狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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月「あー…なるほどね。調べた結果、出たよ。」

美雪「どう、ですか…?」

月「あなたは“亡霊”…最初から霊体だから闇霊との相性はいいんだろうね。…ましてや、あなたから切り離されている側面は“怨霊”なわけだし。闇霊…というか、復讐霊って感じかな。」

美雪「…あまり、嬉しくないです。」

月「……優しいものね、あなたは。」

美雪「…問題は…」

月「…うん、気づいてる…憤怒の間であなたが敵として喚ばれるのなら、それは恐らく───」


第227話 第肆ノ罪科、其憤怒罪也・異聞

闇霊。黒ファン───私は赤ファン呼び派だけど───そう呼ばれるもの。それが私達の前にいた。アルの第六人格───美雪さんの姿で。

 

「美雪さん……?助けに来てくれたのかしら。でも、なんで闇霊なのかしら?」

 

黒ファンは敵対プレイヤーを示す。味方プレイヤーを示すなら白霊───白ファンなんだけど。

 

「……」

 

「構えておけ。あれは敵だぞ。」

 

「え…」

 

なんで、と聞こうとした瞬間に放たれる強烈な殺意。それと共に身体から沸き上がる真っ黒な───深淵、のようなそれ。

 

「……シャッ!」

 

「……!」

 

ナーちゃんが私と闇霊の間に割り込み、攻撃を防ぐ。

 

「……いきなり襲ってくるだなんて、いつもの貴女らしくないのだわ!」

 

そう、彼女らしくない。いや、そもそも───何故、闇霊として召喚された?

 

「ルァァァァァ………ガァァァァァァ!」

 

「…これって───」

 

まるで、獣だ。彼女に、一体何が……?

 

 

side 美雪

 

 

何か、出力された。…いいえ、喚ばれました。恐らくは───リッカさんのいる場所へと。

 

『…我が主』

 

『ん?どうしたの、ファントム』

 

伝えた方がいい。そう思ったために我が主、創詠 月に声をかけました。

 

『今、“私”が何かに喚ばれました。…恐らくは、リッカさんのもとへ。』

 

『喚ばれた…か。嫌な予感がするけど…もしかして。』

 

『…はい。恐らくは、()()()()───()()()()()()()()です。』

 

『……そっか。』

 

主は小さくため息をついてから何かをしました。

 

『……ビンゴ。ファントムの予測通り、過去のファントムが召喚されてるみたい。…リッカさんの服は白。』

 

『…私の、加害対象ですね』

 

『だね…ほんと、白い服ならなんでもいいっていうのは面倒だね…』

 

『すみません…』

 

『ファントムが謝ることじゃないよ。…さて、私の方から何かできればいいんだけど』

 

そう簡単に上手くいかないかなぁ、と呟いて別の作業を開始しました。…私に、できることと言えば…

 

『……』

 

祈ること、でしょうか。祟り巫女と呼ばれたこの魂ではありますが、それが巫女であるならば───祈りが届く、のでしょうか。

 

『……お願い、美恵。どうか……リッカさん達を。』

 

例え、届かないとしても。…私は、そう願うことしかできませんでした。

 

 

side リッカ

 

 

何回か衝突したあと。私達は向かい合っていた。…あっちの戦意が衰えたわけじゃない。私達が負けたわけでもない。…嫌な予感がする。

 

 

{戦闘BGM:霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion}

 

 

「っ、2人とも後ろに跳んで!!」

 

そう言いながら私も跳ぶ。2人も私の指示に即座に従ってくれて、跳びながら構えていた。

 

「ナーちゃん、アヴェンジャーさん!飛ぶよ!!」

 

「飛ぶ、だと?一体どうやって───」

 

有無を言わさずアヴェンジャーさんとナーちゃんの背中にボタンのようなものを貼り付ける。

 

起動(スタート・フライ)!」

 

私の宣言に呼応し、機械から羽が生える。

 

「なんだ、これは!天使の羽など───」

 

「いいから飛ぶわよ、アヴェンジャー!早くしないと全員焼け落ちるわ!」

 

