狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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正弓「リコレクションシステム修復完了───っ!?こ、これは!?」

どうしたの!

正弓「記憶の侵食者───その本丸、総大将が出現!この数値───鍵のルーラーさんが危険です!」

…!“Memory Eater The Break Collapse”…!!

正槍「どうするの?」

……正のセイバー。ルーラーとギルに前線から戻るように指示して。

正剣「…了解」

ほんと───ついてない。正のアーチャー?

正弓「?」

ここが追憶の正念場。今回の追憶観測の最後になる。…あとのこと、頼んだよ。

正弓「…!」

裁「ただいま戻りました───大丈夫なの?」

弓「確かにこの場所には強い結界が張ってあるだろう。しかし、敵はその程度で止められるなどとは思わぬが?」

大丈夫。…私が、何とかするから。

裁「私が…って。」

───アーチャー。任せたよ。私の代理。

正弓「…わかりました。ただし。無理をしたこと、あとできっちり怒らせていただきますからね。」

お手柔らかに。それじゃあ───現実時間でざっと、3ヶ月。アーチャー、私の全権限を貴女に任せます。

正弓「…承諾。リコレクションシステム起動準備、完了しました。」

……さてと。


───ガインッ!


来たみたいね。せっかちなんだから。

魔物「ケ…ケケ…ケケケ……ミツケタ!ミツケタ!ミツケタミツケタ!!セカイノゲンテン、コノセカイノカク!スベテノキオクノシュウソクテン!!」

喋れる個体か…ちょっと厄介だね

魔物「オマエヲクラエバコノセカイハヤミニオチル!オマエヲクラエバイズレスベテノニンゲンハヤミニオチル!オマエガシネバスベテノニンゲンガシヌ!イノウシャモ、ゲンサクカイリモ、ナニモカモ!オマエガシネバ、コノセカイハスベテガキエル!!スベテキエテムトナル!!」

これだから面倒くさいんだよ、喋れる個体っていうのは。

魔物「イネ…イネイネイネイネェェェェエエエ!!」

裁「マスター!」

来ないでっ!!

裁「っ…!」

真名を縛ってる貴女じゃこれには勝てない!それは貴女がよくわかってるでしょう!?

裁「でもっ!!」

大丈夫───少しの間、休むだけだから。貴女の真名を明かすときには、必ず間に合わせる。

裁「…」

だから、お願い。

裁「…約束だよ…!」

うん───約束!

正弓「リコレクションシステム、最終稼働───お母さん!」



正弓「必ず、帰ってきてください!!」

…わかってるよ。

魔物「イネェェェェ!!!」

───夢の息吹、月の光。太陽の熱と魂の輝きはすべて流転し今ここに星へと集う。それはすべてを流す雨のように。それは希望を示す星のように。満点に輝け、星の夜。我が思いよ、我が心よ。すべて纏めて灼熱の星となれ!!

裁「───!?これ、は!?」

我が魔力は流星の如く!夢を望む者の力は反逆を許さぬ絶対の理!!故に我が流星は敵対せし汝を焼き滅ぼすであろう!!

弓「これが───マスターの宝具だというのか!?」

裁「───知ってる。」

弓「ルーラー?」

裁「私、知ってる。この宝具。この術式。見たことが、ある。生前に、一度だけ。まさか、マスターのものだったなんて。」

第五宝具───“流星は願いと共にある理(シューティングスター・ロジック)”───!!!

正弓「全員、お母さんの魔法による衝撃に備えてください!リコレクションシステム、動きます!!」


第141話 追憶終了(エンド・リコレクション)───約束の切符

recollection system reboot...

 

高校生になってからは、困っている人に手を貸したり、直感で気になる人にコミュニケーションを取りに行ってたりしてた。

 

「藤丸立香です。好きなことは…カルチャー全般?でいいのかな?あとはみんなでコーディネートを楽しむこと。嫌いなのは…現実の理不尽と根拠や理由の無い否定です。座右の銘…みたいなのは、“みんな違ってみんないい”です。よろしくお願いします。」

 

緊張してか少し硬い挨拶になっちゃったけど、すぐに打ち解けて、友達がたくさんできた。

 

