狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
令呪によって命ずる。暴走しないように。
「そんなもの令呪で縛るものか…」
暴走されたら面倒だし。
無銘。
それが、今の私の名前。
記憶のない、私の。
アルターエゴとして現れた、私の。
ルーラーの力を持ってしても、私の名前はわからないみたい。分かったのは、“星”という単語だけ。
「ふむ…」
そして、いま私の目の前にいるのは英雄王という人物。カルデア、だっけ。この施設の中をふらふら当てもなく歩いてて、自分の部屋の前に着いた時に捕まった。
「貴様は興味深いな。なんだ、その姿は。」
「…」
「何故、
「……どういう、ことですか。」
「そのままの意味よ。
初耳だった。というか、知りすらしなかった。
「ふん。その魂共は眠っているだけのようだが…それでは宝具も展開できないのではないか?マスターのメインサーヴァントとして、それで良いのか?無銘なるアルターエゴよ。」
口調はきついけどそれなりに心配されているように感じる。
「私は…今は、いい。たとえ…何かの役に立てなくても、私の在る意味を見つけ出せれば…」
「…ふむ。役に立つかどうかではなく、存在意義を知りたい、とな。面白いものよ。…そもそも、記憶を総て喪うなど……否、こ奴は生きた人間か。」
何か言ってるけど、私にはよくわからなかった。
「あのマスターであることに感謝するのだな。酷いマスターならばお主などとっくに自害させられていよう。」
そう言って英雄王は私に背を向けた。
「…あぁ、そうだ。」
「?」
「この施設、そしてお前の部屋。狭いとは思わぬか?何か広くするのに良いと思う方法があるならば申してみるがいい。」
「…空間拡張」
「ふん…記憶を喪っている割には、それなりに分かるものはあるようだな…しかし空間拡張か……ふむ。」
そう呟きながら英雄王は去っていった。
「…何だったんだろう。」
面倒になってきたからそのまま自分の部屋に入る。
『やぁ。無銘。』
直接心に響く声。声のする方に目を向けると、白い生物がいた。
「…誰?」
『ボクはフォウ。ただの比較することが好きな、一つの奇跡を願う獣さ。無銘。君に聞きたいことがある。』
その白い生物───フォウが私の足元に来た。
『とりあえずは座りなよ…ってボクが言うのもおかしいけどね。ここは君のマイルームだ。立ったままじゃ落ち着いて話もできないだろう?』
促されるままにベッドの上に座る。フォウは私の隣に座った。
『面倒なのはそれなりに苦手でね。単刀直入に言おう。君は一体何者だい?1つの肉体に君を含めて8の魂。どう見ても普通じゃない。君のクラスがアルターエゴなのはその魂達の影響だろうけれど。君以外の魂7つは眠っていて、それでいて魂の暴走なんかも引き起こさず、見事に調和している。どういうことだい?』
そんなの私が聞きたいと思った。
「…わからない。」
『分からない、か…何者かが意図的に君の記憶を封じているのか。それとも何かの拍子で抜け落ちたのか。…もしかしたら、抑止力の影響で8つの魂を1つの肉体に入れる代わりにその核となる魂の記憶を消去したのか。その真相は分からない、か…』
フォウは少しの間虚空を見つめてから、私の方を見た。
『君には記憶がない。自我が弱い。…無垢に近く、虚無に近い。それは、あの
自我が弱い、のかな?
『だからこそ、君とミラは危ない。悪意に対しての耐性が皆無に等しい。…ボクは、陰から君たちを見守るとしよう。君たちがいつか、ボクの望む結末を見せてくれると信じて。』
フォウはそう言って扉に足をかけた。
『あぁ…そうそう。一つ教えておこう。君とミラでは無垢、虚無の観点が変わる。』
フォウはこちらを見ずにそう言った。
『君の場合は記憶がない、自我が弱い。そういう意味───つまり0という無垢、虚無なんだ。それに対して、ミラは記憶はある、自我も強め。だが───心の奥底がすさまじく脆く、白い。どうやら何かの護りが働いているようだけど…何というかな。彼女の生存本能が低い、とでも言おうか。そのあたりが謎でね。こちらは0というよりは
そう呟いたフォウは私の方を見た。
『少しでも生きられるように頑張りなよ、星のアルターエゴ。この世界の結末は僕にもわからない。君がなぜこの世界に喚ばれたのかもわからない。ただ一つ言えるのは、君は…いや、君たちはこの世界を回す役割を担っているのだろう。悲しい運命が存在するならば、それを少しでも変えようとするといい。それがどんなことを引き起こすかは知らないけどね。』
そう言ってフォウは私の部屋を去っていった。
「…星の、アルターエゴ。」
フォウが呼んだその呼び名。すとんと、心に落ちるような気がした。
「かの無銘とは別人か?」
言うと思った。別人だよ。
「そうか…」
ていうか星のアルターエゴ、ねぇ。全く思いつかなかった。