狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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弓「鏡写(かがみうつし)…か」

月「実際、あの鍵のルーラーさん…リッカさんって、衛宮士郎さんに対するエミヤさんみたいなものですから。目的は“自分を殺す”ことじゃないですけど。」

弓「……そうか。…頑張るがいい、()()()()()()()よ。貴様の大切な者、どれだけの時間がかかろうと我が必ず喚び出してやろう。無論───かつての姿そのままで。」


第239話 第捌ノ罪科、其無知罪也・鏡写

剣が交差し、火花が散る。彼女の戦いは私よりも巧い。気を抜けば、私の方がやられるだろう。経験量の差、か。

 

「やぁっ!!」

 

片や両手“ジェネシス”、片や両手“錆付いた 歴戦の剣”。攻撃性能的には私よりも彼女の方が低い。ジェネシスは初期武器ではあるが、その力は旧世界での武器の残滓。攻撃力は160。錆付いた歴戦の剣は最初の戦闘が終わるとジェネシスから変化する剣。攻撃力は29。実に5.5倍もの攻撃力の私が打ち負けるのは、彼女の経験量が私よりも遥かに高いからだろう。…私は、この武器を初めて使う。それに比べて、私とは別の世界───恐らく未来から来た彼女は経験は豊富なはずだ。

 

「クイックチェンジ、コード:マギア1!」

 

埒があかないと距離を取り、クイックチェンジ。4つの光球が私の周りを浮遊する。

 

「集中“スターシューティング”!」

 

集中ショットの1つ、“スターシューティング”を起動する。

 

「……お兄ちゃんの、弾幕発射体(ショット・スフィア)…か。」

 

やっぱり、知ってた。“辿る道筋は同じ”、って言ってたから私が今まで巡ってきた特異点も、これまで会った人達のことも全く一緒なのだろう。そして───彼女が出会った人は、私がこれから出会う人にもなるのだろう。

 

「……クイックチェンジ、コード:マギア1。」

 

私と同じ言葉を唱え、4つの光球を浮遊させる。…まるで、鏡だ。わざと合わせているのだろうとはいえ、同じ顔と同じ装備では、どちらが本物の私なのかが分からなくなりかける。

 

「拡散“フローラルスプラッシュ”。」

 

彼女が選んだのは拡散ショット。花と香の弾幕。今現在弾幕発射体に登録されているのは9種。その弾幕は大きく分けて3種類の弾幕に分けられる。

 

花と香の弾幕。広い範囲に放たれる範囲制圧型。

 

星と昼夜の弾幕。狭い範囲に放たれる一点集中型。

 

妖精と精霊の弾幕。複雑な軌道で放たれる対象追尾型。

 

私が以前に放った“フェアリーショット”は一度周囲にばらまいたあとに時間差で相手を追尾する弾幕。今回使った“スターシューティング”は狙った一点に向けて星形弾を放つ弾幕。彼女が使った“フローラルスプラッシュ”は自機狙い、自機外しを不規則にばらまく弾幕。

 

起動(スタート・フライ)!」

 

登録されている拡散ショットの中でも面倒くさいのはこの“フローラルスプラッシュ”だ。ゲームと違って三次元弾幕であるこれらは三次元機動でなければ避けきれない。その三次元弾幕の中でも場の制圧力が高いのは避けきるのが難しい。

 

「……」

 

私が飛んだのを見て、フローラルスプラッシュを止めた。そして───羽も生やさずに飛んだ。

 

「えっ…!」

 

「…クイックチェンジ、コード:ワンハンドソード1。」

 

驚いている間に彼女はクイックチェンジ。その手に握られているのは───ロングソード。

 

「クイックチェンジ、コード:シールド1!」

 

迷っている暇もなく、防御を選択。出現したのは大盾───マシュみたいな十字盾ではない、四角い盾。

 

 

ギィィィィン!!

 

 

騒音を立てて剣が止まる。…マシュなら、受け流すとかできたんだろうけど。私はまだ大盾の扱いに慣れてないから…今度、マシュの時間が空いているときにでも教えてもらえるか頼めるかな…

 

「他の事を考えている余裕なんて───」

 

鈍い衝撃。嫌な予感がして大きく飛び退く。

 

「───与えないから!」

 

瞬間───青白い光。“はっけい”、だ。波動グローブなしで、彼女は放った。

 

「…!」

 

慢心していたつもりもないけど、甘く見過ぎていたのかもしれない。紛れもなく、彼女は強敵だ。私と同じ姿ではあるが、知識、戦闘勘、体術、技術───総てにおいて私を遥かに上回っている…!!

