狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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正弓「魔霧疾駆(マキリダッシュ)

裁「地図作成(マッピング)

弓「殺鬼接近(アサシン・エンゲージ)

殺「───斬斧奥義(スラッシュアックス・シークレット)

正弓「…なんですかこれ。」

裁「ちなみにタイトルには関係ありませんので~」


第171話 魔霧疾駆、地図作成───殺鬼接近、斬斧奥義

霧の濃いロンドンの街───

 

その、霧の中を私達は進んでいた。

 

「ふはははは!たまにはサブ機を動かすのも良いものよな!六花めにメイン機を預けて正解だったわ!」

 

バイク、って言ったっけ。それに乗ったいつもより声が高い英雄王が機嫌良く笑う。

 

「しっかり捕まっておれよ、アルトリア!吹き飛ばされぬようにな!」

 

「英雄王、その姿でその言葉遣いは違和感がすごいです……!どうにかならなかったのですか!!」

 

「そうだよ、英雄王!せっかく可愛いのに口調で台無し!」

 

ちなみに英雄王の今の姿は黒いシャツに赤いチェックスカート…ってリッカさんが言ってた。髪型はポニーテールって。

 

「ええいそこまでいうか貴様ら!逆に考えよ!この口調以外の我など考えられるか!?」

 

「無理!」

「無理ですね!」

 

「であろう!…即答されるのは流石に辛いのだが?」

 

あ、私達はモードレッドさんの拠点に着いたあと、地図作成という名目でこの周辺を探索してるの。リッカさん達は拠点の方で話を聞いてる。メンバーは英雄王、アルトリアさん、私、ジュリィさん、蒼空さん、無銘さんの6人。英雄王とアルトリアさんはバイクで2人乗り、私とジュリィさんがキリゼ───霜幻獣“キリン亜種”に騎乗し、蒼空さんと無銘さんが幻獣“キリン”───この子は蒼空さんのオトモンらしくて、何故かモードレッドさんの拠点で寝てたの。蒼空さんの声が聞こえてすぐに起きて、通信に向かって抱きつこうとしてた───に騎乗してる。

 

「…それにしても、瘴気が濃いですね」

 

ジュリィさんがそう呟く。それは…私も正直思った。こんな状態になるには、瘴気の谷みたいに亡骸が大量にあるか……それこそ、あの龍がいるかだけど。

 

「ですが、霧の薄いところと濃いところの差があるのも確かです。」

 

「それもそうだな……む。」

 

何かに気がついたように急停止。キリゼとキリンも停止した。

 

「危ないでしょう、英雄王!何事ですか!」

 

英雄王の視線の先。大小異なる3つの影───だけど、大きな2つの影の方はすぐに消えた。

 

「───おかあさん?」

 

「…やはり、いるか。」

 

白い髪に顔の傷。2本の短剣を持つ小柄な少女───

 

「ロンドンという地だ。貴様がおらぬとは思えぬ。そも、この霧は貴様の宝具か。なぁ───“ジャック・ザ・リッパー”。」

 

「わたしたちを知ってるの?うれしいな。あなたは───おかあさん?」

 

「…それも、一仕事終えたあとみたいですね。」

 

その言葉を聞いて私は蒼空さんに目を向ける。私達はともかく、本当に“母親”である蒼空さんは伝承を知らなくともいい気分じゃないだろうから。事実、蒼空さんは顔色悪くしてる。

 

「みんな、帰してくれなかった。わたしたちは帰りたいだけなのに…」

 

「…英雄王さん。あれは?」

 

「ふん。怨霊の集合体───生まれてこなかった子供の怨念の集合体よ。しかし…不味いな」

 

不味い……?

