狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
裁「……あ、そういえば最近観測が不安定なんだっけ?」
うん……
「「はぁ……」」
カルデアにて。2人の男がため息をついていた。
「どうした、ロマン、ムニエル。ため息ついてっと幸せ逃げるぞ?…いや、ムニエルのそれは恍惚って感じだけどよ。」
六花が手を止めてそう問いかける。
「…まぁいいわ。ムニエル、何か気がかりなことでもあるんだったら話せ。」
「気がかりっつうかよ~…コンラ君可愛すぎだろ~…あれで同じ男とか信じられねぇよ~…」
「なんだ、そんなことか。」
「“なんだ”とはなんだ、“なんだ”とはァ!!」
「んなもん満場一致で“可愛い”だろうが。分かりきったことを言うんじゃねぇ。」
「お……おう?」
「俺ら男の中でも類い稀なる容姿を持つ“男の娘”。容姿だけではなく声まで高いとなっちゃあその希少性は知っての通り───すっぴんでも女性のようで、声も高く、容姿も整っている、天然物の男の娘となればそれはレア中のレア、ゲームの最高レアキャラを軽く超すだろうよ。“男性”という性別が魅せる夢、“人間”の多様性が魅せる神秘───だからこそ男の娘って存在は尊いんだろうよ。」
「……なぁ、六花。合言葉は───」
「「男の娘は妊娠できる」」
同時に同じことを言ったあと、2人は強く握手した。
───スパァァァン!
「あだっ!」
───スパァァァン!
「でぇっ!」
つかつかと近づいたオルガマリーが2人をハリセンではたく。
〈お見事なハリセンです、オルガマリーさん。〉
「ムニエルはともかく六花は稀に暴走するのよね…ほんとごく稀にだけど。何かストレスでも溜まってた?」
「うにゃ……わり、少しボーッとしてたっぽいな。」
「……疲れてるんじゃないの?」
「そうでもねぇ…って言いたいとこだが、実際はそうなのかもな。」
「あら、随分簡単に認めるわね。」
「……ギルやモンテ・クリスト、ナイチンゲールにリッカ、七海…それから俺の作ったAI達。マジで多くの奴らから心配されてるからよ。自覚してなくても疲れてんのかね、ほんと。」
そう言って椅子の背もたれに寄りかかる六花。
「……別に全部が仕事じゃねぇし、自業自得といえばそのまんまだから心配されても、ってとこなんだよな…」
「そう……それにしても」
オルガマリーがコンラの写真をモニターに表示させる。
「コンラ…クー・フーリンの息子、だったわね。…可愛すぎ…見た目だけでいえば美少女すぎないかしら?下手したら女性以上よ?」
「まぁなぁ…男の娘っつうものは結局は男なわけで、女装とかに関してもだが“自分の思い描く女性になる”とかも結構あるわけだ。だから、“理想”を追い求めた結果本来の女性を越えやすいんだろうな。」
「……喧嘩売ってるのかしら?」
「1つの仮定だ、気にすんじゃねぇ。…んで、無銘の人格達が言うところでは、仮想空間にキャラクターを作成し、そのキャラクターに入り込んで生配信する…なんつったか、Vtuber?っつーのが未来にはあるらしい。“なりたい自分”になれるそれは現実の自分に満足していない、現実ではそれになれないというような奴らにとって夢の世界だろうよ。なら、それは───現実との乖離が凄まじいはずだ。現実と仮想の造形は全くって言っていいレベルで違うだろうからな。」
現実と仮想の造形の差は少女マンガがいい例だろうな、と六花が呟いた。
「……ただ、まぁ。」
「…?」
「女だろうな、ありゃ。」
六花が写真を見て放ったその言葉に管制室がザワッとする。
「…え?今、男の娘だって言ったばかり───」
「まぁ、言ったが。コンラは確率的には60%前後で女だろうよ。男にしては違和感が多すぎる。」
「……理由を、聞いてもいいか?」
「俺からは話さん。どうせリューネやルーパスも気付いてんだろ。なら、リッカもじきに気付く…もしくはもう気付いてる。偽ってる理由は本人から聞けよ、めんどくせぇし秘密にしてる部分に理由なく踏み込む趣味もねぇ。」
やれやれ…とボヤキながらロマニの方を向く。
「んで?ロマンのため息の理由はなんだ。」
「…六花……先に1つ訂正していいかい?」
「んあ?」
「“ため息をつくと幸せが逃げる”っていうのはただの迷信だよ?」
「んなもん知ってらぁ。」
そう告げてから六花もため息をつく。
「昔から誰かがため息をついたときに“ため息をつくと幸せが逃げる”って言うのは癖なんだよ。」
「そうなのかい…」
「……んで?ロマンのため息の理由はなんだ。」
「あぁ……うん。…あのさ。クー・フーリンって凄いよね…」
「あ?呼んだか?」
管制室に偶然顔を出すはクー・フーリン・オルタ。ちょうど通りかかったようだ。
「おう、クフオルタ。んにゃ、呼んでねぇよ。」
「そうか。」
そう言って管制室を去る。
「びびび、びっくりしたぁ…」
「噂をすれば影が射す、ってな。…んで、クー・フーリンがどうした。」
