深夜廻戦   作:フールル

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 はい。大変お待たせ致しました。
 書籍を読みふけり、サウナに入って水風呂に身体を沈めて、ようやく文字が降りてきました。

 大筋のプロットは決まっていたのにね。
 細部が詰められなかったんです。ってことで、稚拙ながら書き上げました。
 どうぞ。


八夜目

「ごめんなさい」

 

 親友との離別から幾数日。

 晩夏を迎えたその日にハルは心からの謝罪と共に頭を下げた。

 憔悴してボロボロになった女性に向けて。

 

「……ユイ。ユイ……」

 

 直接顔を合わせる機会は今までなかった。

 ユイ(親友)がハルを自身の家に招き入れる事はなく、それどころか避けていた。

 だから、これが初対面だ。

 それでもハルは目の前の女性の顔立ちからユイの面影を感じ取った。

 ユイが遺言に書き残したオカシクナッテしまった母親。

 その遺言を握りしめて、泣き崩れる彼女にハルは何もしてあげられなかった。

 ハルが集めたユイの遺品は彼女の涙を晴らすモノにはならなくて。

 より深く雲を黒く重くするモノ以外何にもならない。

 

「ごめんなさい、ユイを助けることが出来なくて」

 

 本当は手放したくなかった。

 既に縁切れてしまったユイとの思い出(遺品)

 だけど、両親と話し合ってハルはちゃんと納得したのだ。

 ユイを失って悲しむのはハルだけではなくて、母親である彼女もまたユイを強く想っている筈だから。

 あるべきものはあるべき場所へ。

 親友の繋がりよりも親子の繋がりの方が強く太いのだから。

 

「ごめんなさい」

 

 ああ、それでもハルとユイの母親、二人の胸を打ち付ける痛みに差などなかった。

 

 

 

 

 目の前に鎮座する赤いリボン。

 それを前にしてハルはともすれば、膝を折って崩れ落ちそうな衝撃を受けた。

 

「どうして……」

 

 答えなど返ってこない。意味も持たず何度も何度もその言葉は闇へ溶けていく。

 戸惑い。怒り。不安。様々な感情がハルの中で暴れまわって、深い深い悲しみが満ちる。

 あの日の痛みを忘れたことはなかった。

 あの日の悲しみが過るたびに眼を濡らさなかった日はなかった。

 だけど、ハルは自覚していなかったのだ。

 昔、幼い頃と称される程に積み重ねた日々は徐々にハルを痛みから、悲しみからすくい上げていた。

 治りかけのかさぶたを剥がすように、否、傷痕にナイフが突き刺された様にハルの心には傷口から溢れる血の様に悲しみが溢れて止まらない。

 

「どうして……ユイィ」

 

 赤いリボンを握りしめたハルの足元にはいくつもの水滴が跡をつける。

 キィ……と静かに木が軋む音と共にひとりでにドアが開いた。

 その音に俯いたハルが顔を上げれば、こっちにおいでと言わんばかりに誘うようにドアの向こう側から生ぬるい風がハルの頬を撫でる。

 理由を……ユイの遺品が此処にある理由を見つけないと。

 胸を打つ悲しみが晴れる事はない。それでもハルは涙を拭うと誘われるように前に足を踏み出した。

 この闇の先に何が待っていようとも理由を知らなければいけない。

 その決意は奇しくも六年前と同じだった。

 

 

この玩具の指輪をあげたのは──

「私だよ」

 

 進む。

 

この鞄の持ち主は──

「ユイだよ」

 

 前に進む。

 六年の月日をかき消す様に風化していた思い出がハルの中からわき上がる。

 それをハルは一つ、一つ噛みしめながら玩具の指輪、ウサギのリュックサックなどのユイの遺品をポーチにしまっていった。

 パンパンに膨らんだポーチにこれ以上入らなくなれば、ボロボロのユイのリュックサックに移しかえる。

 この場に置いていく《ユイとの思い出を取りこぼす》という選択をハルは取れない。

 六年前もそして今もハルにとってかけがえのない大事なモノだから。

 ユイとの思い出の品に懐古の情を抱き、暗闇の廊下を歩き、ドアの張り紙に幾度も答えながら、いずれ来るであろうソレにハルは心構えが出来ていた。

 ユイの思い出(遺品)を辿っていくのであれば行き着く先で待っているモノはハルでも予想出来る。

 それだけは六年の月日をもってしても決して風化することはない。

 ハルの心に決して癒えぬ傷を突き刺したモノ。悲しみと後悔を突き付けるモノ。

 

あなたの親友は何故死んでしまいましたか? 

