狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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正弓「今回はリッカさんに視点が向きますよ」

弓「全三回よな。」


第165話 休息中の主の一幕

「……!」

 

イズチの鎌が私の側を通る。直後に悪寒を感じて思いっきりバックステップ。

 

 

───ガガガガガッ、シュカカッ

 

 

私がいた場所に突き刺さる複数のイズチの鎌とイズチ以外の刺───ナルガクルガの刺。

 

「……っ……はぁっ、はぁっ…」

 

ナルガクルガの刺はただの妨害。私が真に対処すべきはイズチ───これは、弱体☆1の昇格直前クエスト“イズチの群れに対処せよ”。ナルガクルガの放ってくる刺を避けながらイズチ10体の撃破を目指す、そんなクエスト。

 

「…15分、か。」

 

視界の片隅に表示されているタイマーをみてそう呟く。制限時間は20分───最近はずっとこれに苦戦してる。

 

「……っ!」

 

直感が反応してサイドステップ。

 

 

───シュカカッ

 

 

ナルガクルガの刺が刺さった音を確認し、地面を蹴って飛び出す。

 

「───“ソニックリープ”…!」

 

短く叫び、ソードスキルを起動する。それに反応したのがイズチが構えるけど、私の方が早い。

 

「ギィィッ」

 

短く断末魔を上げて倒れる───これで、残り4体。短めの技後硬直が終わったのを確認して即座にバックステップでイズチの襲撃とナルガクルガの刺を避ける。

 

「ネアキちゃんっ!」

 

『わかった……』

 

使えるものはなんでも使え。それは、アスラージさんが言ってたこと。だから、シミュレーションにおいてもそれは許可されている。私が使うは預言書の四精霊、氷の精霊の精霊魔法───!

 

『“氷の精霊、その力ここに振るえ(ヨークレスプラッシュ)”───凍えなさい』

 

強い冷気と共に氷がイズチ4体を襲う───これで、イズチ達は瀕死。瀕死、とはいっても───今の武器だとあと2,3撃叩き込まないと撃破できないけど。別に精霊魔法が弱いわけじゃなくて───いや、枷付きの強化装備無しだからまだ弱いんだけども───ネアキちゃん達が私のために威力を抑えてくれてる。

 

「……剣技増幅(スキルブースト)───」

 

剣が青い光を放つ───起動するは最近実装できた片手剣四連撃!

 

「───“ホリゾンタル・スクエア”!」

 

私を囲むように4回の水平斬り。実際ソードスキルって同じ名前の技でも表現的にいくつか種類があって…まぁ実際ちょっとだけ解釈が面倒くさい。予想通り、今ので吹っ飛んだみたいで、ちょっとだけ長めの技後硬直を挟んでイズチに向かってステップ。

 

「───魔術礼装変換(コーデチェンジ)、“魔術礼装・狩人の一策”。主人技能稼働(マスタースキルアクティベート)、“怪力の丸薬・改”。対象指定(ターゲットセット)、“藤丸 リッカ”───」

 

新しい魔術礼装に切り替え、自分に強化をかける。“魔術礼装・狩人の一策”───新大陸製のハンター装備一式を魔術礼装に仕立て上げたもの、って話。マスタースキルは“怪力の丸薬・改(攻撃力上昇)”、“忍耐の丸薬・改(防御力上昇)”、“遠投の一撃・打(スタン)”の3つ。今は一応これともう1つ、魔術礼装があるんだけど…そっちはほとんどサポート用だから今は使わないでいいかな。あと2つ開発中みたいだけど……

 

「落ち着いて───シィッ!!」

 

イズチの鎌を回避し、後ろに回る。そこからバックスタブで致命───はBloodborneだけど。これで、残り3体。前方ステップでイズチ2体の鎌とナルガクルガの刺を避けて、振り返ってバックステップ2回、突進してきたイズチをパリィ。そこから致命───またこれもBloodborne…というかフロム系列のゲームでよくやるけど。これで、残り2体。

 

「……効果切れた」

 

怪力の丸薬・改の効果が切れたのを感じ、納刀してバックステップ。魔術礼装は“魔術礼装・狩人の一策”のままだから───

 

主人技能稼働(マスタースキルアクティベート)、“忍耐の丸薬・改”。対象指定(ターゲットセット)、“藤丸 リッカ”───」

 

マスタースキルを起動し、防御力を得る。忍耐の丸薬・改は同時にスーパーアーマーも得られるけど…私が使うのは───

 

「……捕まえ、たっ!」

 

イズチの鎌───を避けて鎌の根本を掴み取る。

 

「せぇぁっ!」

 

そこから地面への叩きつけ、浮かして蹴りで叩きつけ───そのコンボで撃破判定になる。これで残り1体。

 

「───あと、1分」

 

制限時間は刻々と近づく。抜刀し、壁に向かって走る。イズチはそれを追ってくるから───

 

「───っ!」

 

一瞬壁を駆け上がり、イズチの上から───私の全体重を乗せた落下致命。これで、終わり───

 

〈───クエスト達成確認。お疲れ様、リッカさん。システムを停止させるね。〉

 

ミラちゃんのアナウンスが聞こえると同時に撃破判定になってるイズチ10体がポリゴンの欠片となって消滅し、私の視界に表示されていたタイマー表示なども消滅した。刺を飛ばしてたナルガクルガは私に近づいてきた。

