狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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正弓「そろそろオケアノスも終わりですね……」

弓「そうさな…」

正弓「はてさて……一体誰が召喚されることになるのでしょうか」


第155話 煌めく英雄に警戒を。無敵の英雄に真実を。

「さて、乗り込むよ!ルーパス達にこれ以上何かされる前に決着をつけたいもんだ!」

 

「酷くない?」

「酷くないか?」

 

「“王の星と妃の想は爆発する(ヘルスター・エクスプロード)”の原型を再現した二人がなに言ってるの……」

 

ミラちゃんからそう言われてルーパスちゃんとリューネちゃんが少し落ち込んだ。それと同時に、二人がフラりと倒れた。

 

「ルーパスちゃん!?リューネちゃん!?」

 

「……ごめん、少しやすませて」

 

「すまない……予想以上に魔力を持っていかれたようだ。」

 

「あ…うん。」

 

「我が主、私の傍へ。相手は貴女を狙うだろう。」

 

「う、うん…あ。」

 

ふと気がつき、ヘラクレスさんを見る。

 

「ヘラクレスさん。」

 

「うん?」

 

「……1つ、気を付けておいて欲しいことがあるんだけど───」

 

 

「さぁて……軽く逝きますかぁ。」

 

私達はヘクトールと対峙する。ルーパスちゃんがあのとき放った矢で所々凍りついてるけど。

 

「ったく、怖いねぇ…あの奥さんは。ナチュラルに狂ってるってのはああいうのを言うのかね。まぁ……敵は圧倒、こっちは瀕死───なら、冥土の土産でもこしらえるかねぇ!」

 

〈宝具が来るわ!〉

 

「先輩、私と無銘さんの後ろに───!」

 

「対応が早いねぇ……!なら、オジサンの最後っ屁でも喰らってもらおうか、フランス、ローマときて今度は此処を修正するガキ共!」

 

カルデアを───知っている……!?

 

「面倒なんで詠唱真名まとめて省略!こちとら仕えるマスターも選べなかったただの戦争屋の人殺しなんでな!そら、吹き飛びやがれ!」

 

「お願い、“エミヤ”───」

 

私が喚びきるよりも先に。ヘクトールは矛先を変えた。

 

「女神エウリュアレ!その命、契約の箱(アーク)に捧げな!!」

 

「しまっ───」

 

「───うん。だよね。」

 

でも、その槍はエウリュアレさんの前に現れた盾に阻まれて。

 

「な───がフッ!?」

 

ヘクトール自身は、背後から心臓の辺りを剣で刺されていた。

 

「───宝具、限定解放。“我、物質を破壊するもの(オブジェクト・ブレイカー)”」

 

その背後の人───白いワンピースを纏ったその女の子がそう告げると同時に、パキンッというような音がした。

 

「ちく、しょ……霊核を、完全、に、砕きやがった、な……誰だ…テメェは……」

 

「……“フォーマッタ”」

 

「ありがとう、フォータさん。」

 

「いえ……」

 

「嬢ちゃん……いつから……気づいてた」

 

「気づいていた訳じゃない。でも……」

 

一呼吸置いてから言葉を紡ぐ。

 

「大海賊である黒髭さん───エドワード・ティーチを倒したあなたなら。マスターの命令とはいえど、ヘラクレスさんごとアステリオスさんを貫こうとしたあなたなら。……何をやってもおかしくない。そう、思ったから。だから───アドミスさんとフォータさんに潜伏してもらってた。」

 

お兄ちゃんの作ったAIである管理者(Administrator)消去者(Formatter)の双子。サーヴァントとしては、それぞれキャスターとアサシンのクラス適正をもつ。そう、お兄ちゃんから聞いた。

 

「参ったね…それに加えて、ヘラクレスも警戒してたとあっちゃあ、こっちに勝ち目なんてない…か……」

 

そこまで言ってヘクトールは消滅した。

 

「……ヘクトール、消滅しました。…大丈夫ですか、先輩。」

 

「うん。フォータさんとアドミスさんは?」

 

「「大丈夫です」」

 

ハモったよこの二人……本当、能力は正反対なのにすごく仲がいいなぁ…

 

「あとは───」

 

「なっ───ヘクトール!」

 

「ヘクトールも逝きましたか。どうしましょう?イアソンさま。」

 

残るのは、イアソンさんと若いメディアさん。

 

「降伏は不可能、撤退も不可能。私は治癒と防衛しか能のない魔術師。さぁ、いかがいたしましょう?」

 

「……リッカさん。あの方、寒気がします。」

 

アドミスさんが寒気……?

