深夜廻戦   作:フールル

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あー忙し。
作者は生きてます。はい、大丈夫です。
そんなわけで最新話です、どうぞ。


三夜目

「ハルの戦闘方法があってないんじゃないかな」

「ん? どうしたパンダ、唐突に」

 

 交流会への鍛錬を初めて数日、合間を縫って入れられた休憩時間にパンダがハル改善案を切り出した。

 渦中のハルは校庭に転がされた状態で沈黙している。

 

「俺達は呪具使いのレベルを真希で慣れてるからハルが呪具に慣れたら、木刀の扱いも上手くなるって考えてたのがそもそも間違いなんじゃないかなって事」

「ハルに近接戦闘のセンスが無くても磨けば光るもんじゃないのか? フツ―」

 

 顔を突き合わせるパンダと真希があーだこーだと言葉を交わし、次第に真剣味が増していく。

 あぁ、コレはハル本人が話に参加しないと駄目な奴だ。

 議論に熱が入ることを予見した狗巻は目を回して倒れているハルを持ち上げる。

 小柄な体躯から想像できる軽さ。パワータイプではない狗巻でも容易に持ち運べた。

 

「ハルは隻腕だからさ、付け焼き刃の剣術程度だと逆に見切り易いし、待って相手の攻撃の隙間を縫って攻撃するカウンタータイプの方が良いんじゃない?」

「……一理ある。だけどそれはハルが攻撃を見切れることが前提の戦法だぞ。ハルのタフさじゃ痛み分けは無理だ」

 

 暫しの時が流れて……。

 

 

「ってことで、ハル。鍛錬方針に疑問が沸いたから好きな方を選べ。このままかそれとも待ちの姿勢で相手のスキを突く戦法か」

 

 同級生の狗巻に起こされてから暫く、目の前で繰り広げれた議論も結論が出たのか落ち着き、ほーっと眺めていたハルに真希が問いかけた。

 ちなみに狗巻の気遣いも虚しく近接戦闘に関しては門外漢なハルはパンダと真希の議論に口を挟むことが出来ず、ただただ二人の口から出る言葉を飲みこみ処理するのに注力していた。

 

「え、えーと……」

 

 ハルはどっちがいいとかピンと来ない。

 二つある選択肢から一つを選ぶという行為が苦手であった。

 優柔不断なハルの性質は長い付き合いであるクラスメイト3人は当然把握していた。

 本当は自分で選んで欲しいってのが筋なわけだが。

 こういうシュチュエーションで立ち止まったハルの手を引っ張り上げるのは決まって真希である。

 

「よし、分かったハル。自分で決められないなら私がどっちに芽があるかを判断する。パンダGO!」

「がおー」

「え、えぇっ!?」

「ツナマヨ」

「狗巻くんも!?」

 

 クラスメイトによる愛のある戯れが幕を開けた。

 

 

 

「どーして、私も行かせてくれなかったの?」

「後輩パシッってるのに、お前が付いて行ったら示しがつかねぇだろ」

 

 訓練後のクタクタの身体で階段に腰を下ろしハルは口を尖らせた。

 ジトっとした視線を平然と受け止めた真希は、さも当然だろっとした表情を見せている。

パンダと狗巻は連れションに、後輩二人は真希の命令で自動販売機に飲料水を買いに行っている。

 当初、私も行くよと口を開こうとしたハルを真希が鋭い視線で制した為にハルはしぶしぶ言葉を飲みこんだのだ。

 真希の言わんとしていることは分らないまでもないが、ハルとしては頑張っている二人を労いたかった。

 

「ハル、お前のやろうとしたことは大方予想は付くが、今のハルがあいつらに対して甘えを見せちゃダメなんだよ」

「……」

 

 真希の真剣な眼差しがハルへと向けられる。

 どうしてだろう。ハルには理由が分らない。

 疑問が表情に出ていたのだろうか、真希は續ける。

 

