狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
裁「……観測精度、書き起こし速度共にマスターの体力が関わってくるんだっけ……」
Killコンカンコーン───
放送用のチャイムを鳴る。なんで死武専のチャイムあるの、お兄ちゃん…と、それはともかく。
「……んんっ、職員のお呼び出しをします。所長“オルガマリー・アニムスフィア”。英雄王“ギルガメッシュ”。創造師“無銘”。結界術師“藤丸 六花”。医師“ロマニ・アーキマン”。治療術師“ルナセリア・アニムスフィア”。以上の方は、至急第一会議室にお集まりください。繰り返します……」
呼ぶ人の名をもう一度読み上げてから、放送を切る。
「……」
「不安、かしら?」
「…うん、少し。」
このメンバーでよかったのかな、っていうのもある。直感で選んだけど、たまに不安になる。
「大丈夫よ、なるようになるわ。」
「……ん。」
その言葉を聞きながら、預言書を開く。…そういえば、あの時は気がついていなかったけれど預言書からの問いかけが追加されていた。……新世界、か…
「……新世界でも、ナーちゃんと一緒にいたいな…」
「……えぇ、そうね。」
私の呟きにナーちゃんが答えた。ちなみに、その預言書の問いはこうだ。
汝が望む世界を問う。
空間を満たす音色。
絶え間ない調べ。
汝の望む世界にて
いかなる形を現す?
ゲーム内ではBGMを変更するための問いかけ。…これはゲームではなく、現実。どんな作用をもたらすかは私にも分からない。“創世の扉”───あのページが出てきて、かつ“陽だまりの丘”にいるならば。新世界を覗くこともできるだろう。
「……でも、今は。」
今は、目の前のことを。それと、人理修復をした後の未来に起こるあの事を。…少しずつ、進めていかなきゃ。
「…リッカさん。来るわよ。」
「……ん」
私達が今いる場所は呼び出し先である第一会議室。放送設備は小学校の教室にあったような電話機型。月さんの話だと“将来はもうなくなってるんじゃないかな”、って話。
「マスター。来たぞ。」
「マスター、参りました。」
「おはよ、ギル、アル。…適当な場所に座っていいよ。もっとも、私が仕切るわけでもないけど…多分。」
「貴様が呼び立てたのだ、貴様が仕切るものだろう。」
「あはは…」
…それもそっか
「…それより、体調は大丈夫なのか?」
「うん、もう大丈夫。昨日一日ぐっすりで全快。」
一昨日高熱で倒れて、昨日一日は安静にしてるようにって言われて…それで、今に至る。昨日一度寝たらすっごい深い眠りだったらしい。
「ならば良いのだが…」
「来ましたよ、リッカさん。おはようございます。」
「おはようございます、ルナセリアさん。」
そうこうしてるうちにルナセリアさんも来た。
「体調は大丈夫ですか?」
「はい、お陰様で。ありがとうございますね、ルナセリアさん。」
「私の力…というわけでもありませんが。…というか、敬語じゃなくてもいいですよ、リッカさん。」
「…慣れます」
前々から言われているものの、未だ慣れない。
「おう、来たぞリッカ。」
「あ、お兄ちゃん。おはよ。」
「おう…身体、大丈夫か?」
「うん。ごめんね、心配させて。」
「あまり無理すんなよ?人理修復っていう重要な役目を背負わせてるってのはあるが、それ以前にお前は1人の人間なんだからよ。」
「…今は、人類悪なのに?」
「それでもだ。人類悪だろうが、お前が俺の妹なのは変わんねぇし、人間であることも変わらねぇよ。」
「…ありがと」
ほんと、お兄ちゃんは優しい。言い方は乱暴だけど、優しさが隠しきれてない。…もっとも、本人は隠してるつもりもないんだろうけど。
「ごめんなさい、遅くなったわ。」
「ううん、大丈夫。おはよ、マリー。」
「…身体、大丈夫なの?どこも異常はない?」
「ないよ。…なんか、ここに人来るたびに心配されてる気がするんだけど、そんなに心配?」
「一昨日目覚めた直後に高熱で倒れたこと、忘れたとは言わせないわよ?あなたは今までも無理をしてきたのだから、これからは無理しないようにしないと。」
「あはは…はい。」
