狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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ぎゃぁぁぁぁ!!時間かかったぁ…

裁「…まぁ、マテリアルの準備がちょっと遅くなったらしいから、急遽これに変えたっていうのは分かるけど。…はぁ」

ため息つかないでぇ…


第220話 無銘と無銘

{戦闘BGM:silent bible}

 

 

 

〈Stand by Ready〉

 

声がする───機械音声だ。相手も私も、準備を完了したという証。

 

〈Phase1〉

 

機械音声が始まりを告げる。その前に、私は───否、()()は相手を目視し、武器を()()()()

 

「っ───」

 

相手はそれを見て複雑そうな表情をする。

 

〈Engage〉

 

「「───ッ!!」」

 

私と()は、同時に地を蹴った。

 

 

発端は朝の食堂。

 

「む?おや、無銘さん…じゃないか。どうした、こんなところで。」

 

「あの…今日は何かお手伝いすることはありますか?」

 

「ふぅむ…今は特にこれといって手伝ってほしいことはないが…しかし、君は人を手伝うのが好きなのかね?よく私のところにやってくるが、毎回言うのは手伝うことがあるかどうかだ。少しは趣味や鍛練に打ち込んでいてもいいのではないかね?」

 

「……英雄王さんが」

 

「…何故そこで彼が出てくる」

 

「…“アーチャーの方のエミヤが無理しすぎないように見張っておけ”って言うので…聞いたところでは、エミヤさんは生前結構無茶してたらしいですから…」

 

「………図星すぎてなにも言えん。やれやれ、やはりというかなんというか、彼は私の知る英雄王とは違うのだな。」

 

そんな話をしていると、月さんが何かに気がついた。

 

「誰か来るみたいです」

 

「む?アルトリアか?…いや、彼女はこんな時間に来ないか。」

 

エミヤさんが言ったとき、食堂の扉が開いた。顔を出したのは狐耳の──確か“玉藻の前”さん。

 

「えーっとぉ…もう、開いてたりします?」

 

「なんだ、キャスター。君か。」

 

「…無銘さん、ちょっといいですか?」

 

「はい?」

「なんだ?」

 

私とエミヤさんが同時に反応する。

 

「……紛らわしいですね。ええっと、アーチャーの無銘さんの方です。」

 

「私か。」

 

「…?」

 

エミヤさんが無銘とはどういうことだろう。

 

「…あぁ、別に構わないよ。キャットにも私から言っておこう。」

 

「お願いしますよ…?キャットが私を捕らえようとしないように───」

 

「キャットを呼んだか?…おっ、オリジナル。狐鍋にされに来たか?」

 

「ひゃぁぁぁっ!?これがほんとの噂をすれば影ですかねぇ!?」

 

「こらこら、はしゃぐな。ここは食堂だぞ。」

 

エミヤさんが声をかけるも、おいかけっこを始めた彼女達は止まらなかった。

 

「……はしゃぐなと───」

 

声が少し低くなったと思うと、エミヤさんがいつのまにか鞭を手に持っていた。

 

「───言っているだろう!!」

 

「ぎゃんっ!」

「おうっ!?」

 

振るわれた鞭は2人に直撃し、おとなしくなった。

 

「とりあえずキャット、こちらに来なさい。」

 

「う…わかったぞ」

 

鞭を当てられた場所を押さえたままエミヤさんに連れていかれた。

 

「朝から疲れましたです…」

 

「…あの、よければどうぞ」

 

そう言って私が出したのは傷薬。

 

「あぁ、ありが───ちょい待ち、今貴女これどこから出しました?」

 

そう問われて私は指を振る。現れるはいつものホロウインドウ。…とはいえ、私の中に居る人格達が起きたお陰かアイテムストレージタブがかなり増えている。ちなみに全て使用は許可されている。所有権は明記されているものの、特に興味がないらしい。

 

「この中からオブジェクト化しました。回復系は結構種類ありますから…」

 

「…結構、というと?」

 

全体アイテムストレージを開き、回復アイテムで絞り込む。ウインドウの右上端をつまんで玉藻さんに見えるように回転させる。

 

「…うーわ、マジで大量の種類があるんですね…そういえばなんですけど、ロンドンの時突然私の鏡が貴女の方に飛んでいったみたいなんですけど…あれ、何でか分かります?」

 