私の通ってるこの学校は学科間の関係が結構良くて、別の学科の授業に混ざっても別にいいっていう良くわからない校風だった。校長先生曰く、“生徒がその時に何をしたいかに重点を置く”とかなんとか。だから、私とニキは普通科の星羅のところに行って雑談してたり授業を一緒に受けたりしてた。星羅が私達の被服科の教室に来て一緒に授業を受けたこともある。月詠先生もよくこの学校がよくわかってないみたい。

 

文化祭とかの開催が早かったから、その時は私とニキの腕が猛威を振るった、って言うのは星羅や月詠先生が言ってた話。学年単位で巻き込んでコーディネートしたのは少しやりすぎたかな?後悔はしなかったけど。

 

気になった人には積極的にコミュニケーションを取りにいった。具体的には、工業科の不良って呼ばれる人達や大体どんな学科にもいたオタク気質の人達。

 

「こんにちは。私は藤丸立香。……なにか、悩みごとでもある?私で良ければ聞くよ。」

 

月詠先生がしてくれたみたいに。リナリアがしてくれたみたいに、先入観や差別なく。

 

不良の人達には最初こそ殴りかかられたりしたけど、そこは今まで習ってきた武道とかの応用で投げたり気絶させたり関節極めたりして軽めに対処してたら、いつの間にか“リッカの姐御”なんて呼ばれてたことがあったりする。

 

女の子の不良とかもいて、その子達には傷をつけない防衛術とか、女性でも男性に勝つ方法なんかを教えてた。金的は流石に余程の時以外は禁止したけど。

 

確かに不良の人達は頭が悪かったけど、オタク気質の人達は結構頭がいい子達も多くて、私が仲介役となって勉強会を開いたりしてた。そしたらいつの間にかどっちのグループも仲良くなってた。オタク気質の人達が戦略を組み立て、不良の人達が実行する、っていうような協力体制ができてるっていうのは後から知った話。

 

私は特定の部活には入らないで、色々な部活の助っ人とかしてたけど、よくいた場所があった。弓道場───つまり弓道部。顧問は月詠先生。よく継ぎ矢(簡単に言えば先に放った矢にあとに放った矢を当てて食い込ませちゃうこと…正直狙うのは難しい)しちゃうから、月詠先生には呆れられてたけど。弓力(弓を引く力の強さの事)は確か12キロ。

 

ニキは確か美術部で、星羅は私と同じように色々な部活の助っ人をしてた。この星羅がすごく強くて、私とほぼほぼ互角の戦いをする。鉢巻を巻くとスイッチが入るのか、かなり鍛えてるはずの私でも苦戦する。

 

そんなこんなで、私達の周りには色々な人がいるようになった。あと、バグ技とか無しルールでの星のカービィ100%TAと無被弾格闘王TAは誰も星羅に勝てなかった。

 

「リナリア…アリウム。私、2人が願った生き方できてるかな?」

 

「おーい、リッカ!」

 

「何してるの?早く行こうよ!」

 

「あ、待ってー!」

 

慌ただしいけど、楽しかった日々。

 

だけど───

 

───その転機は、突然訪れた。

 

「おはよ……」

 

まだ誰もいない時間帯。私はいつものように被服科の教室に最初に到着した。

 

「……なんだろう。胸騒ぎがする。」

 

その日、私は嫌な予感を感じ取っていた。

 

何かが変わるような、何かが無くなるような。そんな予感。

 

「……あれ。リッカさん、もう着いていたんですか。」

 

「先生…」

 

私に続いて入ってきたのは今の担任の先生。女の先生で、少し小柄。日本語ペラペラだけど、実は外国人っていう先生。

 

「……あ。そうだ。リッカさん。少しいいですか?」

 

「……?」

 

「少し場所を変えましょう。」

 

そう言って私が先生に連れられてきたのは、進路相談室。多分、教室に近いからなんだろうけど。

 

「先生、話って……?」

 

「…リッカさんは、ニキさんと星羅さんの2人と仲がよかったよね?」

 

その問いにうなずく。隠すことでもなかったから。そしたら、先生は少し辛そうな顔をした。

 

「……落ち着いて、聞いてね。」

 

「……?」

 

「今日の…朝からの事なのだけれど。…春風 星羅さんと華紬 ニキさんが、行方不明になっているの。」

 

「─────────え?」

 

星羅とニキが行方不明───その言葉を、瞬時に飲み込むことはできなかった。

 

