ヨロイ島の修行が何日か経ち、サトシは突然マスター道場のマスタードに呼ばれてダクマ同士のバトルが行われた。バトルの結果は引き分けに終わり、サトシはダクマがウーラオスに進化すると知るのだった。
アルセウス「今日のバトルは惜しかったな。」
サトシ「ああ、マスタードはやっぱり強い。でもダクマともっと強くなってリベンジするぜ!」
ピカチュウ「ピッカ!」
カキ「俺も負けてられないな!」
ケルディオ『頑張ってねサトシ!』
バトルが終わっても興奮は納まっていなかった。
マーマネ「今日のバトルもそうだけど、サトシとシンジのバトルも凄かったな。」
マサル「うん、特にゴウカザルのあの猛火!」
サトシ「ありがとな。」
アルセウス「今でも5年前のシンオウリーグ準々決勝のバトルは有名らしいぞ。」
サトシ「そうなんだ。」
当日のシンオウリーグを懐かしく感じたサトシ。
セレナ「皆盛り上がっているわね。」
ハルカ「うん。」
少し離れた所でシンジ以外の皆が話を聞いていた。
ヒカリ「でも確かに今でも語り草になってるわね、5年前のシンオウリーグ。」
ラングレー「そうね、映像でだけどアタシも興奮したし。」
マリィ「そんなに凄いバトルやったん?」
マオ「勿論!」
リーリエ「その時のサトシもかっこよかったです。」
ノゾミ「シンジもね。」
スイレン「うん。」
サトシ「まあ、何だかんだであいつとは色々あったからな。」
ケルディオ『そう言えば!』
サトシ「?」
ケルディオ『サトシとシンジってどうやって今のような関係になったの?僕、2人は最初バトルスタイルのことですれ違って衝突し合ってたってことしか聞いてないし。』
アルセウス「確かに、それは興味のある話だ。是非聞かせてくれないか?」
サトシ「ええっとどうしよう?」
ピカチュウ「ピーカ。」
ケルディオ『聞かせてよサトシ!サトシとシンジが出会った時の話!』
カキ「俺も興味があるな。」
マーマネ「僕も聞きたい!」
マサル「俺も知りたいな。」
サトシ「・・・そうだな、そろそろ皆には話してもいいかもな。だけど・・・。」
一同「?」
サトシ「この話は皆に不快な思いをさせるかもしれないぞ。」
アルセウス「・・・構わん。」
ケルディオ『どんな話でも僕は最後まで聞くよ。』
カキ「俺もだ。」
マーマネ「うん。」
マサル「覚悟はできてる。」
サトシ「分かった。皆もこっちに来いよ。」
サトシがそう声を掛けると離れた場所にいたセレナ達が出てきた。
マリィ「いつから気づいてたん?」
サトシ「割りと最初から。」
悪戯っぽい笑みを浮かべてサトシはシンジの話を始める。
サトシ「あれは俺がカントーのバトルフロンティアを制覇してマサラタウンに戻った後、直ぐにシンオウ地方に旅に出た時だったな。」
マサル「バトルフロンティアを終えて直ぐに?」
サトシ「なんかじっとできなくてな。」
マオ「サトシらしい。」
サトシ「シンオウ地方に着いてピカチュウがロケット団に攫われちゃって、その途中のマサゴタウンの森で出会ったのがシンジだった。使えないなって言って。」
ケルディオ『そんな最悪な展開だったんだ。』
カキ「あいつの嫌味ってその時からだったんだな。」
サトシ「その時シンジはムックルを3体捕まえていたけど2体は直ぐに逃がしたんだよな。」
マーマネ「何で?」
ヒカリ「その時のシンジはね、兎に角強さを求めてたの。ポケモンとの友好関係を全く考えてなかったわ。」
シンオウで一緒に旅をしていたヒカリも説明する。
ラングレー「どうしてなの?」
サトシ「それはレイジさんにあったんだ。」
マサル「レイジさん?」
アルセウス「トバリシティで育て屋を経営しているシンジの兄だ。」
マリィ「アニキ?」
ノゾミ「レイジさんも最初はベテラントレーナーだったんだけどバトルフロンティアでジンダイさんに敗北してトレーナーを引退したらしいよ。」
シンジの一部始終を知っているノゾミも話に入る。
ケルディオ『ジンダイに?』
アルセウス「ジンダイはフロンティアブレーン最強だからな。そう簡単には勝てん。」
ヒカリ「レイジさんも自分の未熟さを思い知らされたって言ってたわ。」
サトシ「そのことが原因でシンジはレイジさんのやり方ではダメだと思い込んで強さを求めるようになった。」
ヒカリ「だからポケモンに無茶な戦い方をさせたり、能力だけでポケモンを見て使えなかったら逃していたの。」
ハルカ「でもポケモンと仲良くしないのはね。」
スイレン「うん。」
当時のシンジのポケモンと絆を結ぼうとしないやり方にセレナ達も納得できなかった。
