狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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さて……どう、星見の観測者。

星見の観測者「問題ない。こちらからも藤丸リッカの姿は見えている。無論ナーサリー・ライム、そして預言書の姿も。」

ん……了解


第223話 第弌ノ罪科、其嫉妬罪也

───人を羨んだコトはあるか?

 

己が持たざる才能、機運、財産を前にしてこれは叶わぬと膝を屈した経験は?

 

世界には不平等が満ち、ゆえに平等は尊いのだと噛み締めて涙に濡れた経験は?

 

答えるな。その必要はない。

 

心を覗け。目を逸らすな。それは誰しもが抱くがゆえに、誰ひとり逃れられない。

 

他者を羨み、妬み、無念の涙を導くもの。

 

嫉妬の罪。

 

 

「……う」

 

意識が覚醒する。なんだろう。酷く、お腹が痛い。警告の激痛───いつもより、強い。

 

「マスター!あぁ、よかった!目が覚めたのね!」

 

「ナー…ちゃん?」

 

そこには銀髪の少女…恐らくナーちゃんだと思われる少女がいた。いつもが幼女…9歳くらいの子供だとしたら、今の姿は大体12歳くらい…?…

 

「えぇ、あたしはナーサリー・ライム。こんな姿になってるけれど…マスターを、助けに来たの。」

 

「私を……っ!?」

 

慌てて周囲を見渡す。ここは───カルデアじゃない。この雰囲気───

 

「刑務所……いや、牢獄?」

 

牢獄、牢屋。そんな言葉が当てはまるような場所。

 

「……ナーちゃん、ここは?」

 

「…恐らくは偽りのソロモンの…マスターの道を阻むための場所、とのことだったわ。」

 

私の…

 

「絶望の塔───監獄塔へようこそ、先輩!」

 

「「っ!?」」

 

ナーちゃんと同時に身構える。それと同時に沸き上がる黒い塊……怨霊の類い?

 

「そら、歓迎のようだ!聞こえるか、この怨嗟の声が!生者でありながらこの塔にいるお前を怨む声がする!お前のその生者故の暖かい魂を気にくわないとする嘆きが聞こえる!」

 

「マスター、あたしの後ろに!」

 

「う、うんっ!」

 

「この……あたしのマスターに……触れないでっ!!」

 

いつの間にか出現させた杖をナーちゃんが振ると、風の刃が怨霊達を凪ぎ倒した。その結果に、ナーちゃん自身が驚きの表情を浮かべていた。

 

「この感じ……あたしの魔力が、上がっているの?」

 

「傍らにあるは本来とは別の変化を為したキャスター!ハハハ、いいぞ!本来お前に協力するものは必要ないと思ったが、オレは受け入れよう!キャスターと、そのルーラーの存在を!多少の計画外など気にするか!」

 

その言葉にやっと気づく。私の腰に預言書があったことに。ページを開くと───いない。精霊達がいない。…7章?

 

「ハハハ、その顔!貴様にとっても予想外があったか!?まぁいい、お前の輝きは真実だ!その輝きは例外や規格外すらも惹き付け、そこのキャスターのように霊基の変異すらも引き起こすだろう!」

 

「さっきから……この声、何!?敵なの!?」

 

周囲を見渡して───いた。黒い影の中に、ダークソウルシリーズに存在する、“人間性”のような形をした何か。

 

「あぁ、しかし何故だ!オレのマントが剥がれん!何故だ!」

 

「───人間性を捧げよ!不死達を癒す篝火へと!さすれば汝が真の姿と相見えん!」

 

思わず叫んでいた。直感した、あれは人間性そのものだ。もしも人間性が取り憑いて姿が消えているというのなら人間性を捧げてしまえば───!

 

「人間性だと?クハハ、面白いことを言う!このオレに“人間性”とはな!だがしかし、確かにこのままは面倒だ!お前の言う通り篝火とやらを探すとしよう!もっとも、この塔にあるかは知らんがな!」

 

「結局───敵なの!?味方なの!?」

 

「ふむ、その答えか───」

 

「あっ!?」

 

ナーちゃんの魔術を潜り抜けて黒い塊が私に襲いかかる───寸前。

 

「ふんっ!」

 

人間性の姿を持った…人?が私の前に移動してそれを凪いだ。

 

「敵か味方か、と問われれば…さて、どう答えたものか!少なくとも今は味方だと考えるといい!」

 

「あなたは…?」

 