 

「我は王故、カルデアで明かされている宝具は総て熟知している。今は夜、霧が出ている───そして、()()()()()()()()()()ときた。故に───」

 

「ねぇ。あなたたちは帰してくれる?」

 

「───気を抜くな、貴様ら。殺されるぞ。」

 

「あなたたちの中に、()()()()()()()───帰してくれる?」

 

「───ッ!!キリゼ!!」

「リン!全力回避!」

 

即座に私と蒼空さんが指示を飛ばし、一瞬で接近したジャック・ザ・リッパーの攻撃を避ける。それと同時に英雄王がバイクを発進させる。それを見てキリゼに英雄王を追うように指示。私はジュリィさんと無銘さんにキリン達から落ちないように保護魔法をかける。

 

「まって……まってよ……!おかあさん!」

 

建物の壁を走ってこちらに近づくジャック・ザ・リッパー。キリン科の全力疾駆だから照準はブレるし集中は鈍るけど───この程度で撃てないようじゃここまで戦い抜いてない!!

 

「レーッ!!」

 

私の声に展開した無属性弾10発が飛んでいく。牽制だから当たらないけど───

 

「おかあさん…おかあさんおかあさんおかあさん……!」

 

正直追ってくるこの声が辛い……!蒼空さんの顔色がどんどん悪くなってるから早めに決着をつけたいんだけど……!!

 

「ふはははは!貴様ら、追い付かれるなよ───むっ!?」

 

英雄王の声に前を向くと、ジャック・ザ・リッパーの投擲したナイフが地面に刺さっていた。

 

「貴様らは跳び越えよ!我は我で何とかしよう!」

 

その言葉を聞いて私は跳躍力強化の魔法をキリン達にかける。それに気がついたキリン達がナイフの柵を飛び越える───その瞬間、ジャック・ザ・リッパーが私に急接近する。

 

「おかあさん……!かえ、らせて!いくよ───“解体聖母(マリア・ザ・リッパー)”!!」

 

「概念抽出、グラビモス───あぐっ!」

 

概念抽出は間に合った。だけど───かなりの硬度を誇る、グラビモスの概念でも衝撃までは防ぎきれなかった……!!しかもこれ───“呪い”!対呪保護結界を張ってて良かった……!

 

「ミルド!大事ないか!」

 

「大丈夫……!けほっ…バスターッ!!」

 

英雄王の声に答えたあと呆けた表情のジャック・ザ・リッパーを睨んで零距離砲撃。

 

「おかあさん、頑丈だね…でも、関係ないよ───おかあさんの中に帰るんだ……!」

 

あの目……明らかに私を狙ってる。私、だけを狙ってる。だったら───

 

「英雄王!アルトリアさん!───飛べっ!」

 

「えっ?ひゃぁっ!」

 

私の一言でジュリィさんが吹き飛ぶ。吹き飛んだ先には英雄王のバイク。アルトリアさんがジュリィさんをキャッチする。

 

「ミルド!貴様、まさか───」

 

「それが安全!キリゼ!!」

 

私はキリゼに魔法をかける。速度上昇、空中疾駆、壁面疾駆───それから氷属性強化と龍力強化。5つの魔法の重ねがけ!

 

「貴女の健脚を見せなさい、キリヘイル!!」

 

キリゼが頷き加速する。それと同時に私は全属性の砲門を連続射撃モードで展開する。この先は熟練のサマナーでも難しい領域───!!

 

「いくら速くても無駄だよ…どこまででも追いかけるからね、おかあさん!」

 

私は母親でもなんでもないけど…追いすがってくる彼女に───

 

「レーッ!!」

 

英雄王達に思念を飛ばしたあと、ありとあらゆる属性弾を叩き込む───!!

 

 

 

蒼空 side

 

 

 

「…あやつ、め。」

 

英雄王さんがバイクを停止させ、呆れた声を出す。

 

「“私が一度引き付けるから迎撃の場所を選んで”、などと。その“引き付ける”がジャック・ザ・リッパーに対してどれほど危険か分かっておるのか、あやつは。」

 

「…英雄王。はたして彼女は、最善を選択したのでしょうか。」

 

「さて、な。しかし、ジュリィめを我らに託したということは流れ弾を警戒したのだろうよ。」

 

そう言って英雄王さんがため息をつく。

 

「…この先は大通りであったな。ふむ…どうしたものか。」

 

「……あの」

 

私が手を上げる。それに英雄王さんの視線が向く。

 

「なんだ。」

 

「私に、提案が。」

 

「……ほう?」

 

 

 

ミラ side

 

