狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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正弓「修復完了……!再起動処理、開始します!」

正剣「時間転移反応感知。反応数60、全て敵性体───それから時間跳躍攻撃反応。」

裁「時間跳躍攻撃は私が防ぐ。ギルは時間転移してきた奴らをお願い。」

弓「任せよ!…しかし、妙よな。大群ではあるが1つ1つの耐久が低すぎる。」

裁「“記憶への侵食者”…だっけ。敵の名前は。」

弓「うむ。リコレクションシステム───追憶システムは部分的に時空間へと干渉し、さらにはその対象の記憶───歴史の波へと干渉するもの、であったな。」

裁「干渉してる時、その記憶は不安定で、不安定な記憶を獲物とする“記憶への侵食者”が現れる───記憶を侵食されないために私達はそれらを止めなくちゃいけない。侵食された場合、修復される可能性もあるが修復されずに致命的な欠陥となる可能性もある、だったね。」

弓「まぁ、最悪の場合を考えておいた方がよかろう。常に最悪の場合を、疲れはするが警戒するに越したことはない。」

正剣「反応増大。来るよ。」

弓「ふ、準備などとうに出来ておるわ───その様な場所、間合いだヴァカメ!!」

裁「エクスカリバーはやめなよ……アルトリアさんの剣があれだと思うと…ねぇ。」

弓「……言うな。辛くなってくる。」

裁「───開け、時の門よ。全て流転し、転回し、また逆転し、停止せよ。回り廻るは時の回廊───歪み止まるは時の歯車。起動───“時の理喪いし廻廊(タイムレス・コリドー)”」

正弓「再起動準備完了しました───そういえばお母さん」

うん?

正弓「どうして急に追憶を?見てきた以上、危険な記憶なのは分かる。だけど───お母さんってそれだけで追憶に踏み切るの?」

……鋭いね、正のアーチャーは。

正弓「なにか理由…あるんだね?」

……負の感情。

正弓「え?」

負の感情……呪詛。ずっと気になってたの。なんで、リッカさんに出力されたのか。

正弓「リッカさんに……呪詛が出力?」

うん。正のアーチャーや正のセイバーみたいに私が作り出した子達や、本編中のルーパスさんやリューネさんみたいに元々設定が限りなく薄い子達に出力されるならまだ分かる。でも、今回の場合“藤丸 立香”として既に定義されているリッカさんに出力された。…私がリッカさんを弄ったのは“預言書の主か否か”。ただそれだけ。

正弓「じゃあ、この運命には……」

私はなにも手をつけてない。

正弓「……なるほど。リコレクションシステム、再起動します。」


第140話 追憶深化(ディープ・リコレクション)───友達と日常

recollection system reboot...

 

それからというもの、私達は放課後になると彼女の家に向かうようになった。

 

「全年齢版ですが18歳以上推奨のゲームもやりましょうぞ。エロゲ、ギャルゲなども一通り買い揃えてありますのでな。」

 

「表現に慣れましたら本格的に18歳以上推奨の方に移りますわよ。」

 

あくまで“推奨”、あくまで“対象”だから別にそこまで気にしないようだった。…本来はダメなんだろうけど、私も華紬さんも春風さんもそこまで抵抗はなかった。華紬さんに至っては、逆によく観察して新しいコーディネートの起点にしてたみたい。

 

───ピンポーン…

 

「……?お客様ですの?」

 

数日経ったある日、この家を訪ねてくる人がいた。

 

「あ、私も行く……!いい?リナリアさん。」

 

「……リナリアで良いですの。さん、などと要りませんわ…と、何度か申し上げたはずなのですが。」

 

「あ…ごめん、リナリア。」

 

この頃はまだ、さん付けするのが癖になってて、その度にリナリアとアリウムにちょっとだけ呆れられてた。

 

───ピーン、ポーン…

 

「と、お客様をお待たせしていましたわね。行きましょう、フジマル様。」

 

その言葉のあと、私とリナリア、途中で合流したアリウムは玄関に向かった。

 

「えーと……あぁ、フジマル様のお兄様でございますね。」

 

ドアアイから外を見たリナリアさんがそう言って、私に出るように促した。

 

───ガチャ

 