「オレか?…ふっ!この世にいてはいけない英霊だ!この世に陰を落とす呪いのひとつ!お前の近くに在るとあるエクストラクラスと同じ(クラス)を持つ者!オレは───そうだな!“復讐者(アヴェンジャー)”と呼ぶがいい!」

 

そう告げ、その人かどうかは分からない人は黒い塊を一閃、その黒い塊を消滅させた。

 

「一撃……!」

 

「そして。もう1つ答えてやろう。ここは地獄。恩讐の彼方たるシャトー・ディフの名を有する監獄塔。絶望の深淵にて精々足掻くことだ、囚われのマスターよ!」

 

「……」

 

「さて、このような状態で言うのもどうかと思うが1度言うしかあるまい。はじめましてだな、これより七つの試練に立ち向かうマスターよ!単刀直入に言おう、お前はこの試練を乗り越えなければ死に至る!無事に戻りたければ死に物狂いで試練を越えろ!!」

 

「えっ…」

 

「……」

 

何となく、気がついてた。警告の激痛が止まないし。

 

「……分かった。帰るなら、越えなきゃいけない壁がある。…そう、なんだよね?」

 

「そうだ!お前は知らなくてはならない、お前に欠けているものを!歪んでいるとはいえ、この場所はそれを知るに最適な場所だろう!だが、オレはそれを懇切丁寧に説明してやる義理はないな!何故ならオレはお前のファリア神父になるつもりはなく、気が向くままにお前の魂を翻弄するだけだからだ!」

 

「……そう。」

 

「あんまりだわ、それは!そちらが拐っておいて、説明もなしにデスゲームに放り込まれるなんて!」

 

ナーちゃんが抗議する。…でも…

 

「…ナーちゃん。多分、デスゲーム主催者ってそういうものだと思うよ。」

 

「え…」

 

「死と隣り合わせの中、プレイヤー達がどう動くか…それを鑑賞するのが、デスゲーム主催者の楽しみ方なんじゃないかな……」

 

何となく、そう思う。

 

「……でも、やることは明確。ゲームクリア要件を満たせば、そのデスゲームからは解放されるはず。…性格が悪くなければ。」

 

「不安になっているじゃないの…」

 

「……確認。その七つの試練を突破すれば、私とナーちゃんはカルデアに戻れるの?」

 

「そうだ!逆を言えば1度でもお前が命を落とせばそこで全てが終わりだ!」

 

「…分かった。言質は取ったからね。」

 

恐らく、アルの…特に星乃さんの補助とかは望めない。多分ここは、そういう場所だから。

 

「物分かりが良さそうだな!覚悟が決まったならついてこい!第一の裁きがお前を待っているぞ!クハハハハ!!」

 

そう言って人間性の姿をした人……いやほんとなんで人間性なのか分からないけど……その人は部屋を出ていった。

 

「……マスター…」

 

「……ナーちゃん」

 

「…?」

 

「…少し見ない間に、可愛くなったね。いつもの姿もいいけど…こっちも好き。」

 

「───っ!」

 

ナーちゃんが顔を赤くした。

 

「…もうちょっと可愛くなったら、私と同じくらいになるのかな?」

 

「…可愛くなる、というか…あたしの変化は大きくなる、だと思うの。」

 

「そっか。…でも、可愛い。」

 

「あ、ありがとぅ……」

 

あ、声小さくなっちゃった…

 

「それと、ありがとね。こんな場所まで来てくれて。…多分、アル達が頑張ってくれたんだと思うけど…嬉しい。1人じゃなければ私はまだ戦える。」

 

「マスター…」

 

「…ナーちゃんが一緒で、心強いよ。」

 

「……本当は、ジャンヌの方がよかったんじゃないかしら…そう、思うの。」

 

その言葉にナーちゃんの顔を見つめる。

 

「我儘を言って、ここまで来たけれど…迷惑じゃ、なかったかしら。」

 

「…ううん、嬉しい。誰かに頼まれてじゃなくて、ナーちゃんが自分の意思で来てくれようとしたんでしょ?…私は、それが一番嬉しいよ。」

 

「……そう、なのね…」

 

改めてナーちゃんの姿を見る。いつもの9歳くらいの姿じゃなくて、12歳くらいの女の子の姿。黒のドレス姿だけど、何故か何となく動きやすそうな印象を受ける。そして…長めの杖。なんというか…

 

「…魔法少女?」

 

魔法少女。そんな感じがした。

 

「…マスター。マスターは、どんな女の子が好きかしら?」

 

「え?うーん…」

 

