狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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遅くなりましたぁ…

裁「買い物行ってたからでしょ」

うぐ…


第234話 第柒ノ罪科、其傲慢罪也

意識が浮上する。目を開ける。目の前にはナーちゃんの寝顔があった。…7日目。既に、この光景は見慣れてしまった気がする。

 

《Good…》

 

声を発そうとするストリアさんを口の前に指を立てることで制止する。ナーちゃんが寝ていることに気がついたらしいストリアさんは私に近づいてきた。

 

Good morning, Grand Master.(おはようございます、グランドマスター。)

 

「おはよ、ストリアさん。」

 

Master ... you're sleeping.(マスターは…眠っていらっしゃいますね。)

 

「ここまで短期間に色々あったもの。…きっと、疲れてるんだよ。」

 

そう小声で言いながらナーちゃんの髪を梳く。

 

「ぅん…。」

 

身動きするものの、起きる様子はない。数日前なら、これだけでも起きていたはず。…それだけ、疲れがたまっていたのだろう。

 

「……ありがとうね、ナーちゃん。」

 

数日前、ナーちゃんは“ここに来たのは世界とか関係なくマスターを助けるため”、と言っていた。“世界を救うだけなら私が来るのは悪手だとおもう”、とも。…こう思うのは自意識過剰なのかも知れないけれど、ナーちゃんは私だけのために来てくれたんだと思う。私を救うためだけに、こんな場所まで来てくれた。

 

「……ありがとう。貴女がいなかったら、私は今頃折れていた。貴女がいたからこそ、今の私がある。」

 

…本当に、そう思う。

 

「…う。…リッカ…さん?」

 

「おはよ、ナーちゃん。」

 

「……あぁ、眠っていたのね。」

 

ナーちゃんが体を起こすと同時に、部屋の中にアヴェンジャーさんが入ってくる。

 

「起きているか。丁度いいな。時間だマスター、地獄へと赴くぞ。メルセデス、人形も来い。」

 

「「「??」」」

 

私とナーちゃんだけじゃなくて、メルセデスさんと人形ちゃんも…?

 

「…行こっか、メルセデスさん、人形ちゃん。」

 

「はい。」

「わかりました。」

 

私達はいつもの道を通って、扉の前に辿り着く。

 

「…傲慢」

 

その私の呟きにアヴェンジャーさんが反応した。

 

「…だよね、第七の裁きは。」

 

「…そうだ。第七の裁き、傲慢の罪。さぁ、扉を開けるといい。」

 

扉に触れた途端、お腹に激痛が走る。警告……今までよりも、強い。それを無視して扉を押し開ける。

 

「……誰もいない?」

 

その広間には、誰もいなかった。

 

「アヴェンジャーさん、これは…」

 

「…マスター…いや、藤丸リッカ。お前は俺を“エドモン・ダンテス”とは呼ばないのだな。」

 

その言葉に首をかしげる。

 

「“エドモン・ダンテス”って言われるの、嫌だよね?…反応見た限り、そんな感じがしたけど。」

 

「…ふん。1つ、昔話をしてやろう。暇潰しがてらにな。」

 

唐突…

 

「煙草が欲しいところだが、贅沢は言わん。───ある海の傍らに、愚かな男がいた。誠実な男であり、この世が邪悪に充ちているとは知らぬ男だった。故に、男は罠に落とされ、無実の罪によってシャトー・ディフに囚われた。」

 

……その話は…

 

「実に十四年。地獄の日々を乗り越え、監獄塔から生還した男は───復讐鬼となった。人間の持つ善性のすべてを捨て、男は悪魔が如き狡猾さを手に入れていた。男は憤怒のままに復讐へと耽った。一人ずつ、自らを地獄へ送った者どもに、たっぷりと恐怖を与えながら手にかけて。」

 

そう言ってからアヴェンジャーさんが笑う。

 

