狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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星見の観測者「…そういえば。」

ん?

星見の観測者「彼女の過去は見ないのか?」

過去?

星見の観測者「あぁ。マスター、藤丸リッカの過去は見ないのか?君は。」

あー…そういえばそうだね。

星見の観測者「ここから見ることも容易だが、どうする?」

ん~…一度だけ軽く観測したことあるけど。やってみる?

星見の観測者「観測…?君が設定を組んだのではないのか?」

ん~とね。私はそもそも彼女に対して“預言書の主”という要素しか追加してないよ。その結果、その未来の存在が顕現したけど。その未来の存在も私に多くを語ろうとしないし。だから、彼女のことはほとんど知らないに等しい。まぁ、“私”は知らなくても外の“私”は知っているのかもね。

星見の観測者「そうか…開いてみるか?過去を。」

ん…試運転程度に動かそうか。リコレクションシステム、稼働───起動処理開始。


第138話 海賊、死す

recollection system booting...

 

 

警告を感じるようになったのはいつからだろう。

 

他人に警告を感じるようになったのは、一体いつからだっただろう───

 

あの時。私たちはまだ仲がよかったはず。

 

私は遊びなんてわからなかったし、仲がよかった2人の女の子に少しずつ教えてもらっていた。

 

私には夢なんてなかったし、2人の夢を聞いているだけで楽しかった。

 

ずっと一緒に笑いあう。それが、私達の関係だと思っていたし、私もそれが続くと疑っていなかった。

 

だけど───

 

その2人は、女の子達の中で人気だった1人の男の子に恋をした。

 

私は彼に興味はなかったけど、アドバイスを求められたから自分の知っている情報───噂程度のものがほとんどだけど、それを2人に伝えて改善策も練った。

 

…思えば、その時からだったかもしれない。私の直感が人間に対して警鐘を鳴らすようになったのは。

 

私は警鐘に不安を覚えながら、警鐘を無視した。

 

───その頃から、彼女達は仲が悪くなっていった。

 

アイツよりも私の方が可愛い。アイツよりも私の方が気配りができる。アイツよりも私の方が頭がいい。

 

……他にも、色々あった気がする。

 

その度に私は落ち着かせて、宥めて、なんとか関係が壊れないように仲を取り持った。

 

でも、仲が良いように見せているのは2人が一緒にいるときだけ。

 

離れるとすぐに悪口、自慢が始まる。

 

………事態が変わったのは、それから少しした頃。

 

「お前の方が可愛いから付き合ってやる」

 

件の男の子が私に告白してきた。

 

……正直、吐き気がした。警鐘が強すぎて、私の身体そのものにも異常が出るほどだった。

 

結局、告白されたとしても私は彼に興味も好意も抱かなかった。

 

私は可愛くなんてないし、私より可愛い人はもっと他にいる。大体、恋愛もよくわからない私が彼に合うとは思えなかった。

 

「…ごめんなさい。あなたには私なんかよりも素敵な人がきっといる。私はあなたのことを考えていられないから、新しい出会いを探して。」

 

そう言って私は話を打ちきり、平常運転に戻った。

 

その、次の日から───

 

私は男の子達から“感情のない半機半人”とかって言われて気持ち悪がられた。

 

女の子達から“兄相手に股を開く淫乱”なんて言われて距離を置かれた。

 

男の子達の方は、あの男の子の逆恨みだった。

 

女の子達の方は、仲がよかったはずの2人が流した根拠のない噂だった。

 

なんだろう。

 

人が、生きたまま死んだような気がした。

 

 

中学生前半───

 

 

何もかも興味がなかった時代。

 

 

recollection system end.


