狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
弓「分かっているであろう…」
「……では。改めまして失礼します。」
ヴァルハザクに地面に下ろされたパラケルススさんがミラちゃんの結界の中とはいえ外に用意されたテーブルについた。ちなみにヴァルハザクは結界の外で座ってる。対瘴気の結界とはいっても発生源が結界の中にいたら意味ない、ってミラちゃんが。
「…粗茶ですが。」
「ありがとうございます。……美味しいですね」
パラケルススさんはジュリィさんの出したお茶を飲んでそう呟いた。
『毒でも仕込んどけよ……』
『騎士にあるまじき発言よな。』
『ジュリィさん、何か仕込んだりした?』
『ダ・ヴィンチさん製の“
うん、なんであるの?というかメディアさんやキルケーさんじゃなくてダ・ヴィンチさんなの?大丈夫?ダ・ヴィンチさんって魔術面というか機械面だよね、確か。
「…お願い、清姫さん」
私は小声で清姫さんを喚ぶ。
「はぁい、ますたぁ?どういったご用件で?」
「…あの人が嘘をついてないか見破ってもらってもいいかな?」
「お任せくださいまし。」
そう言って清姫さんは扇を開いた。
「私は“ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス”。…真名はともかく、計画の首謀者たる“P”と名乗っておきましょう。」
「ヘンリー・ジキルです。今回はどのようなご用件で…それと、あの……ゾンビ?とはどういったご関係が?」
「あぁ、あのエネミーは……それも含めてお話しします。」
パラケルススさんはジュリィさんの出したお茶を飲みきってから口を開いた。
「あなた達に報告と…警告を。計画の首謀者ではなく、ただ1騎のサーヴァントとして。」
計画───ヴィクターさんの屋敷にあった資料にあった“魔霧計画”。首謀者は“P”、“B”、“M”。首謀者の名前の頭文字なんだろうけど…
「それでは報告の方からお聞きしましょう。」
「…分かりました。実は、先日私達の有していたサーヴァント、“ジャック・ザ・リッパー”が消滅しました。」
「「「……っ!」」」
アル、ミラちゃん、ジュリィさんが反応した…?
『思い出したぞ、あのアサシンか!あんにゃろ、霧ん中からいきなり現れたかと思ったらさっさと消えやがる!おまけに情報は全く覚えてねぇときた!スキルか宝具か!?』
『お、落ち着いて、モードレッドさん…!』
『ちなみに覚えてないのはスキルですね。“情報抹消”というスキルを持っているようです。』
『お、おう…』
「私は彼女の最後に立ち会いました。霊核を砕かれ、氷の檻に囚われていたあの悲しき子を再利用するために。」
う、うわぁ……
『外道です、先輩!撃退の許可を!』
≪…マシュ、それを貴女に言われると辛いのよ……魔術師って基本的にそういうものなのよ…≫
確か魔術師になるということは外道に脚を踏み入れること…だっけ。
「そこのエネミーとはその場所で出会った存在です。…そして、あの子が遺した最後の言葉をあなたたちに。流石に予想外のものだったので。」
「最後の…言葉?」
「───“わたしたちのためにいのってくれてありがとう、おかあさん。”…氷の檻から解き放たれたあの子はそう言い残し、私の延命すらも振り切り消滅しました。消滅した後、そこのエネミーに咥えられここまで来た次第です。」
『祈り……あれかな。』
『ミラちゃん、心当たりあるの?』
『ちょっとね。』
ミラちゃん曰く、傷多めで帰ってきたあの日…というかその次の日の早朝。“龍巫女の祈り・浄化”とかって言われる
「怨霊たる彼女らが遺した最後の言葉。それをあなた達に伝えなくては、と。」
「…その為にあなたはここへ?」
「───えぇ。そこのエネミーにも私の言葉は通じるようで、示した方向に動いてくれましたから。」
薄めだとはいえ、真実薬の影響があるから嘘はついてない…と思うんだけど。ダ・ヴィンチさん製の真実薬がどこまで信用できるかわからないし…まぁ、清姫さんに変化はないし大丈夫かな…
「悲しき彼女達を救い、解き放つ。…そんなあなた方こそ、正しき英雄。悪は、私は…その刃に倒されるもの。」
「……警告、とは?」
「えぇ…どうか、躊躇いませんように。」
……?
