狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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弓「月よ。」

月「…ん。はえ、呼びました?」

弓「うむ。マスターめはどこへ行った?ルーラーも姿が見えんが。」

月「…やるべきことをしに。」

弓「…そうか。」

月「あ、遅くなりましたがUA45,000突破ありがとうございます。」


第237話 終幕───否、新たな扉

「七罪───傲慢の罪、突破確認しました!」

 

私がそう言うと管制室内が沸いた。

 

「やったぁぁぁぁ!!これで危機は去ったんだよね!?人類の未来は続くんだよね!?」

 

「いえ、それは分かりませんけど……ともかく、希望ができたのは事実です!死の運命は───」

 

『うん、回避されてるね。現時点をもって、あの場所において魂の死は起こらなくなってる。』

 

星乃の言葉に六花さんがふらっと倒れかける。

 

「……っと。おいおい、六花。しっかりしろよ?」

 

「…あぁ、すまねぇムニエル。リッカが無事だって分かって…つい、気が抜けてよ。」

 

「お前、すげぇ心配してたもんな…ほら、とっとと休んでこい。この七日間ほとんど寝れてないんだろ?」

 

「…っはは。…いや、まだ休めねぇよ。リッカを迎えるまで、休むわけにはいかねぇ。」

 

「ったく…しゃあねぇ、付き合ってやるよ。」

 

六花さん、もうほとんど限界なんだろうけど…多分、大丈夫なんだろうな。…さてと。

 

「ギルガメッシュさん。これにて、マスターを喪う危機は去りました。貴方の目に、私達はどう映りましたか?」

 

私は管制室の後ろの方にいるギルガメッシュさんの方を向いて問いを投げる。

 

「うむ───聞け、皆の者!」

 

「「「「「───!」」」」」

 

「此度の観測、実に見事であった!マスターを喪うという重大な異変に対し、各々のできることを以てマスターを取り戻した!マスターめが無事に帰還することがこの作戦の終了を指すが、あえて今告げよう!このカルデアの力に偽りはないと!特に無銘の人格達が持つそれぞれの力は天晴の一言よ!その力、“司る”という言葉に虚偽はなく、この観測を成功まで導く基盤を作り上げた!当然、無銘の人格達のみが優秀であったのではなく、職員それぞれが優秀であった故に導けた結末よ!そうだな、空間を司る神月の巫女よ!」

 

その言葉に頷きで返す。私達だけでは起こすことができなかった。何故なら、七虹以外の私達はリッカさんと過ごした時間はまだ薄い。リッカさんへの強い思いを籠めることができないから、例え第三宝具を起動したとしてもどうしても歌力不足になる。歌が世界を越えられたのは、カルデアのスタッフ達のお陰だ。そして、観測が安定していたのも、カルデアのスタッフ達のお陰なのだ。

 

「認めよう、その功績を!貴様達のその価値を!このカルデアに不要な人材はおらんと!!」

 

「「「「「───はいっ!」」」」」

 

「よし、それではマスターの覚醒を以て───」

 

『待って!月、モニター見て!!』

 

突然星海の声が辺りに響く。

 

「モニター……」

 

モニターには、私達が空間や時間に干渉するための観測情報が示されている。レイシフトとかとは別の形式だから、転写してるだけなんだけど……

 

「……監獄塔に、新たな顕現反応!?」

 

モニターに表示されていたもの。監獄塔、それもリッカさんのすぐ近くに、何かが出現するという報告。

 

『これ───別世界からの干渉だよ!?』

 

「……!?星海、干渉してくる世界を逆探知!」

 

『ごめん、無理!逆探知しようとすると防がれるの!まるで、こっちの術が分かってるみたい───!!!』

 

こっちの術が分かってる……?