「あぁ、今でも思い出せる!連中の顔、顔、顔!!我が名を告げた時の驚愕!忘れ去っていた悪業の帰還を前にした絶望!ククク───ハハハハハハハハ!!あぁ、あれこそが復讐の本懐!正統なる報復の極み!」

 

「…それは…もしや、アヴェンジャーさんの…」

 

「逸るな。まだ話し終えていないうちに結論を急ぐのもどうかと思うぞ?」

 

それは言えている気がする。

 

「…とはいえ、概ねこれで終わりではある。男は復讐に耽ったものの、最後の1人を見逃した。人々の中には自らの悪を捨てたのだという者もいる。最後の最後に善性を取り戻したのだ、と。」

 

…?私の方を向いた?

 

「───愛を、得たのだと。」

 

「…愛。」

 

愛。私が、知らないもの。

 

「…その怒りの矛先は一体、何?」

 

「あぁ。男は確かに復讐を止めた。失われた筈の愛を取り戻したのだろう。復讐鬼たる自身を愛し続けた寵姫と共にどこへなりとも消え失せた───どこぞの小説家のせいで広く伝わっている話だ。男の人生は物語となった───いや、そこの童話が示すかのように物語こそが男であったのか。いずれにせよ、物語は至上の喝采を浴び、無数の想いを受け、“復讐の神話”となった。」

 

「…“モンテ・クリスト伯”」

 

その題名を呟くと少し不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「お前が言ったそれこそ、復讐の神話に他ならない。かつて男は復讐の神を叫んだが、男自身が復讐の神に成り果てた。そして、人類史へと刻まれた。人々が夢想する荒ぶるカタチのままに。その男の魂は、魔術の王が時を焼却する頃になって特異なサーヴァントとしてこの場に現界した。…あぁ、そうとも。それこそがお前を導いてきた男の正体。人間であらず英霊、復讐者(アヴェンジャー)として現界したために“エドモン・ダンテス”という名を切り捨てた者だ。」

 

…私の眼を直視して、アヴェンジャー───エドモンさんはそう告げた。

 

「…そっか。でも、嫌悪してるようだったのにどうして明かしてくれたの?」

 

「…いつまでも真名を知らぬままでは気分が悪いだろう。此処まで導いてきた餞別とでも思っておけ。…さて」

 

「っ!…っぁ゛!!」

 

アヴェンジャーさんが声を止めたと同時に激痛が走る。それと───酷い、嫌悪感。

 

「裁きが始まるぞ。第七の裁き、”傲慢”。お前はその罪を背負わされていた。」

 

「どう、いう、こ…と…?」

 

激痛が酷い。嫌悪感が酷い。此処までの反応は感じたことが…!!

 

「生命の写し。自らを複製し、同じ思考を以て行動ができる“星の娘”共とは違う、まったく別の生命に対して自らを写そうとした大罪。唯一つの生命をモノとして扱った傲慢───」

 

「あ゛っ…ぁ゛っ…」

 

「しっかりするのよ、リッカさん!!」

「しっかりしてください、リッカさん!」

 

メルセデスさん、ナーちゃんが私の手を握ってくれる。それでも、収まる気配はない。

 

「今宵それは衆目に曝される!さぁ───出るがいい!罪によって縛られ、理解によって穿たれ───罪と悪を用い、少女を苗床として少女の腹の奥で育まれ続けた“未知”の獣よ!!」

 

その声に───私は、意識が飛んだ。

 

 

「───カさ───リッカさん!!」

 

「───っ!はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ……」

 

ナーちゃんの声に私の意識が覚醒する。…凄い、汗だ。私もいつの間にか横になってたようだ。

 

「あぁ、良かった!気がついたのだわ!」

 

「一体、何が───」

 

あったの、と言いかけて。私の前にあったものを認識して止まった。

 

「───ぇ」

 

真っ黒な巨大スライム。それが、私の最初の印象。私が見た途端、その形は変わった。

 

【アアアアアアア…】

 