 

「クイックチェンジ、コード:マギア1!」

 

もう一度マギア1に戻し、弾幕発射体を浮遊させる。選択するは花と香の弾幕の通常ショット、通常“フローラカレイドスコープ”。まずは私を中心に放射状にばらまき、狙った方向にある弾幕だけはそのまま直進し、それ以外は左回転と右回転に分かれて動く弾幕。かと思えば私に向けて弾幕が収束し、そうかと思えばすべてが相手に向かう。初見では不規則に動きが変化するように見えるものの、実は固定されたパターンを何度も繰り返しているだけ。通常ショットは拡散ショットと集中ショットの中間的な性能を持つものの、それは“スペルカード”に近い弾幕を形成する。

 

「通常ショット……は、少し厄介だな……」

 

そう言いながらも弾幕を避ける彼女。…弾幕は、不利か。

 

「……」

 

弾幕?

 

「───あっ。」

 

忘れていた。スペルカードを。

 

「スペルカード───月符“ダークヘルケージ”!」

 

「…!?」

 

彼女が困惑の表情を浮かべた。ということは───これを、知らない?

 

「これ、月さんのスペル…!くっ、避けきれるか……!」

 

紫色の檻が彼女を包む。周囲が真っ暗になり、何もない空間から紫色の弾幕が不規則に放たれる。まるで───紫さんの“人間と妖怪の境界”だ。…そして、これはどうやら月さんが使うスペルカードらしい。

 

「…っ。」

 

被弾した音がする。ふとHPバーを見ると、私が残り8割、彼女が残り9割といった感じになっていた。…不利、か。

 

「クイックチェンジ、コード:エンプティ。」

 

私のコマンドに応え、弾幕発射体が消える。エンプティ───武装解除。クイックモードはアーム…つまりは武器限定にしてるから全裸になるとかはない。ていうかそれは流石に恥ずかしい。

 

「───っ、はぁ、はぁ…スペルブレイク、このスペルは動きにくくなる代わりに効果時間が短い…あまり使われないから、攻略法忘れてた。」

 

少しするとスペルが終わったようで、息を切らせた彼女がそう告げた。

 

「───シィッ!!」

 

「…!」

 

“ジェネシス”を持った私の急襲にも瞬時に“錆付いた 歴戦の剣”を取り出して対応するあたり、本当に彼女は強い。体勢を崩しながらも互角───いいや、私が押し負けるのだから。

 

「「───“ソニックリープ”!!」」

 

同じ装備傾向───二刀流で、同じソードスキル。同じソードスキルを対面で発動したのなら、訪れる結末は───相殺、あるいは力の弱い方の押し負け。

 

 

ギィィィィン!!

 

 

結果は、相殺。武器性能の差なのか、相殺まで持ち込めた。鍔迫り合いのような状態になった───のだけど。

 

「……!?」

 

流れ込んでくる、魔力。流れ込んでくる───風景。…橙色の髪の少女と黒い龍が対峙している。

 

「っ!」

 

一度弾いて距離を取る。その風景も、消える。…今のは…

 

「───セェッ!!」

 

「…!ハァッ!!」

 

考える隙も与えない、というように私に追撃してくる彼女。それを受けると、また風景が浮かぶ。

 

 

───何故あなたは無意味だと断じたの!!この世界が、私達が何故無意味だと!!ゲーティアのように人類に失望したのか、あなたは!!

 

───否!人類など我にはどうでもいい!!

 

───なら、何故!!

 

───知れたこと!預言書の運命は無駄の繰り返しだ!!世界を創ればまた世界を崩壊させ、また創れば世界を崩壊させるだけの意味のない世界を繰り返している!我はそのようなもののために預言書を作ったのではない!!我はより良い世界を創るために預言書を作ったのだ!!

 

───無駄なんて、無意味なんてこの世界にあるものか!!あなたの世界も、前の世界も巡り巡って今に繋がっている!!決して世界の全てが無意味だなんて、そんなの認めない!!

 

───ならば我に証明して見せろ!!お前が正しいと!!お前の信念、お前の意地───我に示せ!そして我を、最後の審判を打ち砕け、藤丸リッカァァァァァァ!!!