「ん?誰か、って言うのも聞かずに開いたな───って、立香じゃねぇか。」

 

「お兄ちゃん……?どうして…?」

 

「どうしてここに、ってことか。少し久々に家に帰ったら家にいなかったからよ。勘を当てにして探し回ったらここに辿り着いたんだが。いやマジでいるとは思わなかったが。」

 

「そう……」

 

「これは……お前の友達の家か?」

 

「うん。」

 

「……そうか。」

 

「フジマル様?お兄様の方にも上がってもらってはいかがですか?」

 

家の中からリナリアがそう言った。

 

「いいの?」

「いいのか?」

 

言葉が被って、家の中からクスリと笑う声が聞こえた。

 

「仲がよろしいのですな。どうぞ、構いませぬぞ。もちろん、フジマル様のお兄様が良いのでしたら、ではありますが。」

 

「別にいいが…立香はどうする?」

 

「…大丈夫。」

 

お兄ちゃんなら大丈夫。直感がそう告げていた。

 

「そうか。じゃあ、お言葉に甘えて入れさせてもらうとするか。」

 

そう言ってお兄ちゃんは私と一緒に家の中に入った。

 

「ようこそ、フジマル様のお兄様。」

 

「歓迎いたしますぞ。とはいえ、急な来客となると準備が足りないのですがな。」

 

「───」

 

「………フジマル様のお兄様?」

 

「お兄ちゃん?」

 

お兄ちゃんはこの時、信じられないものを見たように目を見開いていた。

 

「───はっ。いや、すまねぇ。いつも妹が世話になってる。藤丸 六花だ。立香と名字が被るから、六花って呼んでくれ。」

 

「分かりましたわ───っ」

 

お兄ちゃんの手を握った途端、リナリアとアリウムの表情が少し変わったのが見えた。

 

「リナリア……?アリウム……?」

 

「……いえ。なんでもありませんわ。ねぇ、アリウム。」

 

「うむ。拙者も何もありませぬ。」

 

嘘をついているのが分かった。…だけど、何か理由があるんだろうなと思って深くは追求しなかった。

 

「すまねぇな。急な訪問で。」

 

「いえいえ、構いませんわ。ムツカ様もいつでもいらっしゃってくださいませ。流石に、不在の時は何もできませんが。アリウム?」

 

「追加でお茶とお茶菓子の用意をしてきますぞ。ムツカ様、ごゆっくりおくつろぎくださいませ。」

 

「あぁ…すまん。」

 

少し謎が残ったけど、その後はお兄ちゃんも混ざって一緒に遊んだ。

 

「提供される側ではなく、提供する側になってみるのも一興ですわ!歌ってみた、踊ってみた……あとはゲーム実況などに興味はおありですか?」

 

「私、ゲーム実況やってみたい!」

 

「私もやってみたいわ。」

 

「ハルカゼ様とハナツムギ様はゲーム実況ですのね。」

 

「ゲームを作る、というのも良いですな。プログラミングなどやってみませぬか?」

 

「プログラミングのことなら任せろ。基本から応用まで、きっちり教えてやるよ。」

 

「おや。ムツカ様はプログラムの経験がおありですか。」

 

「現役学生だがAI作ろうとしてる人間舐めんじゃねぇっての。」

 

春風さんと華紬さんはゲーム実況。私は大体全部やった。習い事とかで鍛えてたから大丈夫だと思ってたら、結構体力使ってくたくたになった。

 

春風さんがゲーム実況でやるのは“星のカービィ”シリーズのTA(タイムアタック)RTA(リアルタイムアタック)。ちゃんと実況動画とかとかも作ってたけど。華紬さんがやるのは“わがままファッション GIRLS MODE”とかのお着替え系が主だった。私は…“ソードアート・オンライン”シリーズや“ファンタシースターオンライン2”、“クラッシュ・バンディクー”とかのアクションゲーム系を実況してた事が多かったかな。

 

動画の編集なんかはほぼほぼリナリアとアリウムがやってくれて、春風さんの名前として“セイラ”。華紬さんの名前として“ニキ”。私の名前として“ハナ”。リナリアの名前として“姫金魚”。アリウムの名前として“葱坊主”。お兄ちゃんの名前として“ユキ”を設定して動画のキャラクターとして、私達として動かしてくれた。