「…………」

 

 いくつもの遺品と同じようにドアの横に添えられたテーブル。

 その上に置かれた一枚の手紙を見て、心構えをしていたのにも関わらずハルは俯き立ち尽くした。

 アレはユイの遺書だ。

 父親が居なくなり、母親が育児放棄(ネグレクト)して、ペットの子犬一匹が死んで、親友が夏の終わりに引っ越してしまう孤独な少女の遺書。

 離れていてもまた会える。ハルならとっくのとうに塞ぎこんでしまいそうな環境におかれていても前を向いて生きようとしていた親友の内側、表には出さなかった弱い部分。

 ハルが見つけて、救いあげられなかった親友の心の内側。

 共に過ごしたあの日々の中で立ち止まって俯いたハルの手を取って引っ張ってくれたユイの様に、ハルがユイを抱きしめて悲しみを、孤独を癒せていたら、ユイは今も生きていたのだろうか。

 何度も考えた。

 何度でも考えて、それでも終わってしまった過去を変えることは出来ないから、重い後悔だけがハルの胸の内に消えぬまま残っている。

 

「私がユイと向き合えていなかったから、ユイは死んでしまったんだ」

 

 ゆっくりと開くドアを横目にハルは手紙を手に取り、大事にポーチにしまう。

 前に進もう。

 誰がどんな理由を持ってハルに六年前の後悔を今一度深く想起させたのか。

 何故、此処にユイの遺品があるのか。

 それを聞かなければならない。

 六年の月日で成長したハルは前を見据えて歩みを進める。

 お化けに翻弄されて泣いて、逃げ回った少女は此処にはもう居ない。

 呪術師として、自分に向けられた火の粉を払う為に立ち向かう少女が其処に居た。

 

 

 身構えていたハルの予想に反して暗闇の廊下の突き当りには誰もいなかった。

 代わりに置かれていたのはハルの身長と比べてもなお高い姿見。

 鏡。

 何かと曰くが付きやすくお化けの由縁にもなりやすい物。

 かつての記憶が思い起こされて背後に目を見やるハルの視界に虚像のお化けは居ない。

 

「なんで鏡が?」

 

 首を傾げつつ、鏡の前に立ったハルは目を見開いた。

 そこにはハルの姿ではなく、乙骨の姿であったからだ。

 その傍らには少女の姿をした理香が乙骨の服を掴んで佇んでいる。

 ズキンとハルの胸の内が痛みをあげた。

 その感情をいつもハルは心の奥底で蓋をして見ないようにしていた。

 いつも。

 顔を合わせる度に。高専で姿を見る度に。

 生きている乙骨と死んでしまった里香。

 生きているハルと死んでしまったユイ。

 乙骨の傍らにはいつも里香が居て、ハルの傍らにはユイは居ない。

 乙骨君が里香ちゃんにさよならが言えるまで見守ろう。

 紛れもないハルの本心だがその片隅でモヤモヤと燻っている気持ちを六年前の感情を想起したハルではもう無視はできない。

 羨ましい。そして妬ましい。

 ハルは左手を代償に、親友との縁を切って離別を果たしたというのに、乙骨と里香の二人の在り方を見る度に自分もああなれば良かったのにと思わざるを得ない。

 さよならは言えたがハルの未練が消えてしまったわけではない。

 ずるい。ずるいよ、乙骨君。

 里香ちゃんの死を乗り越えることを避けて、呪霊の在り方を受け入れている君が。

 里香ちゃんの存在を前提に私たちとの縁を深める君が。

 私だってユイとずっと一緒に居たかったのに。

 

「……聞かないと。乙骨君に聞かないと」

 

