狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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うー……

月「うー☆」

裁「……」


第253話 西部急襲

「カルナくん!夫人!頼む、直流の威信をかけて頼む!!なんとしてもギルガメッシュ王、輝けるクー・フーリン、ミラ・ルーティア龍妃を敵に回さないように説得してくれ!」

 

プレジデントハウス。小動物のように筋肉を震わせていた男がいた。

 

「はいはい、怖がらないの。ディルムッドとフィン・マックールを倒したのよ?難民と負傷者を守りつつ、負傷者の治療もしながら。これはマハトマもニッコリの活躍よ!」

 

「誠意と信念があれば対立は避けられるだろう。…最も、オレの見立てはアテにならんが。」

 

なだめる少女と呟く青年。その言葉に震えながらも顔を上げる。

 

「そ、そうだな!きっと分かりあえる、彼等は交流サイコの手先ではないのだ、うん!」

 

「……それは、今のお前では簡単ではないだろうが……ともかく、完全な対立だけは最低限避けられるよう尽力しよう。」

 

「よし!夫人、カルナくん!早速───」

 

「プ、プレジデント!報告いたします!」

 

その場に機械兵が慌ただしくやってくる。

 

「どうした!」

 

「さ、先の報告のあったギルガメッシュとクー・フーリン、ミラ・ルーティアの赴いたキャンプから……!」

 

「なにがあったというの?」

 

「あ、青い光が!まっすぐこのプレジデントハウスにやってくるとの事!!」

 

「「青い光?」」

 

「未確認飛行物体……か?ふむ……青き飛竜よ、君はどう思う?」

 

男の傍らにいた青い翼の飛竜は声に反応して顔をあげたあと、興味を失ったかのようにまた元の体勢に戻った。

 

「撃墜は?できるのかしら?」

 

「それが……銃撃を透過します。撃墜は困難かと───」

 

そう言っている間に。彼等の前には、青い光球が現れていた。

 

「…むっ。」

 

 

 

side リッカ

 

 

 

ほ、ほんとにすぐ着いちゃった……

 

「これで到着ですね……皆さん、酔ってません?」

 

アルが───ううん、月さんがそう言う。その言葉に全員が頷く。

 

「すげぇな、嬢ちゃん…足や馬なんかよりずっと早ぇ。…ほんと、すまねぇな…若ぇ嬢ちゃん達や小さい子に戦争なんか見せちまってよ。」

 

そう言うのはキャンプで私達に同行をお願いしてきた人。ちょうどこっちに報告しないといけないことがあったみたいだから一緒に来たんだけど。

 

「ほんとは、平和な世界を見せてやりたかったんだがよ…情けねぇ大人である俺達を許してくれ。」

 

「…いいえ。誇らしいと思いますよ、僕は。」

 

「コンラ少年…」

 

「どうか戦い抜き、未来を生きてください。そしてどうか、子供達が平和で暮らせる世を作れることを…心から願っています。」

 

「……」

 

「貴方がたに祝福を。皆様の行く先に、大神ルーの光あれ。」

 

「……あぁっ…!」

 

大神ルー。多分、コンラくんは“平和であれ”的な意味で言ったんだと思うけど。

 

〈そこの光にいるは誰だ!姿を見せてはくれないか!〉

 

モニターに映っている…うん、見覚えのあるライオン頭の存在がそう告げた。

 

「無銘さん…じゃなくて月さん、全方位見れる?」

 

「全方位…ですか。ちょっと待ってくださいね。」

 

月さんが手元のコンソールを弄るとモニターが複数展開される。

 

「……いた」

 

ミラちゃんがモニターの一ヶ所を示す。全体的に青色の翼を持つ飛竜───風漂竜“レイギエナ”。こっちに来る前にミラちゃんが召喚して見せてくれた子と同一の姿。ライオン頭の存在のとなりに控えている。

 

「……月さん、全員の解放をお願いします。」

 

「分かりました。───拡大!」

 

そう月さんが告げたと同時に私以外の姿が消える。

 

〈展開!〉

 

その声に私の足が地面についた感覚とモニター越しではない、肉眼でその姿を捉えられるようになった。

 

「な───」

 

「───こんにちは。」

 

一礼して言葉を告げる。

 

「私は藤丸リッカ。好きなものはサブカルチャー全般とコーディネート。嫌いなものは理不尽と根拠のない否定。座右の銘は“みんな違ってみんないい”です。」

 

「───ふっ。いい名乗りだ。」

 

白髪の男の人がニヤリと笑った。

 