 

お兄ちゃんもキャラクターとしている以上、活動には参加してくれて、高音を使って低音を使った私とデュエットをしてくれた。お兄ちゃんには“本当に男の人?”とか、“彼女は男せ…(ry”とかそういうコメントが来てて、私には“本当に女の子!?”とか、“彼は女せ…(ry”とか、そういうコメントが来ることがあった。二人あわせて凸凹声帯コンビ、なんていわれたことも。私は嫌だとは思わなかったけど、お兄ちゃんは苦笑してた。

 

「ここまで有名になるとは思いませんでしたわね……」

 

「そういえばお嬢様、そろそろアレの時期ではありませぬか?」

 

「……そういえばそうですわね。」

 

「あれって?」

 

「……戦争(デート)ですわ。夏と冬のお祭りであり、戦争であり───私共にとって大切な一大イベントですの!」

 

「戦争って書いてデートって読むなよ…あれは普通に戦争だろ。」

 

「なんで分かりましたのっ!?」

 

「やっぱ読んでたな……直感。ただそれだけだ。」

 

「へぇ…いってみたいけど、行けるのかな…」

 

「無論、今年のチケットも全員分取ってありますぞ。夏は地獄釜の中に放り込まれるようなものですので、お気をつけを。まぁ、拙者ら地獄釜に入った経験など無いのですがな。」

 

「ふふっ。だったら、動きやすい服装の方がいいよね?」

 

「そうですなぁ。動きやすくて、通気性の良いものの方が良いでしょう。ハナツムギ様、恐れ入りますがフジマル様、ハルカゼ様、ムツカ様のコーディネートの方、お願いできますかな?」

 

「えぇ、任せて。」

 

そして、当日になって───

 

「こんな感じ…かな?スカートやワンピースじゃなくてショートパンツ、トップスは白の半袖ブラウスで、透けても体の色が見えないように生地が薄めの水色の下着にしてみたんだけど。靴もミュールとかじゃなくてシューズで……結構軽装にしてみたよ。」

 

「すごい……!ありがとう、華紬さん!」

 

お礼を言ったら、華紬さんはクスリと笑った。それに私が首を傾げると、華紬さんは口を開いた。

 

「ニキでいいよ。」

 

「え?」

 

「私の名前。ニキでいいよ。多分呼びにくいよね?華紬さん、って。」

 

「えっと…慣れちゃったからそこまで……」

 

「…言い出すの、遅かったかな…?」

 

「う、ううん!でも…いいの?」

 

華紬さんはその言葉に頷いた。

 

「前の学校でもニキ、って呼ばれてたの。今の学校だとみんな華紬さん、って呼ぶからすごく違和感があって。なんでだろう、って思ってたら、そういえば誰にもいいよって言ってなかったなと思って。だから、今の学校に来てから私の事をニキって呼ぶのは多分…」

 

藤丸さんになる。その言葉は実際には言われなかったけど、理解できた。

 

「……じゃあ」

 

「?」

 

「私もリッカでいいよ。藤丸さん、もなんとなく呼びにくいでしょ?」

 

「リッカ……?藤丸さんの名前ってリツカだよね?」

 

「そうなんだけど……お兄ちゃんがね。本当に信頼した人に、本当に信じれる人だけこの名前を教えろ、って。」

 

「本当に、信頼した人……?」

 

「なんでも……魔除けになる?とか。」

 

よくわからなかったんだけど、って言ったら彼女も困惑してた。

 

「華紬さんは名前で呼ぶのを許してくれたから……それと交換、ってわけでもないけど。……どう、かな?」

 

「……分かった。信頼してくれた証…受けとるね。これからもよろしくね、リッカ。」

 

「うん。よろしくね。その……ニ…ニ…ニキ!」

 

「ふふっ。プリパラのみれぃを初めて呼び捨てにするらぁらみたい。」

 

「あ…確かにそうだね。」

 

「…ほら、待ってるよ。私も少し着替えたら行くから先に合流して待ってて?」

 

その後、私は待ってくれているみんなと合流して、それから少しして華紬さん───改めニキと合流して、リナリアの言う戦争に向かった。

 