高熱の原因、なんだろうなぁ…あの後星海さんたちが調べてくれたらしくて、高熱になった原因は元々身体が弱かったのに体調不良を無意識に押し殺していたせいで体内に溜まっていたその病気が一気に発症されたから、だったみたい。つまりはいままでの代償。いやぁ…召喚されたばかりのナイチンゲールさんに思いっきり怒られました。あとあの時の黒い服…シスター服っぽい感じの服だったんだけど、あれは魔力で作られてたもので、私が制御を手放したときに消滅したらしい。起きた時には白いワンピースを着てた。なんで、って思ったけど月さんが持ってたとあるものの影響らしい。“マイデコハート”、って言ってたけど……うん。今は触れないでおこう。今はもういつものカルデア制服。ナーちゃんはいつもの姿だけど服の色が白と緑を基調としたものになってる。ナーちゃんの代わりのように召喚されたナーサリーさんと同じ姿だと紛らわしいから、だって。
「ごめん、遅くなった!!ロマ二・アーキマン、ただいま参りました!!」
「遅いわよ、ロマニ!」
「はいっ!すみません、所長!!リッカちゃんもごめん!!」
「別に怒ってもないから大丈夫だよ。」
「女神…って!リッカちゃん、体調大丈夫なの!?」
「大丈夫。…そんなに心配しないでほしいんだけど…心配され過ぎても辛いし…」
「……いや、そりゃあ心配もするよ…ねぇ?」
ドクターの言葉に全員が頷いた。……私ってそんなに心配かけてたんだ…
「…とりあえず、座ってほしい。…ちょっと、重要な話があるから。」
「あ、あぁ…」
そうして、全員が着席したのを確認する。
「…じゃあ、始めます。ナーちゃん。」
「えぇ…これを。」
ナーちゃんに用意してもらった資料を全員に回した後、しばらくの間私はリカさんと戦っているときに見たあの光景を話した。
「「「「「……」」」」」
「…以上、です。」
「…マスター」
「うん?」
「…いや、我には分かるが…ここにいる全ての者を代表して問うぞ。これは、確かなのか?」
「…正直に言うと、私にも分からない。…だけど、これを伝えてくれた私が…リカさんが辿った道。未来は分からないとはいえ、リカさんのいた世界はこの世界と酷似してるらしいから。」
「…ふむ。」
「濾過異聞史現象、ね…にわかには信じがたいことだけど。…彼等が、敵に回るなんて。考えたくもないわ…」
「お姉ちゃん、正確には彼等じゃないみたい。」
「…それでも、辛いのよ。自分の知っている人が敵に回る、って考えるのは…どうしても、ね。」
その言葉を聞きながら、アル───今は右眼の数字が“三”になってるから月さんみたいだけど───は考え込んでいた。
「…月さんはどう思いますか?」
「…可能性は、かなり高いと思います。陽詩も同じ意見で。…しかし、虚数空間に世界丸ごと移送するとは…その世界のリッカさんは結構危ないことしますね…」
「あ、そうなんだ…」
「…まぁ、出来なくはないことですよ。これ。」
「そうなの?」
「えぇ、まぁ。虚数空間を居住可能にすれば出来なくはないですね……ただ」
月さんが自分の手を見た?
「…今の状態ではできません。出力が…性質が違うんです。実数空間を虚数空間に、実数時間を虚数時間に変更するのは私と陽詩の正方向の力だけでは出来ないことなんです。」
「…そっか」
「とりあえず、ここに書かれている“ザ・シード”。これに関しては私達が何とかできます。あとは…六花さん、ルナセリアさん、オルガマリーさん。お手伝いをお願いしても?」
「あぁ、構わねぇ。」
「大丈夫です。…けど、私は治療くらいしかできませんよ?」
「その点に関してはご心配なく、私達が鍛え上げるので。」
「「「……え?」」」
私、お兄ちゃん、ルナセリアさんの声が被った。
「ずっと見てましたが、六花さんには空間操作、ルナセリアさんには時間操作の適性があります。オルガマリーさんにはどちらも。流石に完全に扱うことは難しいでしょうけど、基礎から叩き込みます。」
そこで一呼吸おいて口を開く。
「そもそも結界は空間操作、治療は時間操作に近いものです。暴論ですけどね。この会議が終わったら教え始めますのでお願いしますね。」
「…あの、月さん。私、他の方の授業とかもあるのですが…」
「そのあたりはちゃんと調整しますから大丈夫ですよ」
その言葉にマリーがホッとしたような表情になった。
「ええと…他の件に関してはロマニさんとギルガメッシュさんにお任せしてもいいですか?」
「構わん。」
「ボクも大丈夫だよ。…さて。リッカちゃん、これで終わりかな?」
「うん、今話せることはこれで終わり。」
「…わかった。じゃあ、1つだけ頼んでいいかい?」
「?」
ドクターからの頼み?
「…カルデア全職員、ここに呼んでほしい。流石に全員は呼べないから、メインサーヴァント達と人間の皆だけでいい。」
「…わかった。」
ドクターの目が真剣だったから。…多分。あの事、なんだろう。
う~ん……
裁「…これで、何か変わればいいんだけど。」