狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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さ、観測所に戻ろうか。

裁「…マスター。」

ん?

裁「そういえばこの手紙って何なの?」

現実の私からこの私への伝書みたいなものかな。伝達率がたまに低いから、それの補助で使われてる機構。

裁「そうなんだ…」


第111話 無銘への問い

『───やあ、無銘。元気かな?』

 

自室にいた私に念話で話しかける声。その方向───扉の方を見ると、白い生物がいた。確か名前は───

 

「フォウ、さん?」

 

『別に呼び捨てで構わないよ。君の隣に行っていいかな?』

 

私は頷いて、身体を起こそうとする。

 

『あぁ、別に身体を横にしたままでも構わない。どうか楽にしていてほしい。…よいしょっと』

 

ベッドの上に身体を横にしたままの私の隣に、フォウが飛び乗った。

 

『まずは特異点攻略、お疲れ様。フランスが終わった時にも言えば良かったんだろうけど、まぁ色々ごちゃごちゃしてそうだったからね。フランス、ローマ…冬木の時はまだ君はいなかったんだっけか。君は何も持たなかったその身で、2つの異変を鎮めてみせた。』

 

「…私はそこまでなにもしてないよ。」

 

『自己評価が低いというかなんというか。フランスにおいて君は3つの宝具に目覚め、うち2つは竜に狙われたマスターを護りきった。時間と空間……それを歪めた謎の宝具。それから…確か、残留思念から受け取った…虹の宝具、だっけ。その虹の宝具は多くの影を引き受け、見事に勝利してみせた。ローマにおいては新しい宝具でローマそのものを護りきった。誇ってもいいと思うけれど?』

 

「私は…まだ、何もないから。」

 

『何もない…か。確かに、君の情報はまだ全くない。宝具を多く持っているというのに全く情報がない───君は真っ白なままだ。まぁ、そんなことはいいか。』

 

そう言ってフォウは私を見つめた。

 

『問うよ。君は辛くなかったかい?怖くなかったかい?……諦めたくなかったかい?』

 

「…っ」

 

『諦めてもいいんだよ。君には何もない───君が諦めたところで旅路に何もないだろう。この先は今よりももっと辛くなる。特に6つ目なんかは辛くなる代表格だろう。その歴史を君が見る必要なんてないはずだ。───さぁ、どうする?』

 

私は───

 

「───諦めないよ」

 

『……』

 

「私が一体何者だったのか───私が今、ここにいる理由は何なのか。私はまだそれを知らない。私は“私”を見つけたい。そしてもうひとつ、私はリッカさんを支えたい。ただ、それだけ。それだけだけど───今の私にとって、戦う理由はそれだけでも十分。」

 

『……そうか。ならまぁ、別にいいか。』

 

フォウが小さくため息をつくのが聞こえた。

 

『まぁ実際、こんなことを聞いたところで何も起きないだろうけどね。君が諦めてくれれば、このボクにとって辛い旅路も終わるかと思ったんだけど。残念だ、君は諦めなかった。』

 

「……」

 

『何度も聞くのもはっきり言って面倒くさいし、こうなったら奇跡に賭けるしかないかなぁ…』

 

「…フォウ。あなたは一体…何者なの?」

 

唐突に気になった。何かを知っていそうなその雰囲気が…

 

『…さて、何者だろうね。ボクは…ただの獣。比較が好きな獣。まぁ、言ってしまえば転生者ってやつなんだろうね。』

 

「転生者?」

 

『あぁ。この場所に来る以前の、この世界に来る以前の記憶がボクにはある。ボクはこの世界とは別の世界で1度死んで、この世界でまた生き直すことになったんだ。まぁ、ボクを転生させた神と会った記憶なんてないし、そもそもボクを転生させた神がいるのかすらボクには分からない。もしかしたら、神の力で転生される───いわゆる神様転生と呼ばれるものじゃなくて、ボクの魂が元の世界の輪廻転生の輪からどういうわけか外れてこの世界の輪廻転生の輪に混じってしまったのかもしれないけれど。そんなこと、ボクには分からない。』

 

「……死んだっていう確信はあるの?」

 

『あぁ…混乱させるだろうから話さないけど。ただ、ボクの記憶の限りでは、こういう世界では冬木ではオルガマリー・アニムスフィアが死に、フランスではマリー・アントワネット王妃が霊基を消滅させ、ローマではスパルタクスと呂布が一度戦闘不能になってたはずなんだ。でも、この世界ではそんなこと起こってない。本来在るべき姿から変化しているんだ。君達の介入によって。』

 

在るべき姿から変化…

 

『ボクとしては非常に興味がある。このまま奇跡を起こし続けれれば、最後に待つ絶望を打ち砕くことも出来るかもしれない。ボクとしては、その絶望は是非打ち砕いてもらいたいね。』

 

「絶望を……打ち砕く。」

 

『……まぁ、今は分からないだろうね。でも知っておいてほしい、絶望を打ち砕く鍵は恐らく君と狩人達、そしてあの妙に上機嫌な英雄王にあるであろうということを。……さて、少し別の話をしようか。』

 

そう言うとフォウは部屋の中にある机の上に移動して3冊の本を置いた。私がベッドから立ち上がってその本の表紙を見ると、赤く燃え上がる炎の絵、白い旗と黒い旗を交差した絵、真紅と黄金の色の旗の絵がそれぞれ描かれていた。

 

「これは……?」

 

『カルデアの歩んだ記録さ。表紙も内容もボクが作ったんだ。君には初版をあげよう。気が向いたら読んでみるといい。』

 

私が頷くと、フォウは私の肩に飛び乗ってきた。

 

『そういえば君、好きな女の子や男の子はいるのかい?』

 

「好きな女の子や男の子……?」

 

『……その顔はまだ分かってないか。そういえば君は宝具が多くてもそれ以外がないんだっけ。くっそ、負けた気分だ!!くそがぁ!!』

 

「ちょっ…痛い痛い痛い!」

 

肩の上でバタバタしないでっ!?

 

『分が悪い……!ここは撤退だ!見てろ、いつかボクの描いた絵で君に劣情を抱かせてやる!美しき獣を舐めるなぁぁぁぁぁ!!』

 

そう言ってフォウは去っていった。

 

「……何だったんだろう。」

 

ひとまず、本は机の引き出しの中にしまっておくことにした。




にゃー……

弓「おかしくなってるぞ、マスター。」

裁「にゃー……」

弓「……ルーラー、貴様もか。」
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