「私は悪逆を為し、人理を焼却せしもの。慈悲なく、躊躇なく、迷わず一息に命を断ってください。」
『……矛盾しています』
『…そう、かな』
矛盾はジキルさんも感じたみたいで───
「…貴方は矛盾している。善を知りながらこの英国の地を混乱させている。」
「えぇ、そうでしょう。私は善を知りながらもこの地を困惑に落としている。人理を焼く計画に携わっている。実に悲しいこと。実に痛ましいことです。」
「っ───それを!それを知りながら何故!!人理を焼く側ではなく護る側に回っていないのです!?」
「───えぇ。疑問はごもっともでしょう。ですからお伝えしましょう、私達は“諦念”と“大義”のもとにこの計画に携わっています。私達は皆同じように諦め、同じように大義を成すために動いています。…その大義にも、自由はなく、また希望もない。───“もう、どうしようもない”という諦めが、私達を悪逆へと走らせています。」
そう言うパラケルススさんの表情から読み取れる感情は確かに“諦め”。清姫さんも全く動かないから嘘ではない。動けない、とかだったら念話が飛ぶはずだし。
「世界に残る特異点は4つ、既に人類は焼却されつつある。しかし、私達にはできなくてもあなた達ならば───」
「あぁもう、ごちゃごちゃうるせえ!」
「モード!?」
モードレッドさんが我慢できないといったようにパラケルススさんに剣を突きつけた。あ、今“モード”って呼んだのはフランさん。いつの間にかモードレッドさんのことをモードって呼ぶようになってたんだよね。
「いいか、モヤシ野郎!お前達は父上のものに、ブリテンに手を出した!王ならざるものが王のものに手を出しやがった!」
「さすれば、貴方は私達を───」
「殺す!王のものに手を出した罰だ、当然だ!つーか今この場で切り捨てる!」
「……あぁ、そうでしょう。私は今ここであなた達の刃にかかるべきでしょう。それが、悪逆の魔術師の最後にもふさわしいかと。…ですが」
「おらぁ!」
ガキンッ
「…!?なっ、何しやがるミラ!」
振り下ろされたクラレントを防いでいたのはミラちゃんの……腕?いや、違う、あれは───人間の腕じゃない。白い鱗に覆われた、竜の腕……?それが、剣の触れているところから焼けるような音がする。
「いっつつ……その剣、竜殺しの逸話でもあるの?竜腕が焼けるんだけど。」
竜腕。ミラちゃんは今そう言った。でも、クラレントに竜殺しの逸話ってあったっけ…?
「それはともかくとして、話は最後まで聞くものだよ。好戦的なのは分かるけどちゃんと相手の言い分も聞かなきゃ。」
焼けるような音をさせたままそう告げる。…痛くないの?絶対痛いと思うんだけど。
「…可憐なお嬢さん。痛くないのですか?」
「痛いよ?正直治癒術式で治癒しながら焼かれ続けてるから早く剣を引いて欲しいんだけど。…ねぇ?」
「……ちっ。」
ミラちゃんが凄むと諦めたように剣を引いた。
「…おら、話せよ。」
「…えぇ、それでは。確かに私はあなた達の刃にかかって消滅するべきなのでしょう。…ですが、私もやることがありますので。」
そう言ってパラケルススさんが消え始める。
「なっ、逃げんのか!」
「先ほども申し上げましたが、私にも大義がある。それがある限り、私は任を果たすのみ。」
そう言ってパラケルススさんはミラちゃんを見た。
「可憐なお嬢さん。私などのために時間を作ってくださりありがとうございます。」
「人の話を聞かないのは流石にね。」
「……どうか、あなた達が正しき道に進むことを。そして円卓の騎士、どうかあなたがいつまでも悪逆を倒す正義の味方であることを───」
正義の…味方?そんなことを考えているうちに、パラケルススさんは姿を消した。
「だぁぁ!逃げやがった!」
「……終わりましたわね」
そう言って清姫さんが扇を閉じる。
「清姫さん…」
「嘘はありませんでした。同時に私達に対する阻害も。恐らくはミラさんが無効化したのでしょうけども…聖杯の干渉は無効化できなかったようですね。」
「まぁ、聖杯のことは全く考えてなかったからね。…竜腕解除」