 

「ぬふぅ………!逆境こそ燃えるもの……!不屈の精神で攻撃力・防御力アップゥ!!」

 

「不屈のスキルかな?でもあれってスキル持ってる人が倒されないと意味ないよね。火事場の可能性もあるけど。」

 

「と思ったら黒髭、死す!しかぁし!黒い瘴気を放って私は甦るぅ!!気分的に!!」

 

「狂竜化はやめてっ!?あとあれ、感染したら感染したで既にその個体は死の淵に近いらしいから人間としてはもう死んでるに等しいんじゃない?」

 

「マジでござるか!?あれ、でもプレイヤー達って普通に感染したあとも生活してたりするはずでござるが?」

 

「プレイヤーは克服したりウチケシの実で打ち消せるからね。あとは1度でもかかった人は通院か何かしてるんじゃないかな?」

 

「あー…ありえそうっすねぇ。てことは狂竜症、でしたかな?プレイヤーの場合は。あれを発症したあと、プレイヤーは放っておくとゴア・マガラとかシャガルマガラになるんですかな??」

 

「どうだろうね…人間がシャガルマガラになるっていうのはゲーム上じゃ聞いたことないかもね。設定資料とか二次創作あたりならあるかも??そのあたりってどうなの?ミラちゃん。」

 

そのあたりに詳しいミラちゃんに聞く。

 

「……人が獣魔になるかどうか、か……ごめん、今はちょっと…」

 

……?なんだか、いつもよりミラちゃんの歯切れが悪い……?

 

「ならば拙者も克服するべきですな!ウイルスなど敵ではないのですぞ!克服したそのときこそ、拙者はリッカ殿が欲しいのですぞ!!」

 

「極限状態かぁ…いや実際人間だから狂撃化が正しいんだと思うけど。うーん……まぁ、極限状態できたなら別にいいよ?極限化して私達に勝てたなら私を好きにしても。」

 

「マジで!?マジですか!?今なんでもするって言いました!?」

 

「言った…かな?そもそも人間の極限状態ってあり得るのかな……釘は刺すけど、この特異点中だけだからね?」

 

「なぬ!?時間が、時間が足りないでござるっ!!しかしやってみせるでござるよ、なんたって黒髭ですからな!」

 

「せ、先輩が黒髭と完全に意気投合しています……」

 

〈まぁ、久しぶりなノリだからなぁ、ああいうのは。テンション限界突破、こんなん止められねぇわ。〉

 

「うーん…なんだかねぇ。こういうのを残念な美少女っていうのかねぇ。」

 

〈最高じゃないか、残念な美少女なんて…〉

 

「百合カップルは倒れ、我ら黒髭海賊団の将は残り2名!まさに絶体絶命、まさに2乙火事場状態!!だがしかぁし!!拙者自身、負けるともできないとも考えたことはないのですぞ!!」

 

「その心は?」

 

「だって、海賊だもの!海にいる間、我ら海賊は常に命を懸けているようなもの!故に今が楽しければそれでよいのですぞ!」

 

〈今、“だって、人間だもの”的なイントネーション聞こえたような気がするんだが。〉

 

気のせいじゃないかな?

 

「覚えておくがよいですぞ、リッカ殿!人助けだろうと人殺しだろうと我ら海賊はどっちでも人でなしの悪党なのですぞ!負けたほうがクズ、勝ったほうが正義!それが海賊というものなのですぞ!!」

 

「ありがと、黒髭さん~!」

 

「おうふ…尊い…尊死───」

 

金色の粒子出し始めてるけど大丈夫かな?

 

「…と、茶番は置いておきましょうか。」

 

「うん、船長!」

 

「あいよ───そら、覚悟しな!!」

 

船長に任せて私はマシュの近くまで下がる。う~ん…はしゃぎすぎたかな?

 

「せ、先輩…あの黒髭氏と仲良くできるのは素直に尊敬します……」

 

「そう…?…あぁ」

 

私はマシュの頭を撫でる。

 

「触れ合わないとその人の本質っていうのは見えないよ?触れ合っても本質は見えないかもしれないけど。見た目だけに惑わされちゃダメ。見た目が気持ち悪くても、本質はそこまででもないかもしれないでしょ?…まぁ、今回の場合は私と彼の本質が似ていたってだけかもしれないけど。」

 

「そう…ですか。」

 

「みんな違ってみんな良い。まぁ、限度はあるとしても。その限度を越えなければ、仲良くなるきっかけは必ずどこかにあるんじゃないかな。」

 

そこで私は一呼吸置いた。

 

「これ、最初に一緒に戦争に行った友達が教えてくれた考え方なんだよ。狭い視野で物事を見つめたらいけない。広く視野を持って、最初に触れるのは広く浅く。没頭するものができるのなら、深くまで突き進む。楽しいことに触れずにいるのは愚の骨頂。せっかくの人生、楽しまなくちゃ…ってね。」