唐突な質問に悩む。どんな、と言われても…

 

「……ごめん、パッとは思い付かない…」

 

「…そう。じゃあ…1つ聞かせて。マスターは胸は大きい方が好み?」

 

「ん…それはどっちでも。どちらかを選べって言われたら小さめがいいかな?後ろから包み込むように抱きつきやすいし。…私の価値観としては、女の子の価値は胸の大きさで全部を決められるわけじゃないし。胸が大きくても小さくても、その人はその人なんだもん。私がその人が好きだったなら外見や立場関係なく迷わずその人を選ぶよ。」

 

「マスター……じゃあ、今までのあたしでも?」

 

「うん。…ところでちょっと気になってたんだけど」

 

「?」

 

「その水色の石は?」

 

ナーちゃんは首から水色の丸い石を下げていた。なんというか…レイジングハートをそのまま水色にしたような。

 

「これ?月さんがくれたのよ。“芽吹けば何かは分かります”って言っていたけれど…」

 

「“ザ・シード”かな?」

 

あの人も結構ゲームとか好きだよね…こことは違う世界だけど未来の話も知ってるから結構話してて楽しい。ネタバレには配慮してくれてるし。

 

「あたしが持っていて大丈夫かしら…」

 

「いいんじゃないかな。月さんがナーちゃんにあげたものなら、ナーちゃんが持っていた方がいいと思う。…きっと、何か意味があるんだろうし…」

 

「…分かったわ。マスターがそういうなら、あたしが持っておくわ。」

 

「ん。…さ、行こっか。あの人も待ってるし、カルデアの皆も待ってるもんね。」

 

私がそう言って立ち上がると、私の姿が変わる。

 

お母さんの“童子切安綱”。

 

お兄ちゃん達が協力して鍛えてくれた太刀───“試作型天文台太刀IV”。

 

アルテミスさんの“月女神の弓矢”。

 

ニキが作ってくれた心を繋ぐかもしれないペンダント。

 

星羅からもらったポップスターをモチーフとしたような星形のヘアアクセ。

 

そして───動きやすいように設計された道着と袴。高校の先生達からもらったもの。

 

それを確認して、呼吸を整える。

 

「───シッ!!」

 

蹴り一閃。そうして、牢屋の扉を吹き飛ばす。

 

「…行こう、ナーちゃん。カルデアに戻るために───七つの試練へと!」

 

「…これじゃ、あたしが来た意味なんてあったのか分からないけれど…それにあたしが言いたいことも言えてないわ。だけど…ええ!行きましょう、マスター!後でもいいからあたしの言いたいことちゃんと聞いてちょうだいね!」

 

「うん、ちゃんと聞くよ。」

 

私の差し出した手を握り返すナーちゃん。私達はそのまま、その廊下を進んだ。

 

 

「来たな!そうだ、お前に迷う時間はない!何故ならば何もせず7日を迎えてもお前は死ぬのだからな!」

 

「デビルサバイバーかな?」

 

なんでちょうど7日なの?思いっきりデビルサバイバー思い起こすんだけど…

 

「お前の言っていることはよく分からんが…まぁいい、この場こそ第一の裁きの間!」

 

人間性…じゃなくてアヴェンジャーさんは観客に聞かせるような大声でそう告げた。なんか、闘技場みたいな雰囲気…大きい広間なんだけど。…なんだろう。変な感じがする。

 

「この場にも支配者がいる!お前が挑むは七騎の支配者!誰も彼もがお前を殺そうと手ぐすね引いているぞ!さぁ、第一の支配者は───」

 

アヴェンジャーさんが言い終わる前にナーちゃんが氷の壁を形成した。その壁に衝突する何か───硬質なもの。

 

「この感じ───行ける!そしていきなり襲いかかるなんて作法がなっていないわ!」

 

「クリスティーヌ……クリスティーヌ、クリスティーヌクリスティーヌ!!」

 

あれは───

 

「エリックさん!?」

 

「そうだ!第一の支配者は“ファントム・オブ・ジ・オペラ”!美しき声を求め、醜さを憎み、地下で蠢く天才でありながら怪人!嫉妬の罪を以てお前を襲う化け物だ!!」

 

「嗚呼 今宵新たな歌姫が舞台へ立つ!だが───嗚呼 おまえは誰だ 立つのは君ではない!クリスティーヌ!!」

 

「マスター、気をつけて───」

 

「嫉…妬…?」

 

気持ち悪い。視界が揺れる。乗り物酔いに近い感覚───不意に、聞こえる声。

 

 

───なんで、お前が一番なんだ。

 

「…っ」

 

───私がこんなに頑張っているのになんでコイツを越えられない?

