狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
裁「基本能力……」
創造───創りあげる力、じゃなくて想像───想い象る力と言えば分かる?人は誰でも“仮想”に対して何かを創り、生み出し、定めることが出来る可能性を持つ。一番分かりやすいのはVRワールド。あの世界の全ては電子で構成され、その構成されたオブジェクトの形は人間がその世界に創造したもの。
裁「…」
リカや
裁「…そう考えると、想像の力って危険だよね…ここまで出ているだけでもその力のたった一端。それだけで、十分にチート性能なんだから。」
そうね。…この力は創り、産む“創造”の力であると同時に壊し、殺す“破壊”の力でもあるからね。創造と破壊は表裏一体。何かを壊せば何かを創る。何かを創れば何かを壊す。…気を付けないとね。
「ふー………」
あれから数日が経った。祈荒さんはまだ答えが出せないようで、目に見えて悩んでる表情なことが増えた。
「っ」
パァン!
「「「よし!」」」
的の割れる心地良い音と
「───確認お願いします」
「入ります───大前から、一中、羽分、皆中、一中、皆中です!」
「結構です───おぉい、マジかぁ…」
結果を書いてた男の人が頭を抱えていた。
「裏の手みたいな感じで衛宮を連れてきて貰ったってのに互角ってマジかよ……」
衛宮、とは確か第三射場に立ってた男の人だ。男女混成五人立───これが今回の構成。
「…なぁ、ナナさんよ。上手く中るコツとかあるのか?どう考えて引いたら中りやすいとか。」
「……いえ、私特に何も考えてませんけど…」
祈荒さん関連で考えてることは多いとはいえ、弓を引いているときは一度思考をリセットしている。なんなら最後の矢は祈荒さんの事を考えていたのもあって不安定なはず。
「うぉぉぉ……分かんねぇぇぇぇ……」
……確かこの男の人はこの弓道場の生徒…その筆頭だったはず。私自身そこまで精度が良いと思っていないのだけれど。精度は良いらしい。
『七虹、そろそろ……』
陽詩さんの声でハッと気がつく。時刻は───14:21。
「今日もこの辺りで失礼しますね、私…」
「おーう…また時間ある時に来てくれなー……」
弓の弦を外し、弓袋をかけ、矢を矢筒にしまい、弽を弽袋にしまって道場を後にする。
「……もう大丈夫かな」
道場から見えない位置、周囲に何者の反応もない場所で隠れ、遮蔽物として結界を張ってから弓道道具と弓道着をストレージに格納、いつもの服を着用する。…システムウィンドウから服を変えたとしても、服が入れ替わるときは少しの間裸になる。一応上着を着ていれば見せないことも可能だが“下着”ならともかく“服”は風によって“上着”が飛びかねない。
「…これでよしと」
いつもの服に戻ったことを確認して結界を時限設定付きで解除。続いて
『七虹、比較的近い場所に悪魔の反応があるよ。…脅威度は低いけど狩っておいた方がいい。』
「分かりました。」
「───
…“器物生成”。創造の下位互換───未だ、私はそれを低精度でしか使えない。
「…いた。───
山の中を移動して湧出していた悪魔に狙いを定める。
「───
生成するのは投げるのに───否、狙撃するのに特化した“狙撃針”。見た目はただのスローイングピックでありながら、その射程は600m。…生成しておいてなのだが、針で、しかも片手投げでどうしてそんな射程を叩き出せるのか不思議で仕方がない。
「“
私の宣言と投げと共に狙撃針が悪魔に向けて飛んでいく。当然というか、命中。だって40mしかないし。投げる前に静音結界仕込んだため断末魔も響かない。悪魔の魂…は、とりあえず回収。
「ここにおられましたか、薬師様。」
「っ!?祈荒さん!?」
背後から聞こえた声に驚いて後ずさる。…今の、見られていただろうか。
「……お取り込み中でしたか?」
「い、いえ……ここまで来るとは思わなかったので……ここはお寺から少しとはいえ離れていますし…」
「……あぁ、なるほど。私と話すときはいつも寺の中でしたものね。薬師様を探しても寺の中に居りませんでしたので、薬師様に頂いた御守りを使って外に出た次第です。」