 

〈あなたもお疲れ様。戻っていいよ。〉

 

「シュバァァァッ」

 

そう咆哮してからナルガクルガは消え去った。この段階じゃナルガクルガは出ないからミラちゃんが召喚してたんだよね。ミラちゃん曰くナルガクルガが出るのは下位かららしい。

 

〈さてと。これで昇格クエスト───弱体☆2緊急クエストへの挑戦権が得られたわけだけど。どうする?〉

 

「……流石に休む」

 

〈…まぁ、それがいいかな。結構キリがいいし、そろそろお昼だし。〉

 

ミラちゃんの言う通り、そろそろ12時になろうとしていた。

 

「……ん、転移完了。」

 

「…ミラちゃんの術って空間転移もあるの?」

 

光と魔方陣と共に現れたミラちゃんに聞くと、軽く頷いた。

 

「うん。あまり使わないけど。」

 

「あ、そうなんだ…」

 

「私のいた世界には各地に行くための転移ポータルがあるからね。たまに起きる魔力異常とかで転移ポータルが使えない場合は飛行船があるし。」

 

「へぇ…」

 

っていうか魔力異常ってたまに起こるんだ…

 

 

ppppp───

 

 

「……通信?」

 

「…?私には来てないけど…」

 

私の通信機に来た通信依頼に、応答操作をする。

 

「はい、藤丸です」

 

〈あ、リッカさん。今お時間ありますか?〉

 

通信相手はジュリィさんだった。

 

「時間…はあるけど。何か…?」

 

〈すみませんが、私の加工場の方へと来てもらってもいいですか?以前から作成していたものが一応形になりましたので。〉

 

……あぁ、なるほど。

 

「わかった、すぐに行くね。」

 

〈お待ちしています。…お昼ももうそろそろですので、お昼ご飯も用意しておきますね。〉

 

「お手柔らかに。」

 

ハンター用だからなのかは分からないけど、結構こってりしてること多いんだよね。

 

〈分かっています。それではお待ちしていますね。〉

 

そう言って通信が切れる。私はミラちゃんにお礼を言って、第六シミュレーションルームを後にした。

 

 

「ええっと……ジュリィさんの加工場は……ここだ」

 

ダ・ヴィンチさんのショップやメディアさんの工房などが並ぶ区画。その一角に、ジュリィさんの加工場兼食事場はある。

 

「……お邪魔します…」

 

「あっ!お待ちしてました!」

 

私が中に入ると、ジュリィさんが本を閉じて立ち上がった。

 

「先にご飯にしますか?用件の方を終わらせますか?」

 

「……一瞬ちょっと身構えたけど。まぁいいや。」

 

「?」

 

分かってなさそう…多分全く知らずにやったんだろうなぁ…“お風呂にする?ご飯にする?それとも…”に近い言い回し。

 

「先に用件の方を終わらせたいな。」

 

「分かりました。それで…完成したのがこちらです」

 

ジュリィさんはアイテムポーチから取り出したのは小さなオルゴール───つまり、“自奏楽器”。

 

「本来の機能である自動楽曲生成機能を外し、好きな時に好きな楽曲を鳴らせる機能を追加しました。耐久性もあるのでいつもの特異点に持っていけますよ。」

 

ジュリィさんが作ろうとしていたのはこの楽器。実質、高い耐衝撃性を持つ音楽プレイヤー。私が好きな時に好きな曲を聞けるように、って作ってくれたみたい。

 

「ただ…1つ問題があって。」

 

「…?」

 

「まだ試作品である影響か、簡単な楽曲追加の方法が確立されていないんです。本来の自奏楽器は追加の方法も何も自分で作り出して記憶しますから。ですからこの自奏楽器はここに来ていただかないと新しいものを追加できないのです…」

 

「あぁ…なるほど」

 

「すみません。私の研究不足です。」

 

その言葉に私は首を横に振る。

 

「ジュリィさんは悪くないと思うよ?自奏楽器ってギルド内でもよく分かってないんでしょ?」

 

「…はい、まぁ。」

 

「それでこれならいいと思うけど。」

 

「そう、ですか?」

 

「機能はちゃんと正常に動くんだよね?」

 

私がそう聞くとジュリィさんは頷いた。

 

「はい。少し前に第二シミュレーションルームで冰龍“イヴェルカーナ”と対峙し、“壮麗纏いし銀盤の貴人”が流れたのが確認できましたから。」

 

イヴェルカーナ……って、確か氷を操る古龍だっけ。

 

「…やっぱりすごいなぁ…ジュリィさん達は。」

 

「私なんて大したことありませんよ。」

 

大したことない…か。私達からしたら相当すごいと思うんだけどね。

 

「冰龍“イヴェルカーナ”…あの古龍の調査の際、相棒に怪我をさせてしまったんです。…私の、不注意で。相棒は笑って許してくれましたけど。それ以来、私は編纂以外の方法でも相棒の力になると誓ったんです。…それが。私がハンターを目指すきっかけ。私が相棒に師事するきっかけです。」

 

「そうだったんだ……」

 

それからしばらく話をして、ご飯を食べて解散した。




正弓「ん……眠くなってきました」

弓「寝たらどうだ?」

正弓「…少し寝ます」
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