「いやさ…ミドラーシュのキャスターさんってああいう人の方が好きなのかな…って。ほら、ボクってクー・フーリンと比べたらほんとひ弱だし意気地無しだし…彼女は好意を寄せてくれてるんだろうけど、ボクはそれを避け続けているようなものだし…ボクなんかでいいのかな、って……」
「……あのなぁ。」
六花が頭を押さえる。
「そういうことは本人に聞けよ。それと、自分を卑下しすぎると嫌われる要因になるぜ?」
〈…お父さん、それを貴方がいいますか。〉
「実際俺は大したことしてねぇしな。…で。背後で聞いてたアンタはなんて答えるんだ?」
その言葉にロマニが振り向く。そこには獣耳をもつ褐色肌の女性が佇んでいた。
「ミ、ミドラーシュ、サン……?」
「はい~、先程別作業を終えて戻りましたので~。」
「え、ええっと…どこから、聞いて?」
「クー・フーリンが退室したあたりです~♪」
「───」
ロマニがフリーズした。それを見てオルガマリーがハリセンを手にする。
「それで…ロマニ様?」
「───ひゃ、ひゃいっ!」
「起きたか。」
「そうね、ハリセンの準備は要らなかったみたい。」
オルガマリーが手にしていたハリセンを置く。
「クー・フーリンはもちろんいいですが……私のタイプは“ロマニ・アーキマン”のような方です♪」
「あばばば……」
「結婚しちゃえば、ロマニ?」
「そ、そんな簡単に他人の人生背負えないからぁぁぁ!!」
「やれやれ…人理修復できたら知り合いに結婚指輪の製作頼むのを本気で検討すっかね。いずれ結婚しそうだからよ。」
「…それは、勘かしら?はい、コーヒー。」
「まぁな。…甘いな。」
「えぇ…甘いわね…」
「二人とも、それブラックなんですが…」
「状況が甘くて仕方ないのよ、シルビア…」
「…悪い、砂糖吐きそうだわ。まぁ、比喩だがな。」
そう言って六花が自分のPCに向き直る。
「ほんと…幸せになれよな、ロマン。お前はこれまで大変だったんだからよ。」
「……あなたは、知っていたの?ロマニがソロモンだったってこと?」
「あぁ。あのカルデア職員の情報を管理する名簿で、偶然な。基本的な真名隠しは役に立たねぇ、魂そのものに接続して情報を得るんだからな。」
「…あぁ、なるほど……」
「……ん?…違うな、こうか。」
悩みながらもキーボードを叩く六花。そのPCはノートパソコンに拡張モニターを接続してデュアルモニタにしている。
「……そういえば、六花。」
「あ?」
「あなたは…リッカと七海さんが付き合うこと、認めてるのかしら?いえ、まだ付き合ってないけれど。」
「ん?おう。」
即答。当然といわんばかりに、彼は即答した。
「それがリッカの決めた道で、リッカがそれで幸せになれるなら俺は止めねぇよ。」
「……それが、相手が同性でも?」
「あぁ。…実際、俺は“愛し合っていればそれでいい”って考えてるところあるからよ。それが同性だろうと兄弟姉妹だろうと親子だろうとかなりの歳の差だろうと愛し合っていれば別にいいんじゃねぇの、ってなるのさ。…倫理的なことや法律的なことはともかくとしてな。」
「…それが、ルーナさんのような容姿をした子だとしても?」
「ルーナは合法ロリ……ってそう言うことじゃねぇな、ぺドフィリアとかその辺りの事か。つーかマジであの人は若すぎだろ…あれで娘いるとか今でも信じられねぇ…っと、脱線したな。もう一度言うが倫理的なことや法律的なことは省いておく。その上で考えれば俺は別にいいんじゃねぇかって思うのさ。」
「そう…」
「……つーかルーナの夫はロリコンかなんかだったんかね?」
「ロリコン…かどうか分からないけど普通の人だったよ?」
その声に六花が声のした方を向くと、ルーナと諸葛孔明が立っていた。
「おう、どうだ?」
「形にはなってきているが、私は専門ではないからな…完全な状態で運用するのは現時点では難しいだろう。」
「そうか…」
「…それより、ロリコンってなんのこと?」
「あーっと…」
六花が軽めに説明する。…犯罪臭のようなものがする気がするが気のせいだろうか。
「……なるほどね。ん~と~……」
ルーナが軽く悩む。
「……一応、彼は普通の人だよ?小さい子が好き、っていう話は聞いたことないし、最初の頃は変な目線とかも感じなかったし。目線に違和感を感じるようになったのはいつ頃だったかなぁ…一緒に行動しはじめて結構経ってからだったと思うけど。」
しばらく悩んだ後、顔をあげる。
「そだ、17歳頃だ。その頃に告白されたんだよね。」
「若いな。」
「ん、一応彼の方が年下だよ?私よりも背は高かったし、大人びているような感じだったから私の方が年下に見られたくらい。」
「ちなみに入籍は?」
「私が18、彼が16…って、あぁ…そっか。ルーパスももう結婚できるんだね。」
「……ん?あれ、結婚可能年齢とかってあんのか?」
その言葉にルーナが首を横に振る。
「明確な定義はないよ。でも、大体18歳以上が推奨されてるかな。もっとも、20歳までは両親の許可が必要だけどね。」
