狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
裁「色々……」
「よい…しょ。」
預言書の真実を聞いた次の日。私は“親指腕立て伏せ”なるものを実行していた。
〈これで30です。1セット30回、3セットの計90回。早朝の日課、終了です。〉
「ん…ありがと、リツ。」
リツの言葉に骨を折らないように体勢を崩す。
〈…体の痛みはどうですか?〉
「…昨日の筋肉痛が嘘みたいにないよ。」
実際、昨日は筋肉痛が辛くてアル共々ギルに抱えてもらって割り当てられた部屋に戻ったから…まぁ、かなり痛かったけど…
コンコン
「はーい」
「む。マスター、起きていたか。」
「うん。あ、入っていいよ?」
「む…そうか」
そう言ってギルが入ってくる。
「どうだ?身体のほうは。」
「それが…全くないの、痛みが。」
「なに?痛覚麻痺でも起こしたか?」
「そうじゃなくて…筋肉痛が全くないの。ルナセリアさんには筋肉痛だけじゃなくて肉離れまで起こしかけてるって診断されたのに。起きて痛みがないのに気が付いて、もう一度診断してもらったら全部治ってるんだって…」
「ふむ…精霊、原因は分かるか?」
「さぁな。エリクサーを使ったわけでもねぇし、オレにも原因は分からねぇ。」
「ふむ……六花?」
〈あぁ…恐らくリツの固有技能だろう。〉
〈私…ですか?〉
〈あぁ…こういうのはちとアレだし、そういや全く伝えてなかったんだが、アドミスみたいな正式版のAI達だけじゃなく、試作版のリツ達にも
「……お兄ちゃん、もしかして…」
〈あぁ、気づいたか?リツの“癒声”はリツの声そのものに治癒魔術が仕込まれている。つまりお前は昨夜リツと話をしていた時、
ご覧の通り。そう言うかのようにお兄ちゃんは言葉を切った。
「……ありがとう、リツ。」
〈い、いえ…私は何も意識していませんでしたから。〉
〈そりゃリツの癒声は
……えっと?
〈あぁ、そういや詳しく話してなかったな。固有技能には大きく分けて2種類ある。リツの“
そうなんだ……ところで
「ギル。フランさんは…?」
「……」
ギルは無言で首を横に振った。
「……そっか。じゃあ、私が話してみるよ。」
“チャールズ・バベッジ”───それがヘルタースケルターに刻まれていた名前。知り合いだったらしいフランさんは……やっぱり、認めたくないみたい。当然なんだと思う。知っている人が悪い方にいってるなんて、信じたくないもんね。
「ふ、マスターが行くか。」
「うまくできるか分からないけど…やってみる。」
そう言って私は起き上がって部屋を出る。
「あ、先輩……大丈夫、なんですか?」
「うん。心配かけてごめんね、マシュ。」
「いえ……私こそ、先輩のサーヴァントなのに1人じゃ止めることもできなくて……」
「マシュは悪くないよ。休んでてほしいって言ったのは私だし…暴走しちゃったのも結局は私に原因があるんだし。」
「……それは」
「事実だからね。暴走中の記憶がないといっても、暴走して周りに迷惑をかけちゃったのは間違いないから。」
そう言ってから、アルの割り当てられている部屋の方を見つめた。
「…リツ、アルの治療お願いしてもいいかな?」
〈かしこまりました。〉
リツがかなりの早口で宣言を終えると、私に似た姿の女の子が指輪から飛び出した。それを見たあと、フランさんの部屋に向かう。
「……お兄ちゃん。いくら私が声当てたからってモデルまで私にしなくてもよかったんじゃ……」
〈…あれ、実はリツの希望なんだ。リツは他のプロトタイプAIよりも自我が強くてな。何故かお前の姿にこだわった。プロトタイプAI達の中でも第二刻針を扱えるのは今んとこリツだけだ。〉
「そうなんだ……あれ?ねぇ、お兄ちゃん。リツが私をもとにして、私自身が声を当てたAIっていうことは私はリツの母親になるの?」
〈……一応はな。ただ、声を当てたそれぞれが母だとするなら、俺は妹や同性を含めて八股してる最低浮気野郎になるわけなんだが……〉
「……やめよう、この話題。」
〈……おう。〉
そんな雑談をしていたら、フランさんの部屋の前にいた。
コンコン
「…フランさん、いる?」
……返事はない。鍵は…かかってる。でも、返事はなくても、フランさんがこの中にいるのは確か。
「フランはいないわ。」