あぁ、と思って思い出す。認識改竄の魔法と追跡誘導の魔法が仕込まれた御守りを祈荒さんには渡していた。追跡誘導は相手が遠すぎると使えない、とは伝えてはいた───が、山の中なら十分追跡可能範囲だ。
「それで、どうしてこちらへ?」
「…私なりの答えを出しましたので。薬師様に、聞いていただこうと。」
「……では、立ち話もあれですし場所を変えましょうか。少々失礼しますね。」
そう言って祈荒さんを抱き、薄く地面から浮く。滑るように移動するのが山の中だと早い。
「…っと。到着です。」
「以前からですが、本当にお早いですね……ここは?」
「んと……前からあった場所です」
着いたのは数日前に見つけた小屋。掃除はしておいたため綺麗にはなっている。そんな中で指を鳴らし、薬箱から瓢箪と湯呑みを取り出す。
「………どうぞ、粗茶ですが。」
「…あの、その瓢箪は……?」
「“湯沸き瓢箪”……まぁ、お気になさらず。」
“湯沸き瓢箪”。正式名称“薬湯の瓢箪”───
閑話休題。
「それで……どのような答えを出したのですか?」
湯呑みの中身が空になったのを確認してから問う。祈荒さんは少し迷うような表情をした後、口を開いた。
「薬師様…私は、菩薩になりとうございます。」
無言で続きを促すと、少し緊張したような声で言葉を紡ぐ。
「迷える人を見守り、時に救いを共に目指し、人々が救いに至るまでの助けへと。…私なりに、なろうと思います。」
「菩薩…ですか。」
菩薩───仏教において悟りを求めるもの。他にも色々定義が存在したりするが…恐らくこれが本来の意味だ。
「迷い、悩み、苦悩する方々を助け、少しでも重荷を軽くしてさしあげたいと思います。…薬師様は、笑われるでしょうか?たった1ヵ月しか共にいない方に影響され、このように大それた事を口にする幼子と。」
…………数ヵ月経っていたように思っていたが、1ヶ月しか経っていなかったか。どうも、時空間の歪みを対処していると時間の感覚が狂う。それはそれとして───
「人の生き方は人それぞれで、どのような生き方も否定できるようなものではありません。…本来は。故に、祈荒さんが出したその答え、祈荒さんが挑もうとしている生き方は祈荒さんの唯一無二になるでしょう。…どうか、その想いを忘れずに。」
小屋の中を優しい風が吹く。冷たい風ではあるが───優しい、風。
「貴女が見つけた想いは貴女だけの理。決して全てが得られるものではない。いつの日か真に形になると、私は思っています。」
「───はい、薬師様。」
「…あぁ、でも───」
私が口を開くと、祈荒さんは首をかしげた。
「───1つだけ、言わせていただきますね?もう、私はこの地にいられる時間が短いでしょうから。予知夢…とでもいいましょうか。数日前に夢に見たことがあるのです。」
「夢…ですか?」
「はい。貴女はいずれ、この山を出ていくことでしょう。私が引き留めなければ、今すぐにでも。」
「っ!?」
図星だったようだ。その表情が驚愕に染まった。
「別に出ていくな、とはいいません。ですが、“今”は流石に。今の貴女は、あまりにも若すぎる。」
「あ……」
彼女は8歳。そんな年齢の少女が、独り身で生きていくにはこの世界は危険すぎる。
「だからこそ───せめて10。来年、貴女がこの世に生を受けた日を迎えたなら。この山を出てもよいでしょう。……あまり、貴女を縛りたくはありませんが。」
「いえ………ありがとうございます、薬師様。…えぇ、そうですね。考えを改めて、10を過ぎた後に山を降りようと思います。」
その言葉を聞いて、安堵するような声が陽詩さんから聞こえた。…予知夢、とは言ったものの実際は陽詩さんの“未来予知”。可能性かもしれなかったが、“起こりうる事象”であったのは間違いない。陽詩さんが“時間を司る力”で視えた1つのifを私に伝え、検証し、比較的安全になる10歳以降を勧めた、というわけである。……それでも完全に引き留められるわけではないが。
「山を降りた後、私なりに人を癒し、救いましょう。人が済度の日取りに自らの手で至るのを信じ、迷えるもの達を立ち上がらせてみせましょう。」