「…陽詩さんの話では、“雨照 陽詩()の適合している神格が天照大御神だったから”とか…」

 

「あー…なるほど。…それにしても、三種の神器を使って弓矢と矢道を作るってどんな使い方してるんですか…」

 

その言葉に苦笑いしていると、エミヤさんが戻ってきた。

 

「一応、キャットには伝えておいた。了承してくれたから…まぁ、大丈夫だろう。」

 

「不安ですね…ともかく、ありがとうございます無銘さん。」

 

「構わないさ。」

 

「…あの。」

 

「うん?」

 

「エミヤさんが“無銘”というのはいったい…?」

 

「…あぁ、それか。ムーンセル、というのは聞いたことがあるかな?」

 

その問いに頷く。ムーンセル・オートマトン。こことは別の平行世界で聖杯とされていたもの。その機能は、地球の誕生から全てを克明に観察・記録すること。全ての生命、全ての生態、生命の誕生、進化、人類の発生、文明の拡大、歴史、思想――そして魂。全地球の記録にして設計図。神の遺した自動書記装置。七つの階層からなる、七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)───

 

「そのムーンセルでも私はサーヴァントとして活動していたのさ。ムーンセルの主を決める聖杯戦争、最後の参加者に無意識下で与えられていた選択肢。セイバー:ネロ・クラウディウス、アーチャー:無銘、キャスター:玉藻の前。」

 

「……英雄王さんは…?」

 

「彼は…月の裏に封じられていたからな。…まぁ、それはいい。私が“無銘”という名であった理由か。」

 

ため息のようなものをついたところで私はお茶を三人分出す。

 

「……どこから出したのやら。まぁ、いいか。私も同じようなことはできるわけだし。…流石に液体物はできないが。」

 

そう無銘さんが呟いて1口飲む。アイテムストレージに入れておいたものは鮮度が保たれる、と聞いている。

 

「私が“無銘”であった理由は、ムーンセルの私が“エミヤ”ではなかったからさ。」

 

「“エミヤ”ではなかった…?」

 

「そう。“エミヤ”という名を持つ私はとある男の可能性だ。対して“無銘”という名である私は“正義の味方“という概念が人のカタチで起動した存在だ。」

 

……?

 

「どう説明すればいいのか私も分からないが…まぁ、“個人”であるのか“概念”であるのかという違いだと思っておけばいい。」

 

「…なんとなく、分かった気がします。」

 

「ならよかった。」

 

そう言ってエミヤさんはお茶を飲んだ。釣られて私もお茶を飲む。そんなエミヤさんと私を玉藻さんがジーッと見つめていた。

 

「……何かね?」

「……何か?」

 

「いえ…お二人ってどちらが強いのでしょう、と。」

 

「…何?」

 

「お二人の能力はかなり酷似していると聞きましたから。そういえばどちらが強いのでしょう…と。」

 

「「…………」」

 

私とエミヤさんは顔を見合わせた。

 

「……私…もしかして何かやっちゃいました?」

 

 

…そうして、今に至る。

 

投影開始(トレース・オン)……っ!」

創造励起(クリエイト・スタート)、“スモールナイフ”!」

 

私の回りを浮遊する陰陽玉の色は紫───月さんがサポートしている事を示す。“創造(クリエイション)”という能力は月さんが一番よく扱える、というのはお母さんの言葉だった。事実、彼女の創造はお母さんと比べても異常に速い。

 

「バースト!」

 

私の言葉に投げたナイフが反応し、爆発を起こす。

 

「ちぃっ…!壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)とほぼ一緒だな、その技は…!」

 

エミヤさんがそう吐き捨てる。ところで、私の回りに浮遊する陰陽玉は何かというと。どこかで見かけたらしいサポート方法を元にして組み上げたというサポートデバイス。私が無理を言ってエミヤさんと戦わせて貰うことになって、月さんが20分ほどで創り上げたものだ。“(無銘)エミヤ(無銘)の対決なんだから、(無銘)で戦いたい”───本当に、無茶を言った気がする。だけど、お母さん達はその無茶を許してくれた。

 

『七虹、後ろ!!』

 

「っ、」

 

星乃さんの声と共に陰陽玉の色が赤に変わる。赤は確か陽詩さん。即座に跳び、さらに背後に時間を越える斬撃を作り出す。

 

