狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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運命の選択はまだ反映されない。…それは良いことなのか悪いことなのか。

暗「……」

貴方の出番じゃないよ

暗「…うむ」


第325話 死を告げる天使と祝福をもたらす龍と

「じゃあ、ちょっと出掛けてくるね。」

 

会議が終わったあと、私はナーちゃんとお母さんにそう告げていた。

 

「…絶対に、帰ってくるのよね?」

 

「うん。私は絶対にここに戻ってくるよ。」

 

「……分かったわ。」

 

〈お気をつけて、リッカさん。何があるとも知れませんから。〉

 

「ミラちゃんも一緒だから大丈夫だよ。」

 

「それならいいのだけど。」

 

「…じゃあ、改めて。行ってきます。」

 

「行ってらっしゃい。気をつけて帰ってきてね?」

 

ナーちゃんのその言葉を最後に、私はテントから出て村の入り口に急ぐ。待ち合わせはそこなんだけど…っと。

 

「お待たせ、待った?ミラちゃん。」

 

「ん……ううん、そこまで待ってないよ。私も今さっき来たとこだし。」

 

気遣い…とかじゃなくて確かにそうっぽい?見た感じ準備まだ何も終わってなさそう。

 

「さっきまで英雄王とフォウに捕まってたからねー…ホント過保護なんだから…」

 

「…でも、嫌がってるようには見えないよ?なんか以前より刺が取れたっていうか…」

 

「…そう?リッカさんからみてそう見える?」

 

「出会った頃ってもっとツンツンしてたような気がするよ?」

 

「………ごめん、表現が理解できてないんだけど…ツンツンしてた、って……」

 

「あー…えっと。刺があるとか、素直になれないとか…そういうときに使われる表現かな?」

 

「素直になれないわけじゃないんだけどな…」

 

困り顔でミラちゃんが呟く。

 

「鐘の音……山頂に近いところから聞こえてきてるよね」

 

「うん…だから一応山頂に行くための準備はしてるけど……リッカさん、じっとしてて?」

 

「?うん。」

 

ミラちゃんが私に杖を向ける。

 

「───あらゆる寒さを力と化す北風よ。あらゆる暑さを力と化す南風よ。求める者の声に応え、その力を貸し与えたまえ。寒さと暑さに立ち向かう者に、汝らが風の導きを───」

 

ミラちゃんがそう唱えた途端、何かが変わったのが分かった。…うまく説明できないんだけど、何かが。

 

「今のは?」

 

「“南北へ導く風”。“寒冷適応”スキルと“炎熱適応”スキルの合わせ技…を魔法で付与したの。流石にホットドリンクとか飲みたくないだろうし。」

 

あぁ…なるほど。

 

「山は気候が変わりやすいから、一応炎熱適応も入れておいた。…北風だけで十分だったかもだけど…おいで、キリゼ」

 

ミラちゃんの言葉で黒いユニコーンが召喚される。確か…

 

「霜幻獣“キリン亜種”、だっけ。」

 

「そうだよ。…なんかごめんね、キリゼ。今回もお願いしていいの?」

 

ミラちゃんの言葉にキリゼさんが頷く。

 

「ありがとう。…よぃっと」

 

勢いをつけてミラちゃんがキリゼさんの背中に跳び乗る。他の古龍に比べると小さめな“キリン”種だけど、古龍であることには変わりないから人1人に跳び乗られたくらいでは動きは阻害されないっぽい。

 

「ほら、リッカさんも。」

 

「…いいの?」

 

私の問いかけにキリゼさんが頷く。…というか、“早く乗れ”とまで言われてる気がする。

 

「…それじゃあ、失礼します……っと」

 

ミラちゃんの手をとってキリゼさんの背に乗る。…以前も思ったけど、少しひやりとする。

 

「しっかり掴まっててね?───跳躍力強化」

 

「う、うん…」

 

私が答えた直後、私達を乗せたキリゼさんは跳んだ。

 

 

ゴーン……コーン……ゴーン……リリーン………

 

 

「……鈴のような、鐘のような…音が混ざってるよね。ミラちゃんも分かる?」

 