 

 

 

 

 

{戦闘BGM:闇に走る赤い残光:The Chase}

 

 

 

とりあえず───

 

「なんで楽曲がナルガクルガ追跡曲なのかな!?いやピッタリだけどさ!」

 

ジャック・ザ・リッパーを引き付け始めてから流れ始めたのがこれ。流石にずっと流れ続けてるから突っ込んだけど。

 

「これで───!」

 

ジャック・ザ・リッパーが投げたナイフをキリゼが住宅の壁を走ることで回避。私の周囲に物質の硬度を高め、範囲外になると刺さっていたものを弾くような結界を展開してる。ついでに音が結界外に漏れない術式も。だから、どんなに戦闘しても大丈夫なようにしてる。

 

「バスターッ!!」

 

連続砲撃モードの砲門から無属性砲撃を放つ。直撃して墜ちかけるけどすぐに体制を立て直して私を追跡する。

 

「マップによればこれで一周───この先にいるはずだけどっ!」

 

キリゼが斜めに跳び、私の視界が反転する───

 

「レーッ!!」

 

水属性射撃砲門20門から集中射撃。現状発動してる魔法は速度上昇、空中疾駆、壁面疾駆、氷属性強化、龍力強化、地図展開、全属性連続射撃砲門各20門、全属性連続砲撃砲門各10門、物質硬化結界、消音結界、魔法消去結界。量が多いけど───別にそこまで負荷はないっ!

 

「おかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんっ!!」

 

「私は───あなたのおかあさんじゃないっ!」

 

集束砲門展開───全力で!

 

「ブレイカァァァァ!!」

 

「───ッ!!」

 

驚いた表情で回避するジャック・ザ・リッパー。地図によればこの先は大通りだけど───

 

「ミルド!」

 

「───!」

 

英雄王の声。前を見ると立ち止まった英雄王達がいた。ということは、あれが───迎撃地点。

 

「いかないで……いかないでっ!」

 

「穿ち放て───“ジャベリンズ・コロナ リリーシア・アトリビューティア”!!」

 

炎を纏わせた杖を放つ───地面に刺さると同時に纏われた属性が放出される。以前の“ブレイク”とは違う“リリーシア・アトリビューティア”という派生式句。これは破壊の式句とは違う、属性解放の式句。破壊の式句は属性を破壊することで爆発を得る。解放の式句は属性を解放することで爆発を得る。解放の方が難しい関係上、爆発力は解放の方が上───!

 

「停止!」

 

キリゼが私の声にブレーキをかける。結構な速度出てたはずだからかなり反動が強い……!

 

「大事ないか、ミルド!」

 

「だ、大丈夫…」

 

「全く、無茶しおって……!」

 

「おかあさんおかあさんおかあさんおかあさん!!う…うぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「───属性、反転。」

 

疾走するジャック・ザ・リッパーと私の間を遮るように立つのは蒼空さん。あれは───折り紙?

 

「異常改造。龍蝕激化。出力変動───」

 

バキッ、って嫌な音がした気がする。それと同時に、武器が纏う、あれは───()()()()()()()()()()()……!?

 

「無惨に潰えて!“解体(マリア)───」

 

「───行動封印。奥義“斬斧が戦いを変える(ソードアックス・)属性反転の高圧放出(アトリビュート・ブラスター)”」

 

ただ、一振り。宝具を起動したジャック・ザ・リッパーに当てる。ただ、それだけ。

 

「───あ…?」

 

それだけで───宝具が、()()()()

 

「あれはもしや───後より出でて先に断つもの(アンサラー)か!?あの人間の持っていた、“斬り抉る戦神の剣(フラガラック)”だとでもいうのか!?」

 

フラガラック───いや、今はそれどころじゃない。そろそろ───動く。だけど、少し時間を稼いでくれたお陰でこっちも準備が整った。

 

「───うぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「キリゼ!!契約のもと、ここに汝の真名を告げる!」

 

切りかかってくるジャック・ザ・リッパーに合わせる。宝具───

 

「真名、霜幻獣“キリン亜種”───“解放する、今ここに真実の言葉(リリース・リアルワード)”!!!放て───“絶対零度空間”!!!」

 

瞬間───周囲に冷気の空間が発生し、ジャック・ザ・リッパーを氷漬けに───ううん、氷の中に閉じ込めた。

 

「………!!!」

 

ジャック・ザ・リッパーがまだ動けるのか、身体を動かそうとする───けど。龍力を強化した───龍封力と対になる“龍解力”を付与されたキリン亜種の氷がそんなに脆いわけがない!