「私も狗巻もパンダもハルの良いところ、悪いところをよく知っている。自ら制限を課して、謂れのない風評を受けてでも同門に切っ先を向けない優しさもな。」

「伏黒も釘崎もハルのことをまだまだ知らないだろ。同じようにハルも伏黒と釘崎のことを深く知らない。」

「私はな、同級生(タメ)を亡くして強くなろうと前に進んでいるあいつらと弱さを偽っているハルが共に強くなろうとしていると錯覚して、仲を深めて欲しくない。」

「要はタイミングの問題で交流会が終わってからでも良いんだろ。私たちはネタ晴らしを受けた伏黒の反応を楽しみにしてるんだからさ」

 

 そう言って、意地の悪そうな笑みを浮かべた真希。

 私はビックリ箱じゃないんだよ。

 ハルは最後に付け加えられた言葉の所為で純粋に友達の心遣いを喜べない。

 ともあれ、真希の言った言葉をしっかりとハルは受け止めた。

 ボタンの掛け違いによる仲違いを避けようといった趣旨である。

 後輩二人がハルの中身を知るのは後でも出来る話であり、交流会前に力を付けようとしている今、水を差している暇がないのも納得である。

 

「二人ともお待たせ~」

「しゃけ」

 

 暫しの時が経って、パンダと狗巻が戻ってきた。

 周りを見渡して、後輩二人がいないことを視認する。

 

「一年ズは?」

「パシった」

 

 真希の言葉に表情を曇らせるパンダ。

 なにか都合の悪い事でもあったのだろうか。ハルは話の成り行きを見守る。

 

「今日だろ、交流会の打ち合わせに京都校の学長が来んの」

「ハル」

「うん、分かってる」

 

 パンダの言わんとした言葉を理解したハルは、真希に呼び掛ける間もなく縁を見る。

 東京と京都、二校に分かれている呪術高専の生徒だが、交流会前の今となっては敵情視察と言ってカチコミを決めようとする血の気が多い輩が一部いる。

 学校側も生徒同士の多少のじゃれ合いであれば、わざわざ大人が出るところではないでしょ。と、緩い対応を取っているので大事として扱われる事もない。

 出来ればそんな彼らが来ていないのが幸いであったが、見えた縁にハルは希望的観測を投げ捨てた。

 真希と結ばれる強く太い縁。自身と結ばれる縁。

 

「真希ちゃんの妹さんと東堂くん来てる」

 

 あー、最悪だ。パンダと狗巻、二名とも額に手を当てて天を仰いだ。

 真希の妹、禪院真依は性格がねちっこく、平気で人を見下したような言葉も口にするタイプだ。

 格下にはどれだけ横暴な振る舞いをしても良いって性根を持つ人。そう、ハルは真依に対する印象を思い返す。

 下に見られているハルが仮に絡まれている状況下で仲裁に入っても、役に立ちそうにない。

 

「とりあえず一年ズと合流するか。絡まれていないなら何よりだけど、東堂が居るなら時間の問題でしかないし」

「そうだね」

「しゃけ」

 

 最寄りの自販機へと四人歩き始める。

 道中、ハルはポケットから携帯電話を取り出し、SNSを開いた。

 最近、目を通す暇がなかったが彼の内情を漁るにはコレが手っ取り早いものである。

 

「前々から思ってたけどさー」

 

 そんなハルの様子を一瞥して、パンダが複雑そうに口を開く。

 

「ハルは友達、選んだ方が良いんじゃない? 五条先生といい、東堂といい」

「……そうかな?」

 

 首を傾げるハル。

 その画面には一人のアイドルに執念するある男子高校生の変遷が色濃く残されていた。

 




 誤字脱字報告ありがとうございます。以下敬称略。順不同。
 団栗504号。

 志を共にする同門に対しては理様に頼らないスタイルを取るハル。
 もちろん、そんなことすれば雑魚当然です。
 
 東堂とは仕事(1級)を共にする事もある上に、ほぼ同年代でかつボッチには手を差し伸べるのがハルのスタンスなのでソウルメイトとはいきませんが、そこそこに良好な関係を築いてます。
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