「今、警察にも捜索してもらっているの。だけど…2人とも、持ち物は一切持たずに行方不明になったそうなの。」

 

「持ち物は…って。」

 

「携帯電話、鞄、それから財布に靴…何もかも家にあったそうなの。」

 

「そんな───あっ。」

 

私は首からネックレスのように提げていた半色のペンダントを取り出した。そのペンダントを両手で持って、小さく呟く。

 

「……ニキ。……星羅。」

 

効果はないとわかってる。だけど、試さずにはいられなかった。願わずにはいられなかった。私の思いが、ペンダントを通して少しでも伝わればいいと。

 

「…こんなときに、無力な先生でごめんなさい。一刻も早く見つかることを祈ってますけれど…どうします?リッカさんは早退しますか?」

 

「……ありがとうございます。私は、大丈夫です。」

 

嘘だった。本当は、ギリギリだった。それでも授業はなんとか頑張って、放課後になってから陽菜ちゃんのいる教室に駆け込んだ。

 

「……大丈夫?」

 

「……ごめん。無理…」

 

「……そっか。仕方ないか。リッカちゃんはニキちゃん、星羅ちゃんと仲がよかったものね。」

 

その陽菜ちゃんの言葉に小さく頷く。

 

「……何か飲む?」

 

「…コーヒー。無糖で…」

 

「分かった。今淹れるね。」

 

今はとりあえず落ち着きたかった。

 

「はい、お待たせ。熱いから気をつけてね。」

 

陽菜ちゃんはそう言って私の前にコーヒーの入ったカップを置いた。陽菜ちゃんは人の心を落ち着かせるのが上手で、部屋に焚いているアロマの香りや、コーヒー、お茶…その他諸々でどんなに怒ってる人やどんなに沈んでいる人でも普通に近い状態まで戻すってかなり評判。それは陽菜ちゃんとしている時だけじゃなくて、月詠先生としている時と陽詩くんとしている時も同じらしい。

 

「……おいしい」

 

「よかった。」

 

“人に心の底から美味しいと言ってもらうこと”───それが、陽菜ちゃんの一番最初の鍵。そう、陽菜ちゃんが言ってた。それを知ってるから美味しいって言ったんじゃなくて、本当に陽菜ちゃんの淹れたコーヒーが美味しかったから弾みで出たようなものだった。

 

「落ち着いた?」

 

「……うん。」

 

「そっか。……見つかるといいね。」

 

「うん…」

 

そう言ったとき、陽菜ちゃんの長い黒髪を外から入ってきた風が揺らした。そういえば、陽菜ちゃんの髪は長い黒髪で、女装してないときは三つ編みにしてたり、そのままロングにしてたり、あとはゴムで縛ったりしてるんだっけ。その影響か女装じゃないときも女の子っぽく見えるからナンパされることとかあるんだとか。言ったら失礼だけど、胸はないけど結構身体の線は華奢で、それでも結構力はあるから男女共に人気だったりする。

 

「……風が出てきたね。窓、閉めよっか。」

 

そう言って立ち上がろうとする陽菜ちゃんを、無意識に手を掴んで引き留めてしまった。

 

「……どうしたの?」

 

「………ぁ。い、いや、なんでも……」

 

「なんでもないわけないよ。だって、なんでもないっていいながら私の手をしっかり掴んでるもの。」

 

なにも言い返せなかった。なんでもないと言いながら、陽菜ちゃんの手を離そうとしないのは事実だったから。

 

「……陽菜ちゃんは」

 

「うん?」

 

「陽菜ちゃんは……突然いなくなったりしないよね?」

 

「……リッカちゃん」

 

私が陽菜ちゃんを見つめていると、陽菜ちゃんは私を抱き締めた。

 

「……大丈夫。私はここにいるよ。少なくとも、今はここを離れるつもりはないよ。」

 

「……陽菜ちゃん」

 

「あと…1つ、私の推測だけど。ニキちゃんと星羅ちゃんはリッカちゃんに何も言わなかったんじゃない。何も言えなかったんじゃないかな。」

 

「何も……言えなかった?」

 

どういうこと……?

