紅南高校に通う1年の速水勇太は、紅南地区最強の番長である阿久津栄一を倒すべく数々の強敵との闘いに打ち勝ってきた。

 そしてライバルであるヤマケンこと山口賢治と【紅南の鬼】の異名を持つ鬼島耕平を倒し、いよいよ阿久津との最終決戦が間近に迫っていた頃、彼の元に一通の果たし状が届いた………


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最強の刺客

 

 

「お前が速水勇太だな」

 

 ある日、餃子の王将でメシを食べてから街をぶらつこうと駅前を歩いているとしていた速水勇太に1人の男が話しかけてきた。サングラスをかけて目元は見えないがトシは丁度同じくらい。この辺りでは見ない顔だ。

 

「あン?オレ様に何か用か?」

「あぁ。これを受け取れ」

 

 藪から棒に差し出された書状を手に取る。

 

「オイオイ、こいつは一体どーいうこった」

「どうもこうもない。確かに渡したぞ、ちゃんと来いよ」

 

 男はそれだけ言って去っていった。書状を渡された速水は大層めんどくさそうな表情を浮かべる。

 

「ちゃんと来いって言われてもよー、メンドくせーなー」

 

 その手に握られた書状にはこう書いてあった。【果たし状】と——

 

 

 

 

「ええっ!?大将に果たし状!?」

「マジかよ!」

 

 翌日、速水は学校内にある溜まり場で過ごしていた友人に話していた。

 目を見開いて驚いたのが情報屋のテルこと千葉照男。共につるむことも多く、昭和テイストなリーゼントパーマが特徴の川上正二もまた驚いていた。

 

「そーなんだよ。どうしよっかなー、阿久津との闘いの前に体力消耗したくねーし」

 

 果たし状には『◯日の午後4時、河原にて待つ』と書かれていたが、速水はそこまでノリ気では無かった。

 何しろ阿久津との決闘はもうすぐそこまで迫っている。そんな状況でどこの誰とも知らない奴との喧嘩などしていられない。

 

「果たし状に名前も書いてあンだけど知らねーヤツなんだよ。テル、お前知ってっか?」

「ふうん、どれどれ………」

 

 果たし状に書かれた名前を千葉がメモ帳に書き綴った情報と照らし合わせていくが、やがて首を傾げてメモ帳を仕舞う。

 

「うーん。この果たし状に書かれている亜門翔吾って男のことはオレっちの情報網には無かったよ」

「じゃあ紅南のやつじゃねーな」

「それどころかこの辺りの学校、外関でも紅北のリストにも載ってなかったよ」

 

 【情報屋のテル】こと千葉の持つ情報網に速水と川上は謎の信頼を置いている。これが本当なら、その男はわざわざ遠くから紅南まで出向いてきたことになる。

 

「てことはそーとー遠くからやってきたってことか。オレの名も有名になったものだぜ、かっかっかっ」

「で、どうするの大将」

「おう、気が変わったぜ。その申し出、飲んでやろうじゃねーの」

「おい待て速水、阿久津さんとの決闘までそう猶予はねーぞ?」

 

 川上の懸念はもっともだ。そんな彼に向かって速水はニヤリと笑った。

 

「だってよ、この果たし状を送りつけてきたヤツはオレと喧嘩するためだけにはるばる紅南までやってきたんだろ?だったら受けなきゃシツレイだろ」

 

 これで断ったら漢じゃない。速水は自信満々な様子を覗かせる。

 

「ま、ヨユーで勝ってやるよ。なにせオレ様はサイキョーだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、来てやったぜ」

 

 午後4時、果たし状に記載されてあった河原へ行くとすでに亜門はこちらに背を向けて待っていた。

 

「遅かったじゃないか。てっきり尻尾巻いて逃げたと思っていたが」

「バーカ、ヨユーがある証だっつーの」

「後ろにいる2人はなんだ?」

「アイツらは勝手についてきただけだ。カンケーねーよ」

 

 後ろに控える千葉と川上を一瞥して、亜門は鼻を鳴らす。

 

「まぁいい。では改めて名乗らせてもらおう。俺の名は亜門翔吾!速水勇太、亜門一族の名にかけて、お前に決闘を申し込む!」

 

 亜門は指を指して速水を睨みつける。

 

「かっかっか。オレ様に決闘を申し込んだことを後悔させてやるぜ。ところでそのアモンイチゾクってなんだ?」

「お前は知らなくていいことだ」

((じゃあなんで言ったんだよ))