 

「……まさか」

 

コンソールを叩き、干渉反応の情報を表示させる。

 

「───コード:Stella.Luna.Solar.Soul.」

 

それは───確か。

 

「……あぁ。これは、無理だ。止められない。」

 

「どういうことだ、月!」

 

「私でも止められないコードだ…ねぇ、一体そこで何をするつもりなの───」

 

この、干渉元の相手は───あの人だ。

 

「───()()()()っっっ!!!!」

 

 

 

side リッカ

 

 

 

「クハハハハ!!見事、見事だ藤丸リッカ!傲慢にて宿り、理不尽によって育まれた悪性の化身!獣はここに狩られたり!クハハハハハハハ!!」

 

嘲り、のようなものは感じられない。…きっと、心から笑っているのだろう。

 

「嬉しそうね。まるで、念願叶った子供のようよ?」

 

「そうとも、気分は痛快だ!オレは一度味わってみたかった!ファリア神父、貴方のように!絶望に落ちていたオレに希望を与えた貴方のように、オレも絶望に落ちている誰かに希望を与えたかった!」

 

「───“復讐者(アヴェンジャー)”」

 

復讐とは逆襲(リヴェンジ)ではなく仕打ちの当事者への報復(アヴェンジ)であり、その当事者を“世界”と“個人”であると定義する。“個人”への復讐が終われば“世界”への復讐になる。この世界が理不尽である限り、アヴェンジャーさんは世界を憎み続けるのだろう。

 

「ははっ、そうだ!分かっているじゃないか、リッカ!認めよう、お前はオレの願いを叶えさせてくれた!ただの一度の勝利もないオレに、“この世総ての悪”を討ち果たすという勝利をもたらしてくれた!世界への復讐は今、この場に成ったのだよ!」

 

そう言いながら笑い続ける。それを見て何かを思ったわけではないだろうけれど、月さんが私達に背を向けた。

 

「……帰る」

 

「あっ…帰っ…ちゃうんですか?」

 

「私にはもうこの場にいる理由はない。それとも───戦うか?」

 

その月さんの問いに首を横に振る。

 

「ふん。そうしておけ。」

 

「───あのっ!」

 

私が声をかけても月さんは止まらない。壁に空間の裂け目を開き、移動するつもりだ。

 

「眼鏡とスペルカード、ありがとうございました!!」

 

「っ───」

 

私の声に、動きを止める。

 

「……別に構わない。精々頑張ることだ。」

 

そう告げてその場から去った。最後に、眼鏡が彼女の情報を読んだ。サーヴァント・ムーンキャンサー。…“月の癌細胞”。(ルナ)という名前であり(つき)そのものの概念を持つ彼女は、その在り方を変質させてしまったのだろう。何かに絶望したことによって、月に直接発生した癌腫瘍へと。…でも。

 

「……ありがとうございました。本当に───」

 

希望“パンドラの箱”。パンドラの箱とは病魔や寿命、その他諸々が詰まった災いの箱。パンドラが開いたためにこの世界に災厄が振り撒かれたといわれる。…災厄が振り撒かれ、パンドラが慌てて閉じたその箱の中に、残っていた1つの“希望”。それをモチーフにしたのだろう。…東方原作のスペルカードとはちょっと違う形式な気がするけれど。

 

「私達も、帰るね。」

 

その声にミクさん達のいる方を見る。……月さん、“彼女達”って言ってたけど…本当にミクさん以外もいたみたい。というかVOCALOIDだけじゃなくてVOICEROIDもいるのは何故?ミクさんに至っては複数いるし…

 

「いつか、またどこかで会おうね。リッカちゃん。」

 

「あ……はい!ミクさん達も、ありがとうございました!」

 

「僕達、そこまで何かした覚えはないけど…ほとんどミクが、やってくれたしさ。」

 

「いつかまた、会えることを楽しみにしているよ。」

 

レンさんとリンさんがそう言った。

 

「じゃあ、みんな!元の世界に、帰ろう!」

 

ミクさんのその言葉を最後に、1人を残して全員消滅した。

 

「……」

 

「…?」

 

きりたんぽを背負った女の子。確か……“東北きりたん”さん。

 

「気をつけてください」

 

「え…?」

 

「貴女の旅路は辛いものになるでしょう。長いものになるでしょう。…けれど、どうか諦めないで。たくさんの出会いがあって、たくさんの別れがあって───貴女は次の世界の創造者となるのだから。」

 

「……」

 

「……部外者である私が言うのも、おかしい話ですけど。次の世界の創造者は貴女です。貴女が拒めばそれは新世界に存在せず、貴女が望めばそれは新世界に存在するでしょう。総ての選択は貴女次第です。しかし…忘れないでください。貴女の前に立ちはだかる敵は貴女が今思っているよりも遥かに強大でしょう。」

 

私が…思っているよりも?

