執筆活動するとゲームをやる時間が減る。
趣味と小説活動を並行して出来る人ってやばいですね!
ヒト型に石畳が敷かれた神社の境内でハルは目を覚ました。
賽銭箱に寄り掛かっていたハルを沈む太陽が赤く染める。
理様の心象風景だ。
辺りを見渡し、見知った光景に安堵の息を漏らし浮き上がりかけた腰をそのまま下ろす。
神様が生まれて、最も栄えた時代、原点の風景。
なぜ此処に?
何度か訪れる機会はあったが、ハルは呼び出される理由に思い当たる節はない。
「っわ!」
首を傾げるハルの背後から太い腕がぬっと伸ばされて交差する。
顔を後方に向ければ縁断ちの神がそこにいた。
「……」
おどろおどろしいその姿は傍から見れば祟り神や荒神と言われても不思議ではない。
良い神様。慈悲深い神様。ヒトの為に生きて……ヒトの所為で穢れてしまった神様。
幼い日に抱いてしまった身勝手な人達への嫌悪がもやりと胸の内に溜まる。
皆、分かってくれたらいいのに。
おどろおどろしい神様の外面だけでなくその内側も見てほしいとハルは願う。
『もう、いやだ』
「狗巻君?」
ふと、ハルの耳に同級生の声が響いた。
……
ヒトが神様に救いを求めて縋る声。
「うん、行かなきゃ」
腕の中でハルは頷く。禍々しい呪力が表皮を撫でる。
目を閉じて身体を縁断ちの神に委ねる。
沈む、
沈む。
ハルの意識は縁断ちの神の呪力の中へずぶずぶと。
自己の境界が曖昧になるまで、深く深く。
私は。
ワタシは。
わたしは。
特級呪術師『隻腕の少女』。
日本でも数少ない特級術師である。
ナニが武器なのか。どんな術式を用いるのか。
一切不明。
謎多き幼い術師。
呪詛師が花御達呪霊に卸した情報はソレだけだった。
底が知れない要注意戦力。
だが最強である呪術師五条とは違う。
それだけで花御は目の前の少女の実力を高を括って見ている。
特級呪霊である自身なら殺せると。
謎が多いだけで恐れられていない少女など取るにも足らない敵であると。
その吹けば飛ぶような脆弱な肉体を屠ろう。
呪い裁ち
本来であれば木の根が具現化し、少女の身体を貫いている筈だった。
しかし、花御の術式は起動しない。
違和感を拭い去る為にもう一度繰り返す。
呪い裁ち
不発。
呪力を消費している筈なのに植物が具現化しない。
先ほどまで使えていた術式が少女の前では機能しない。
自分の知覚し得ないナニかが起こっている。
《ナニをしたというのですか》
此方を見据える少女の眼差しがいやに不気味で、花御の背筋に悪寒が走った。
ハルがパチリと目を瞬かせれば、木々が生い茂る森の中ではなく瓦の屋根の上に足を付いていた。
目の前には呪霊。それも凄く強そうな呪力を纏っている。
《ナニをしたというのですか》
頭に響く呪霊の声。
残念ながらハルの意識が覚醒したのはさっきであり、それ以前の記憶は歯抜けである。
問いかけられた言葉に返す答えがない。
そもそも呪霊の呼びかけに答えるつもりはハルにはないが。
縁断ち
それよりも嫌な思い出が掘り起こされた。
ハルは脳裏に響く声をかき消す為に鋏を振るう。
胸の内に憎悪の念が積もる。聴覚を介さない呼びかけはハルにとってタブーである。
さて、どうやって祓おうか。
呪霊を目の前にプランを練る。あの大きく固い巨木の様な見た目からしてパワーがないなんて事はないだろう。
直接切るのは難しそうだ。ならば取る手段は一つしかない。
手始めに場所が悪いから変えよう。負傷者の側で戦うのは要らないリスクを背負うものだ。
背後にいる伏黒、狗巻、加茂に視線を一瞬移してハルは術式を起動させる。
大きな、大きな鋏を具現化させる。
人間の胴なんてスパンと輪切りにしそうな刃渡り。
その切っ先が重力に従って呪霊目掛けて落ちる。
砕け散る瓦。
突き刺さる鋏。呪霊の姿はその場にない。
下かな。
もうもうと埃が立ち上る中、ハルは逃げた呪霊の行方を目で追えていた。
「ハル!」
瓦屋根を飛び降りようとしたハルを加勢に駆け付けた真希が呼び止める。
ハルの側に駆け寄った真希はハルの様子をマジマジと確認した。
目立った変化はない。
伏黒から瞬間移動したかのように駆け付けたという話を聞いたからだ。
真希の知る限り、ハルに扱える術式の中に瞬間移動を可能にするものは存在しない。
目の前の存在がハルの姿に似せた別のナニかだったら話が早い。
ただ、真希の目には首を傾げる仲間が偽物とは思えなかった。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないさ。それよりハル、前衛欲しいだろ?」
「それは……」
三節棍を肩に掛けて真希が問うと思い悩んだ表情を浮かべてハルは答えに窮してしまった。
真希の言う通り、縁断ちの神の力を借りてもなお近接戦闘は不得手なハルである。
真希の様な近接戦闘のプロフェッショナルを置けたらどれほど心強いか。
しかし、それは同時に真希を危険に晒すという手段でもある。
「私を巻き込みかねないって心配ならいらねーよ。仲間だろ? 背中くらい預けさせろ」
不安に揺れる眼が覚悟を決めた強い意志を携えた眼とぶつかる。
ハルが説得しようとしても真希が折れることはないだろう。