───はっきり言って、地獄だった。

 

人混みに流されて行ったりきたり。特に春風さんは私達の中でも小柄な方だったから、かなり流されてはぐれて迷子になって……お兄ちゃんが見つけて連れて帰ってくるまでがテンプレだった。

 

それでも。目的だったものが手に入ったときはすごく喜んだ。

 

「フジマル様は何を?……ふむふむ、全年齢版ですか。」

 

「まだ私、ちょっとだけ苦手だから……アリウムは?」

 

「あらゆるジャンルですな!ただぶっちゃけ買いすぎたのです、動くことができませぬ皆様助けて───」

 

「むりむりむりむりた、たおれるたおれるきゃぁぁぁぁぁ!!?」

 

「「きゃぁぁぁぁぁ!!?」」

 

「買い込みすぎだろがぁぁぁぁ!!」

 

ちょっとした大惨事になったけど、最終的にはなんとかなった。ちなみにリナリアは最初から埋まってたみたい。

 

その後、リナリアの家に帰ってきて。リナリアとアリウムが寝ている間に春風さんの事を星羅って呼ぶことになって。春風さん───改め星羅はニキのことをニキって呼ぶようになって、私の事をリッカって呼ぶようになった。お兄ちゃんも同じで、ニキのことをニキ、星羅のことを星羅って呼ぶようになった。

 

「さて、皆様!茨城に行きますわよ!そこで戦争開始ですわ!」

 

「またコミックマーケット?でも、コミックマーケットは少し前にあったばかりだよね……?」

 

「ふっふっふ…今回の戦争は戦争は戦争でもコミケとは全く違うものですわ。」

 

その言葉に私達が首を傾げると、リナリアはゴーグルを掲げた。

 

「行きますわよ!もう1つの戦争───それ即ち、サバゲーですわ!!」

 

夏はかなり暑かった。

 

ゴーグルを被って、モデルガンを持って。迷彩服一式、全員分あって───それぞれが使いやすそうな武器を選んで、戦い抜いた。

 

最終的に落ち着いた武器種は私がアサルトライフルと二丁拳銃。ニキがスナイパーライフル。星羅がサブマシンガン。リナリアがショットガン。アリウムがサブマシンガン。お兄ちゃんがアサルトカービンと二丁拳銃だった。全員10歳以上対象の武器で戦いに向かってた。

 

「隙あり───」

 

───パスッ

 

「───え?」

 

なんでか分からないけど。私は私を襲おうとしている敵の位置が良く分かった。

 

「…フジマル様……ずっと思っていましたが、貴女様は空間把握能力がずば抜けておりますな。」

 

「空間把握能力?」

 

「えぇ。それと、敵の気配察知能力でしょうか。相手が飛び出し、フジマル様を撃とうとしたとき既に、フジマル様は敵に銃弾を当てているのですぞ。普通でしたらそのようなことできませぬぞ?ましてやフジマル様は初心者なのです、それができる方が異常とも言えますぞ?」

 

「私共としては気にはしませんが。攻撃の要がフジマル様とムツカ様、ハルカゼ様になっているのはちょっと悔しいところもありますが…」

 

「私に至っては、何もできていないもの。」

 

「そんなことないよ。ニキの牽制射撃、助かってるよ?」

 

「当てられずとも牽制するもの良いのですぞ。一瞬の怯みが命取りにもなりますからな。」

 

またある時は、お兄ちゃん以外の人がリナリアの家に訪ねてくることがあった。

 

ピンポーン───

 

「久しぶりの来客ですわね。出てきますわ。」

 

「私も行く!」

 

「構いませんわ。行きましょう。」

 

玄関についてリナリアがドアアイを覗くと、少し怪訝そうな顔になった。

 

「月詠先生……ですわね?突然ですわね、どうしたのでしょうか。」

 

「月詠先生?どうして?」

 

「さぁ…分かりませんわ。一先ず出てみますわ。」

 

そう言ってリナリアが出ると、少しして話し声が聞こえた。

 

「すまん、何かしてたか?」

 

「いえ。そこまでは…なにかご用ですか?」

 

「家庭訪問なんだが……通達したはずだろ?」

 