 乙骨本人の口から里香から受けた呪いを解呪する意思が今でもあるのかをハルは聞かなければいけない。

 

 死人の存在を前提とした友情なんて間違っている。

 里香ちゃんを現世に引き留め続けているのは乙骨君の意思だ。

 それを乙骨君自身で断ち切れないなら……。

 

 姿見の傍ら、開いたドアの先に伸びる一筋の縁。

 この先に乙骨が居る。

 決意を新たにハルは前に進む。

 その善意が乙骨の望んでいないモノであったとしても、彼女はもう止まるつもりはなかった。

 

 

 

 

「どこに行けば、皆と合流出来るんだ?」

 

 暗く闇に覆われた廊下を懐中電灯で照らしながら乙骨は廃屋の中を彷徨っていた。

 その表情は僅かに焦りの色が見られる。

 無理もない。体感時間にして三〇分、当てもなく山勘を頼りに何度も枝分かれをしている廊下を進んでは、行き止まりに突き当り、道を引き返す。そのような事を六度も繰り返した。

 友人(クラスメイト)からは呪力探知の感覚(センス)が最も鈍いと称されていることを、この状態に陥ってまざまざと思い知らされた。

 乙骨が感じ取れるのはのっぺりと肌に纏わりつくような薄い呪力のみ。

 方角すらも当てにならないこの感覚に乙骨は早々に呪力を頼りに合流することを諦めた。

 だが、彷徨えど彷徨えど進んだ気にならない迷路の中でほとほとに困った乙骨は一度立ち止まって大きくため息を吐いた。

 

「こんなことだったらもっと呪力探知の感覚を鋭くするべきだったのかな……」

 

 ため息とともに独り言ちた乙骨の言葉をもし友人(クラスメイト)が聞いたら皆、苦い笑みを浮かべるに違いない事であった。

 幼い頃からお化け、呪霊の存在を認知していた彼らと比べて乙骨の半生を共に過ごした里香の存在はあまりにも大き過ぎた。

 絶対に自身に危害を加えないとはいえ特級呪霊の呪力を常に肌に感じてきた乙骨の呪力探知感覚がバグっても仕方のない事である。

 

 ──里香が居たから……いや、僕が鍛錬を怠ったからこうなったんだ。里香の所為にしようとするな。

 

 胸の内に自責の念を抱きながら乙骨は止めていた足をようやく動かし始めた。

 ギシギシと軋む古い板張りの廊下。乾いた埃の匂いが鼻の中を満たしている。

 

 ──当てもなく彷徨う僕を呪霊(あいつ)は嘲笑っているのだろうか。

 

 進展もなく廊下を歩く乙骨の思考がふと、ある一点に向けられた。

 自身を観客だと言い張った彼。

 その言葉が乙骨の頭の中にねばりついて離れない。

 

 ──今更、里香に呪われる前の元の僕に戻れたとしてどの顔して生きていけばいいんだ。

 

 里香を解呪すれば元の日常に戻れる。

 それを乙骨は拒んだ。

 あまりにも。あまりにも里香が隣に居た時間が長過ぎて、自ら社会性を閉ざして殻に閉じこもった為に乙骨の思い描く元の日常というモノの存在が希薄になっていた。

 無論、里香抜きにしても乙骨自身に呪術師としての資質があるという可能性を考えなかったという事はない。

 だけど、それを考えると必ず一つの壁にぶつかるのだ。

 呪術師の世界(この世界)には、生来持った才能の壁があまりにも大きい。

 里香という高下駄抜きにして果たして、僕は友人達と肩を並べれるような呪術師で居られるのだろうか。

 

 ──自惚れるな……僕一人の力なんてたかが知れているに決まっているじゃないか。

 

 乙骨の自己肯定力の低さがあるかも知れない未来を鼻で嗤う。

 あまりにも愚かだ。僕一人と彼らがつり合いが取れる筈もないのに。

 孤独に閉じこもった乙骨に人の温かさを教えてくれた友人達に乙骨は強過ぎる敬愛の念を向けている。

 それが自身の肯定力の低さと相まって歪んだ人物像を作り上げている事を乙骨は自覚していなかった。

 

「あれ? ……ドアだ」

 