 

 千葉と川上のツッコミが心の中でキマる。

 場の雰囲気も温まり、速水と亜門は腕を掲げて構えを作る。

 

「オメーみてーなどこの馬の骨か知らねーヤツが勝てるほどオレ様は弱くねーぞ」

「もう言葉は要らない…。いざ勝負だ!速水勇太ァァァ!!!!」

 

 先に動いたのは亜門だ。一瞬で距離を詰めてきたかと思えば、ジャブが飛んでくる。速水はジャブを受け流しつつ、攻撃のタイミングを窺う。

 

(クソー、けっこう速えな!)

 

 ジャブがきたかと思えば次には蹴りが繰り出され、蹴りがきたかと思えば一旦スウェーで距離をとってからのストレート。中々流れが掴めずにいる速水の動きにじれったくなったのか、川上の怒号が飛ぶ。

 

「オイ速水何やってんだ!そんなヤツさっさとブッ飛ばしちまえよ!」

「うるせー!今話かけてくんじゃねー!」

 

 今まで数多くの強者と拳を交えてきた速水は、亜門が並の強者ではないことを感じ取っていた。

 

「にしてもあの亜門ってヤツつえーな」

「うん。今の大将があそこまで圧されるなんて」

 

 速水が感じていた感覚を川上と千葉も感じ取っていた。2人もこれまで多くの強者を見てきたが、その中でも亜門の実力はかなりのものだ。

 

「でも大将なら大丈夫だと思うよ。なんたって大将なんだから」

「ま、ここで負けてたら阿久津だなんだって言えなくなるからな」

 

 開始から数分経過したが、未だに亜門の猛攻は続き、速水は防戦一方の状態。何しろ攻撃の出が速く、仕掛けようとしたところへパンチや蹴りが飛んでくるため、不用意に動けば速水側が不利になる。

 

(チクショー無闇に動けねー。何とかしてーが………、ん?)

 

 ふと速水はあることに気付いた。亜門は依然として隙のない動きで主導権を握っているが、ほんの少しだけ攻撃が止む時があるのだ。さっきまで無かった動作に速水はピンときた。

 

(ははーん。そーゆーコトね)

 

 再び繰り出されたジャブと回し蹴りのコンボを躱しながら速水はその時を窺う。

 待ち望んでいた瞬間はすぐに訪れた。亜門は猛烈なラッシュ攻撃が止め、一度スウェーで引き下がり息を整える。しかも先程よりも息を整える時間は長くなっていた。

 

「今だ!」

「何っ!?」

 

 反応が遅れた亜門は腕を前に出して守りに入ろうとしたが、その前に速水の跳び膝蹴りが腹部にヒットした。

 

「ぐうっ!」

「まだまだいくぜ!」

 

 そこから速水による怒濤のターンが幕を開け、亜門の体力は徐々に削られていく。アッパーで亜門がよろけたところへすかさず左ストレートを顔面にぶつける。

 

「オラ!」

「ちっ!」

 

 亜門も負けじと速水の横っ腹に回し蹴りをお見舞いする。

 

「やるじゃねーか。だがもう終いだ!」

「うおおおおおお!!」

「っらぁ!!」

 

 亜門が殴りかかってくるのを読んでいた速水はギリギリのところで躱す。

 そこへトドメとばかりに渾身のカウンターが鳩尾に放たれ、決定打を放たれた亜門は地面へ倒れた。

 

「すげぇ…」

「あそこから勝っちまうなんて、さすが大将だよ」

 

 あっという間の形勢逆転に川上と千葉も驚きを隠せない。

 

「ふー、これで分かったろ?オレ様がさいきょーなんだって」

「ぐ………っ!」

「オイオイマジかよ。まだ立てんのか?」

 

 あれだけ食らってもまだ立ち上がる亜門に速水はギョッと面食らう。しかしさすがにこれ以上闘える状態ではないらしく、速水の放った攻撃のいくつかが直撃したのか、亜門はやっと立っていられるというような有様となっていた。

 

「ぐ…!短期決戦に持ち込もうとした俺のミスだ。長期戦に持ち込み焦ったくなったお前を返り討ちに出来れば…!」

「負け惜しみや結果論はカッコ悪りぃぜ?それに仮にそうなったとしても、勝つのはオレだ」

 