 

───言われなくとも…!!私はあなたを越えて見せる、ミラボレアス!!

 

 

これは───記憶?戦闘しながら、並列思考でそちらにも集中する。

 

 

───どうした、そんなものか!!

 

───…っ!

 

───所詮、お前の意地もその程度ということだ!ならば必要ない、世界諸共消えるがいい!!

 

───させ…ないっ…!

 

───まだ、立つか!

 

───スペル…カード!恋符“七色峠の恋物語”!!

 

───何…!

 

───私は、まだ…終わってない!

 

 

恋符…?いや、それよりも…今、弾幕発射体も、私が使っていた紙もなしに、スペルカードを使った?

 

…それから、私と彼女は何度も激突して。それごとに、私の剣は鋭くなっていって。そして───記憶も、私に蓄積していった。

 

 

───ふん。やっと、沈黙したか。

 

───……

 

───もはや、動くこともできないか。…やれやれ、しぶとかったな。…さて。裁定は下った。

 

───……

 

───この世界は抹消する。これより先、預言書が現れることも、次の世界が創られることもない。…歴史も何もかも、我が存在すらも。総て、消えてなくなる。

 

───っ……

 

───動くな。既に裁定は下った。…力も入らぬであろうが。お前の刃は、我には届かなかった。…それだけのことだ。

 

───…

 

───大人しく終焉の炎に焼かれよ。この世界は滅び、後に作られる世界もない。全てに、終わりが訪れるのだ。

 

───……

 

───…ふん。無駄だったな、総て。終焉せよ、総て。我が炎は世界を焼き滅する裁きの炎。───“終焉ノ焔(フェイタル・フレイム)

 

───…ごめんなさい…私…勝て、なかった……ごめん…ニキ……星羅……アル……ギル………ごめんね、私の大好きな人…ナー、ちゃん…

 

 

それを最後に風景は炎に包まれた。この記憶の映像…彼女は……世界を、滅亡させてしまったのか。一度、私が夢で見た黒い龍───ミラボレアスに敗北したことで。

 

 

───……ここ、は…

 

 

場面が変わった。どこかの、白い部屋。

 

 

───初めまして。…貴女が、私のサーヴァントなのかな?

 

───……っ!?え…!?

 

 

彼女が声をかけてきた人の姿を見て驚いた。その人は───さっきの、緑髪の女性。

 

 

───…?ええっと…クラスと…名前を、聞いてもいい?

 

───…私は…ルーラー。真名は…“藤丸 リッカ”、です。

 

───…あの。

 

───ん?

 

───…創詠 月さんは、いますか?

 

───……どうして、初対面の貴女が私の娘の名前を知ってるの?

 

 

不審がる緑髪の女性。その女性に、彼女が事情を説明していた。

 

 

───…未来から来た、か。なるほどね…

 

───信じて、くれるんですか?

 

───もう貴女は知ってるだろうけど、私の娘達には時間を操る子もいるからね。信じない、なんて言わないよ。…まぁ、確証はないけど…

 

───なら…これ。

 

───眼鏡?…って、これ…月の娘のまた娘が原型を作った“雑務メガネ”!?

 

───そういう、名前なんですか?

 

───…月に聞いてみるしかないね。私じゃ正確なことは言えないから。

 

 

そこから移動して、黒髪ツインテールの女性と対面する。

 

 

───月、こちら、さっき召喚した“藤丸 リッカ”さん。で、リッカさん。こっちが、私の娘の1人で…

 

───“創詠 月”です。よろしくお願いしますね、藤丸さん。

 

───あ、はい…よろしくお願いします。

 

───ね、月。これ…

 

───…これは…雑務メガネ?制作年代は…2015年?で…あれ?この世界コード、私知らないよ?お母さん、これどこで?

 

───それが…

 

 

お母さん、と呼ばれた緑髪の女性が月さんの質問に答える。

 

 

───なるほど。未来からの召喚…ね。

 

───英霊召喚においてそういうのってあるの?

 

───う~ん…正直私達の世界から見て並行世界から召喚されてるってことだから、なくはないと思う。そういう術式は…実際私じゃなくて星海の管轄が主だから何とも言えないけど。一応星海には連絡しておくね。

 

 

そう言い、月さんは何かのウインドウを弄ってから消した。

 

 

───藤丸さん。1つ、聞いていいですか?