ナーちゃんが焦った表情でそう言って飛ぶ。私の背中の機械からも同じものが生えているため、私も飛べる。地を蹴り、ナーちゃんがいる場所まで飛翔する───

 

「クイックチェンジ、コード:マギア1!」

 

私の言葉を聞き入れた指輪が太刀を消滅させる。代わりに私の周りを浮遊する光球が4つ出現する。…この曲、ってことは───

 

「…っ、リッカさん、来るわ!」

 

ナーちゃんの声に黒ファンの方を見ると、手元に赤い球体を出現させていた。あれは───

 

〈─ザ──リッカさん、気をつけてください!〉

 

「アドミスさん!?」

 

アドミスさんの声がした。

 

〈かなりギリギリですが、月さんが通信を繋げてくれました!それでも長くは持ちません!それより、あれは───!〉

 

「───うん」

 

予測通りなら───

 

「「〈───核融合反応!!〉」」

 

私、ナーちゃん、アドミスさんが同時に叫んだ瞬間、巨大な光球が放たれた。

 

「ちょっ!?最初は通常弾幕からでしょう!?」

 

〈核熱“核反応制御不能”───最初からスペルカードとかありですか!?〉

 

いや、そもそもその前に───なんで!?

 

〈リッカさん、あれ───殺傷設定です!!〉

 

「ええ!?」

 

〈絶対に触れてはいけません!…って言っても、難しいですよね…〉

 

……難易度───Lunaticか。核反応制御不能、っていうことはそうだ。…さて。

 

「ナーちゃん!」

 

「えぇ!───早々にスペルを破壊(ブレイク)するわよ!」

 

同じ考えだった。光球に魔力を回すと射撃術式が起動する───そう、お兄ちゃんは言ってた。

 

「こちらはボムなし、相手はボムあり───ううん、1枚だけある。」

 

…でも、これはさすがに使えないか。

 

≪リッカさん、アリスさん、避けながらでいいので聞いてください!難しいのは分かっているんですが大切なことなんです!≫

 

『何!?』

『何かしら!?』

 

≪このスペルを放った張本人───闇霊となっている美雪さんは美雪さんの過去に近いものです!≫

 

美雪さんの、過去───?

 

『それ、本当なの!?』

 

≪はい!美雪さんの過去である以上、白い服を着ているリッカさんを殺そうとしてくるそうです!≫

 

白い服?私じゃなくて、服?彼女の過去に───一体、何が…?

 

『止める方法はあるのかしら!?』

 

≪残念ながら不明です…!かつて、月さんは美雪さんを様々な手を使い弱らせ、力を使い果たした美雪さんに封印を施したのだとか!以来、怨霊としての彼女はなく、亡霊としての彼女だけが残った───いいえ、怨霊としての彼女と亡霊としての彼女が分裂したそうなんです!≫

 

『分裂…だったら、これは分裂した怨霊の側面ということかしら?』

 

≪ですから───過去です!いいえ、過去というよりは───今でも怨霊として在ったときの可能性(if)!詳しく調べてくれた月さん曰く、それがいま対峙している存在の正体だそうです!≫

 

可能性───それでは、もしかしたら。

 

『月さんを振り切った───ううん、月さんを倒した可能性すらあるってこと!?』

 

『≪───っ!?≫』

 

その言葉にナーちゃんとアドミスさんが息を飲んだ。それもそのはず、月さんはアルの人格達の中で最も戦闘に長けているといわれている存在。彼女自身は自分のことを“弱い”というものの、彼女が相手になると勝つことが出来たのは誰もいなかった。もちろん、空間を操る力や神器は使わずに。

 

≪そうでないことを祈りたいですね…!≫

 

そう言った途端、弾幕が消えた。スペルブレイクだ。地霊殿なら、この後は通常弾幕だが───

 

〈来ます!〉

 

突如放たれる巨大赤弾。このスペルは───

 

「爆符“ペタフレア”───っていうか!スペルカードを使うならちゃんと宣言しなさいな!!スペルカードルール違反なのだわ!!」

 