「危なくなったら逃げていいんだからね?」
「仲間を見捨てて逃げるアホにはならねーよ」
軽口を交えて、ハルと真希は瓦屋根を飛び降りた。
「っち、見当たらねー。ハル、ナニか見えるか?」
「うーん、術式が矢鱈めったら置かれてて糸の源が見えないかも」
ハル達が降り立った森はその植生を大きく変え、変貌していた。
呪力を追おうにも森全体が花御の呪力で覆われており、ピンポイントに本体が何処に居るかが分らない。
術式の繋がりを見ても同様な事であった。
藪が生い茂り人為的に生やされた木々は日の光すら遮り、視界は薄暗く視線の通りは悪い。
懐中電灯持ってくればよかった。
ハルは鬱蒼とした森を煩わしく眺めた。
「ハル、ストップ」
「っわ!」
不注意に一歩進み、籔林を進もうとしたハルの襟首を真希が掴む。
どうしたのとハルが視線を向ければ、真希はハルを下ろして林の一か所を指さした。
指差す先には巨大な松ぼっくりにも似た木の実が木の枝から吊り下げられている。
ブービートラップだな。
真希は冷静に判断した。藁人形を複数体ハルから受け取り、その内の一体を林の中へ投げ込む。
火薬の弾けるような音と共に弾けた木の実の鋭い木片が周囲を傷つける。
「……厄介だな」
安易に飛び込むべきではなかったか。
ハルのデコイにも数に限りがある。真希の暗器だって数える程しかない。
このまま呪霊を探して遭遇した時にお互いが無傷である保証がなくなってしまった。
足手まといになるからと、負傷者の搬送を任せた伏黒を連れてくるべきだったか。
携帯電話を取り出した真希の袖をハルは引っ張って静止した。
「大丈夫、なんとかするから」
ハルは術式を起動し、もう一度大きな鋏を具現化させる。
今回は落とすのではなく、眼前の障害を切り開く為に。
無論、ヒトの胴ほどある鋏をハルや真希が自力で開閉できるわけがないので、繊細な呪力操作が求められる。
鋏の操作に集中するハル。
その隙を静かに様子を伺っていた呪霊が見逃すはずもない。
「ハル!」
木の上、視界の遮られた枝葉の向こう側から鋭く突き出された枝を真希は察知する。
呼びかけと同時に投げ込まれる藁人形。
結の縁
狙いはハルから藁人形へ。
ズタズタに貫かれた藁人形は跡形もない。
呪霊の位置は判明した。ハルは構えた大鋏をそのまま、振り回す。
切る必要はない。
隠れているその場所から叩き出すだけで良い。
あまりにも緩慢な薙ぎ払いが枝葉、幹を巻き込み一文字に刻まれる。
躱すのは容易いだろう。
枝葉から飛び降り、距離を詰めようとした呪霊を真希が三節棍で叩く。
「かてぇ」
会心の一撃。
それど相手に応えた様子はない。
まるで巨木を殴ってるみたいだ。大した傷も残せなかった姿に真希は認識を改める。
脆い部分を探し、そこを叩くしかない。
その様子を具現化した大鋏を消し、赤い裁ち鋏を構えたハルは油断なく見据えていた。
真希の打撃によって呪霊が一時的にでも怯んだこの瞬間、見逃すわけがない。
呪い裁ち
金属を擦り合わせる様な鋭い音が鳴り響く。
呪霊と術式の繋がりを断ちきれた。
具現化した鬱蒼とした森は消え、元々あった森へと姿を戻す。
その様子に呆気に取られたか。
呆然とした呪霊の隙を突いて、真希が三節棍を頭部目掛けて振りぬく。
たたらを踏んでよろめく呪霊、畳みかけるならこの時である。
開いた距離を呪力で身体能力を強化して詰める。入れ替わるように真希が少しだけ後退する。
有効射程内。
縁を手繰り寄せ、鋏を向ける。
断つのは呪霊の右腕。
裁呪・離縁式
術式起動。
空を切るように刃と刃が重なり合う。
鋭い金属音が残響し、呪霊の腕は断ち切れ、ポトリと落ちた。
「まずは一本」
肌に感じ取れる呪霊の呪力が大幅に弱くなる。
あと何本落とせるかな。
真希と位置を入れ替える様に後退したハルは、真希が呪霊とかち合う様子を見て独り言ちた。
誤字報告ありがとうござます。以下敬称略。
イタカ、退会したユーザー、あんぶれーら、あんぴしえん、akia、秋刀魚ブレード、甲乙。
地味……でしょうか。
分かり易くTUEE出来なくてすみません。期待してた人もいたのかな?
まあ、派手さはないハルちゃんモード1状態です。
ちなみにホントの最初だけモード1.5。
ほんの少しだけ術式紹介
縁切り
相手との繋がりを断つ術式。
釘崎にメタを張っている。釘崎はこの状態のハルには勝てないです。
ちなみに早合点で切ってしまった為に、森でのハルちゃんレーダ―は使えなくなっていました。
呪い裁ち
術式メタ。
相手の呪力と術式の繋がりを断つ。外界への出力を抑える。
五条先生が術式を電化製品に例えていたが、それに倣うならコレは電源コードを断ち切るというモノ。
具現化系統は漏れなく死ぬ。
呪霊、式神系統も死ぬ。
結界系統も死ぬ。(嘱託式は除く)
これくらいオーバースペックにしないとインフレする原典に追いつけないんじゃないかと思う作者。
裁呪・離縁式
手を切る。
効果? 次回説明出来たらいいなぁ。
ちなみにヒトだと両腕切り落とされたら業界バイバイ。
毎度毎度誤字報告ありがとうございます。
頭が上がりませんね、ホント。