サトシ「そして、シンジはあるポケモンをゲットしていたんだ。それがヒコザル。」
カキ「ヒコザル?」
マサル「シンオウ地方の初心者用ポケモンの?」
ヒカリ「そのヒコザルはね、シンジが野生でゲットしたの。」
ケルディオ『ちょっと待って!そのヒコザルってもしかして・・・。』
ヒカリ「そ、サトシのゴウカザル。」
リーリエ「元々シンジのだったんですか!?」
サトシ「ああ。」
ヒカリ「シンジはね、ヒコザルの猛火を引き出そうとしてたんだけど自分では使いこなせないて見切りをつけてヒコザルを捨てたの。」
マオ「捨てた!?」
ラングレー「その後サトシがゲットしたのね?」
ノゾミ「そういうこと。」
サトシ「俺のポケモンになって漸く泣いたよ。」
ヒカリ「ヒコザル、ずっと我慢してたの。」
セレナ「寂しかったんだね。」
サトシ「ノモセシティに着く直前、俺達はシンジと再会してヒコザルはシンジのリングマとバトルした。」
ヒカリ「ヒコザルがリングマに追い込まれたんだ時あの猛火が発動したの。」
サトシ「今は何ともないけどゴウカザルはヒコザルだった時、あの猛火に振り回されて何度も暴走しちゃったんだ。」
マサル「暴走って。」
マリィ「シンジはそれを求めてたん?」
ヒカリ「うん。バトルはリングマを倒すことができたけど森が火事になりかけて、サトシが必死で止めようとしたわ。」
実際見たことがあるので当時はそれ程途轍もない力だとセレナ達は感じた。
セレナ「その後どうしたの?」
サトシ「ピカチュウや皆と一緒に強くなろうって約束して、ジム戦で活躍していったよ。」
マーマネ「ヒコザル、頑張ったんだね。」
ヒカリ「うん。」
ノゾミ「サトシがキッサキシティのジム戦を終えた次の日にジンダイさんがバトルピラミッドでやって来て、シンジはバトルを挑んだんだ。」
サトシ「この時俺達はシンジが強さに拘る理由を知った。」
リーリエ「そのバトルはどうなったんですか?」
サトシ「・・・結果はシンジの惨敗だった。」
ケルディオ『え、何もできずに負けたの!?』
ノゾミ「当時は冷静さを失って本来のバトルができなかったからね。」
サトシ「追い詰められたシンジはジンダイさんに向かってこう叫んだ。」
シンジ『アニキが倒せなかったあなただからこそ、俺が倒す意味がある! あなたが俺達トレーナーに出す課題、『自分ならではのバトル』をアニキは完成できなかったんだからな! 俺はアニキとは違う! 俺の信念で強くなる! 俺のバトルを作りあげる!』
カキ「自分ならではのバトルか。」
マサル「俺も考えたことなかったな。」
サトシ「その後俺はシンジとエイチ湖でフルバトルをしたんだ。」
ヒカリ「そこでヒコザルはモウカザルに進化したの。」
マオ「バトルの途中で進化したんだ。」
スイレン「そのバトルはどうなったの?」
サトシ「・・・俺の負けだった。でも俺はピカチュウ達ともっと強くなってシンジに勝とうって誓ったんだ。」
ピカチュウ「ピカチュ!」
ヒカリ「あのフルバトルは2人には意味のあるバトルになったわ。」
サトシ「ジンダイさんとのバトルとあのフルバトルからシンジも変わり始めたんだ。」
ノゾミ「嫌味は言うけど、前みたいにポケモンに無茶させたり逃がしたりはしなくなったらしいよ。」
カキ「なるほどな。」
シンジが変わったことに一先ず安心するセレナ達だった。
サトシ「ある時、シンオウのもう1人のライバルのジュンとのバトルでモウカザルはエンペルトのハイドロカノンを受けてしまって、森に吹っ飛ばされたんだ。」
ヒカリ「その時ロケット団が現れてポッチャマとピカチュウとエンペルトを連れ去ろうとしたんだけど、モウカザルはまた猛火を発動して暴走してしまったの。」
マーマネ「モウカザルになっても!?」
アルセウス「まだ克服できていなかったか。」
ハルカ「それにしてもロケット団も懲りないかも。」
サトシ「ロケット団を退治することはできたが、檻に閉じ込められたピカチュウ達はロケット団が残したメカの残骸に押し潰されそうになって、偶然通り掛かったシンジがエレブーの守るで時間稼ぎをしてくれた。」
マオ「モウカザルは?」
ヒカリ「暴走したままだったよ。エレブーの守るも限界でヒビが入ってピカチュウ達もピンチになってしまったの。」
サトシ「暴走しているモウカザルを俺は必死で止めて説得したよ。猛火に呑まれず、己の力に変えるんだって。そしてモウカザルはゴウカザルに進化した。」
ヒカリ「そこから守るが限界だったエレブーとピカチュウ達を助けたわ。」