 

「ニキちゃんと星羅ちゃんは突然行方不明になったって聞いたよ。誰にも伝えず、誰にも知られず。それは、親御さんたちも一緒みたい。少なくとも、昨日の夜はいたみたい。今日の朝発覚して、出ていった形跡も何もなかった。仮定の話にはなるけど、2人とも寝てる間に異世界に連れ去られたのかもしれない。」

 

「異世界…」

 

「うん。まぁ、完全に仮定だけどね。でも、私たちが見ている創作の世界はこの世界の異世界の可能性だってある。完全に否定できることではないと思うの。」

 

「…そっか」

 

なんでだろう。すごく突拍子のないことを言っているのに、陽菜ちゃんの言っていることなら真実だって思える。

 

「あと。」

 

「…?」

 

「…大丈夫だよ。」

 

「え…?」

 

「ニキちゃんも星羅ちゃんもリッカちゃんを忘れたわけじゃない。大丈夫…また会えるよ。ニキちゃんと星羅ちゃんだけじゃない。リナリアちゃんも、アリウムくんも。絶対にまた、会うことができるよ。」

 

「陽菜ちゃん…それは?」

 

「予測…ううん。これは確信!」

 

「…そっか。」

 

陽菜ちゃんがそう言うなら信じられる。どうして、って言われるかもしれないけど信じられる。そんな力強さがあるから。

 

 

───そして、その数ヶ月後。さらに事態は動いた。

 

 

「───藤丸 立香さん、ですね?」

 

その日。私はリナリアの家で掃除をしていた。陽菜ちゃんは外せない用事があるとかで学校の方に行ってたけど。そんな時に、一人の男性が現れた。

 

「はい、そうですが…」

 

「…私、とある家系の者でして。とあるものを持ってきました。」

 

「あるもの…?」

 

「…はい。そして───」

 

差し出されたそれは。“一般枠”と書かれたチケットと一つの封筒。

 

「…?」

 

「───我が家の抱える()()()()()()()()が。亡くなる前に…貴女にこれを、と。」

 

「ホムン…クルス?」

 

ホムンクルス。確か、“ヨーロッパの錬金術師が作り出す人造人間”のことだけど。

 

「はい。この屋敷に住んでいた“リナリア”。そして、“アリウム”と名乗っていた2名のことです。」

 

「───え?」

 

視界が、ぐらりと歪んだ気がした。

 

 

───その人が言うには。リナリアとアリウムの家系は、魔術といわれる術式を研究する家系で、代を重ねたばかりの浅い歴史の家系みたい。

 

“根源へと至る”───よくわからなかったけど根源とかいうのを目指してるのは分かった。その過程で生み出された人造人間が個体コードprototype-01のリナリアと個体コードprototype-02のアリウムの2人だった、という話を聞いた。

 

「………」

 

でも、その家の技術はあまりにも低くて。ホムンクルスの製造は失敗した。そのようやく自我を得たホムンクルスである2人は、見た目がすごく悪くてそれでいて魔術回路、とかいうのもなかった、っていう理由でこの家に監禁、みたいな感じにされていたらしい。

 

…そこまで聞いて、その使者の人を二、三回思いっきり投げて気絶させちゃったのは許してほしい。

 

そして、彼女らは寿命が短くて、高校生になれるかどうかもギリギリなくらいだったみたい。

 

この家ごと廃棄した扱いになっていたけど、彼女たちは最後に自分の意志で家に戻って、自らを完全に廃棄する前に願いを聞いてほしいと告げたという。

 

「“藤丸 立香”。“華紬 ニキ”。“春風 星羅”。この三人を、出来ればでいい。海外留学として“カルデア”へと招いてほしい。特に、この三人の中でも“藤丸 立香”は優先的に───それが、彼女達の最後の願いであったのです。そして彼女達の報復を恐れた家の長は、それを承諾し───あらゆる手段を用いて何とか一つだけ、一般枠を勝ち取ったのです。」

 

「───だったら…これは。」

 

「…かのホムンクルス姉弟が、貴方に渡す贈り物、と。」

 

姿が酷かったのは…失敗作だから。

 

汗が凄かったのは、失敗作だったから?