「家庭訪問?私には連絡が来てはいませんが……」

 

そこまで言ったところで、2階からアリウムがかけ降りてきた。

 

「お嬢様!申し訳ありませぬ、家庭訪問の予定が入っているのを忘れておりました!!」

 

「………ア~リ~ウ~ム~?」

 

「…は、はい」

 

「重要なことは早く伝えなさいと何度も言ってますわよねぇっ!!?」

 

「はい…申し訳ありませぬ。」

 

「まったく…」

 

「あ~……なんだ、タイミングが悪いなら出直すが。」

 

「…構いませんわ。応接間の方へご案内致します。」

 

「すまん……アリウムにだけじゃなくてリナリアにもプリント渡しておきゃよかったな。」

 

「貴方様も原因ではないですか、それは……」

 

「すまねぇ……」

 

そう言って先生は家の中に入ってきて、私と目があった。

 

「……藤丸?それに、この靴の量は…他にも誰かいるのか?」

 

「フジマル様のお兄様にハルカゼ様、ハナツムギ様がいらっしゃいますが?」

 

「春風と華紬……ここにいたのか。」

 

「はて?」

 

「いやよ。春風と華紬の親が“遅くまで娘が帰ってこない”って心配してるからよ。どうしたもんかと悩んでたんだが。」

 

「心配いりませんわ。私共がついておりますので。」

 

「なら安心だな。……と。」

 

月詠先生は私に近づいてきた。

 

「……ん。覇気が戻ったな。元気になったようで何よりだ。」

 

「え?」

 

「俺の赴任初日はマジで酷い顔してたからな、藤丸は。ま、その顔になれたならほとんど心配はいらねぇだろ。まぁ…」

 

そう言って先生はポンッ、と私の肩を軽く叩いた。

 

「人生ってのは長くも短い。張り詰めたままだといつかプツンと切れるぜ。中学生という時期からみれば人生はまだまだ長いんだ。肩の力を抜いて生きていけな。」

 

「…はい。」

 

「ま、困ったことあったらいつでも言えよ。今年赴任して今年度で離任だから、ま~…発言力はねぇけどよ。話の聞き相手くらいにはなってやるよ。」

 

「……先生って、私のお兄ちゃんみたい。」

 

「お前の兄か……まぁ、いいけどよ。」

 

「先生?応接間はこちらですわ。」

 

「おっとすまねぇ…そうだ、これは全員で食ってくれ。」

 

「……なぜそのようなものを?」

 

「流石に急に決まった家庭訪問で休日にやるんだったら俺は持ってくるっての…って言いたいところだが、本来なら知り合いと遊ぶつもりで手土産として買ったんだが家庭訪問入っちまったし間違えて持ってきちまったからよ。腐るのも嫌だし、よかったらもらってくれ。」

 

「はぁ……」

 

「応接間の準備が出来ましたぞ。どうぞ、こちらへ。」

 

そう言われてリナリアとアリウム、先生は応接間の方に向かった。以来、先生もプライベートで遊びに来るようになったんだけど。

 

またある日は、お兄ちゃんが声のサンプルを取りたいって言ってた。

 

「残り2人…なんだけどよ。試作のAIができたからその声をこの中の誰かに当ててもらいたいんだ。」

 

「残り2人…ムツカ様はAIでも人間のように数えますのね。」

 

「?当然だろ。人工的に造られたって言ってもそいつらは生きてるんだからよ。構造的に違ったとしても、肉体を得れば───あるいは仮想空間みたいな場所だったら。それはもうほとんど人間と変わらねぇだろ。」

 

「そう…ですわね。」

 

「…まぁ、完全に人間のようにするにはまだ技術も何もかも足りないんだけどよ。この辺は試行錯誤あるのみなのかね。で、誰にする?」

 

「ふむ…ならば公平に、じゃんけんで決めましょうぞ。」

 

そのあとじゃんけんをして。勝ち残ったのは、ニキと私だった。

 

「まぁ元々立香は追加する予定ではあったが……えーと……AI番号は3番、名前は何がいい?」

 

「…じゃあ、“リツ”で。」

 

「“ハナ”じゃねぇのな。おk。」

 

それからサンプリングをして、少し音を弄って確かめて、ニキの番になった。

 