【ギィィ…ギィィ…】

 

「おかあ…さん?おとう…さん?」

 

その形は───お母さんとお父さん。

 

【子供を使って何が悪い…兄がダメだったからと言って妹を使って何が悪い…】

 

【結局お前たちは不良品…私達になることはできない…】

 

「…あ……」

 

【リツカ……ムツカ……お前たちの存在意義など私達を越えることだ…私達を世界に認めさせることだ……そこにお前たちの人格など必要ない……】

 

【お前たちに期待した私達が間違っていた…もっと、もっと私達が望める子供を作らなければ…】

 

…お兄ちゃんに、言われたことがある。お母さんとお父さんは、わたし達を道具としか思っていなかったと。…事実、だったみたい。

 

「そら、まだ続くぞ。」

 

「え…」

 

そう言うと同時にスライムの形が変わる。

 

【我が校においてイジメなんてありえん!そも、そんなものあれば我が校の経歴に傷がつくだろう!】

 

【この学校の校長となり、いつしかこの区域の全てを───】

 

【あんな奴、いなければ私が…】

 

【あいつうざい…何なの本当に…】

 

【これだけあればどんな娘とも…ぐふふ】

 

【これでいいか?いいよなぁ、残飯とはいえど俺達から恵んでもらえるだけいいと思えよ!】

 

【勉強なんかよりコイツで遊んでいる方が楽しいわ。なぁ?】

 

これまで見た、七罪。濃度が濃くて、酔いそうだ。そして───あぁ、思い出した。全部。全部───

 

「あれは全て、マスターが見たモノ。この世の地獄。魔術王がオレに見せた、マスターの半生でもある。」

 

そうだ。あれらは全て私が見たものだ。イジメを認めない校長、校長になることを望み学校地区を支配しようとする教師、好きな人を取られた女子、陰口を言う女子、大金で春を買おうとする教員、私にお弁当の残りを投げつけてくる男子、私を足蹴にする男子───あぁ、すべて忘れていた。いや───忘れさせられていたのかもしれないけれど。

 

This is ... terrible.(これは…酷いですね。)

 

「ふん。さらに、生れ落ちようという者がある。」

 

「ここから更に、ですか…?」

 

「まぁ、聞け。」

 

スライムが形を変えたのは───

 

【───そう。】

 

「「「「…!」」」」

 

【これが、愛。…私は、知らなかったから。愛というのは、誰かを陥れること。七つの大罪───怒り、妬み、怠け、欲情し、ひたすらに欲し、食らい、傲る。…あぁ。なるほど。それに当てはまることが、“愛”なのね。どうでも、いいけれど。】

 

「あれって───私?」

 

「そうだ。お前が産み落としたモノ。お前のうちに潜んでいた、その魔書とは別の人類悪───学び舎にて存在した必要悪を愛と定義し、それを不要とし、総てを呑み込もうとしたもの。」

 

総てを───呑み込む?

 

「───その力は、“拒絶”」

 

誰もいないはずの背後から声がした。そちらを振り向くと───月さんがいた。

 

「月さん…」

 

「勘違いするな。…私はこれを見に来ただけだ。」

 

「ふん。しかし貴様、これを知っているな?」

 

「拒絶の属性は私達“創詠”が持っている属性の1つ。…知らないわけがない。」

 

拒絶…

 

「総てを呑み込まんとする、最悪の獣。…定義されるは、“虚無”と“複製”。虚無であるがゆえにあらゆるものを際限なく呑み込み、複製であるがゆえにあらゆるものを模倣できる。…それが、この獣の正体だ。」

 

「…は、はは…」

 

その言葉に、私の身体から力が抜けた。

 

「リッカさん!?」

 

「しっかりしてちょうだい、リッカさん!」

 

「…うん、大丈夫…」

 

とはいえ……これは、ちょっと。…つらい




明日の題名どうしよう

弓「考えていないのだな…」
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