 

そんなことを考えながら、私は封筒を開いた。

 

 

───私の生涯に、悔いはありませんわ。

 

お節介でしょうが、お許しくださいまし。

 

 

「───あ。」

 

封筒に入っていた手紙の一通。書いてあったのは、リナリアの字だった。それを、私が見間違えるはずもなかった。

 

 

───1つ、気がかりなことがあるのです。そちらにニキ様とセイラ様はまだいらっしゃいますか?というのも、少しばかり変な夢を見たことがあるのです。私とアリウムが旅に出た後、リッカ様の隣にニキ様とセイラ様がいないという、不思議な夢ですわ。えぇ、既に私から確かめる方法はありませんの。それでも、この不安は拭えませんでしたの。いればよいのですが。

 

 

「あ…」

 

 

───もしいないのでしたら…気をしっかり、お保ちくださいませ。ニキ様とセイラ様は大丈夫ですわ。必ず、リッカ様の元へと帰ってくるでしょう。私の予感でしかありませんが。

 

 

「あぁ…」

 

 

───リッカ様のことです。ニキ様とセイラ様がいなくなって、無茶をしているかもしれません。天文台へ行って、一息つきませんか?カルデア、というのは天文台のことを指すんですの。私とアリウムは…諸事情で行けませんわ。そもそも、汚物として放り出されたくはありませんの。

 

 

「…」

 

 

───リッカ様?どうか、誰も憎まないでくださいまし。世界を、人を───憎むことのないように。星のような輝きを、浄化された魂の輝きを、醜い憎しみで汚さないでくださいませ。…私共自身、憎しみに溺れかけていたのを救った文化へ触れたリッカ様にはその意味を察してもらえるでしょう。

 

 

「…あ…」

 

 

───憎しみはどうしても人を醜くしてしまうのですわ。私共は現状誰も憎んではおりませんから、ご安心くださいませ。…少し、アリウムと交代しますわね。少々書くのが疲れてしまいました。

 

 

───お嬢様と…いえ、我が姉、リナリアと書くのを交代(スイッチ)した拙者ですぞ。ペンを渡しているゆえ、釣りスイッチみたいになったのは少し笑いましたな。

 

 

次に書かれていたのは、アリウムの字。釣りスイッチっていうのは、たぶんアレ。

 

 

───申し訳ありませぬ。拙者らが失敗作のホムンクルスであることを言い出せず。真実を告げなくては、と拙者も姉もずっと思っておりましたが、ついにはこの時まで来てしまいました。言い出せぬついでにもう一つ、先ほどから書いておりますが、拙者はリナリアの弟なのでござる。皆様に名乗りましたのは専属執事でしたな。このあたりも騙していたようで、本当に申し訳ない。

 

 

「…」

 

 

───リナリアと共に初めてリッカ殿を見た時。どうしても放っておくことができなかったのでござる。魔術、というものは魔の道、邪道の道───外道の道。その魔術から生まれた拙者らはどうしてもけがれているようなものなのでござる。その道を知らぬリッカ殿の綺麗で素敵な魂が、他の者の手で穢されているのはどうしても。見ていることができなかったのでござる。

 

 

「ぁ…」

 

 

───天文台、カルデア。本当ならニキ様とセイラ様もお呼びしたかったのですぞ。ですが、残っている枠がたった一枠しかないということで。リッカ様を最優先でお願いしたい、と頼んでいたためリッカ様には届いていることでしょう。ニキ様とセイラ様がそちらにいたのでしたらまことに申し訳ありませぬ。この埋め合わせは───いつか、必ず。拙者らの家の者がしてくれるでしょうな。拙者らはもう何もできませぬ故。ツキヨミ様にも、おそらくは。ムツカ様にも何かあるでしょうな。拙者ら、皆様にはずいぶん世話になりましたからな。世話になった皆様の名前はすべて伝えました故、たとえ時間がかかったとしても何かあるでしょう。

 

 

そこから、文字は歪んでいった。

 

 

───皆様と出会えて、拙者は幸せでござった。

 

 

───皆様と出会えて、わたくしは幸せでございました。

 

 

───どうか、よきたびじを。

 

 

───かがやくほしを、しるべとして。

 

 

「あ…あぁ…!!」

 

 

───ありがとう そして さようなら

 

 

───いつか また あえるひをしんじて

 

 

貴女達の心といつも ひめきんぎょそう

遥か遠くでも心に寄り添う ねぎぼうず

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

姫金魚草。ねぎ坊主。それは、リナリアと呼ばれる花とアリウムと呼ばれる花の別名。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

その先は泣いた。長い時間泣いた。あとから来た陽菜ちゃんにもすごく心配されるほど泣いてたらしい。あとついでに軽い脱水症状になった。陽菜ちゃんに心配されたのはそれも理由だったんだけど。