 

───どうせ上から見下ろして貶しているんだろう?

 

───妬ましい

 

───憎い

 

───お前なんていなければよかったのに

 

───おまえはこの場に必要ない

 

「マスター!」

 

その声に、幻聴が消える。視界は良くなっていき、異常な吐き気は収まっていく。ナーちゃんが、氷の剣でエリックさんの攻撃を弾いていた。

 

「……今の…」

 

「理解したか?垣間見たか?今お前が眼にしたもの。お前が聞いたもの。それが“嫉妬”だ。人の総てが抱き、お前の深淵を形作るもの。」

 

「…今のが、嫉妬…」

 

見えたのは巨大な蛇だった。嫉妬、というのならあれは恐らく…“レヴィアタン”。嫉妬(エンヴィー)を司る悪魔だ。

 

「どうした、怖気づいたか?自らを形作るもののおぞましさに、涙の一つでも流したくなるか?ん?」

 

「……はは」

 

今の…中学生の頃の記憶だ。最近、曖昧になってた。恐らくは無意識で封じたんだろうけど。

 

「…は」

 

何をしても、事態は好転しなかった。その理由が───

 

「あはっ……ハハハハハハ!!!」

 

笑いが漏れる。…なんで、気がつかなかったんだろう。

 

「嫉妬!そっか…私、嫉妬されてたんだね!ほんっと…おかしい。」

 

「マスター……?」

 

「…業を、醜さを突き付けられなお笑うか?」

 

「まぁ…ね!だって、私何も分かってなかったもの!知識だけ詰め込んで嫉妬が分からないとかどれだけ愚かなんだろう!」

 

「クリス───!?」

 

縮地を用いて接近、私を狙う一撃の発生点に回し蹴り。

 

「え…!?」

 

「私、何も分かってなかった。ううん、“見ようとしてなかった”!ほんとおかしい…理由がないものだと思い込んで、知ろうとしなかった…!」

 

そう呟いた瞬間、黒い塊が私に近づいて───否、引き寄せされていく。

 

「ちょっ!?」

 

「あぁもう…ほんと、バカみたい。…ううん、バカなんだね。妬まれていることすら気がつかず、そのまま1人で突き進んで!“一緒にやろう”の一言もなかった!私の奥底にある努力も見せなかったら不気味がられるに決まってる!」

 

「クリス、ティーヌ…」

 

「ナーちゃん!行こう!」

 

「───ええ!」

 

ナーちゃんと一緒に飛び出す。

 

「あたしは童話!所有者によって姿を変える、定められたカタチのない英雄ナーサリー・ライム!けれどいまいるあたしは1つのカタチを得た!あたしは───あたしはあたしの意志のもとに戦う!総てはあたしのために───あたしの想いを突き通すために!!おいでませ、ジャバウォック!」

 

ナーちゃんがジャバウォック───赤い巨人を召喚した。童話であることには変わりないのか、その召喚能力は健在みたい?

 

「マスターも!」

 

「───私はリッカ!藤丸リッカ!好きなものはサブカルチャー全般とコーディネート!嫌いなものは理不尽と根拠のない否定!座右の銘は“みんな違ってみんないい”!少しの間だけど、よろしくお願いします!」

 

私がそう告げたあと、ナーちゃんがジャバウォックから飛び降りる。

 

「こんな場所にあたしのマスターを連れてきたお礼───もとい、挨拶代わり!受け取って!」

 

ジャバウォックが押さえつけるエリックさんに、杖を剣にもせず、突き刺すナーちゃん。

 

「“火吹きトカゲのフライパン”!!」

 

その言葉に、突き刺した場所を中心に巨大な火柱が立ち上った。その火柱はしばらく続いて───消えた時、そこにはエリックさんの姿はなかった。

 

「…終わったわ。」

 

そう言ってナーちゃんは杖をどこかに消し、私に近づいてきた。

 

「終わったんだよね。…お疲れ様、ナーちゃん。」

 

「当然でしょう?あたしはマスターを助けるために来たのだもの!…とはいえ、魔力の上がり方が凄くて少しの間振り回されそうだけれど…」

 

「大丈夫、私もうまく使えてないし…一緒に頑張ろ?」

 

「…ええ。」

 

「見事だ。嫉妬を喰らい尽くしたな、マスター。」

 

「喰らい尽くした…のかな…」

 