 

「既に運命の歯車は廻り始め、この世界は緩やかに破滅へと向かっていっています。どうか、この世界に、貴女、に、幸せ、なけつま、つを───」

 

そう言って、きりたんさんも消滅した。…時間切れ、だったのかな。そんな感じがする。…ていうか、私UTAU詳しくないけどあの声…

 

「クハッハハハハ……なんと、なんと良いものか!絶望に堕ちたお前は、オレに、童話に、メルセデスに、人形に───そして堕ちた月巫女と電子の歌姫に導かれ、この世総ての悪を砕き、絶望から這い上がり、この塔を脱出する!なんと、希望に満ちた結末か!勝利無き復讐者であったオレに!導き手として、役割と勝利を与えた!そして、それはお前も同じだろう、童話───いや、有栖ヶ藤 七海!」

 

「あたし?」

 

「そうだ!お前は最早、他の“ナーサリー・ライム”とは違う!誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)ではなく、マスターの写し身でもなく、ただ一騎の“有栖ヶ藤 七海”という個人だ!“子供たちの英雄”という概念から外れ、“誰か一人のための英雄”となったお前は!他の誰にも劣らぬ個性を秘めるだろう!マスターに寄り添い、獣を討ち果たし、他とは違う“自ら”を確立させた!誇るがいい、アリス!お前はカタチのない本などではない!強固な自我を持つ、“誇り高き魔術師”であると!!リッカのかけがえない、矜持そのものよ!!」

 

「…!あたしが…誇り?リッカさんの…?」

 

「…うん。」

 

自分から言おうとは思ってたけど、言われちゃったし…仕方ない。ナーちゃんと向かい合って言葉を紡ぐ。

 

「ナーちゃん…ううん、七海ちゃん。あなたは私の誇りだよ。私には、あなたという凄いサーヴァントがいるんだ、って…心から誇れる。」

 

「───いいの?あたしで。あたし、なんかで───」

 

「───うん!私は、七海ちゃんがいい!」

 

「───あ、あり、がとう…」

 

顔を真っ赤にして私に背を向けた。

 

「……言わないと、ダメ…よね。」

 

「?」

 

「ええと…リッカさん。とりあえず先にだけど、しばらくは“ナーちゃん”呼びで通してもらえるかしら?“七海ちゃん”はちょっと気恥ずかしいわ…」

 

「え、あ、うん…」

 

「ええと……こほん」

 

ナーちゃんは落ち着いたのか、私の方を向いた。

 

「───藤丸リッカさん。」

 

「…?はい。」

 

「あたしは、有栖ヶ藤 七海は───ナナミ・ロスタイム・ウィスタリア・リームカント・アリスは。」

 

落ち着くように一呼吸。

 

「───あなたを、愛しています。…あなたのことが…好きです!」

 

「───え?」

 

唐突な告白。流石に私も、反応できない。

 

「返事は、後でもいいの。リッカさんが“愛”が分からないのはあたしも分かっているから。…本が人に恋をするなんて、変かしら?」

 

不安そうなナーちゃんを、そのまま抱きしめる。

 

「───うん。まだ、私に…愛は分からないけれど。出来る限り、ナーちゃんの気持ちに応えられるように頑張るね。…ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」

 

そう言った途端、温かさを感じた。…何かは、分からないけれど。

 

「クハハハハ!!“オレたち”の勝ちだ!虚偽の魔術王など節穴ばかりということだな!!」

 

そのアヴェンジャーさんの言葉に私達は離れ、察する。

 

「やっぱり───これ、偽のソロモンの…!?」

 

「そうだ。だが、その名を口にするのはやめておけ…と、言いたいが問題ないな。すでにお前の傍には真の魔術王がいる。思い出せ、ロンドンにて奴と目が合っただろう?その時、お前は呪われたのだ。ヤツにとって、それだけで十分だからな。」

 

「邪視…だったかしら。」

 

「そうだ。その時、致死の毒を盛られていたのだよ。カルデアに潜ませた滅びの獣。人理保証を崩す自爆機構───奴らはそれを作り上げたはいいが人間の悪性を全く理解していなかった。悪性を嫌っているというだけで、その管理を怠った。故に、手が付けられないと知ってここに落としたのだ。」

 

「自爆…機構」

 