「AI番号は5番。名前は何にする?」

 

「“ニキ”がいいわ。」

 

「…動画に登録するときも思ったがそれ本名だろ?いいのか?」

 

「えぇ。なんとなく、落ち着かないから。」

 

「そうか…いいならいいんだけどよ。」

 

そう言ったあと、サンプリングをして、お兄ちゃんが少し音を弄って確かめてた。

 

「……なんだろうな。とある声優さんの声に非常に似てるな。」

 

「そう?」

 

「む…ムツカ様も思われましたか。ハナツムギ様の声があの方に似ていると。」

 

「あぁ…非常に似てる。同一人物なんじゃねぇかってくらいにな。…まぁ、声が似てるくらいあり得なくもねぇか。」

 

後日、お兄ちゃんがAIに声を組み合わせて見せてくれた。

 

〈はじめまして。わたしはリツ。よろしくお願いします。〉

 

〈私はニキ。よろしくね。〉

 

お兄ちゃんのピンク色のパソコンから流れるそれは、確かに私達の声だった。

 

「まだあまり応答は出来ないんだがよ。聞かれたことに答えるようなシステムになってるから、答えを用意しておかないといけねぇ。最終的に、俺が目指すのはSAOに出てくる“A.L.I.C.E.”だからな。」

 

「“A.L.I.C.E.”……人工高適応型知的自律存在───Artificial Labile Intelligent Cyberneted Existenceだっけ。」

 

「……まぁ、そうだが。前から思ってたけどお前記憶力高いよな……」

 

「そう……?」

 

そんな感じで、色々やってたのが日常だった。

 

学校にはちゃんと行った。リナリア達との約束だったし。

 

「2次元を現実の核にしてはいけませんわ。私達が生きているのはあくまでもこの現実なのです。不登校になるのが悪いとは言いません。ですが、不登校と2次元は心に余裕を持たせる休憩時間と考えるのですの。」

 

「……うん。」

 

「辛いか?リッカ。」

 

「ううん、大丈夫。」

 

「無理はしないでね。リッカちゃんの席の近くには星羅ちゃんもニキちゃんもいる。私はそこまで力になれないけど、話くらいならいつでも聞くから。」

 

「うん…ありがとう、月詠先生。」

 

「というか…月詠先生の女装はいつ見ても見事ですな。まるで最初から女子だったかのようですぞ。」

 

「本当。私もコーディネートしてて楽しいもの。」

 

「私もコーディネートされてて楽しいよ。ただ、本質は男性だからやりにくいところはあると思うけど。」

 

月詠先生は女装をするとまるで人が変わったかのように振る舞った。今の状態がまさにそう。この時は陽詩(ひなた)じゃなくて、陽菜(ひな)って名乗るんだけど。

 

そして、私は卒業まで学校に通い続けた。

 

イジメとかは前から流してたけど、前とは別の支えがあったお陰でさらに流すことが可能になった。

 

学校にいる間はほぼ常に無表情を貫いて、ニキ、星羅、リナリア、アリウム、月詠先生だけの時だけその仮面を解いた。

 

イジメをする人達はそれが気に食わなかったみたいだけど、その私を含めた6人だけじゃないときは完全に無表情、無反応を貫いていたから、それに飽きたのかいつの間にかイジメをする暇な人間はいなくなっていた。

 

リナリアとアリウムは、そもそも容姿の面で強烈すぎて関わる人はいなかった。

 

ニキは他の人とも普通に接していたけど、コーディネートの素晴らしさを語り続けて相手を退かせるっていう強引な方法で対処していた。

 

星羅は持ち前の元気さと超早口のマシンガントーク、あとは軽めの実力行使で相手を黙らせていた。ちなみに私はマシンガントークも聞き取れた。

 

月詠先生は流石先生というか…“先生”という立場だからなのか分からないけど、私をイジメていた人たちも関わろうとはしなかった。

 

お兄ちゃんは論外。そもそもの話高校生だったから、手が出せなかったんだと思う。

 

そんなこんなで皆勤賞だったから、私は代表として卒業生答辞をしたのを覚えてる。

 