 

ギャイッ

 

 

「これも、防がれるか…!」

 

そんな声が聞こえたかと思うと即座に陰陽玉が橙色に変わる。

 

「風よ、我が声に応え疾風となりて───」

 

「詠唱!?させるか!」

 

「───雷よ!!」

 

その一声だけで、私の周囲に雷が落ちる。

 

「なん…!」

 

『ご、ごめんなさい…!難しい、ですよね…!?』

 

その声は美雪さんのもの。確かに、これはかなり難しい。彼女の力───怒りに任せ怨霊と化した彼女が持っていた妖術。それは、どうやら私には合わないようだ。陰陽玉の色が変わる。青色、璃々さんだ。

 

「───“ヴォーパル・ストライク”」

 

呼び出した片手剣を左手を前にかざし右手の剣を肩の上に大きく引く構えにする。システムがモーションを検出し、ソードスキルが起動する───

 

「───ぁぁああ!!」

 

「っ…!?」

 

“バーチカル・スクエア”。繋げるように検出されたソードスキルは四連撃技だった。

 

「───コネクト、“サベージ・フルクラム”…!!」

 

「スキルコネクト…だと…!?」

 

さらに接続───

 

「“スター・Q・プロミネンス”!!」

 

6連撃ソードスキル───

 

「これで───最後!“シャドウ・エクスプロージョン”!!」

 

秘奥義と呼ばれるそれ。それを放って剣技連携(スキルコネクト)を終了する。

 

「…!」

 

硬直が重い。当然と言えば当然だ、今回私が使ったのは“秘奥義”。それだけの硬直は課せられるだろう。

 

我が骨子は捻れ狂う(I am the bone of my sword.)───“偽・螺旋剣(カラドボルグ)”!!」

 

動けない私に対して放たれる矢。陰陽玉の色が緑に変わる。硬直は解除され、呼び出した鋼鉄の針を矢に向けて投げる。

 

「なにっ!?」

 

それと同時に矢は消え去る。星乃さんの力だ。

 

「ここまで、厄介とはね…!!流石、直死の魔眼と似ているだけはあるか…!」

 

次に投影されたのは青い矢───あれは、当たったらまずい。

 

「食らいつけ───“赤原猟犬・耐久低下(フルンディング)”!!」

 

陰陽玉の色が紫色に変わる。それと同時に、私を囲うように空間が開く。

 

『スペルカード───反撃“リフレクションスペーサー”!!』

 

「なにぃっ!?」

 

「あれって、萃香さんの霊撃!?」

 

マスターの声が聞こえる。まぁ、ほぼ同じなので特に何も言えない。

 

「なら───So as I pray,」

 

『固有結界!!』

 

「UNLIMITED BLADE WORKS.」

「目覚めよその神秘───」

 

エミヤさんの固有結界が、私の第二宝具がせめぎあって───砂漠と、夜天。それが、共存する風景が出来上がった。

 

「───やれやれ、君も詠唱はしていたのか。」

 

「…一応、ですけど。」

 

「…なら、禁じ手中の禁じ手と行こうか。これで終わらせてもらう───!」

 

「星の極光、今ここに───」

 

第二宝具の力を剣に集める。

 

「受けきれるか…!“永久に遥か(エクスカリバー)───」

「第二宝具、変質───“惑星の光鍛えし(アステロイド)───」

 

間。気がつく───これで、決着はつくと。

 

「───黄金の剣(イマージュ)”!!」

「───鋼の剣(ブレイザー)”!!」

 

光の奔流。それが私とエミヤさんを飲み込み、その圧力がシミュレーションルームの壁に叩きつけた。それと同時に、シミュレーションルームの立体映像が消えた。…終わったようだ。

 

〈Draw〉

 

「「……はい?」」

 

ドロー…?

 

「…決着がつかないのか。」

 

「…みたいですね」

 

そこまで決着がつけたかったわけでもないものの、これでは何となく…うん。納得いかない。

 

「…次は勝つぞ、星のアルターエゴ」

 

「…こちらこそ、次があればよろしくお願いします。」

 

とりあえず、疲れたので今回は解散となった。




月「う~…負けたぁ…」

引き分けだからね…う~ん

月「物質生成速度こっちが上回ってたのに引き分けはもう負けだよ…うう」
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