 

「なんというか……狂ってます。」

 

「うるさい黙れ!妻なら妻らしく夫の身を守ることを考えろ!」

 

「えぇ、考えていますとも。だってそれがサーヴァントですもの、ね?」

 

理解した。直感じゃない、感覚的に理解した───あれは、異常だ。なんで───

 

「っ……なんだ、その顔は。なんで()()()()()()()()()()()()()()!?お前、この状況が分かっていないのか!?」

 

「いいえ、分かっておりますわ。ずっと、そうでした。ずっとずっと、イアソンさまに寄り添っていた時期から私は貴方を護ってまいりました。───ね?イアソンさま?」

 

「───ひっ」

 

「「───イアソン」」

 

そこに声をかける、もう1人のメディアさんともう1人の魔女───キルケーさん。

 

「なん、だ──なんだ!薄汚い魔女共め!」

 

「む……お前の船の呪いを解いてやった魔女になんて言い草だよ。……まぁ、それは別にいいか。」

 

キルケーさんは溜め息をついてからイアソンさんをまっすぐ見つめた。

 

「お前の性格どうこうは最早この特異点においてどうでもいい。ただ、1つ聞かせなよ。───女神を契約の箱(アーク)に捧げろ、なんて一体誰に吹き込まれたんだい?いくらお前がバカでも、そんなこと考えないだろう?」

 

「うるさい!島に引きこもっていただけの魔女に何が分かる!女神を契約の箱(アーク)に捧げれば、無敵の力が手にはいる!俺は今度こそ、この世界の王になるんだ!」

 

「……無敵、ね。」

 

「ヒュウ。流石は魔女様、僕が聞きたいことを知ってたかのように。」

 

「悪かったよ。…此処から先はお前に任せるさ。」

 

「ご指名とあらば、って感じかな?さて、イアソンくん。僕も聞きたいな?契約の箱(アーク)に女神を捧げるとはどういうことかを理解しているか。こんな不安定な世界だ、捧げられていれば世界が滅んでいたんだよ?」

 

「───なに?」

 

イアソンさんの表情から苛立ちが消えた。

 

「当然じゃないか?あの箱は死を定め、死をもたらすものだ。それに対して神霊を捧げるなんて正気の沙汰じゃない。こんな不安定な時代でそんなことをすれば、この世界そのものが死ぬ───世界が壊れていただろう。」

 

「バカな。そんな、はずは───」

 

「予測にしかすぎないとはいえ、恐らく真実だ。」

 

「だからこそ聞くのよ。私が知るイアソンは───神の策略とはいえ私が愛したイアソンはそこまで愚かだった覚えはないわ。いえ、恋は盲目ともいうからそこまで信用できるかはともかく……」

 

メディアさん……色々台無しです。

 

「ともかく。答えなさい、イアソン。女神を契約の箱(アーク)に捧げれば無敵の力が手に入る───だなんて。一体どこの誰に吹き込まれたのかしら。」

 

「ヘクトール?メディア?ヘラクレスは除外だ、狂化しながらも世界の崩壊を防ごうとしてたみたいだからね。教えてくれないかい?アルゴノーツ船長、イアソン。」

 

その言葉に、イアソンさんが若いメディアさんの方を向いた。

 

「───メディア?今のは……嘘だよな?」

 

「……」

 

「神霊を契約の箱(アーク)へ捧げれば、無敵の力を得られるのだろう?だって、あの御方はそう言って───」

 

そこまで言った時に、若いメディアさんが口を開いた。

 

「はい、嘘ではありません。だって、時代が死ねば世界が滅ぶ。世界が滅ぶということは、敵が存在しなくなる───」

 

そう言って彼女はにこりと笑う。

 

「───ほら。()()でしょう?」

 

向かうところ敵なし───言葉通りの意味だ。向かうところに敵がいない……絶対に負けないわけじゃなくて。そもそも、()()()()()()()───

 

「お、おま、お前、達───俺に、嘘をついたのか?」

 

「……」

 

「ふ、ふざけるな!それじゃあなんの意味もない!俺は今度こそ理想の国を作るんだ!誰もが俺を敬い、誰もが満ち足りて、争いのない、本当の理想郷を!」

 

「……」

 

メディアさん……

 

「これはそのための試練ではなかったのか!?俺に与えられた、二度目のチャンスではなかったのか!!」

 

