狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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裁「……“やり場のないこの怒りをどこにぶつければいいの”、か……」

(るな)「…?」

裁「なんでもないです。」


第287話 怒りの矛先

『全員にお願いがある。あの魔女が倒されたあと、今対峙してる相手を早急に倒して欲しい。』

 

…そんな、リューネちゃんの念話に従って今、私は女王と対峙している。

 

「───シッ!!」

 

遅い。さっきの彼女より断然遅い。姿はさっきの彼女そのものなのに、何もかもが弱すぎる……!

 

「変異泥を纏うことすら必要ないなんて弱いにも限度があるでしょ……!」

 

そう呟きながら一撃。それで、彼女は倒れる。…だけど。

 

「脆い癖にしぶといとか───ふざけるな…どこまで彼女を侮辱するつもりだ……!!」

 

弱いのにしぶとい。それは、成長しているのなら許せる。だけど、成長していないのにしぶといのはただの苛立つ原因にしかならない。今回の事で、思い知らされた。…最終的に勝つというのなら、まだ許せるかな。“勝つ”という意思が見えるのなら。

 

「あぁ、もう……!」

 

“楽しい”、なんてものじゃない。ただただ単純化した“作業”と同じそれは。知っている相手の“劣化”でしかないそれは。なにより、結び付きが強い相手であったそれは───私達に対して、精神的な苦痛を与える要因にしかなっていなかった。

 

「……っ!」

 

なにより───心配なのはルーパスちゃんだ。ルーパスちゃんはまだ友達を失ったばかり。彼女の心が折れてしまわないか。それだけが気がかりだった。

 

 

 

side 三人称

 

 

 

「…クソやろうが…」

 

輝犬が吐き捨てるように呟く。その原因は言うまでもなく、対峙している死霊と化した狂犬だ。

 

「“サーヴァント”。そもそもが死霊みたいなもんだ。“英霊”って言うからな。金ピカの言うことからして俺達も劣化なのは間違いねぇ。……だが、その“さらに劣化”なんざふざけんのも大概にしろ。」

 

向かってくる狂犬に対して魔力を纏わせた槍を薙ぐ。狂犬はそのまま塵となるが、即座に再生する。

 

「チッ………意識はあるんだろ、クー・フーリン。なら、とっとと目覚めて俺と戦いやがれ。」

 

槍を狂犬に突き刺した後、輝犬がそう言う。

 

「今のテメェみてぇな意思の欠片も耐久力もないただの屍を蹴散らすほど退屈な戦いはねぇんだよ。生憎と俺は死体蹴りは趣味じゃねぇんでな。」

 

背後───マスターであるリッカの方を片目で見て口を開く。

 

「テメェには守りたいものがあったんじゃねぇのかよ。俺との戦いを投げ出してでも守りたいものがあったんじゃねぇのかよ。」

 

その目は、リッカと戦うメイヴの方を捉えていた。

 

「今、テメェが一度守れなかったそれがココにある。やり直しにはならねぇ、一度結果は決まっているんだからな。俺が勝って、テメェが負けた。リッカが勝って、メイヴが負けた。それは変わらねぇ───だがよ。」

 

槍を振って狂犬を吹き飛ばす───その衝撃で狂犬が散るが即座に再生される。

 

「───テメェがそんな程度で諦められるタマかよ?…俺にはどうもそう見えねぇな。だからよ───さっさと起きてこい。テメェの事だ、この状況も我慢できねぇはずだぜ?」

 

「……グ……ガ…………」

 

「お?」

 

ただただ突進して向かってくる以外の行動を見せた狂犬に輝犬が興味を持った。

 

「煽りの影響がやっと出たか?まぁ、そうじゃなくっちゃなぁ。」

 

「……が…………と……」

 

「あぁ?はっきり言えよ。」

 

「……とう、ぜん……だろうが……!!」

 

狂犬がそう言った瞬間、輝犬がルシャの困惑したような表情を見た。

 

「……ほーう?ふむふむ……」

 

「なに…勝手に納得してやがる……!」

 

「いや、別になんでもねぇよ。強いて挙げるなら……面白い、って思ったくらいか。」

 

「あぁ?」

 

「テメェの事じゃねぇよ。…とはいえ、やっと意識を取り戻したんだ───」

 

輝犬が槍を構えるのと同時に狂犬もまた槍を構える。

 

「早速殺りあおうぜ───なぁ?」

 