正直、実感は湧かない。けど…何かが変わった気はする。

 

「あ、そうだ…アヴェンジャーさん」

 

「む?」

 

「あと6つ───その意味、私に教えて?知らないといけない気がするの。」

 

「───ハ。クハハハハ!!地獄を求めるか!いいぞ、それでいい!その先に何が待つか───その疑問に一言で答えよう!」

 

人間性に覆われていて全く表情も細かい動きも分からないけど。でも、マントか何かを翻すような仕草をしたのは分かった。

 

「“待て、しかして希望せよ”!次の試練でまた逢おう!クハハハハ!!」

 

そう言い残してアヴェンジャーさんは闇の中に消えた。

 

「……あたし達も戻りましょう?それで…その。聞いてほしいの。」

 

「…?そういえば、さっき言いたいことも言えてないって言ってたね。」

 

「…うん」

 

ひとまず、一度闘技場のような場所を出てさっきの場所に戻ることにした。

 

 

「………」

 

「どう?ナーちゃん。」

 

「…だめ。カルデアとの連絡は取れないみたい。月さんも管制に加わってたからあたし達のことは追えているはずだけど…」

 

「…そっか」

 

そう言いながら、部屋の隅にあるソレに眼を向ける。

 

「………なんで篝火」

 

あの人が人間性だったときから思ってたけど。ちょっとこの場所、ダークソウル感強くない?ついでに何故かノコギリ鉈落ちてるし…

 

「…まぁ、いいか。それよりナーちゃん、言いたいことって?」

 

「う…えっと、その…」

 

少し綺麗にした床で正座して対面する。ナーちゃんは気まずそうに言い淀んでいる。

 

「焦らないでいいから落ち着いて、ゆっくり言葉にして?」

 

「う、うん…」

 

「はい、深呼吸。」

 

「……ふぅ…」

 

あ、落ち着いたかな?

 

「……マスター。」

 

「うん。」

 

「……ごめんなさいっ!」

 

「え?」

 

いきなり謝られる。え?ナーちゃん、私に何かしたっけ?

 

「え、ええと…なんで?」

 

「…あたしが召喚されたときのこと…あたし、マスターのことを怖がらせて…傷つけてしまったから。…ずっと、謝りたかったの。……ごめんなさい。」

 

土下座に近い謝り方。本気で言ってる、っていうことは伝わる。

 

「……顔を上げて、ナーちゃん。」

 

「……?」

 

「私…前に言ったと思うけど。別にその事、気にしてないよ。」

 

「…でも」

 

「…それでも、気になるんだったら…そうだね。」

 

「…?」

 

「私、藤丸リッカは卿、ナーサリー・ライムに対して私の過去の姿を使われたことに対し、怒りも何も浮かべていません。私の本当の名前を見破られたことにも恐怖したのは事実ですが、怒ってはいません。故に私が卿を許すべきものは何一つ存在せず、卿もまた謝るべき事柄は存在しません。」

 

「……そう、なの…」

 

「…それでも、まだ納得できない?」

 

私の問いにナーちゃんが頷いた。…困った、結構ナーちゃんって強情だ…

 

「…それじゃあ、1こだけ。お願いがあるの。」

 

「何!?なんでも聞くわ!」

 

急に顔を上げて、私を見つめるナーちゃん。…えっと。

 

「…うん、ちょっと待って、とりあえずその返しはやめよう。お願い関係なく。」

 

「心配しなくてもマスター以外には言わないわ。」

 

……嬉しいと思っていいのか悪いのか。とりあえず…

 

「ええっと。…ずっと、一緒にいてくれる?」

 

「……それが、お願い?」

 

「うん。…人理修復が終わっても、ずっと一緒に。……これじゃあだめ、かな?」

 

「……いいえ。分かったわ。約束する。あたしはずっと、マスターと一緒にいるわ。人理修復が終わっても、ずっと。座には…帰らない。それで、いいのね?」

 

私が頷くと、ナーちゃんはそれで納得したのか本をどこからか取り出した。

 

「……簡易的だけれど、お茶会のようにしましょう。少しでも休めるようにした方がいいわ。」

 

「……私、ナーちゃんがいなかったらダメだった気がする…」

 

「そうかしら…」

 

預言書は今でもうまく効かない。ナーちゃんがいてくれたことに、本当に感謝した。




嫉妬突破…ね。

星見の観測者「…創り手?」

ん?

星見の観測者「……いや、なんでもない。忘れてくれ。」

…分からないけど、分かった。
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