「それは、叶わない夢だ。イアソン。叶えられぬ、未練なのだ。」

 

「ヘラクレス……!」

 

「我らは英雄だ。死者だ。生涯をもって世界に召し上げられた記録。例えどのような未練があったとしても、それは叶えてはならぬ。それは自らを否定することになるからだ。そして、死者は生者の生きる世界を乱してはならぬのだ───」

 

「うるさい!お前に何が分かる───神に愛され、数々の栄光を手にしたお前に───!!!」

 

「───栄光、か。確かに、私は数々の栄光を手にしたのだろう。だが───」

 

ヘラクレスさんの足元に何かが落ちたのが見えた。あれは───涙?

 

「私の護りたかったものは護れず。私の大切な者達は───全て、この手で砕いてしまったよ。狂気に侵されたとはいえ、大切な者達を……いくつもの栄光を手にし、いくつもの怪物を倒したこの手で。」

 

「ヘラ、クレス───」

 

「だからこそ。アナタは理想の王にはなり得ない。人々の平和を思う心が本物でも、それを動かす魂が根本的に捻れている。アナタはアナタが思うように望みを叶えてはいけないのです。」

 

「───嫌な予感がします」

 

フォータさんがそう呟き、背中に吊った剣の柄に手を掛ける。

 

「本当にほしかったものを手にした途端、自分の手で壊してしまう運命を知るだけなのですから。」

 

「何を───何を言う!ひなびた神殿に籠っていただけの女に何が分かる!?王の子として生まれながら叔父にその座を奪われ、ケンタウロスの馬蔵なんぞに押し込まれた!その屈辱に甘んじながら才気を養い、アルゴー号を組み上げ英雄達をまとめ上げた!この俺のどこが、王の資格にふさわしくないというのだ!?」

 

王の資格……

 

「まとめ上げるだけじゃ、ダメなんだよ。」

 

ミラちゃん……?

 

「人をまとめ上げる力。民を豊かにする財。民を想い、民から想われる人望。時に優しく時に冷酷に判断を下す決断───それから苦難に、雑務に耐える意思。これらが揃って初めて、王の資格がある───私はそう思うよ。」

 

「うるさい!俺はただ、自分の国を取り戻したかっただけだ!自分の国が欲しかっただけだ!それの、どこが悪いというのだ裏切り者がぁぁぁ!!」

 

「───だ、そうですよ。魔女メディア。」

 

「───貴女」

 

「でも…残念です。私は裏切られる前の王女メディア。ずっと、本当の事しか言っていませんでしたよ?」

 

スッ…っと近づくと共に強い警鐘。

 

「……アドミス」

 

「…うん。」

 

フォータさんは剣の柄を強く握り、アドミスさんは杖を強く握った。

 

「例えば───先ほど、守ると言いましたね。どうやって守るかと言いますと───」

 

「───!やめなさい!」

 

メディアさんの静止も聞かず、若いメディアさんはイアソンさんの体に聖杯を埋め込んだ。

 

「はっ、おまえ、やめ、やめろ!なにする、やだ、とけ、からだ、とけ───!!」

 

「「「イアソンッ!!」」」

 

「メディア、貴様───!!」

 

「うふふ……ヘラクレス、如何に貴方でもイアソンさまを撃てないでしょう?」

 

「………っ!」

 

「聖杯よ。我が願望を叶える究極の器よ。顕現せよ。牢記せよ。これに至るは七十二柱の魔神なり。」

 

「たすけ、へら、くれ───あ、ががぎぃぃぃぃ!!」

 

「戦う力を与えましょう。抗う力を与えましょう。」

 

魔女が───笑う。

 

「───滅びるために戦いましょう。」

 

「メディア───お前というやつは───!!」

 

「さぁ───序列三十。海魔ファルネウス───その力をもって、アナタの旅を終わらせなさい。」

 

「へら、くれ───め、でぃ───」

 

その、イアソンさんだったものは───

 

「友よ───!」

「イアソン───!」

 

魔神───醜い肉塊へと、その姿を変えた。




正弓「ちなみにエウリュアレさんを護った盾はアドミニストレータさんの“我、物質を生成するもの(オブジェクト・ジェネレート)”で作り出されたものらしいです。」

裁「へぇ……」

オケアノス終了後に召喚するサーヴァントのクラスは?

  • 騎兵、槍兵、弓兵
  • 弓兵、弓兵、弓兵
  • 暗殺者、裁定者、剣士
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