「控えよ、王の御前である。」

 

「こんにちは。レイギエナの調子はどう?」

 

「…!これ…マハトマを退かせる輝き…!?」

 

「そ、そして───」

 

「…あ?心配すんな、取って食いやしねぇよ。月の嬢ちゃんの能力でここまで来たんだ、アンタの軍には傷1つ付けてねぇぜ?」

 

「く、クー・フーリン…!!」

 

「そんなに怯えんな、ただの話し合いで済むならそれだけで済むんだからよ。とりあえず、おっさん。話があるんだろ?」

 

「あ、あぁ…」

 

「俺達から見えないところでちょいと話してこい。怯えすぎてて話にならん。仕切り直せ、ったく。」

 

「は、はは……大統王、報告があります。別室で、少し。」

 

「う、うむ!分かった、聞こう!来賓の方々は少しばかり待っていたまえ───あぁ、君!全員に彼等を丁重に扱うように指示しておきたまえ!彼等に暴れられたら敵わん!」

 

「イエッサー、プレジデント。」

 

その男の人とライオン頭の人は別室に向かい、機械の兵士さんは恐らく兵士の人達にさっきの言葉を伝えに行ったんだと思う。

 

「さて、どうなることであろうな?」

 

「───英雄王、龍妃。」

 

「む?」

「ん?」

 

「そして…人類最後のマスター、藤丸リッカよ。」

 

「…?」

 

白髪の男性の声に首を傾げる。

 

「まずは名乗ろう。オレは“カルナ”。“施しの英雄”等と呼ばれているか。」

 

カルナ……か。

 

「我が威信、我が誇りに懸けて頼みがある。この対話が如何な結末を迎えようと、この場でお互いを害する行為には走らないと、どうか誓ってほしい。」

 

「…ほう?」

 

「戦闘行動の禁止、ってこと?」

 

私の言葉にカルナさんが頷く。

 

「過程や目的は違くとも、オレ達とお前達の望むものは近しいとオレは信じている。この場でお前達が死合うのがオレの望みではない。」

 

言葉を紡ぎながら槍を置く。

 

「我が名、我が父の威光に誓ってこの対談の間はお前達を傷つけることはないと誓う。そちらもどうか…エジソン、並びにブラヴァツキー夫人を害さぬことを誓ってはくれないか。」

 

「……」

 

嘘は感じられない。直感は……特に問題なさそうだと告げている。

 

「……分かった。みんなもそれでいい?」

 

私の言葉に全員が頷き、武器をしまう。

 

「…クーもそれでよかった?」

 

「おう!リッカの決めたことに異論はねぇ。犬たるもの待ての1つくらい出来ねぇとだろ?」

 

「飼い主の如何でこうも違うか。言峰はブリーダーとしてはいまひとつであったようだ。」

 

「ったりめーだ。リッカなら令呪がなかろうが最後まで付き合うが、あのクソ神父なら令呪がなくなりゃそこまでだ。つか、冬木んときについては大本のマスター殺されてっからな、俺。」

 

「そうであったな。」

 

「惚れた弱み、とでも言うかね。まぁ、変な事したら七海に刺されそうだから何もしないけどよ。」

 

「…え?」

 

今…クー、なんて言ったの?

 

「あら、別に本気なのだったらあたしは気にしないわよ?最終的に相手を選ぶのはリッカさん自身だもの。リッカさんの未来に当たる存在からはあたしだと言われたようなものだけれど、本当にそうなるかなんて分からないもの。」

 

「ええっと…ナーちゃん?何を言ってるかさっぱりなんだけど……」

 

「いずれ分かるわ。気にしないでちょうだい。」

 

……?いいのかな?…それにしても。

 

「……言峰、か…」

 

「む?どうした、マスター。」

 

「ううん、なんでもない。」

 

言峰綺礼。たまにギル達から聞く名前。ラスプーチンさんの依り代がその言峰綺礼さんらしいんだけど…同じ言峰性でも私の知り合いに“綺礼”っていう名前の人はいない。一応、混乱させたくないから黙ってるけど。

 

「逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……この対話に命運が懸かっているんだ…!夫人、私に力を…!」

 

「はいはい、そうね。しっかりしなさいな、きっと大丈夫よ!」

 

話を終えたらしいライオン頭の人が震えながらこっちを向く。

 

「…感染症の疑いがあります、速やかに滅菌するべきでは…」

 

「大丈夫…だと思う」

 

…多分。

 

「…さてと。とりあえず、会合を始めましょうか!まず自己紹介よね。」

 

女性がライオン頭の人から離れて私達に声をかけてくる。

 

「あたしはエレナ。“エレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー”。世間的には“ブラヴァツキー夫人”が有名かしら?」

 

エレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー…!19世紀のオカルティスト!現在のSF・伝奇系フィクションの原点はこの人にあると言っても過言ではない…!だって、アカシックレコードとか現在のSF・伝奇系フィクションで頻繁に見られる概念があり、多くが彼女が生み出したものだから…!