 懐中電灯に照らされ廊下の片隅に鎮座するドアの存在が乙骨の視界に映る。

 ようやくこの空間から出られるかも知れない。

 期待に胸を躍らせドアノブに手を掛けると軋んだ音を立てながらドアは開いた。

 

「……誰かいる」

 

 ドアの向こう側、暗闇に揺れる光の点がヒトの存在を乙骨に伝えていた。

 

 

 

 

「ハルちゃん!!」

「待ってたよ、乙骨君。怪我はない?」

 

 長い廊下の先、扇状に広がった広間の中心にハルは佇んでいた。

 首にぶら下げた懐中電灯で照らしながらハルに安否を問われた乙骨は呪霊に襲われる事もなく怪我もないと返した。

 安堵の息を吐いたハルに乙骨はハルも怪我はなかったのかと聞こうとしたところで、ハルの右肩に掛かるボロボロのリュックサックの存在に気が付いた。

 色褪せたウサギの形をした小さなリュックサック。廃屋に入る際にハルが所持していた記憶はない。

 

「ハルちゃん、そのリュックサックは?」

「え? あぁ……()()()()()だよ。拾ったの」

 

 肩紐の一本が千切れていて残された一本の紐のみでハルの背中に背負われたリュックサックは、大事そうに扱うハルの行動に反して頼りなく、右腕しか使えないハルでは持ち難そうである。

 

「ハルちゃん、僕がソレ持とうか?」

「ううん、コレは私が持つから。ありがとう乙骨君。それよりも──」

 

 ──乙骨君、呪霊には襲われなかったとは言ってたけど嘘だよね。ソレ。

 

 固く冷たいハルの声に乙骨はぞわりと背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 至近距離にも関わらずハルの表情は暗く闇の中にある為、読み取れない。

 だけど、そのことを乙骨は逆に良かったと思っていた。

 吐いてしまった嘘を暴かれる事よりも友達に裏切られたと冷たい視線を向けられる方が辛い。

 それに優しいハルの事だ。

 呪術を掛けられたわけでも、呪霊側に与したわけではないことを説明すれば分かってくれる筈だ。

 それにこの実習が終わった後に五条を含めた友達(クラスメイト)の前で、自身の中でようやく形作られた思いを伝えるつもりではあった。

 里香の解呪を取り止め、呪霊を取り扱う技術を学ぶことで呪術師としての席を置こう。

 そうすれば皆と一緒に居れる。

 呪霊との会話、そして自身の考えを時間をかけて説明し終えた乙骨は、ハルからの肯定の言葉を待った。

 呪術師の経験が浅い素人の甘い考えかも知れない。

 だけど、ハルならそれを受け止めて私も説得の側に回って協力するよ。と、言ってくれるだろうと期待して。

 

「それはダメだよ」

「え?」

 

 だから、その期待をハルがにべもなく否定する言葉に乙骨は自身の耳を疑ったのだ。

 

「五条先生、真希ちゃん、狗巻君、パンダ君、みんなが賛成するとしても……私はそれを許さないよ、乙骨君」

「……どうして」

 

 あまりにも大きな衝撃に乙骨の手から懐中電灯が零れ落ちる。

 その事に目もくれず二人は互いに向き合ったまま、言葉を交わす。

 困惑に揺れる乙骨の声を気遣う事もなく、ただ冷徹にハルは話を続ける。

 

「死者の存在を前提とした未来なんて間違っているからだよ。一人の都合でこの世界に里香ちゃんを繋ぎ留め続けることを私は肯定できないから」

「だけど、里香が居なければ僕は呪術師で居られるかも怪しいんだよ。呪術師でない僕は高専を去らなければいけないのに」

 

 信じていた友達に認められなかった思い。

 揺れる思いは悲しみを生み、揺れる感情は呪力の制御を乱していく。

 乙骨の身体から呪力が──里香が発する存在の圧が増していくのをハルは肌で感じ取った。

 火薬の詰まった樽の前で火遊びをするような危うい行為。

 それでもハルは乙骨に畳みかける。

 認めるわけにはいかない。だから、自分の言葉を聞いて乙骨が考えを改めてくれることに一縷の望みを抱きながら。

 