「“これは違う”。愚かなことだ、カルデアだけを滅ぼすつもりが、自分だけでなく世界の概念そのもの、英霊の座すらも喰らい尽くしかねん手に負えぬ邪悪を生み出すとはな。その処分のためにこの場所に落とされた。オレにお前の恐ろしさを見せ、お前を抹殺するようにと。まぁ、従ってやるつもりは全くなかったがな。オレはオレのやり方で、お前を導き、獣を殺した。」

 

そう言ってから高らかに笑う。

 

「結果は───御覧の通りだ!!残念だったな、偽の魔術王!お前の計画はここで一つご破算となったぞ!獣としようとしたものは人となり、お前たちに牙を剥くだろう!そして、いつの日かこの少女は───」

 

愉快そうに。楽しそうに。アヴェンジャーさんは告げた。

 

 

「世界を!救うだろう!!クハハハハハハハハハ!!」

 

 

その瞬間───道が、生成され始める。虹色の道が。

 

「これ…出られるの?」

 

「そうだ!本来ならば、シャトー・ディフから出られるのはただ一人───そのはずだった!!」

 

だった?

 

「だった、ってどういうことかしら?何か異常でも?」

 

「あったとも!白き龍と世界を司る娘だ!!自らの宝を取り戻すため、シャトー・ディフのあらゆる概念、機構、理を破壊しつくした!!美しき獣もな!!シャトー・ディフに蔓延る怨念、苦痛、妄念といったものを屠ったのよ!地獄の沙汰など知らぬとばかりに!この世には触れてはならないモノ───真に逆鱗と呼べるべきものがあるということよ!!クハハハハハハハハハ!!」

 

ええっと…白い龍、ってことは多分ミラちゃんのミラルーツ。世界を司る娘…ってことは星海さん?

 

「…しかし、妙だな。」

 

「え?」

 

「道の展開が遅い。何か───」

 

アヴェンジャーさんがそう言った瞬間だった。突然強い魔力の流れが周囲を覆い、私の前に本来ないはずの形を作った。

 

「───扉?」

 

「…なんだ?これは…」

 

アヴェンジャーさんも知らないみたい。扉に触れてみる───

 

「…!」

 

理解。これは、私が行くべきものだ。…どうして、そう思わされるのかは分からないけれど。

 

「…ふむ。行くべきもの、か。」

 

全員に考えを話すと、全員が全員考えこんだ。

 

「…いや、オレ達が決めることでもないか。お前が思った道を行けばいい。」

 

アヴェンジャーさんの言葉に、ナーちゃん以外が頷く。

 

「ナーちゃんは?」

 

「…正直。あたしは、好きな人に危険へ飛び込んでいってほしくはないわ。」

 

だったら───

 

「だけど…それで引き留めて、どちらかが後悔するようなら───あたしは、迷わず好きな人を危険に飛び込ませることを選ぶわ。…一度きりかもしれない運命、後悔なんてしたくないもの。」

 

ナーちゃんが私に近づいてくる。

 

「約束して。絶対に無事で帰ってくるって。あたしと一緒に、カルデアに戻るって。」

 

「…うん、約束するよ。私は必ず───んっ!?」

 

私の言葉が紡ぎ終わるより前に。私はナーちゃんに唇を奪われた。しかも───深い。

 

「ぷはっ───約束よ?」

 

「───う、うん。」

 

「…おい。オレには百合の花が見えるぞ、メルセデス。」

 

「…認識障害、と言いたいところではありますが私の目にもそう見えます。」

 

意識が落ちそうです。どこでこんな技術磨いてきたの、ナーちゃん…何とか、意識保ててるけど。

 

「…じゃあ、行こうか。」

 

さらなる戦いがあるであろう扉の奥へ行くために、私はその扉を開いた。




弓「ところで月よ」

月「はい。」

弓「“歌唱魔法”とはなんだ?」

月「そのままの意味ですよ。歌うことで発動する魔法…Fate世界では魔術になりますか。とりあえずそんな術式系統です。」

弓「ふむ…」

月「歌唱魔法において一番重要視されるのは“どれだけ感情を籠められるか”。ただ上手いだけ、ただ声が大きいだけだとダメなんです。“どれだけ歌い手の感情が歌に籠っているか”。例え下手でも、例え声が小さくても、感情が籠っていればそれは大きな力になるんです。」
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