 

「……」

 

諦めたのか、目を瞑った。狂ったような目付きは───ない。それを確認した直後、私がフラつく…のを英雄王が支えてくれた。

 

「……疲れた」

 

「この───戯け!あやつに対し単独で動くとは何事だ!」

 

「それが一番楽だと思ったから…」

 

「貴様───自分が人間であると忘れてはおらぬか!?確かに貴様はあやつに目をつけられていたのであろう!だが!人間である貴様が女を必殺するようなモノを引き付けるなど無理にも限度があろう!それを───」

 

「信じてたからね。あなた達なら私が時間を稼ぐ間にジャック・ザ・リッパーをどうにかする方法を考え付くって。」

 

私がそう言うと英雄王が黙った。

 

「信じてたからこそ、私は引き付けを引き受けたんだよ。…まぁ、何度か殺されかけたけど。」

 

「当然であろう!むしろ殺されておらぬのが奇跡に他ならん!」

 

そう言い、英雄王がバイクのスイッチを入れる。

 

「ミルド、ジュリィ、貴様らはサイドカーに乗れ。」

 

「……分かった」

「分かりました。」

 

素直に従っておく。心配かけたのは事実だろうから。

 

「帰るぞ。ジュリィ、あやつの情報は確かに保存してあろうな?」

 

「はい。しっかりと。」

 

「で、あればよい。あぁ、それと───蒼空。貴様の反撃、見事であった。」

 

「…はい。」

 

「…英雄王。お腹が空きました。何処かで食事にしませんか?」

 

「ふむ…英国料理は評判が悪かったはずだが。まぁ、たまにはよいか。」

 

そう言って英雄王はバイクを走らせる。

 

「軽い地図作成(マッピング)になるとは思っていたが…まさか、ここまで大変になろうとはな。」

 

そのあと、拠点に戻ったらかなり心配された。…まぁ、そうだよね。私、傷の治癒忘れてたし。投げナイフが顔の近く通過してたこともあったから顔も傷ついてるからね。ちなみに“解体聖母(マリア・ザ・リッパー)”は5回くらい食らった。…それにしても。ジャック・ザ・リッパーが襲ってくる前に見えた、あの2つの影は───




正弓「ちなみに蒼空さんの奥義の説明をば。本文中で全く書いてませんからね。」


斬斧が戦いを変える(ソードアックス・)属性反転の高圧放出(アトリビュート・ブラスター)
対人宝具

舞華 蒼空の編み出した奥義。斬斧のビンを強引に別のものに変更し、高圧力のビンを属性解放。斬斧の攻撃に当たった存在にありとあらゆる属性を消す、龍属性やられを付与する。変更されたビンのことを“封印ビン”と呼び、龍属性やられ以外にも“束縛”と呼ばれる特殊な効果を発揮する。当然斬斧が壊れやすいが、長年使い続けた影響かどこに手を加えていいかがよく分かっているゆえに成立した。この状態の変化を龍蝕封撃変化ともいい、人間に属性やられを扱う方法がなかった頃に属性やられを扱った例の1つ。その中でもさらに不可解な龍属性やられを扱った唯一の例。


裁「この奥義って思いっきり壊してるよね……」

正弓「そうですね……ちなみに“ソードアックス”と書いているのは仕様です。あえて“スラッシュアックス”と書かなかったのだそうな。」

裁「確か剣斧は───」

正弓「スラッシュアックスFですね。そちらはそちらで別の奥義があるのだとか?」

ロンドン修正後に召喚するサーヴァントは?

  • 魔術師、弓兵、暗殺者
  • 魔術師、魔術師、魔術師
  • 剣士、弓兵、狂戦士
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