 

「ケルトとは……微塵も関係ねぇわな。学があるケルトの英雄なんていたかすら定かじゃねぇ!」

 

脳筋ばかりってことかぁ…

 

「わ、私は先輩の最初のメインサーヴァント…!マシュ・キリエライトです!」

 

「同じくメインサーヴァントが1人、ルーパス・フェルトと…」

 

「リューネ・メリスだ。アイルー、ガルク達はヴィマーナで待機させている。」

 

「私がミラ・ルーティア・シュレイド。レイギエナの治療は大丈夫?」

 

「レイギエナ……なるほど、そういう名前なのか、あの竜は。」

 

カルナさんがそう呟いた。

 

「フローレンス・ナイチンゲール。ドクター・リッカとドクター・ミラの補佐をする看護師です。」

 

「創詠 月です。本来は第一人格に交代した方がいいのですが、今回は私が対応します。」

 

ナイチンゲールさんは頭を下げたあとにライオン頭の人を睨み付け、月さんは強い視線で観察していた。

 

〈オルガマリー・アニムスフィア。グランドオーダー全権を担い、指揮する者です。ギルはオーナー、といったところですか。〉

 

〈藤丸 六花。カルデア側からリッカ達に対しての各種サポートを行ってる。〉

 

〈僕はロマニ・アーキマン。一応医療スタッフで、リッカちゃん達のカウンセリングを主に対応してる。〉

 

〈ミドラーシュのキャスターです♪ロマン様の未来の総てに寄り添い、投資いたします♪〉

 

「ふはは、コーヒーが甘いな?マリー、六花。」

 

〈えぇ……とても、甘いです…〉

 

〈まぁ、いいんじゃね?ただまぁ、結婚指輪らしい指輪を作るのは苦手だからよ。……なぁ、リッカ?〉

 

「うん?」

 

〈アイツって指輪も作れたかね?〉

 

「……あー……」

 

どうなんだろう……

 

〈…ま、いいか。また会えた時にでも聞こうぜ。〉

 

「うん。」

 

「今更名乗るのもだが…アルスターのクー・フーリン。形式上、な?」

 

「我はギルガメッシュ。王の中の王よ。今更説明もいるまい。…さて、こちらは終わったぞ。名乗るがいい、雑種。我を差し置いて王を名乗る貴様は何者だ?」

 

…ギル、絶対楽しんでるよね。だってもう知ってるもんね…

 

「───よかろう!」

 

それを知らないと思われるライオン頭の人は大声を上げて立ち上がった。

 

「みんな、はじめまして、おめでとう!我こそはあの野蛮なるケルトを粉砕する役割を背負ったこのアメリカを統べる王───大統王、“トーマス・アルバ・エジソン”である!!獅子頭は気にするな!」

 

トーマス・アルバ・エジソン───別名としては発明王、メンロパークの魔術師、訴訟王、アメリカ映画の父等々。獅子頭なのは……まぁ、その……

 

「「「「「………知ってた」」」」」

 

「何ぃ!?」

 

もうカルデアに召喚されてるからね、エジソンさん…




月「ちなみに移動のときに使ったあの術。お母さんの時間で6年くらい前にはあったんですよ。私が正式に生まれたのもその頃ですし。」

弓「ほう?正式に、とはどういうことだ?」

月「私は空間を司る巫女で…とある世界群の管理者でもあるんですけど。一番最初に創造がされたのは私じゃないんです。私の管理する世界群で眠る…1人の少年。彼こそがお母さんにとって真の“原初の子”。その頃はまだ“お母さん”のキャラクターとしての姿がなかったんですけどね。」

弓「ふむ…」

月「…それは私も同じ。“原初の子”が生まれたおおよそ10年前、私達“星の娘”は意識も形も持たなかった。彼は能力に関しても何も持たず、ただ1人の平凡な少年だったのです───」

イ・プルーリバス・ウナム修正後に召喚するサーヴァントは?

  • 槍兵、魔術師、剣士
  • 剣士、剣士、魔術師
  • 魔術師、槍兵、槍兵

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