「それしかねぇか───今回は勝ってやるよ…!」

 

「抜かせ、負けんのはテメェだ!!」

 

再び狂犬と輝犬は激突する───己が意志のぶつかり合いとして。

 

 

 

 

別場所。ギルガメッシュと緑髪の青年───否、エルキドゥは向かい合っていた。

 

「やれやれ……屍として喚ばれた貴様に向かい合うなど。腸が煮えくり返る。」

 

「でも、そう言っている割には乖離剣を抜いてないじゃないか。君もずいぶんと丸くなったようだね、英雄王ギルガメッシュ?」

 

「あやつらの成長のためというのもあるが…第一、“貴様”が在ると知ったからな。天の鎖(エルキドゥ)。…そも、貴様に“屍”という概念が存在したことが我は驚きだが?」

 

エルキドゥはその言葉に肩をすくめた。

 

「僕だってそうさ。だって僕は土人形。君達人間の言う屍、即ち“死体”には該当しないだろう?大多数の意見から見れば。だって、機械が壊れたことを死体とする方が奇妙だろう。だから、僕もそうだと思っていたんだけどね。」

 

エルキドゥはそこでため息をついた。

 

「でも、僕は死霊として召喚された。まぁ、意識が強すぎて操りきれなかったようだけど。」

 

「…そういえば、先ほど“概念的な死であればどんなものですら利用する”と言っておったな。…貴様は概念的な死(それ)に当てはまったか。」

 

「あぁ。それなら当てはまるだろうね。機械の修復不可能状態も言ってしまえば機械の死と動議だ。“概念的な死”とは、恐らく生物非生物問わず当てはまるものなのだろうね。」

 

とはいえ、とエルキドゥが呟く。

 

「どのような理由であれ、一度僕を倒さないといけないことは君も分かっているだろう?今回の僕達の召喚は通常の聖杯戦争におけるイレギュラー。…いや、そんなものじゃないか。イレギュラーというよりは……黒化英霊、とでもいうべきかな?違う気もするけれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。…そうだね?」

 

「…間違いないな。本来召喚されるべき英霊……違うな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。時間をかけすぎれば特異点そのものが崩壊するだろうよ。」

 

「…そうか。でも、いま僕を倒しても意味はない。それは君も気がついているんだろう?」

 

「そうさな。元凶を潰さねば意味などない。…とはいえ、貴様はここから動かしてはくれぬだろう?」

 

「歪な召喚とはいえマスターにはなるからね。君に対する時間稼ぎくらいはするさ。…まぁ、彼女が消えたならどうでもいいんだけどさ。」

 

「安心せよ。既にリューネめが何か策を講じているようだ。合図があればすぐに貴様を切ってやろう。」

 

「お願いするよ。僕としても今のこの状態で長い間君と一緒にいたくはない。」

 

そう言ったところでふと気がついたようにエルキドゥが口を開く。

 

「ところで、彼女は一体何をするつもりなのだろうね?」

 

「さて、な。あやつらハンターの考えることはこの我にもよく分からん。ただ、悪い方向には行かぬであろうよ。」

 

「……随分彼女達を信頼してるんだね?なんだか妬いちゃうなぁ。」

 

「そんな事を言うのはいいが本気で嫉妬していないだろう、貴様は。」

 

「まぁね。…ねぇ。」

 

「む?…っと」

 

エルキドゥが寄りかかってきたのをギルガメッシュが抱き止める。

 

「……僕を切るとき、躊躇わないでよね。大丈夫だよ、僕達はいずれ……いや、この特異点が終わればすぐにでも出会うだろう。…なんとなく、そんな予感がするんだ。」

 

「……ふん。期待せずに待つとしよう。」

 

「あはは。…期待されてなくとも、待ってくれているのは嬉しいなぁ。」

 

他の場所とは違い、ここだけは緩やかな空気が漂っていた。

 

 

 

side 理紅

 

 

 

「……」

 

お姉ちゃんの回復をしながら戦況を視る。…かなりの、地獄みたいな感じになっているみたいだ。

 

「急がないと、他の人たちが限界になる方が早い……」

 

ルシャは強敵。正直、私達が連れ込んでしまったようなものだろうから私達が対処した方がいい。

 

「倒しきらなくていい……私達のいた世界まで撤退させればいいの。」

 

恐らく。ルシャは自分の器を今使ってるだけしか用意してない。その器を使えなくさせてしまえば、ルシャは撤退するしかなくなる。問題は、使えなくさせる方法。

 