 

───…はい

 

───貴女が聖杯に望むことは何ですか?

 

───私が…聖杯に、望むこと……

 

 

月さんからのその問いに、彼女は考え込んだ。考えて、考えて───口を開いた。

 

 

───やりなおすこと。私の過去を…月さん達にとっての未来を。…絶対に、過去の私みたいな結末にしないこと。…それが、私の望みです。

 

───……そうですか。

 

 

やりなおし…

 

 

───リッカさん!

 

───マスター?

 

───ちょっと来て!

 

 

場面は変わって、彼女は緑髪の女性に手を引かれてカルデアの管制室のような場所に来ていた。

 

 

───月!星海!さっきの出して!

 

───ウインドウ、出すね。

 

 

星海さんがそう言ったと同時に、いくつかのウインドウが開かれる。

 

 

───見て、これ!“華紬 ニキ”と“藤丸 六花”、“ルナセリア・アニムスフィア”に“オルガマリー・アニムスフィア”!

 

───……これ……

 

───残念ですが、リッカさんのいた世界ではありません。…ですが、リッカさんのいた世界と著しく酷似しています。

 

───これ、年代は…?

 

───現観測年月日は2008年6月4日ですね。細かく観測したところ、“藤丸 リッカ”という少女も発見されました。

 

───…私が、小学三年生の頃…か…

 

───どうする?リッカさん。この世界に…この世界に生きている貴女として、入る?

 

───……いいえ

 

 

彼女の答えは、拒否だった。

 

 

───この世界に生きている私として入る、ということは“この世界に生きている私”を“今ここにいる私”で塗りつぶすということでしょう。…そんなこと、私は望んでいません。

 

───…そっか。だったら、どうする?この世界の観測…やめる?

 

───続けてください。そして…マスター、お願いがあります。

 

───お願い……?

 

───私が今から言う時が来たら、私をこの世界に連れていってください。…この世界に生きる私ではなく、別の存在として。

 

───……別の存在…つまり、リッカさんとこの世界に生きるリッカさんは別人、ってこと?

 

 

その問いに彼女は頷いた。

 

 

───私の全てを、彼女に託します。…どうか、私の二の舞にならないように。

 

───………

 

───託したあとも消えるつもりはありません。ただ、私は…私が辿るはずだった運命を、私が願った未来を彼女に……本当の私へと託します。それが、過去の私を見つめる機会をもらえた意味だと思いますから。

 

───……

 

 

緑髪の女性は深く考え込んでいた。

 

 

───……分かった。その願い、聞き届けるよ。その時期はあとで聞くとして…他に何かある?

 

───…では、もう1つ。

 

───何?

 

───私の真名を、隠してください。…“藤丸 リッカ”ではなく、“鍵のルーラー”と。そう、呼んでください。来る時まで、真名を隠し続けてください。

 

───……分かった。

 

 

記憶の映像はそこで終わっていた。HPバーは双方共に残り1割。いつの間にか互角にまでなっていたみたい。

 

「……」

 

彼女の表情は変わらない。というか…予想外、ではなく。分かっていた、というような表情。彼女が大きく飛び退いたのを見て、私も大きく距離を取る。

 

 

「「………」」

 

 

一度視線が交差してから同じ構え。起動されるソードスキルも───また、同じ。

 

「「“ヴォーパル───」」

 

左手は前に。右手の剣は後ろに引き───

 

「「───ストライク“!!」」

 

突進と共に突きだす。本来の“ヴォーパル・ストライク”よりも遥かに長い射程をもって起動し、私と彼女の立ち位置が逆になる───

 

「コネクト───“ホリゾンタル・スクエア”!」

 

その、ヴォーパル・ストライク後の硬直に向けて。剣技連携(スキルコネクト)を用いてホリゾンタル・スクエアを放つ。

 

「……お見事」

 

そんな、声が届いた瞬間───最後の4撃目が入り、彼女が吹き飛ばされた。

 

 

YOU WIN

 

 

少し落ち着くと、私の視界にそんな言葉が表示されているのに気がついた。私のHPは…残り0.1%。彼女のHPは…0%。ギリギリの戦い、だったみたい。




月「なんとか終わったみたいですね……」

弓「我が召喚されるよりも前、あんなことがあったのか、月よ。」

月「えぇ、まぁ。」
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