 

私は空を見上げた。

 

「まぁ。それもあるのか“偽善者”だったり“半機械”だったり…あと何だっけ、“淫乱”?とか言われてたけど。」

 

〈おいちょっと待てそれは流石に見過ごせないぞ…?〉

 

「気にしてないから大丈夫。」

 

〈…そうか…?〉

 

「隠したからっていい人と出会えるかもわからないし、高校時代は“博士”とか“超絶技師”なんて言われてた慕われてたし。まぁ私在籍してたの被服科だったんだけどね。どんな能力があって慕われてたとしても、彼氏はいない───」

 

「先輩、しっかり!?」

 

「大丈夫。気にしてないし。」

 

〈ていうかお前被服科だったのかよ。〉

 

「そうだよ?お兄ちゃん私の高校の姉妹校に在籍してたんだから知ってるでしょ?」

 

〈すまんが長期留学扱いだからそこまで詳しくねぇんだわ。〉

 

あ、そうだっけ…

 

「さて、殺しあうか黒髭、エドワード・ティーチ!」

 

「おうっ!?拙者の名前を呼んだ!?糞髭としか呼ばなかったBBAが拙者を名前で呼んだ!?デレフラグですかな、これは!?」

 

「さすがに海賊として有名なだけはあるってねぇ!少しは見直したよ、リッカに海賊を教えるとはね!よほど気に入ったと見える!」

 

「いや当然でござろう?“オタクに分け隔てなく接する美少女”とかレア中のレア、聖杯を使って作り出すのも辞さないほどのお宝ですぞ??いうなればサイリウムレアですぞ?」

 

「いやそれ知ってる人しかわかんないからー!!」

 

サイリウムレア───略称CR。プリパラシリーズ知らないと多分伝わらない。

 

〈つーかなんでプリパラ知ってんだあいつ。〉

 

「さぁ…?」

 

「アタシにはよくわかんなかったけど───けどリッカは今私の船の船員だ!これがどういうことかわかるだろう!?」

 

「海の宝に正しい持ち主なんていない、早い者勝ちが拙者ら海賊のルール!相手に宝があるなら力づくで奪う、それが海賊!!」

 

「その通りだ!」

 

船長が拳銃をくるくると回す。

 

「来な、アタシの100年後に生まれる海賊───世界一有名な黒髭、エドワード・ティーチ!このアタシが悪魔のヒールで踏んずけてやる!!」

 

「───きゅん。BBAなのに格好いい…拙者が女であれば今頃ロマンチックなBGMとともに服を脱いでいくイベントCGが表示されていたに違いない。地味に差分作ったり指定するの面倒くさいよね、あれ。」

 

「台詞差分は絶対に必要!!細かい表情を変えるのは大変だけど出来た時はかなりの達成感!ファイル指定は絶対パスだと作成者のPCとかから指定されちゃうから必ず相対パスで指定し、差分のある画像を出すならLoadGraphで画像をグラフィックハンドルとして読み込んでおいてからDrawGraphでグラフィックハンドルに読み込んだものを画面上に描画、ScreenFlipで裏画面を表画面にコピー、ClearDrawScreenで消去、描画、コピー、消去を繰り返す!!」

 

「く っ そ く わ し い!!さてはゲームのプログラミング経験、しかもDxライブラリでの経験がおありですな!?もう何が何でもリッカ殿が欲しいのですぞ!!」

 

〈マシュ!リッカの口をふさいで!!ギルが来る前に、早く!!〉

 

「先輩!!」

 

「みゅっ!?みゅぐぐ…」

 

恐ろしく速い口塞ぎ、私じゃないと我愛想念的。

 

『落ち着くから手を放して、マシュ』

 

「あ、はい…」

 

その念話に応じてマシュが私の口から手を放してくれた。

 

「さぁて略奪だ!!どっちが勝つか決着をつけようじゃねぇかBBA!!」

 

「欲しけりゃ奪え、それが海賊の根本だ!!」

 

「ヌルフフフフ!!待っているでござるよ、リッカど───」

 

恐らく賭けられているのは私自身。だったら、私はこれを見届けないといけない。なのに───

 

 

ズキッ!!