「……お姉ちゃん」

 

……多分。お姉ちゃんにはかなりの苦痛を強いる。でも今のところ、これしか方法がない。

 

「……う、うう…」

 

「…!お兄ちゃん!!」

 

「ふぇ…あぶっ!」

 

気がついたお姉ちゃんに思いっきり抱きつく。

 

「ちょっ……理紅、苦しい、苦しい苦しい!!!」

 

「あっ、ごめん!」

 

お姉ちゃんの声に即座に離れる。

 

「……意識戻った直後にまた意識飛ぶかと思った……」

 

「ご、ごめん……」

 

「いいよ……それより、状況は?」

 

私はお姉ちゃんに今の状況を簡単に話す。戦闘している方を見ながらだったから、多分伝わってる。

 

「そう。…ルシャに向かわせなかったのは正解。あれを崩すためにはある手順を踏むか世界ごと巻き込むかしかないから。」

 

「……うん…お姉ちゃん」

 

私が言葉を伝えようとした時、お姉ちゃんが私の頭に手を置いた。

 

「大丈夫、言いたいことは分かるから。…一時の決着を、つけてくるよ。」

 

「……大丈夫?」

 

お姉ちゃんが言った“ある手順”。それは、お姉ちゃんにとって辛いものなはず。

 

「…大丈夫。…って、言っておく。そうでもしないと、ここでもう折れそうだから。……もしも大丈夫じゃなかったら、理紅が私を癒してくれる?」

 

そんなお姉ちゃんの言葉に苦笑する。

 

「お姉ちゃん。それは私に言う言葉じゃないでしょ。()じゃなくて恋人さんに言って、恋人さんに癒してもらわなきゃ。」

 

「……それも、そっか。」

 

そう言ってお姉ちゃんが立ち上がる。

 

「……お兄ちゃん、こっち向いて?」

 

「ん───みゅっ!?」

 

お姉ちゃんの声が不自然に止まる───それはそうだ、私が唇を塞いだんだから。

 

「───ぷはっ」

 

「………」

 

その時間、約10秒。お姉ちゃんはというと脚に力が入らなくなったみたいで、その場で崩れ落ちていた。ちなみに七海さんがなんか照れてた。

 

「あ、あのさぁ……理紅……?」

 

「……力、返すの忘れてたのと……あと、私の力の半分譲渡。それで、勝って。」

 

「それはいいんだけどさ……!なんでいつもいつもキスするの…!しかも深いんだよ理紅は!!腰立たなくなるから重要なときはやめて……!?」

 

「お兄ちゃんが可愛いすぎるのが悪い」

 

「責任転嫁じゃない!?まったくもう、理紅も恋人いるのになんで私にも……」

 

「あの子には30秒くらいしてるから」

 

「キス魔だ……うちの妹はキス魔だ……あかん、マジで腰立たん……」

 

理紅はかなり巧いから仕方ないか…とか言いつつ立とうと頑張るお姉ちゃんは…なんというか

 

「……襲うよ?」

 

「ここ外!!あと本気で発言に気を付けて!?」

 

「お兄ちゃんが元男性なのに可愛いすぎるのが悪い」

 

「この姿の時は“お兄ちゃん”って呼ぶのやめてって言ってるでしょうが!!…あ、やっと戻った…ホントどうして理紅はこうなったの……」

 

「お姉ちゃんが狂わせたんだよ?」

 

「認めたくない」

 

「認知してください」

 

「意味が……もういいや、後でにして……」

 

うん、流石にこれ以上ふざけてる場合じゃないね…

 

「じゃあ、行ってきます」

 

「うん。」

 

今度は多分───大丈夫だ。




(るな)「ちなみに香月さんですが結構精神力は強い方です」

裁「というと?」

(るな)「オメガバース世界で言うと香月さんってαの女性になるんですが、番無しのΩの発情フェロモンに対して精神力だけで抗えるレベルで強いです。」

裁「……えぇぇ…」

(るな)「ちなみにお母さんはオメガバース世界の事を軽く知っている程度なのでどんな作品があるかとかはあまり追ってません。基本的に知っているのは性別関係くらいだそうな。」

イ・プルーリバス・ウナム修正後に召喚するサーヴァントは?

  • 槍兵、魔術師、剣士
  • 剣士、剣士、魔術師
  • 魔術師、槍兵、槍兵
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