あ、ナーちゃんが怒った。…あれってどういう定義だっけ…

 

「まったくもう……!アヴェンジャー、ちゃんとついてくるのよ!」

 

「指図するな───といいたいが、ええい!いいだろう、今はお前に従ってやる!」

 

アヴェンジャーさんはナーちゃんについていくみたい。とりあえず私も避けるだけで精一杯だから助かるといえば助かる。…っていうか、弾幕って3Dにするとこんなに絶望感たっぷりなんだね…

 

〈とりあえず…!リッカさん、月さんから…!〉

 

「え?」

 

〈どうぞ!〉

 

そう言われて出てきたのは…眼鏡と、球体と、紙?それも複数?

 

〈その紙はスペルカード!リッカさんの魔力が異常であることから、宣言すればスペルが起動するようになってるようです!〉

 

「え───待って!いいの!?」

 

〈いいらしいです!〉

 

いいの!?こんなに!?

 

〈その眼鏡はかけておいてくだ──ザ───〉

 

雑音が混じった。

 

〈す───げんか───って──〉

 

そうして、通信は切れた。

 

「……」

 

球体は私の周りを浮遊してる。…これ、もしかして

 

「リッカさん!」

 

ナーちゃんの声に思考の中から意識を引き戻すと、目の前に赤い大弾があった。即座に羽ばたかせ、光球に魔力を通してショットを起動する。

 

「…この眼鏡…なんだろ」

 

かけておくように、とは言われたものの何故そう言われたのかが分からない。

 

「…もう少し、かな」

 

確かペタフレアの効果時間は60秒。多分、もう少しなはず───そう思っていたら、弾幕が消えた。

 

「スペルブレイクよ、リッカさん!」

 

「うん───っ!?」

 

下。赤い光が収束するのが見えた。それを見て先程渡された紙を1枚抜き出す。

 

「早速お借りします───スペルカード宣言!」

 

そう告げると、私の前に紅い球体が現れた。その紅の球体に手を添え、スペルの名を宣言する。

 

「星符“プロミネンス───」

 

「アァァァァアアァ!!!」

 

「───スパーク”!!!」

 

赤の雷と紅の炎。それが私と闇霊の間で激突する。ただ───私の“プロミネンススパーク”の方が、少し劣勢。

 

「マスパに似てるのだわ……!?」

 

ナーちゃんがそう言う。…あぁ、そうだろう。これは、恋符“マスタースパーク”を基礎に、出力されるものを強力な炎に変換したスペルだ。私が作ったものではないにしても、分かる。私が作ったものでないからこそ、スペルの威力が弱いのだって分かっている───!!

 

「木符“ツリースコール”!!」

 

追加でスペル宣言。雷と炎の間に何層も重なった木版が現れる。あれが雷だというのなら、それは五行において土属性を示す。ならば土を剋す木、火を生ずる木を使えば…!

 

「……!!」

 

結果は、打ち勝った。でも、まだ終わってない。

 

『ナーちゃん!あのスペルが来る!』

 

『同じことを思ってたわ!』

 

羽を強く羽ばたかせ、闇霊から距離を取る。その瞬間、私達の周りに現れる無数の光弾。それと使用者が中心の巨大弾に───引力。

 

「ぬぉっ……」

 

「しっかり捕まっていなさい、アヴェンジャー!リッカさん、全部避けるわよ!」

 

「うんっ!」

 

“サブタレイニアンサン”───東方地霊殿難易度Lunatic、空ちゃんのラストスペル!!

