集団戦突入! です。
『それでは姉妹校交流会スタァートォ!!!』
交流会集団戦が五条のアナウンスと共に幕が開けた。
ハル達都高専のメンバーはある確信と共に開始地点から中心部へ向かっている。
開けた視界を確保する為にパンダにおぶわれたハルは、高い視点から目を凝らす。
「来るよっ!」
「押忍ッ!」
先制有利!
ハルが指差した方向に虎杖は拾った石を全力投擲。
藪を突き抜け石の軌跡は消えていった。
「中々の挨拶じゃないか、
直後、嬉しそうに笑いながら東堂が藪の中から飛び出してきた。
その手には虎杖が投げた石が握られている。
鍛え上げれた筋肉が晒されている上半身に傷はない。
「虎杖君っ頑張ってね!」
虎杖に東堂の相手を任せてその場を後にする。
虎杖と東堂、二人を結ぶ縁が良縁になればいいなぁ。
小さくなる虎杖の姿を見えなくなるその時までハルは見つめて祈った。
――縁に関連する神の寵愛を受ける巫女が祈ることの意味をハルは深く考えていない。
負の感情が呪に変貌するように、強い力を持つ祈りが何らかの力へと形を変えるのは当然な事。
術式を用いずとも、それは因果に干渉する。
東堂との縁。それが虎杖にとって幸か不幸かは置いておいて。
東堂が独断専行で攻め込んでくることをハルは手に取るように分かっていた。
東堂君、協調性ないから暗殺お願いしても素直に頷かないと思うの。
皆に分け隔てなく紳士的だったら友達出来る筈なのにと苦い顔を浮かべたハルの言葉通りなら、他の京都校のメンバーは索敵、斥候を放ち虎杖の位置を共有し強襲してくると予測される。
その京都校のメンバーは知らない。
一つの目的に執心する集団、それが結ぶ縁を見ることが出来るハルの厄介さを。
失せモノ探しなら右に出る者がいない名探偵。
五条は茶化してそう称するが、物でも人でも結び合う縁があるという条件下において、ハルの探査能力は随一だ。
「一人、上空にいる」
虎杖に結ばれた悪縁の一つが上空に伸びているのがハルに見える。
「上から探査、まあ東堂が暴れることが分かっているなら虎杖の位置を把握せずとも大まかな場所は割れるだろうね」
「しゃけ」
「鵺を放ちますか?」
「先輩、ここは私にやらせてください」
ハルの言葉に頷く、パンダ、狗巻。
上空迎撃の手段ならと、伏黒が確認を取ったところに気炎をあげた釘崎が割って入った。
「伏黒は呪力を温存すべきです」
多種多様な力を用いることの出来る伏黒の力の温存は最もな意見である。
その点、釘崎が意見した手段はタネが分かるまで対策が打てない初見殺し。
奇襲を受けた京都校のメンバーは予想外の遠距離攻撃を警戒せざる得なくなる。
「いいぞ、やっちまえ野薔薇」
「はい、ハル先輩お願いします!」
真希の言葉に頷いた釘崎を見て、ハルはパンダの背中から降りた。
ポケットから取り出したのは、藁人形一体。
防御にしか使えなかったこの術式をハルのかわいい後輩は別の使い方を用意してくれた。
結の縁
共鳴り
上空に伸びる縁を辿って縁が藁人形に結ばれる。
その藁人形に釘崎が釘を打ちすえる。
「手応えありです!」
ガッツポーズを取る釘崎。
相手の遺物が発動条件の共鳴り。相手への繋がりを結ぶ結の縁。
相性が抜群の合わせ技である。
受けた相手は前兆無しの不意打ちに戸惑う他ない。
「索敵の目は潰した。作戦通り行くぞ」
京都校のメンバーが二手に分かれたことをハルが告げると、予想通りだと真希は笑った。
索敵を担うメンバーを捨て置くのは集団戦においてリスクが重い。
ケアに回らざるを得なくなり、戦力は分散する。
その分散した戦力を叩く為にハル、パンダ、釘崎チーム。
真希と伏黒チーム。
呪霊狩りに向かう狗巻と伏黒の式神である玉犬の三チームに都高専メンバーは分かれた。
ナニをされた?