「ほー…」
「ルーパスやリューネが結婚して私達のもとを離れるってなったら寂しくなるなぁ…」
そう呟いたルーナを見て、六花がため息をつく。
「……あんま関係ないとはいえ、合法ロリの割に母親らしい表情するよなぁ、ホント。」
「…その合法ロリって結局なんなの?アンデルセン君も教えてくれなかったし…」
「……改まって聞かれると説明しにくいな。つーか耳いいのな、ルーナは。」
「まぁまぁだよ、私は。……それで?怒らないから聞かせて?」
「……へいへい。んじゃ、怒るなよ───」
少年説明中……
「───ってことだ。」
「なるほど……でもそんなこと言ったら私の家系ほとんどが“合法ロリ”、“合法ショタ”っていうのになりそうだけど。」
「マジか……ロリコン・ショタコンの楽園か、そら…」
「知らないよ。私達の家系…舞華家の特徴として、かなり若い段階で成長が止まるの。ついでに結構長寿だし。リューネとルーパスもその血を引き継いでるから……多分もう成長止まってるんじゃないかな。」
「そういうものなのか…」
世界は広いな、と六花がボヤいた。
「……んあ、そうだ、ルーナ。」
「うん?」
「お前さん、ルーパスとリューネが結婚したい…つまりは同性同士で結婚したいって言い出したらどうする?」
それは、オルガマリーから問われたものと同じ問い。兄妹のうちの兄ではなく、母娘のうちの母であるルーナへの問い。
「ん?応援するよ?」
「即答か。」
「うん。だって、私は自分の娘に幸せになってほしいから。例え私が孫の姿が見られないとしても、自分が幸せになれる道を選んでほしいからね。」
「…そうか。」
納得したかのように頷き、PCの画面に目を落とした。
「…ところで六花さん、それは何をしているのかしら?」
「……いつの間に戻っていたんだ、ありす」
「ついさっき戻って来たの。」
いつの間にありすが六花の隣からPCの画面を覗き込んでいた。
「これは…プログラムコード?よね?」
「あぁ、魔術をプログラムに変換したものだ。」
「っていうことはこれ“コードキャスト”じゃない……しかも本来のコードキャストよりも大分複雑じゃないの、これ?」
「そうっぽいな。別にバカにするわけでもねぇがプログラムの量が長いこと長いこと。空いた時間見つけては解析してるが全解析まで至らねぇのなんの。一部を切り取ってコードキャストとして成立させるくらいしかまだ出来てねぇよ……っと。」
Enterキーを叩く音が聞こえる。
「…うし、“Tone_Attack();”が完成だな。やっと一個、それでもまだ術式のごく一部なんだよな、コレ…ありす、試し撃ち頼んでいいか?」
「……」
「ありす?」
「……ほんと、あなたって
「
「……あなたのその技術があれば月の聖杯戦争でも結構有利に戦えたかもしれないわね。それで、試し撃ちだったわね?いいわ、手伝う。一度電脳空間に入るから
「助かる。」
ありすの姿が消え、六花がPCを操作する。その後、微妙な表情をしたありすが現れる。
「…
「…そういえば、ありすの精神体の方はまだ?」
「電脳空間にまだ生きてるんじゃないかしらね。
「…そうか。」
「…“ありす”、か。」
呟くと同時に少し暗い表情になった。
「どうした?」
「…いえ、何でもないわ。…リッカさんには、話しておいた方がいいわね。」
「…?」
「じゃあ、試してくるわ。効果に関しては後で報告するわね。」
「おう、頼む。」
その言葉を最後にありすは管制室を去った。
───特異点にて。
「クーちゃん、起きて!!サーヴァントを殺しに行くんでしょ!!」
「…………」
「フェルグス!!クーちゃんの事起こして!!」
「はっはっは、無茶を言うなメイヴ。クー・フーリンはこうなったら梃子でも動かんぞ。」
「いいから早く!クーちゃんがいればはぐれサーヴァントなんて一捻りなんだから!!」
「…う~む、他の者に行かせた方が確実で早いのだが…女の要望には応えるべきか。…しかし」
ドリルのような剣を持つ男は外を見た。
「…フィン・マックールとディルムッド・オディナを容易く狩るサーヴァント、か…まさかではあるが…なぁ。」
「早く!!」
「やれやれ…どれ、起こしてみるとするか───」
裁「……マスター。言われてるよ。」
うっ……だって自信ないんだもの。誰かに誉められたとしても自分よりも上がいることが分かってるから自信持てないんだもの……
弓「重症よな……」
裁「うん…私もそう思う。」
イ・プルーリバス・ウナム修正後に召喚するサーヴァントは?
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槍兵、魔術師、剣士
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剣士、剣士、魔術師
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魔術師、槍兵、槍兵