ばから下が無い理由を乙骨は知らない。
複雑な事情があったのかもしれない。それを他人が容易に踏み込んで良い領域の話なのか。
乙骨は判断出来ずにいた。
右手一本で物を運ぶのは容易な事ではない。
踏み台一つ、梯子一つだって乙骨には容易な事でもハルにとっては難しいことだろう。
これも乙骨がハルのサポートに駆り出される理由の一つなのだろう。
それじゃあ、伊地知待たせてるからよろしくねー。
スタスタと談話室を後にした五条。ハルと乙骨が取り残された。
沈黙。
先の昼食時のような空気が再び二人の間を満たす。
「あの、ハルちゃん!」
席を立ち、部屋を出ようとしたハルを乙骨は呼び止めた。
このままの関係で現場に臨むのは良いことではない。
そう分かっているからこそ、乙骨は立ち往生していた自身に喝を入れ、一歩踏み込む。
変わるんだ。今までの僕から。
生きる理由を。友達と呼べる存在を自分から作るんだ。
僕の友達が友達と呼ぶ存在を僕から手を伸ばして掴むんだ!
「精一杯サポートするから! よろしくお願いします!」
緊張が表に出たか。
右手を差し出して口に出した言葉は無様にも裏返ってしまった。
決まらなかった。頭を上げることが出来ず、自嘲的な笑みが浮かぶ。
このまま無視されて、談話室を出ていかれたら自分は立ち直れない。
乙骨の心中に涙が一滴落ちた。
「うん、よろしくね乙骨君」
右手を包む暖かな感触。
頭を上げた乙骨が目にしたのはふんわりと柔らかかく微笑んで握手するハルの姿であった。
涙の滴が頬を伝う。
「え!? え、大丈夫!? 乙骨君!」
唐突に泣いた自分に慌てふためくハルの姿が変に可笑しくて、少しだけ笑いながらも乙骨はほんの少しの間だけこの感傷に浸っていたかった。
作者、コミュ障なのでとっても書き易い。
ああ、お伝えし忘れていますがこの章8割オリジナルです。
キャラの介入の余地が少なすぎない? 呪術廻戦。
ある意味。作者のプロット力試されてますね……この作品。
アニメじゅじゅさんぽネタ
Q.好みのタイプは?
A。ハル「えーと……(しばらく考えて)、友達を、いえ、紡いだ絆を大切にする人です」
Q.移動前と違くね?
A.作者(幼気にボケるのはここのハルっぽくないと仕事中ずっと思い悩んでいました(馬鹿))
ハルちゃんは見た目は子供だけど精神は年相応に性成熟してるんだよ!!!
一種のギャップですね。
あと、派生キャラに変なボケと属性を付けたのが居た堪れなくなったのもあります。ごめんね、ハルちゃん。
ここら辺は独自設定の後付けですけど、作者の願望でもあります。
幼くして過酷な運命を辿った彼女が将来幸せに結ばれることを祈ってます。
つまらないことですが、活動報告にも載せましたがもう一個アンケートやってます。
作者としては夜廻シリーズや呪術廻戦への愛が溢れて考察やチャット構文を送ってくる方は嫌いというよりもむしろ大好きだし、尊敬までしているんだけどね。
(人がモノを好きになって熱を上げているところを見るのが好きな人)
ただ、それをこの作品の感想欄に吐き出すのは場違いだよねって話です。
アンケートの結果次第では活動報告のところに場所を設けますが、まぁ……そんなに胸高まって誰かに聞いて欲しいなら、メッセージ送ってきても良いのよ?
(無論礼儀礼節とリテラシーを踏まえてくださいね)。
返信できるかどうかはさておき。な話になりますが。
それでは皆さんに僥倖があらんことを願って。作者でした。