上空で東堂と虎杖の戦闘を見つけ、連絡した西宮は突如として身体を貫いた痛みに術式の制御が出来ず、藪林に不時着した。
事前情報もなく、前兆もない。
安否は電話を通して伝えたが、タネが明かされるまで上空に上がって索敵をする役割は果たせそうにない。
儘ならないなー。
自身の持ち味の一つを潰され、仲間にケアに回られて、今のところ良い事がない。
「西宮ちゃーん、みーつけたっ」
鬱屈した心中を意地悪く笑う
野薔薇ちゃん怒ってる……。
いがみ合う釘崎と西宮の険悪な言葉の応酬をハルはおろおろと眺めるしか出来ない。
楽厳寺学長の言われるがままに戦う京都校メンバーの在り方を釘崎は嫌悪している。
ハルにとっても呪術界の保守派から一時は封印した方が良いのではないかと睨まれていた時期があるので楽厳寺学長の印象は良くない。
いっそ、五条の様に真っ向から悪意をぶつけるほどに捻くれていればよかったが、無垢なハルは敵意も悪意も長続きした覚えがなかった。
最終的に二人が気が済むまで言い争って、その後仲直りすればいいかな。
なんて悠長な考えのもと、この場では静観に徹することにした。
同級生のパンダが場の成り行きを見守って、諫めようとしなかったのも理由の一つである。
ただ、不意を打って攻撃されたのを静観する理由はない。
結の縁
パンダに結ばれた敵意の縁。
それをハルが投げ込んだ藁人形が肩代わりをして、直後放たれた怪光線によって跡形もなく燃え尽きた。
「術式の誘因? どちらにせよ、厄介だな」
「学長の言うにはなにも出来ない役立たずじゃなかったの? 私の天敵じゃない」
遠距離からの奇襲に効果が無いと悟るや否や藪林から究極メカ丸と真依が飛び出してきた。
待っていた執念の対象の登場に釘崎のボルテージがさらに一段階上がる。
三対三。支援が主な役割だが、一応こういう時の為に動けるように鍛錬は積み重ねていたのだ。
ハルも気合を入れて佩いた木刀を抜く。
視線の先は西宮。メカ丸の相手は荷が重そうだから。
ギラギラと睨み付ける釘崎に真依は鬱陶しそうにため息をつく。
「陰湿な女に付き纏われて迷惑しちゃうわ、ホント」
「伸した後に顔面に同じ言葉書き込んでやるよ! 陰険女!」
正面から突貫する釘崎。
馬鹿正直に正面から来る愚かさを真依は嘲笑いながら銃口を向け発砲。
結の縁
放たれた弾丸は釘崎の腰に吊るされた藁人形へ吸い込まれる。
響いた発砲音を合図にそれぞれがそれぞれの相手に向き合い拳を振り下ろした。
逃げる。追う。
逃げる。追う。
一度は武器を交差するも西宮は反転、逃走を図った。
その背中をハルが追いかけ始めて暫くの時間が経った。パンダ、釘崎とはもうだいぶ距離が開いてしまっている。
まさか相手がハルを前に逃げの選択肢を選ぶとは考えもしなかった行動にハルは苦い顔を隠せない。
吹けば飛ぶような脆そうな身体。幼いとも言われるハルの耐久力は見た目通りのモノだ。
だからこそ、この集団戦において一発叩けばリタイヤしかねないハルに対して逃走という妙手を繰り出した西宮に
対する西宮も非常に困っていた。
試合前に東堂に”ハルをリタイヤさせるな”とはた迷惑な忠告を受けてしまった。
その為術式を用いて吹っ飛ばすとリタイヤしかねないハルに対し有効打らしい有効打を用意することが出来ずにいる。
ある程度距離を置いて相手がバテたら呪具だけでも奪っておくべきか。
籔林を駆けながら西宮は考えを纏める。
飛行術式を用いて居場所を攪乱するのが手っ取り早いが一度痛い目を見ている手前でそのタネを明かさない限り敵の目の前で無様に落下するリスクが大きい。
早くバテてくれないかな。
ハルの特技の一つに鬼ごっこがあるとはつゆ知れず、西宮は自分の首を絞める選択肢を取っているとは思ってもいなかった。
”追いついた”。
汗を流し、息を切らした西宮が走る速度を緩めたのを見て、ハルは頬が緩む。
佩いた木刀を抜き、対峙するハルに西宮は諦念を抱く。
”ツカレタ、東堂君には後で謝ろう”。
集団戦後の憤怒した東堂のめんどくさい後処理にウンザリしながらこのままでは自分の方が早くバテそうな気配を西宮は感じ取った。
対峙する両者。ハルは待ちの姿勢を取り、西宮の出方を伺う。
そっちがその気ならと、箒を浮かせハルに向けて射出しようと構えた瞬間、不意を打つように拳代の礫が藪の中からハル目掛けて飛んできた。
敵意の
飛ぶように後退し、礫を躱すハル。
「見つけた!」
「霞ちゃん!? アレ? 刀は?」
心底嬉しそうにハルの、いや、ハルの木刀を見つめ藪から姿を現す三輪。
思わぬ援軍に驚きを隠せない西宮。
二対一。一転劣勢、この場をどのように切り抜ければ良いのだろうか。
苦しい表情をハルは隠せない。
「そう! 刀を真依のお姉さんに盗られちゃったの! だから――」
西宮に向けられた視線がハルへと向けられる。
自身の弟に語りかけるように、三輪は微笑む。
「――大人しく投降してくれないかな? 私も小さい子に痛い目を見てほしくないから」
一般ぺおpぇさん、赤頭巾さん、ゆうレイさん、おきなさん、さーくるぷりんとさん、りゅうだろうさん誤字報告ありがとうございます。
サポート能力が割と優秀なハルちゃんです。
相手の意図を縁という因果の形で視覚察知できるのでまず不意打ちは利きません。
ピンポイントな遠距離攻撃には藁人形を。
共鳴り。に必要な相手との繋がりも縁で結べば、前準備無しの強力な呪術が相手を襲います。
虎杖が参戦前はパンダのゴリラモードを盾に釘崎とハルで崩すという戦法を東堂対策に用意していました。
ちなみにハルちゃんレーダは都高専の奇襲によって、元々虎杖暗殺に乗り気ではなかった面子から暗殺どころではないと縁が切れていくので、前半だけ有能でしたとさ。
後半は三輪さん参戦。
集団戦では真希さんの引き立て役でしたが、ハルが木刀を佩いていることを知られてるので、原典の様に手持無沙汰ではなく必死に走り回ってハルを探していました。