「お別れは痛くて辛い事だよ……だけど、それでも乙骨君は里香ちゃんの分まで前を向いて歩いて行かないといけないの。それが生きている君が背負っていくことだから……分かって欲しいな」

「分かるわけないだろ!!」

 

 優しく諭す様に語り掛けるハルの言葉に乙骨の怒声が被さりかかる。

 困惑は悲しみに。悲しみは失望に。失望は怒りに。

 闇の中でうっすらと輪郭が分かるハルの顔の部分を見下ろしながら、乙骨は口角を飛ばさんとばかりにただ感情のままに言葉を紡いでいく。

 

「また一人で生きていけるなんて思えないよ。どんな顔して普通に生きていけばいいか分からないんだよ。

 なのに、なんで君は……。やっと出来た繋がりを、友達とずっと一緒に居たいと思うことは悪いこと? 

 僕は、君みたいに強くなんてない。

 友達との関係を自ら断ち切って生きていけるほど、僕は強くないんだよ」

「……乙骨君」

「友達だと思っていたのに……()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ハルちゃんに僕の、友達を失う気持ちなんて分かるわけないのに、簡単に前を向いて生きていくなんて言うなよ!!」

「……っ」

 

 言いたいことを全て言い終えた乙骨は、微動だにしないハルを一瞥することなく懐中電灯拾い上げて、ハルの脇を通り過ぎた。

 ハルの後方――広間の奥には上層へと繋がる階段が鎮座している。

 それを上れば皆と合流出来る筈だ。

 無理矢理思考を切り替えてハルの存在を無視するように歩く乙骨は、後ろのハルの変化に気づいていなかった。

 

『憂太!!』

 

 後方からの衝撃につんのめり、乙骨は堪らず板張りの床をゴロゴロと転がる。

 それが里香によるモノだと分かっていた乙骨は真希に指導のお陰で達者になった受け身で危なげなく体勢を整えた後に顔を上げて――声を失った。

 

「……ハルちゃん?」

「最初から。最初からこうしておけば良かったんだ。そうすればこんな痛い思いしなくてよかったのに

 

 ぞっとするようなおどろおどろしい呪力。

 それは探知機能が鈍いと言われた乙骨でも感じ取れる程のモノ。

 揺れる懐中電灯。突き出された右腕。そこはつい先程まで乙骨が立っていた位置だ。

 

「どうして」

「乙骨君は分かってないよ。私の気持ちなんて分かるわけないよ」

 

 懐中電灯の光を浴びてソレは鈍く光る。

 赤錆びたその色はまるで血の様に真紅に光り。

 鋭いその刃は人の腕なんて簡単に切り落とせそうなくらいに鋭利なモノ。

 ハルの手のサイズにはとても不釣り合いな大鋏は澄み渡るような金属の音を奏でながら、開閉を繰り返した。

 

「ごめんなさい。あなたの(意図)は、此処で切ります」

 




 誤字、脱字報告いつもお世話になっております。ありがとうございます。
 (以下敬称略、順不同)烏瑠、みかげ石

乙骨君の内面はもうちょっとぐちゃぐちゃしてて欲しいなって思って、原作を読んでました。
 実際、自己評価ナメクジから開始しているのに、流石少年漫画ですね。
 割とサクサクと前向き解呪な姿勢を最後まで崩していませんでした。

 まあ、だからこそフラグを立ててめんどくさく仕上げたわけですけど。

 ハルとの対比がこの0巻を描く大きな理由の柱です。
 本編であげたように面白いくらい鏡写しなんですよね。この二人。
 ハルの事情を乙骨は一ミリも知りません。
 だからこそ、盛大に地雷を踏み抜けたわけです。

 え? 作者にはヒトの心がないって?
 僕自身、ハルは穏やかな生活の中で日向の様な笑顔を浮かべる姿が好きですが、同じくらいに災禍に見舞われて、曇った表情を浮かべている姿も好きです。

 蛇足ですが、作者の中で絶対に色褪せない秀逸本は――(作品に関連しないモノをあげるのは主義に反するので、活動報告にでもあげておきます)
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