 

陽菜ちゃんは泣き止んだ私の話を聞いて、まだいた使者の人の話を聞いて。使者の人を投げてた。もちろん、傷はつけないように。そして、使者の人が帰った後、私のことをやさしく抱きしめてくれた。

 

 

───そして、次の日。

 

「…よいしょ。」

 

支度を整えて、リナリアの家の中を見た。

 

「……」

 

そういえば、この家の金庫にはリナリアが残した資金が億単位で置いてあった。そのころはまだニキも星羅もいて、全員開いた口が塞がらなかった。…まぁ、使わなかったんだけど。陽菜ちゃんは金庫の鍵が開いてて管理が雑すぎるっていうことでその場にいないリナリアとアリウムに怒ってたっけ。

 

私は行くことにした。2人が招待してくれた天文台。カルデアという場所に。

 

「忘れ物、ないよね。」

 

星の旅に。2人が見たくても見れなかったものを見に、私も旅をする。

 

「…結局、私の進路。リナリアとアリウムの2人と被っちゃった。」

 

───ふふっ。気になるものは追いかけるのがヨシ、ですわ。深くまで潜っていきませんこと?

 

───時間の流れというのは時として残酷ですな。楽しい時間はあっという間ですぞ、フジマル殿。

 

…そんな、声は聞こえないけど。私はニキが作ってくれたペンダントを軽く握って家を見つめた。

 

「…決めたよ、みんな。私は…弱音を吐かないよ。誰も恨まないで、憎まないで進む。これからも、コーデでみんなを笑顔にしたり、一緒にゲームをしたりして人生を楽しむ。…でも、絶対は無理だし、そこは目を瞑ってね。」

 

───えぇ。リッカらしいわ。

 

───ねぇねぇリッカ!これ一緒にやろう!

 

思い出の奥から聞こえてくる声。それに笑みを零しながら、私はニキのペンダントと結構前に星羅からもらった星形のヘアアクセサリを掲げる。

 

「見てて、みんな。私はどんな場所でも、何とかしてみせる。これから先、何があっても。私は私らしくいくて行くよ。私は───みんなに会えてよかった。生きてて、よかったよ。…ニキ。星羅。今は会えなくても、また会えるよね?もし私のことを見ているのなら。どうか見守っていて。会える時が来たら、また会おうよ。───桜ノ雨の、歌詞みたいに。どれだけの時が経っても、またいつか。」

 

そう告げて、私は家に背を向けた。…その時。

 

───頑張って。

 

「───」

 

不意に、ニキの声が聞こえた気がした。

 

───コーデの力は人を笑顔にする。プリズムのきらめきはいつもここに。私との繋がりは、いつでも心の中に。

 

───そうだよね?リッカ。

 

「…うん。そうだよ、ニキ。」

 

本当にニキの言葉だったのかもわからない。だけど、私は答えずにはいられなかった。その声は、間違いなく。ニキの声だったから。

 

「行ってきます。」

 

───いってらっしゃい。

 

風に乗って、複数の声が聞こえた。それはニキの声も、星羅の声も、陽菜ちゃんの声も、リナリアの声も、アリウムの声も混ざっているような気がした。

 

 

───カルデアを目指す、少し前。

 

───高校に入って、友達がいなくなって。それでも、いなくなった友達に励まされた───そんなお話。

 

recollection system shutdown.




正弓「───追憶、終了しました。」

裁「…マスターは?」

正弓「…既に、昏睡状態に陥っています。しばらくの間、目覚めることはないでしょう。」

弓「…ままならぬな。守ろうとしたものに守られ、我らはそのままいるなど。」

裁「…うん」

弓「ルーラーの術でなんとか出来たりはせぬのか?」

正弓「申し訳ありませんが…お母さんには私たちの力は効かないんです。それがたとえ預言書であろうと、お母さんは弾き返してしまう。そういう存在なんです、お母さんは。」

弓「…そうか」

裁「マスターは、3ヵ月って言った。待とう、マスターが帰ってくるのを。」

弓「…ふ、そうさな。」

オケアノス終了後に召喚するサーヴァントのクラスは?

  • 騎兵、槍兵、弓兵
  • 弓兵、弓兵、弓兵
  • 暗殺者、裁定者、剣士
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