狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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正弓「……う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……」

裁「……?」

正弓「ふ、腹痛が……ご本人と感覚を共有する私はダイレクトに伝わるのです……」

裁「大丈夫……?」

正弓「い、一応……」


第166話 休息中の本の一幕

第五シミュレーションルームにて───

 

「この……っ!」

 

「……」

 

竜の魔女の炎が黒衣の少女に襲いかかる。

 

「……まだ、甘いわ。」

 

黒衣の少女は手を振り、氷を放つだけで対処する。その氷は、魔女の炎を相殺する───

 

「……これでも、強くなってはいるはずですが。」

 

「…ええ、ええ…確かに、貴女が召喚された時よりは強くはなっているわ。だけれど…少し、出力に迷い…ムラがあるわ。何か悩んでいるの?」

 

黒衣の少女───ナーサリー・ライムが竜の魔女───ジャンヌ・ダルク・オルタにそう問う。

 

「…悩み、ですか。そうですね…強いていうなら全く成長しない自分に、でしょうか。」

 

「…そう。それでも、貴女の霊基は強化されているのでしょう?」

 

その問いにジャンヌ・ダルク・オルタが小さく頷く。

 

「だったら、出力が甘いそれは貴女の精神状態が影響しているんじゃないかしら。もしくは…貴女の自己定義が揺らいでいるか。」

 

その言葉が放たれた直後、ジャンヌ・ダルク・オルタの肩が震えた。

 

「……図星のようね。」

 

「…」

 

「…サーヴァントの先輩として、貴女に1つ教えておくわ。」

 

ナーサリー・ライムは自分の手を見て言葉を紡いだ。

 

「“自己”を強く定義なさい。自分がどうありたいか、自分はどういう存在なのか───自分は何を望むのか。貴女を強く、しっかりと、確かに───貴女の思い描くこれが“自分(ジャンヌ・ダルク・オルタ)”だと定義なさい。そうすれば、形の無かったものでも形を得ることができるの。…この、あたし(ナーサリー・ライム)のように。」

 

「自己定義……」

 

「えぇ。人間に言えることだけれど、あたし達サーヴァントにも言えること。強い自己定義が、存在を確かなものとする。存在の在り方を強化する。今の貴女は、貴女を定める弱い定義のせいで在り方が弱まっているだけよ。」

 

ナーサリー・ライムはジャンヌ・ダルク・オルタに近づき、背伸びしてジャンヌ・ダルク・オルタの胸の中心───膻中(だんちゅう)といわれるツボがある辺りに手を触れた。

 

「全ての答えは貴女の中に。全ての選択は貴女の中に───貴女の在り方は貴女自身が決めることよ。」

 

「私の…」

 

「…宝具を撃ってみなさいな。あたし(アリス)に。」

 

ナーサリー・ライムはジャンヌ・ダルク・オルタから距離を取ってそう言った。

 

「…」

 

「それではっきりするわ。今の貴女がどれだけ弱いのか。」

 

「言って、くれるじゃないの───手加減なんてしないわよ……!」

 

「…やっぱり、しおらしい貴女はあまり似合わないわ。来なさい、竜の魔女。貴女の今の全力───受け止めてあげるわ。」

 

そう微笑んで身構えるナーサリー・ライムにジャンヌ・ダルク・オルタが剣を振り上げる。

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮───!!」

 

その言葉とともに周囲が炎に包まれる。

 

「“吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)”!」

 

真名解放と共に襲いかかる炎と槍───ナーサリー・ライムは襲いかかる炎はそのまま受け、襲いかかる槍は素手で弾く。

 

「……やっぱり、軽いわ。凍りなさい───“三月兎の狂乱”」

 

それに対し、ナーサリー・ライムが発動した氷の魔術が炎を相殺した。

 

「これで分かったかしら?貴女の炎は物凄く脆く、そして弱い。これは貴女の霊基が弱い、それだけが原因ではないはずよ。」

 

「……そう、ね。」

 

「……疲れちゃったから今日はこれで終わり。甘いものでも食べに行きましょう?……あぁ、というか店長は貴女だったわね。」

 

そう言ってナーサリー・ライムは第五シミュレーションルームを退出し、カルデアの飲食店系列が並ぶ方へ向かった。

 

「……ここね。」

 

たどり着いたのはスイーツ店“Doux jeanne”。慣れた様子で入店する。

 

「いらっしゃい……あぁ、ナーサリー殿か。」

 

「こんにちは、ヘラクレスおじさま。いつものようにお願いできるかしら?」

 

「あぁ、かまわない。…店長は?」

 

「少ししたら来ると思うわ。…いつもの場所にいるわね。」

 

「すまない、準備が出来たら持っていこう。」

 

ヘラクレスの言葉を聞いて微笑み、窓際の可愛らしい椅子に腰かけた。

 

「……ごめんなさい。お待たせしてしまったわ、あたし(ありす)。」

 

「───いいのよ、あたし(アリス)。時間はどれだけでもあるし、ずっと一緒だもの。あたし(ありす)あたし(アリス)の中に在る…あたし(ありす)あたし(アリス)と共にある。そう定義したのはあたし(アリス)でしょう?」

 

テーブルを挟んで対面、そこにいるのは青い服のナーサリー・ライム───否、“ありす”。

 

「失礼する。紅茶とスイーツのお届けだ。」

 

「「ありがとう。」」

 

2人が同時に答えると、ヘラクレスが苦笑した。

 

「ありす殿もごゆっくり。」

 

「だったら、追加で頼んでもいいかしら?」

 

「えぇ、何なりと。」

 

会話が成立する───この“ありす”は実体だ。まだ完全に死んではいない別世界でのナーサリー・ライムのマスター。

 

「ごめん…遅れました、ナーちゃん、ありすさん。」

 

そこにやってきたのは現マスターたる藤丸リッカ。その言葉にありすが微笑む。

 

「大丈夫よ。あたし(ありす)あたし(アリス)もさっき来たところだもの。さて、全員揃ったことだしお茶会を開きましょう?」

 

ありすがそう言い、3人のお茶会が始まった───ヘラクレスは遠くからそれを眺めていた。




正弓「一応落ち着きました……」

弓「ふむ。これで終わりか?」

正弓「そうですね…これで幕間は終わりで次から第四でしょうか。あ、33,000UA突破ありがとうございます。」
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