ミラちゃんがそう言うと左腕が竜の腕から人間の腕に戻る。火傷痕は、ない。恐らくは治癒を並列して行ってたから。
「…矛盾しています。善を知り、善を説きながら悪に荷担するなど。」
「そうでもないぞ。悪を知るものが善を為し、善を知るものが悪を為す。そもそも善悪とは人間個人の感覚でしかない。明確な善と悪などないのであろうよ。」
「私も嘘を見分けるなどという力を有しておりますが、その属性は混沌・悪ですもの。悪でありながら私は人理修復の側に立つのです。そしてそれは先ほどの御方も同じではなくて?」
悪でありながら人理修復の側に立つ清姫さん。善でありながら人理焼却の側に立つパラケルススさん。なるほど、分かりやすい気もしなくもない。
「……私にはよく分かりません。」
〈……一を犠牲にして十を救う。〉
エミヤさん?あ、アサシンのじゃなくてアーチャーの方ね。紛らわしくなるから呼び方変えようかな…
〈十を犠牲にして百を救う。百を犠牲にして万を救う。より大勢を救うためならばいつの日か救った相手すらも、大切に思っていた存在すらも犠牲にする。それを善というのなら───いや、そんなのは関係ないか。だが、善という理想を、正義の味方という理想だけを追い求めて何千、何万の人々を殺し尽くすような善は、オレは死んでもごめんだね。…それで、何千倍の人々が救われようと。大切な存在を護れないのなら、オレは悪にでもなってやるさ。〉
……なんだろう。すごく、言葉が重い…大きな実感が込められている気がする。
〈〈シロウ……〉〉
〈……と、すまない。変な話を聞かせてしまったね。あまり気にしないでくれたまえ。〉
「…ふん、貴様の過去になど特に興味はないがな。何かに引っ掛かったか?贋作者。」
〈気にするなと言っているだろう、英雄王。仮にだが、属性が中立・中庸である私が反転したとしても悪になるかは分からん。もしかしたら混沌・善になるかもしれんし、秩序・悪になるかもしれん。そして英雄王、前から思っていたのだが何故今の君は秩序・善の属性なんだ?君は混沌・善だったはずだが。〉
「気にするところか、それは。」
〈私、気になります!…ではないが、少し気にはなる。何故だ?〉
古典部シリーズ読んでたのかなぁ…
「我も知らぬ。考えるのも面倒ゆえな。」
〈……そうか。〉
「……さて。」
ギルがそう呟いてヴァルハザクの方を見た。
「貴様は一体何の用だ?」
「……」
ヴァルハザクは一度ギルを見たあと、体の方向を反転させて歩き出した。
「おい、待て!」
「……ォォォン」
ヴァルハザクはギルの言葉に少しだけ顔をこちらに向けて小さな咆哮を発した。
「……ちっ、なんなんだよあのバケモンは!」
その咆哮は、まるで───私達に“ついてこい”と言っているかのようだった。
「…追うぞ、マスター。」
「うん」
だから、私はギルの言葉に素直に頷いた。
「あっ、おい!抜け駆けなんて許さねぇぞ!」
私はアルにお姫様抱っこの状態で抱えてもらい───恥ずかしいけどこれが一番安定するんだよね───、ヴァルハザクの姿を追った。
正弓「ちなみに今回の特異点のヴァルハザクさんは明確に敵、だとのことです。」
弓「ほう…」
正弓「敵だといっても計画に関わっているわけではなくてただただロンドンの地への瘴気の蔓延を完全に止めたいというヴァルハザクの願いですけどね。」
裁「……悲しい」
正弓「ですよねぇ…ご本人もちょっと今回のヴァルハザク戦は悲しいお話になるかもしれない、って手紙を寄越してきたので。」
ロンドン修正後に召喚するサーヴァントは?
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魔術師、弓兵、暗殺者
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魔術師、魔術師、魔術師
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剣士、弓兵、狂戦士