そう言って祈荒さんは私の方に立ち上がって手を差し出す。
「───時の果てで、思い出していただけるでしょうか?森の中で菩薩になると誓った身の程知らずな小娘がいたと。貴女に救われた1人の女がいたと───」
少し間をおいて、明確に言葉を紡ぐ。
「あなたが私にしてくれたように、誰かを救いたいと願った女が。この森の中に確かにいたのだと。」
「───えぇ、忘れません。そして───」
差し出された手に私の手を重ね、私側も立ち上がる。
「いつの日かまた逢いましょう。この世界のどこかで生きる限り、巡り逢う可能性は高いのですから。また巡り逢えたそのとき、貴女のその時までを見せてください。」
「───はい、必ずや。」
先程よりも強く風が吹く。冬だというのに、どこか温かい。その風に、ミラさんが反応した。
『“祝龍風”……?なんで、この世界に…?』
『祝龍風?なんだい、それは?』
『人の門出を祝う時とかに吹く強めの温かい風のこと。龍風圧と似てる性質持ってるから何かしらの古龍が吹かせているんじゃないか、っていう風。』
『へぇ…』
そんな風があるのか、と私は少し思う。
「───あぁ。世界とは美しいものでございます。そこに生きる全ても尊く、また唯一のもの───」
その言葉に私は頷く。…もう、大丈夫だろう。
「……祈荒さん。これを。」
私が懐から取り出したのは御守り。虹が刺繍された御守りだ。
「これは…?」
「私の分身…とでもいいましょうか。…ただ、それだけです。突然ですが、今日にはここを発つつもりですので。」
「……」
「本当に突然で申し訳ありません。…どうか、これを私だと思っていただければ。」
事実───ここ最近、私の身体は不安定になっていた。この時空に実体を留めていられない、というか。この時空から完全に消えてしまう前に、祈荒さんが答えを出してくれてよかった。
「……薄々と」
「?」
「薄々と、感じておりました。薬師様がこの地にいられる時間はもう少ないと。…分かりました。こちら、お預かりしますね。」
そう言って私をまっすぐと見つめる祈荒さん。
「いつの日かまた巡り逢えたとき、こちらをお返しします。…誠に、ありがとうございました。」
「…こちらこそ。いつの日か、また。」
「私の見送りは結構ですので。薬師様は次なる場所へとお急ぎくださいませ。」
では、と言って祈荒さんは小屋を去っていった。
「…………今の、大丈夫だったかな」
『……ギリギリ大丈夫じゃないかな。…っと、単独顕現のブロックが外れたよ───』
フォウの声が聞こえた直後、私は足から崩れ落ちる。
『ちょっ、ナナコ!?』
「……あ」
手が、揺らぐ。実体から霊体に。霊体から実体に。それを、繰り返す。
「───落ち着け……」
集中───私にはまだやることがある。強く集中して存在を補強する───
「……ふぅ、なんとかなった。」
『ホント、無理しないでよ!?』
『…七虹、でももうそろそろ限界だよ。心意補強はこれで最後にしないと貴女の魂そのものが崩れる。』
……星乃さんの言う通りだ。この時空にいられる時間はもう0に等しかった。
「…1つだけ。あと1つ、やらないと。」
『……カルデアに帰ったら速攻休むこと。いいね?英雄王には連絡しておくから怒られるのも覚悟すること。』
フォウの言葉に頷き、私は立ち上がった。
───その時空での全てが終わってカルデアに帰還できたのは、それから1時間後だった。
裁「そういえばマスター、S.R.A.S.Sはシミュレータなんだよね?」
え?うん。
裁「なら、エミュレータってあるの?」
あー………いや、一応案はあるんだけど使わないかなと思って創ってないんだよね…
裁「あ、そうなんだ?」
基本的に実機を創れるからねー。ワールドクリエイトリソースは枯渇するものじゃないし。エミュレータ…模倣稼働装置はあまり必要ないかなー…
裁「あれって枯渇しないんだ…」
ワールドクリエイトリソースは源が想像力だからね。
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