「……ううん、いるよ。預言書を持つ私には分かるから。人造人間“フランケンシュタイン”の反応がそこに存在していることが。」
「…それは、何故かしら?」
「私が持つ預言書に記されるマップは、私がいる場所の付近に何がいるかを示してくれるの。今この扉の近くには、私とフランさん、ギルとマシュの4人しかいない。レンポ君達にも私の部屋で待ってもらったから。…ねぇ、フランさん。」
私は扉に寄りかかるように座り込む。
「聞かせてくれないかな。あなたの知る“チャールズ・バベッジ”さんがどんな人だったのか。そしてもう1つ、話した上で考えてみてほしいの。チャールズ・バベッジさんが、本当に悪に荷担するような人なのか。」
「え…?」
「まずは、私達に聞かせてくれる?1度話して、情報を細かく整理しなくちゃ。見える真実も見えなくなっちゃうよ。」
「ほう……」
「…だから、聞かせてほしい。フランさんのペースで、フランさんの話したいことを。」
「……分かったわ。バベッジ先生は…偉大なる碩学。人類の発展を望んだ科学者で、博士の知り合い…」
そこから先は話がどんどん続いていった。蒸気機関のこと、発明のこと、バベッジさんが目指した理想のこと───かなり大量に。私はフランさんの言葉を聞きながら、並行して情報の整理を行っていた。もっとも、フランさんに分割思考の8割前後を割いてるから整理速度は遅いけれど。
「……先生は言ってたわ。」
「何を?」
「“私が夢見た世界が生まれなかったのは無念だが、例え生まれたとしてもそれが人間を豊かにするものでなければ意味がない。私が夢見た世界ではないが、人間達が素晴らしいものを使ったならばそれを見守るが私の役目だろう。”……そう言っていた先生が、人理を滅ぼす側に荷担するなんて……私には、思えない…」
「……そっか。」
その場に沈黙が降りる。…ここが、正念場。あの問いをするのは、今だ。
「フランさん。ここまで話してもらったし、ここで聞くけれど。…チャールズ・バベッジさんは、本当に悪に荷担するような人?」
「違うわ。…違うの。私の知るバベッジ先生は、悪に荷担するような人ではないわ。」
フランさんの即答。整理が、完了する。
「私が話を聞く限りでもそう思った。バベッジさんは人類の未来を守りたいと考えていた人で、こんなことをするような人じゃない。でも、実際に今こうして、敵に回っている。」
「っ……」
「それは、どうしてなのかな。」
「……え?」
「それだけ人類のことを思っていた人が、人類を滅ぼす側に回った。人類愛が転じて人類悪になるというから間違いではないのかもしれないけれど…それとはまた違う感じがする。…1つずつ解析して、解明していこう。まず大前提として、“チャールズ・バベッジ先生は人類の敵に回る人間ではない。”」
「……えぇ。」
「2つ、“それにも関わらず、バベッジ先生のヘルタースケルターは人理の崩壊に使われている。”」
「……」
「3つ、“パラケルススは諦めたとは言っていたけれどその根底はいい人だった。”」
「いい人だった……」
「3つめから導かれる答えとして、“いい人であるが悪に荷担している。”」
「いい人であるが悪に……っ!まさか……」
「そのまさか、だと思う。」
「「“バベッジ先生は悪い人に操られている”───」」
結構無理矢理な理論ではあるけれど。でも、その理論で十分だったみたい。
「───許せない。ウァァァァァ!!」
危険を感じて立ち上がり、扉に背を向けて安全に吹き飛ぶように調節───直後、扉が吹き飛んだ。
「は、はぇぇ……」
烏丸先生みたいなことやるものじゃないなぁ……
「マスター。…ありがとう、私の話を聞いてくれて。もう、迷わないわ。」
「…力を、貸してくれる?」
「えぇ!バベッジ先生を、止めるわ。例え戦いになったとしても、絶対に。」
その目付きを見て、もう大丈夫だと思った。
正弓「眠い……」
裁「寝ていたら…?」
正弓「そうします…」
ロンドン修正後に召喚するサーヴァントは?
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魔術師、弓兵、暗殺者
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魔術師、魔術師、魔術師
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剣士、弓兵、狂戦士