 

 

「あぐっ…!!」

 

唐突な激痛と同時に───

 

 

ドスンッ

 

 

「やれやれ、やっと隙が見えやがった。」

 

「───ぐはっ」

 

そんな、声。痛みが収まって、顔を上げると───

 

「───え?黒髭───さん?」

 

「ティーチ!?てめぇ、仲間を───!!」

 

緑の人の槍に貫かれた、黒髭さんの姿があった。

 


recollection system reboot...

 

 

色々な習い事をした。

 

器楽、英会話、声楽、水泳───

 

様々な武道に触れた。

 

剣道、弓道、柔道、合気道───

 

色々な賞も取った。

 

描画、木工、格闘技───その他諸々。

 

 

「お前は私達の自慢の娘だ。」

 

「どうか、お兄ちゃんのようにはならないで。」

 

このころ、私はお母さんの言う“お兄ちゃん”がどんな人かよくわからなかった。

 

“お兄ちゃん”と関わることはなかったから。

 

“お兄ちゃん”はほとんど家にいなかったから。

 

私はお父さんとお母さんの願いを応えたい一心で、色々なことを頑張った。

 

なんでもできたから、やれることはやった。

 

習い事は増えていって、勉強も難しくなっていった。

 

───やがて、体調を崩した。

 

「今はゆっくり休め」

 

「治りを待ちましょう。」

 

快復したら、また再開される。

 

頑張ったけど、またすぐに体調を崩した。

 

体調を崩して、快復して───また体調を崩して。

 

それが、4回くらい続いた頃だと思う。

 

「いい加減にしやがれ!!」

 

熱を出して寝込んでいた日の夜。誰かの大声で目を覚ました。

 

「あんたたちがどんな立場だろうと関係ねぇ!子供は親の所有物じゃねえんだよ!!」

 

襖を小さく開けて、隣の部屋をみる。そこには、お父さんとお母さん。いつもすれ違うだけだった“お兄ちゃん”の姿があった。

 

その日、誇張もなしに私は“お兄ちゃん”の声を初めて聞いた。

 

お父さんが何かを話しているのは分かった。けど、私の意識は朦朧としてて、うまく聞き取れなかった。

 

「───くそったれが!」

 

大きな音を立てて、“お兄ちゃん”は部屋から出ていった。

 

「───使えぬ奴め。」

 

「えぇ、そうですね。彼は使えない───全くもって使えない。」

 

“使えない”───その言葉に、私は動揺した。

 

「……おかあ、さん?」

 

「あら…起きたのね?」

 

「…気持ち悪い……」

 

「なら休んでいなさい。」

 

「うん…」

 

私は答えて襖を閉め、布団に潜り込んだ。

 

「…使えない子達。あっちがダメならこっちはと思ったのだけれど。あっちは反発する、こっちは軟弱。どうしたものかしら…」

 

「───」

 

使えない───軟弱で、使えない。

 

すぐに体調を崩すことを言っているのだと思う。

 

───だったら、私は。

 

体調を崩さなければいい。

 

体調を崩しても、普通に見せかければいい。

 

どんなに辛くても、全て押し潰してしまえばいい。

 

押し潰して、圧縮して、捨て去って───

 

もう絶対に、体調なんて崩さなければいい。

 

弱音なんて、吐かなければいい。

 

耐えて、耐えて、耐えて───

 

 

 

───いつからだろう。

 

私は───

 

 

 

 

体調不良に、病気にならなくなった。

 

 

 

 

 

小学生の頃───

 

 

私が病に強くなった時代。

 

 

recollection system end.






星見の観測者「…これは。」

……うん。

星見の観測者「…創り手。」

ん?

星見の観測者「すぐに君のいた場所へ帰れ。君ならわかるだろう、この過去が危ないと。」

まぁ、ね。

星見の観測者「予定が変わるのは申し訳ない。すぐに君が帰れるようにしよう。」

よろしく。…さすがに、これは全部調べ上げる。

星見の観測者「これは持って帰れ。」

……なんで数日で新しい服……

星見の観測者「餞別、というわけでもないが。」

そう…

オケアノス終了後に召喚するサーヴァントのクラスは?

  • 騎兵、槍兵、弓兵
  • 弓兵、弓兵、弓兵
  • 暗殺者、裁定者、剣士
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