狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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……あー……うー……

裁「……大丈夫なの、マスター?」

…多分……

月「……本当に大丈夫なのかな、これ…」

裁「え…?」

月「私もお母さんを構成する要素の一部なのでお母さんが自覚してないことは分からないんですけど……もしかしたら、お母さんって無意識に無理をする癖があるのかも……と。」

裁「……」


第243話 臆病者の自白

「…さて。みんな、どうにか飲み込めたかな?」

 

その言葉に全員が頷く。

 

「……じゃあ、続けるよ───」

 

 

マリスビリーはソロモンの指輪を触媒とし、ソロモン───ロマン殿を召喚した。

 

聖杯にマリスビリーが望んだものは“巨万の富”であった。

 

このカルデアに火を入れ、運用するだけの富。

 

通常の方法では他の魔術師に足がつく。手にした成果にケチがつくと。

 

そう考えたマリスビリーは聖杯という奇蹟をショートカットに、誰にも知られない抜け道として利用したという。

 

“奇蹟を前にして私は根源へとたどり着くでもなく、並行世界へと赴くでもなく、ただ俗物のように巨万の富を願うのだ”───そう言って笑っていたという。

 

ロマン殿自身は当時何も望みはなく、自害すれば自らの仕事は終わると思っていたという。

 

ロンドンにて英雄王が言っていた“魔術師6名と英霊7騎の魂を聖杯にくべることで真の願望器として機能するようになる”、“自らのサーヴァントも含めた”というのはこれが理由のようだ。本来、魔術師とサーヴァントの関係はそうなのだと。

 

 

「……こう、僕が言うのもあれだがこの世界の魔術師というのは…外道、というかなんというか…」

 

「あはは…リューネちゃんの言うことももっともだね。でも、それが本来の魔術師なんだよ。逆に、今のカルデアみたいに一般人の感性を持っているような人が集まっているっていうのが異常なくらいかな?本来の魔術師は自分本意な生き物だからね。」

 

でも、とロマン殿は続ける。

 

「ごく少数だけど、人を思いやる魔術師もいる。英霊のことを、ただの使い魔ではなく対等の…共に戦う関係であると定義する魔術師もいる。マリスビリーもそのうちの1人だったのかもしれないね。」

 

そこからまた話し始める。

 

 

マリスビリーが願った後。

 

“君は何を願う?”…そう、マリスビリーはソロモンに問うたという。

 

“聖杯に望むのは共に戦った君にも与えられるべき権利だ”、と。

 

ソロモンは驚いた。通常のように自害させられるものだと思っていたから。

 

悩んで、悩んで───1つの望みを口にする。

 

“人間になりたい”。それが、ソロモンの願い。

 

聖杯戦争中にマリスビリーからもらったものが、その願いを産み出した。

 

聖杯は正しくその願いを叶え、ソロモンを人間に───“ロマニ・アーキマン”という1人の人間をこの世界に産み落とした。

 

───が。

 

人間になる───力を喪うその刹那、視てしまった。

 

滅びる世界、焼け落ちる星───人類の終焉。

 

ソロモンが持つ千里眼が、それを視てしまった。

 

しかし、それを知ったところで、ただの人間になってしまっていた彼にはどうすることもできなかった。

 

自由にはなれた。それは事実だ。

 

自由意思を得て、今度はただ一人の人間として生きてもいい。

 

───彼は、破滅の未来を無視することができなかった。自らが原因だと気づいたから。

 

とはいえ、ソロモンの知恵はない。今あるのは人間としての喜怒哀楽、今までの記憶。

 

故に───1から学び直した。あらゆることを。役に立ちそうなことを。

 

起こるはずの災厄に備えた。いつ起こるかも分からない災厄に。何が引き金になるか分からない災厄に。

 

その道は辛かった。だが───“楽しかった”のだ、と。

 

 

「───で、1年くらいだったかな。それくらいして…ボクはあの時、運命に出会ったんだよ、リッカちゃん。」

 

「私…?」

 

リッカ殿が…?

 

「“お邪魔します…”からの“入って……うええ!?”…ははっ、1年も経ってないのに…なんでだろうね。昔のようにも感じる。」

 

「……あぁ。でもドクター、その話していいの?秘密だったんだよね?」

 

「所長に怒られるのはもう覚悟済みさ!」

 

「……えと…話が見えないのだけど……」

 

話を聞くと、ロマン殿は最初のレイシフトが始まるとき、リッカ殿の部屋にいたのだという。本来の持ち場である医務室ではなく。

 

「……サボっていた、ってことね。」

 

「ハイ……」

 

「……まぁ、いいわ。それがいい方向にも行っているのだし、不問とします。それで貴方の話は終わりかしら?」

 

「……あぁ。これで全部だ。君達に何も告げず、君達を危険に晒し続けた男の全てさ。…本当は、レオナルドと六花以外には明かさずに、魔神達と決着をつけるつもりだったんだけど。」

 

確か六花殿が使っているデータベースは魂に干渉して情報を読み取れるんだったか。隠蔽も意味がなかったのだろう。

 

「…でも、もう限界なんだ。カルデアのみんなに囲まれていて、みんなを騙していることが辛い。…六花から言われたよ、“このまま続けてれば必ず限界が来る”って。あぁ、確かに限界だ。…もう、だめだ。これ以上、みんなに後ろめたいものを隠していたくない。」

 

……泣いてる?

 

「こんなボクでも、受け入れてくれるかい?こんな人でなしでも、君達の仲間でいてもいいかい?」

 

全員の視線がリッカ殿に向いた。

 

「……え、私?マリーやギルじゃなくて?」

 

「貴女がまず告げなさい、リッカ。」

 

「えぇ……まぁ、いいならいいんだけど。…えっと…ドクター?」

 

「…?」

 

「……ていっ!」

 

「あだっ!」

 

リッカ殿はロマン殿の額を指で弾いた。

 

「な、何をするんだいきなり!」

 

「……ねぇ、ドクター。さっき私が言ったこと、覚えてる?」

 

「え?えっと…親しい誰かがこの世からいなくなるのが怖い…だっけ?」

 

「……あれ。私、言わなかったっけ。前線に立てている理由。」

 

「……言って、ないね。」

 

「……」

 

……微妙な空気になったが大丈夫だろうか?

 

「ええと…私が前線に立てているのには理由がある。前線に立っている理由は…さっき皆が来る前に言った通り。」

 

そう言って一呼吸おく。

 

「私が前線に立てているのは、皆が支えてくれてるからなんだよ。現地にいるマシュやルーパスちゃん達、ギルやアルだけじゃない。カルデアにいるドクターやマリー達が私達を支えてくれているから、私は前線で戦える。……ううん、私だけじゃない。」

 

「ドクター・ロマン。貴方がいるから、私も戦えるんです。貴方がいたから───このカルデアは生きていたんです。」

 

マシュ殿がそう言ったのと同時にオルガマリー殿がロマン殿に近づく。

 

「貴方に感謝を、ロマニ・アーキマン。貴方がいたからこそ、今のカルデアがある。」

 

「マリー…」

 

「……貴方は、私の大切な相方です。」

 

「……!」

 

そこからしばらく、泣き止ませるのに時間が掛かった。……やれやれ。




にゃー……

月「あ……UA46,000超えてますね…」
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