 速水は自信満々に言い返してやる。

 

「ま、オメーは確かにつえーが、オレ様はそれ以上強かったってことだ。かっかっかっ」

「身体の鍛え方もまだまだだな…もっと鍛練を重ねる必要がある…」

「で?どうよ、満足したか?」

「あぁ…これでもう悔いは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある!!!!」

『あるのかよ!!』

 

 速水だけでなく千葉と川上も思わず素でツッコミを入れてしまった。

 

「いつの日か再びお前を倒すために俺は帰ってくる!今よりさらに強くなってな!!」

「へぇ、そいつは楽しみだな。ま、気長に待ってるとするよ」

「また会おう速水勇太、さらばだ!!」

 

 どこかスッキリした表情を浮かべ、亜門は去っていった。速水もまた亜門の後ろ姿を見つめながら不敵に笑う。

 

「やったね大将!」

「当たり前だろ?かっかっかっ!」

「さすがに少しやばかったんじゃねーか?」

「あぁ?どっからどう見てもオレの圧勝だったじゃねーか」

 

 仲間を前にしていつもの笑顔が溢れる。

 速水と亜門、2人が再び拳を交える日は訪れるのだろうか………。

 

「ん?おい、なんか落ちてるぞ」

 

 ふと何かが落ちていることに気付いた川上はそれを拾い上げる。

 

「なんだそりゃ、サングラスか?」

「さっき亜門が落としたんじゃないかな。どうする?渡しにいく?」

「別によくねーか?それよりソイツ貸せよ」

 

 速水はサングラスを手に取り、顔にかける。

 

「どーよ」

 

 サングラスをかけてドヤ顔をキメる速水を見て千葉は首を傾げる。

 

「うーん。イマイチ?」

「んだとぉ、ならテルがかけてみろよ」

「えぇ、いやオレっちはいいよ」

「いいからかけろって」

 

 手渡されたサングラスを渋々かける。

 

「テル、お前意外と似合ってるぞ」

「マジ?」

「あぁ、なんか様になってるっつーか」

「くそー、認めたくねえがオレより似合ってる気がするぜ」

 

 これに気を良くした千葉照男がのちにサングラスをかけ売人のような胡散臭い恰好をすることになるのは、また別の話。

 





 【亜門の出現条件】
 ゲームを3月まで進めた上で、以下のことをクリア。

・阿久津を除く全生徒の校章を集める。
・休日モードに登場する番長を全員倒す。
・たまり場を全て奪い取る。
・喧嘩倶楽部を踏破する。
・蜂屋と菊永を倒す。

 これらをクリアし、駅前の餃子の王将に立ち寄るとイベントが発生する。という設定。戦闘曲は https://www.youtube.com/watch?v=1z9V_E5z2lk


 ちょっと他に投稿してる作品の筆が滞ってるので息抜き代わりに書いてみました。
 この作品の原作である喧嘩番長4はプレイしたことはない(家にPSPが無くて出来ない)んですけど、私が大好きなゲーム実況者の方がYouTubeの方で投稿している動画を見てきたお陰で物語の流れはある程度把握できていたので書き上げることが出来ました。
 書くにあたって何が苦労したってやっぱり喧嘩シーンの描写ですね(苦笑)。あのモッサリした喧嘩を文章で書くのはムズイです。もっと文章力身につけなければなぁ…。

 そういえば、この作品がハーメルンに投稿された時点で、ハーメルン内に喧嘩番長シリーズを原作としてる作品って1個もないんですよね。Pixivの方だと外伝の『乙女』含めてまぁまぁな数の二次小説あるんですけど、本当にハーメルンに投稿された原作:喧嘩番長の作品ってコレしかないらしくて、それどころか【喧嘩番長】で検索してヒットした作品が1つしかなくて普通にビックリしました。

 ハーメルンという二次小説サイトが開設されたのが2012年で、かれこれ8年以上、9万作近くの作品が世に出たにも関わらず、まだ開拓されていない原作があって、その1つの最初を飾ったのが自分の書いた作品で、まぁなんて言うか歴史を作ったというか、ちょっと嬉しい…ですね。ハイ。

 というわけで後書きもこの辺りにします。同じ実況者様が『4』の続編にあたる喧嘩番長5も実況を投稿していて、そちらも私は視聴済みで話の大筋は掴んでいるので、もしかしたら『5』の主人公vs亜門、も後に書くかもしれません。

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