狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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「無銘…とな。」

令呪によって命ずる。暴走しないように。

「そんなもの令呪で縛るものか…」

暴走されたら面倒だし。


第23話 無銘

 

 

無銘。

 

それが、今の私の名前。

 

記憶のない、私の。

 

アルターエゴとして現れた、私の。

 

ルーラーの力を持ってしても、私の名前はわからないみたい。分かったのは、“星”という単語だけ。

 

「ふむ…」

 

そして、いま私の目の前にいるのは英雄王という人物。カルデア、だっけ。この施設の中をふらふら当てもなく歩いてて、自分の部屋の前に着いた時に捕まった。

 

「貴様は興味深いな。なんだ、その姿は。」

 

「…」

 

「何故、()()()()()()()()()()()()()。そして何故、その状態でその姿を保っていられるのか。実に、興味深い。」

 

「……どういう、ことですか。」

 

「そのままの意味よ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それでいて、何故そのまま意思を保てる?」

 

初耳だった。というか、知りすらしなかった。

 

「ふん。その魂共は眠っているだけのようだが…それでは宝具も展開できないのではないか?マスターのメインサーヴァントとして、それで良いのか?無銘なるアルターエゴよ。」

 

口調はきついけどそれなりに心配されているように感じる。

 

「私は…今は、いい。たとえ…何かの役に立てなくても、私の在る意味を見つけ出せれば…」

 

「…ふむ。役に立つかどうかではなく、存在意義を知りたい、とな。面白いものよ。…そもそも、記憶を総て喪うなど……否、こ奴は生きた人間か。」

 

何か言ってるけど、私にはよくわからなかった。

 

「あのマスターであることに感謝するのだな。酷いマスターならばお主などとっくに自害させられていよう。」

 

そう言って英雄王は私に背を向けた。

 

「…あぁ、そうだ。」

 

「?」

 

「この施設、そしてお前の部屋。狭いとは思わぬか?何か広くするのに良いと思う方法があるならば申してみるがいい。」

 

「…空間拡張」

 

「ふん…記憶を喪っている割には、それなりに分かるものはあるようだな…しかし空間拡張か……ふむ。」

 

そう呟きながら英雄王は去っていった。

 

「…何だったんだろう。」

 

面倒になってきたからそのまま自分の部屋に入る。

 

『やぁ。無銘。』

 

直接心に響く声。声のする方に目を向けると、白い生物がいた。

 

「…誰?」

 

『ボクはフォウ。ただの比較することが好きな、一つの奇跡を願う獣さ。無銘。君に聞きたいことがある。』

 

その白い生物───フォウが私の足元に来た。

 

『とりあえずは座りなよ…ってボクが言うのもおかしいけどね。ここは君のマイルームだ。立ったままじゃ落ち着いて話もできないだろう?』

 

促されるままにベッドの上に座る。フォウは私の隣に座った。

 

『面倒なのはそれなりに苦手でね。単刀直入に言おう。君は一体何者だい?1つの肉体に君を含めて8の魂。どう見ても普通じゃない。君のクラスがアルターエゴなのはその魂達の影響だろうけれど。君以外の魂7つは眠っていて、それでいて魂の暴走なんかも引き起こさず、見事に調和している。どういうことだい?』

 

そんなの私が聞きたいと思った。

 

「…わからない。」

 

『分からない、か…何者かが意図的に君の記憶を封じているのか。それとも何かの拍子で抜け落ちたのか。…もしかしたら、抑止力の影響で8つの魂を1つの肉体に入れる代わりにその核となる魂の記憶を消去したのか。その真相は分からない、か…』

 

フォウは少しの間虚空を見つめてから、私の方を見た。

 

『君には記憶がない。自我が弱い。…無垢に近く、虚無に近い。それは、あの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

自我が弱い、のかな?

 

『だからこそ、君とミラは危ない。悪意に対しての耐性が皆無に等しい。…ボクは、陰から君たちを見守るとしよう。君たちがいつか、ボクの望む結末を見せてくれると信じて。』

 

フォウはそう言って扉に足をかけた。

 

『あぁ…そうそう。一つ教えておこう。君とミラでは無垢、虚無の観点が変わる。』

 

フォウはこちらを見ずにそう言った。

 

『君の場合は記憶がない、自我が弱い。そういう意味───つまり0という無垢、虚無なんだ。それに対して、ミラは記憶はある、自我も強め。だが───心の奥底がすさまじく脆く、白い。どうやら何かの護りが働いているようだけど…何というかな。彼女の生存本能が低い、とでも言おうか。そのあたりが謎でね。こちらは0というよりは-(マイナス)に近い無垢であり、虚無である。何故だろうね。彼女は無垢ではないはずなのに、嫌でも無垢だと認識させられる。ボクには彼女が分からないよ。』

 

そう呟いたフォウは私の方を見た。

 

『少しでも生きられるように頑張りなよ、星のアルターエゴ。この世界の結末は僕にもわからない。君がなぜこの世界に喚ばれたのかもわからない。ただ一つ言えるのは、君は…いや、君たちはこの世界を回す役割を担っているのだろう。悲しい運命が存在するならば、それを少しでも変えようとするといい。それがどんなことを引き起こすかは知らないけどね。』

 

そう言ってフォウは私の部屋を去っていった。

 

「…星の、アルターエゴ。」

 

フォウが呼んだその呼び名。すとんと、心に落ちるような気がした。

 




「かの無銘とは別人か?」

言うと思った。別人だよ。

「そうか…」

ていうか星のアルターエゴ、ねぇ。全く思いつかなかった。
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