ちなみに、リナリアと初めて会ったときの公欠は月詠先生に誘われて入った部活の用事として処理してくれてたらしい。もしかしたら、月詠先生は最初から私がリナリアと出会うことを予測・予知してたのかもしれない…なんて。でも、十分にあり得そうだとも思えるのが月詠先生の少し怖いところだった。

 

私をイジメていた人達は、校外で色々やらかして謹慎処分を受けてたらしい。…何してるんだろう、って正直思った。内容を聞くのは面倒だったし、聞かなかったけど…月詠先生…じゃない、プライベートで女装してたから陽菜ちゃん、だっけ。陽菜ちゃんがすごく疲れた表情してたから本当に色々やらかしたんだろうなって思った。実際のところ、陽菜ちゃんの年齢は私達と結構近いみたい。教えてくれなかったけど、お酒は飲んでたから20歳は越えてるらしい。私達の前じゃあまり飲まなかったけど…本人曰く、お酒は苦手なんだって。

 

そして、桜が舞う木の下───

 

「終わりましたわね…」

 

「うん、終わったね。」

 

「俺のここでの勤務も終わりだな。やっぱ1年って結構短いよなぁ…」

 

月詠先生は今年だけの勤務。だから、私達と共にこの学校を去ることになる。

 

「綺麗な桜の雨ですわ。一緒に歌いませんこと?」

 

「「「「しろいひかりのな~かに…」」」」

 

「それ違う曲ですわよ。月詠先生も悪ふざけで乗らないんですの。というかなぜ息ぴったりで同じ曲なのです?」

 

それに関しては偶然。でも、ここから進路は分かれることになると思う。

 

「フジマル様、ハルカゼ様、ハナツムギ様は進路はお決めになっておりますか?」

 

「私は…高校に行って一人暮らし、かな?」

 

「ほう?」

 

「寮とかもいいんだけど。でも、今までリナリアに学んだ技術とか活かしてみたいから。アルバイトとかしながら、高校に通おうと思う。」

 

「ふむふむ。ハルカゼ様はどうなさいますか?」

 

「私は……うん、リッカと同じかな?でも、私は高校に近いから…多分、実家の方から通うことになると思う。今まで実家とは別の家を用意してもらって、お母さん達には実家とその家を往復してもらってたから。少しお母さん達の負担が減るのと同時に、恩返しも出来たらいいなって。ほら、前に話したでしょ?私、お母さん達の本当の娘じゃないって。」

 

そういえば、星羅は星羅のお母さん達の養子なんだっけ。名字は偶然同じ“春風”だったんだって。

 

「正体の分からない私に、どこから来たのかすらわからない私に。ここまで優しくしてくれて…本当に感謝してるんだ。だから、私もリッカとほとんど同じだと思う。」

 

「そうでございますか。ハナツムギ様はどうでしょう?」

 

「私も高校に行くわ。もっとデザインの事とか知りたいの。私…スタイリストになってみたいのよ。」

 

「スタイリスト…ですかな。」

 

「えぇ。まだ、そこまでの力はないけれど。もしかしたら、リッカに追い抜かされちゃうかもだけど。それでも…私は、お洋服でみんなを笑顔に出来たらいいな、って。」

 

「ハナツムギ様らしいですな。」

 

「全員、学校からの推薦出てんだよな…しかも俺の次の勤務地が藤丸、春風、華紬の行く高校だっていうな。」

 

「そうなの!?」

 

「あぁ。俺は特に何もしてないんだけどよ。春風はともかく、藤丸と華紬は会う機会が少なくなるかもだけどな。」

 

進路として、私とニキは被服科に。星羅は普通科に行く事になってる。ということは、月詠先生は普通科の先生として赴任することになるのだと思う。

 

「ふむふむ。皆様よく考えられているようですわね。と、なりますと……」

 

リナリアが私達に鍵を渡してきた。1つ1つ、形が違う。

 

「受け取ってくださいまし。私共の家の鍵ですの。」

 

「「「「……ふぇ?」」」」

 

「拙者らのこれからには必要ないものですからな。服達と同じように、皆様で使ってくだされ。」

 

「……いいの?」

 