リーリエ「遂にゴウカザルに・・・。」
ケルディオ『シンジも変わってるね。』
サトシ「その後俺はナギサジムのジムリーダー・デンジさんとバトルをしたんだ。」
ノゾミ「確かデンジさん、ジムの活動にやる気を無くしたって噂されてたけど・・・。」
ヒカリ「うん。でもサトシの熱い思いで心を開いて再びジムリーダーとしての情熱を取り戻したのよ。」
セレナ「ホント凄いサトシは。」
サトシ「そのバトルでゴウカザルは猛火を発動した。」
スイレン「え!?」
マリィ「また暴走するんとちゃう!?」
サトシ「確かに暴走したけど俺はゴウカザルの目を見てこう言った。『俺は、俺は……お前を信じる!』って。」
ヒカリ「そしたらゴウカザル、笑って頷いたの。」
アルセウス「サトシとの絆で遂に克服したか。」
サトシ「そしてデンジさんのレントラーに勝って、ビーコンバッチをゲットすることが出来たんだ。」
ラングレー「よかったじゃない。」
ゴウカザルが猛火を克服したことに喜ぶ一同。
サトシ「そして俺はシンオウリーグに挑んで遂にシンジとバトルしたんだ。」
サトシから語られたのはフルバトルの6 VS 6でゴウカザル VS エレキブルと互いに残り1体となるまでの攻防戦だった。
ヒカリ「私は何度も2人のバトルを見てきたけど、その時のバトルは違ったの。前にタケシも言ってたんだけど、それはやっと二人が同じ場所に立ってバトルをしていたからなの。」
セレナ「同じ場所?」
ヒカリ「前にレイジさんは2人は表裏一体の関係、表と裏の関係。目指すものが同じでも、違う道を歩いていた2人はやっとお互いを認め合って、正面からぶつかりあったの。」
マサル「お互いを認め合って・・・。」
話はまだ続き、両者一歩も譲らない展開となった。そして、ゴウカザルはエレキブルの尻尾に捕まり、雷を受けて戦闘不能まで追い込まれた。
審判がジャッジしようとしたがエレキブルがそれを止める。シンジとエレキブルはそんなゴウカザルにわざと挑発する。
シンジ『こんな物だったのかお前の力は・・・何度も俺を失望させるな。』
ゴウカザルはその言葉を胸に立ち上がった。
サトシ『ゴウカザル!!シンジに強くなったお前を見せてやるんだ!!!』
次の瞬間、ゴウカザルは猛火を発動するのだった。猛火を発動したゴウカザルは一気にエレキブルを追い詰める。そして、互いに最後の技を繰り出す。
サトシ・シンジ『『次で決める(ぞ)!』』
シンジ『雷パンチ!!!』
サトシ『フレアドライブ!!!』
二つの技が激突し、炎と電気が合わさった巨大な竜巻を発生させた。
エレキブルに大きな爆炎のダメージを与え、ゴウカザル自身にもフレアドライブのダメージを負う。
再び対峙するゴウカザルとエレキブル…サトシとシンジが静かに見つめる中、最後に立ったのはゴウカザルだった。
マーマネ「遂に勝ったんだ!」
マオ「やったね!」
サトシとシンジの白熱したバトルに感動するのだった。
サトシ「シンジもエレキブルにも『良いバトルだった』って言ったんだ。」
アルセウス「ふむ、シンオウには一部しか知らない者もいるがこんな言葉がある。『全ての命は別の命と出会い、何かを生み出す』と。そのバトルを通じてサトシとシンジの間に絆が生まれたのだろう。」
ヒカリ「うん、シロナさんもそう言ってた。そしてそのきっかけを作ったのが・・・。」
カキ「ゴウカザル・・・。」
マリィ「ゴウカザルが2人を繋いだ・・・。」
ラングレー「シンジとはどうしたの?」
サトシ「バトルの後に大会を去るあいつと話をしたよ。そしてあいつはジンダイさんを倒すためにキッサキに向かった。またバトルやろうぜって最後に言ってやったよ。」
ケルディオ『そしてサトシとシンジは今の関係になった。』
セレナ「ゴウカザルを通じて芽生えるトレーナー同士の絆か。」
ハルカ「感動したかも。」
マサル「違う道が一つに交わり、同じ舞台で全力でぶつかり合うか。」
ノゾミ「今の2人の様子を見ると全然信じられないよね。」
スイレン「うん。」
リーリエ「わたくしもそんな存在に会ってみたいです。」
カキ「俺は今、もぉぉれつに感動しているぅぅ!」
マーマネ「そんなに!?」
カキ「当たり前だろ!俺はゴウカザルの苦しみながらも立ち上がろうとする努力、心に響いたぞ!」
マオ「まあ確かに話を聞いて興奮はまだ納まってないけどね。」
こうしてサトシとシンジの物語に幕が閉じたのだった。
余談だが、シンジが別の場所で先程の話を聞いて小さく笑ったのは別の話。