 

「アアァァァァァァアアア!!」

 

怒りのままに叫んでいるだけ。そのはずなのに───どこか、悲しさを感じる。強い怒りと、悲しさと、後悔。

 

「……聞いていられないわ、この声。…バッドエンドを思い起こさせるもの。」

 

「うん…私も」

 

「なら、早急に……終わらせましょう!」

 

私が頷き、魔力を光球に回すと同時にナーちゃんも光球を出現させる。正式名称“弾幕発射体(ショット・スフィア)”───ナーちゃんのはナーちゃんが魔力で作り出したもので、私のはお兄ちゃんが用意してくれたものだけど。

 

「「拡散“フェアリーショット”!!」」

 

私とナーちゃんの声に応じて発射体が拡散ショットである“フェアリーショット”を起動、周囲にばらまく弾幕を放つ。放っている間に───膨れる、巨大な弾。それも、一気に2段階。

 

「ナーちゃん!」

 

私がカードを1枚抜き出したのを見て、意図は伝わったみたい。頷いて拡散ショットを止めた。

 

「水符“ハイドロ───」

「“眠れる美女と───」

 

青色の球体に魔力が収束する。ナーちゃんの方も同様。ナーちゃんと視線を交わしてから続きを紡ぐ。

 

「───プラネットフィン”!!」

「───妖精の泉”!!」

 

宣言が終了されて飛び出す水属性の弾幕。ナーちゃんの弾幕がナーちゃんを中心に放射状に放つようなものに対して、私のは相手を中心に集束していくもの。それは少しずつ、着実に闇霊を追い詰めている…と、思う。だからこそ。

 

「───これで……!!」

 

水符“ハイドロプラネットフィン”。星海さんが言っていた話では、このスペルは2段階構成らしい。1段階目は相手を中心に集束する弾幕。2段階目は───砲撃。

 

「っ!」

 

羽で姿勢を制御しながら衝撃に耐える。嫌な予感がする時は場所を変える。私のサバイバルゲームでの経験上、そこには弾幕がある───ビンゴ、私のいた場所を通過していった弾があった。

 

「貫け……!!」

 

ちょうど威力が上がる時間に達したのか、砲撃が太くなる。2段階目の砲撃は放出し続けていると砲撃が太くなると言っていた。それ故に───

 

「…っ!ブレイクしたわ、リッカさん!」

 

“サブタレイニアンサン”、ブレイク。一息つくと同時に忘れていた眼鏡をかけ、闇霊を見る。

 

「…え?」

 

眼鏡を通して表示されたのは───体力ゲージ。相手の名前は───“The Dark Phantoms : A Shrine Maiden Who Grudges White”。……“白を怨む巫女”?……それに…祟巫“カースドコメット”…って!

 

「危なっ!?」

 

強く羽ばたき、黒い光と共に突進してきた闇霊を避ける。…なるほど

 

「“ブレイジングスター”のアレンジ…かな?」

 

感想としてはこんなものだと思う。…けど

 

「完全に深淵歩きっぽい…」

 

その黒いオーラはブレイジングスターとは全く違う、底知れぬ闇を感じさせた。深淵歩きのアルトリウス…のような。

 

「…って、やばっ」

 

考えながらも避けていると、不規則な動きで追ってきた弾幕に当たりそうになっていた。……これは、不味いかも

 

「リッカさん、後ろ!」

 

「え───」

 

ナーちゃんの声に後ろを向くと、黒い光球がそこに浮いていた───

 

「───あ」

 

気がついたときには目の前に闇霊の姿。ガンド───間に合わない。当たる───

 

 

バキンッ

 

 

───と、思ったのだけど。何かが防いだ音がした。

 

『……あなたにもう、私の声は届かないのかな』

 

声。女の子の、声。声を発しているのは、白い霊体……の女の子。

 

「誰……?」

 

『…ごめんなさい。時間が、ないから。…詳しいことは、この子に聞いて?』

 

その女の子はそう告げると大量の弾幕を発生させた。眼鏡で見えたその表示は───“The White Phantoms : White Girl”。白き少女……

 

『……ラストワード、“劫炎鎌鼬”』

 

そう呟いた途端周囲に火が吹き荒れ───いつの間にか、その場には私達以外は何もいなくなっていた。

 

「……」

 

「……終わった、のかしら…」

 

ナーちゃんの言葉に周りを見ると、指輪らしきものがそこにあった。

 

「……終わった、のかな。」

 

しばらく待ってみる……待っても何も起きなかった。私達は指輪を回収し、元の部屋に戻った。




月「状況終了…」

なんとかなったみたいだね
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