「構いませんわ。気になっているのかもしれませんが、鍵の形が1つ1つ違うのはあの家はそういう仕様なのですわ。あの家は8の鍵がありまして、それぞれの鍵で開くことが出来るのです。私共も完全に原理を理解しているわけではありませんが、そういう仕様なのです。」

 

「へぇ…」

 

そういえば、リナリアとアリウムはこれから世界旅行に行くらしい。色々な場所に日本のサブカルチャーを広めたいとか。

 

「私達も行っちゃだめ?」

 

「ダメですわ。大きい目的もなく、当てもない旅に出るのは中学校卒でやることではありませんの。」

 

「リナリアが言えることじゃないわ、それ。」

 

「そうですわね。安心してくださいまし。私達の旅路、皆様にお伝えしますわ。」

 

「…うん」

 

「フジマル様。ハルカゼ様。ハナツムギ様。そして、ツキヨミ様。これからの人生も楽しんでくださいまし。そして次にお会いしました時には、私共のお話や…皆様のお話をお聞かせくださいまし。」

 

「……リッカ。」

 

「「?」」

 

「リッカでいいよ。ずっと…言い出せなかったんだけど。フジマル様、じゃなくてリッカでいいよ。」

 

「私も…ハナツムギ様じゃなくてニキでいいわ。」

 

「私もハルカゼ様じゃなくて星羅でいいよ!」

 

「……分かりましたわ。それではリッカ様、ニキ様、セイラ様。これからの人生、本当に楽しんでくださいまし。」

 

「様付けの方はお許しくださいませ。拙者らの癖なのでござる。リッカ様達のこと、忘れませぬぞ。」

 

「…うん」

 

「うん!」

 

「えぇ……あっ。」

 

何かを思い出したようにニキが声を出して、そっちに全員の視線がいった。

 

「……これ。みんなに。」

 

そう言ってニキが鞄の中から取り出したのは、10個のペンダント。私達の髪色がペンダントの色になっているのと、私達の髪色とニキの髪色で半分ずつペンダントを染めているもの。

 

「これは…なんですの?」

 

「私がデザインして作ったの。簡単なものしか作れなかったけど、皆で共通の物を持ちたいと思って。私も自分の色のペンダント持ってるわ。」

 

そう言って見せてくれたのはニキの髪色のペンダントだった。

 

「簡単なものだけど、時間がすごくかかって…みんなの色を入れたかったのだけど、1つだけしか作れなかったのよ。」

 

そう言って見せてくれたのは8色の色に染まるペンダントだった。それを見せてニキは少し残念そうにしていた。

 

「…でしたら、そのペンダントはニキ様がお持ちくださいまし。」

 

「え……?」

 

「私共のペンダントの色が集まる先。私共が集まる先という象徴のようなものですわ。私共の意思はニキ様に集まり、ニキ様から全員に届く───そんなイメージなのですわ。最も、本当にそんなことが起こるかは疑問でございますが。」

 

「……私から、届く。いいの?」

 

「私は構いませんわ。皆様はどうですの?」

 

私もそのペンダントはニキに持っていてほしかった。私達は半分の色のペンダントを持てるけど、ニキはそれを持つことが出来ないから。ニキの髪色とニキの髪色で半分ずつ、それはニキの髪色だけになってしまうから。

 

みんな同じ考えみたいで、リナリアの意見に同意した。

 

「みんな……ありがとう…!」

 

「……さて。それでは…」

 

「そうですわね。」

 

「うん。」

 

「うん!」

 

「えぇ!」

 

「あぁ。」

 

「「「「「「「また、会おうね!」」」」」」」

 

そんな感じで、私達は笑って別れた。

 

 

中学生生活、最後の頃。

 

───空見て笑って、それぞれの道を歩みだした話。

 

recollection system end.




正弓「リコレクションシステム、ダウン……!修復作業開始します!」

正槍「時間かかるね……お相手側も本気だしてきてる。そろそろ総大将が出てきてもおかしくないよ。」

弓「ふん、その様なもの蹴散らしてくれる!」

裁「マスター達を守るのは私達───絶対に負けない。」

オケアノス終了後に召喚するサーヴァントのクラスは?

  • 騎兵、槍兵、弓兵
  • 弓兵、弓兵、弓兵
  • 暗殺者、裁定者、剣士
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