「うん……私、この鈴の音どこかで聞いたことある気がするんだけど…どこだったかな。」

 

どこかで聞いたことある……か。

 

「いつのことだとか分かる?」

 

「う、うーん……少なくともこの世界に来る前。…それ以外は、ちょっと。」

 

「そっか……ん、なんか暗くなってきたね…」

 

「それどころか“北風の召喚師”の効果発動してるのに寒くなってきてるね…主に精神的なものだと思うけど。目的地が近いのかな?キリゼ、大丈夫?」

 

ミラちゃんの問いかけに頷くキリゼさん。

 

「…なんだろうね。昔、私が感じてた感覚がする。」

 

「あ、それはなんとなく私も。…でもミラちゃんと私の過去って共通点あるの?」

 

「大まかに言ってしまえば“死にかけてた”っていう点は共通してるかも?リッカさんは精神的に、私は肉体的にね。」

 

あぁ…

 

「ただ分類が全く違うはずだからあまり関係ないとは思うんだけどな…」

 

「……精神と肉体は文字通り一心同体。だから、関係ないわけじゃないのかも?」

 

「そうなのかな……ん、魔力反応?」

 

ミラちゃんがそう言った途端にゴーストが現れる。

 

「氷属性でいいかな…キリゼ、あなたの冷気使わせてもらうね?」

 

キリゼさんが頷くのを確認すると同時にミラちゃんが冷気を凝縮させる。…だけど、氷属性の色じゃない?

 

「“天然霜焼け弾”なんて久しぶりに使うんだけどー…」

 

「天然霜焼け弾?」

 

何それ…?

 

「冷気を凝縮して属性弾にするとごく稀に灼零属性の“霜焼け弾”っていうのが出来上がるの。魔法で発生させた冷気じゃなくて天然物として発生した冷気を使うから“天然霜焼け弾”。凝縮難しいんだよねー、天然魔力しか含んでないから…」

 

「な、なるほど…?」

 

灼零属性って確か…火属性125%氷属性125%の複属性だっけ…?

 

「……これでよしと。先を急ごう、キリゼ。」

 

鐘の音は近くなっている……鈴らしき音も、また。音の感覚とか響き具合からして……あれかな?もやもやしてて見えにくいんだけど…

 

「───あそこだ。リッカさん、見える?」

 

「神殿……教会?そんな感じがする、けど…」

 

「…玉座……?」

 

「………違う、あれ…」

 

近づくにつれてハッキリと視認できるようになる。あれは───

 

「「───“霊廟”」」

 

霊廟。「みたまや」ともいう、祖霊を祀る施設のこと。 身近なものとしては、神道の場合は仏教のお仏壇にあたる祖先の霊を祀る場所。

 

「キリゼ、ここで止まって。送還するからまたあとでお願い。……この先は、キリゼには危険。」

 

私が言葉に出す前にミラちゃんがそう指示していた。直感…というか歴戦の勘なんかで分かったのかもしれない。キリゼさんもそれに素直に従ってその場で停止し、降りやすいように屈んでくれた。

 

「ありがとう、キリゼさん。」

 

私が降りたあと、ミラちゃんも降りる。ミラちゃんがキリゼさんに手を翳すとキリゼさんがその場から消えた。

 

「…さて。歩いて行こっか」

 

「うん…」

 

霊廟の扉まであと少し。…強力な、“負”の感覚。祖霊を祀る場所の近くだってこともあってか、ゴーストの姿もそれなりに。

 

 

ゴーン…ゴーン…ゴーン……

 

リーン……リーン……リィィィィン……

 

 

「「っ……」」

 

咆哮かのように、身体が震える。…いや。“ように”、というよりこれは───“龍咆哮”だ。

 

【怯えるな、漆黒の王と純白の妃。遥か先の世界を護らんと猛る龍共よ。汝らの奮闘、我が剣と冬の龍は認めている。】

 

霊廟の扉が開く───その奥から、現れるのは漆黒の人と水色が明滅する白い龍。その龍を見てミラちゃんが息を飲んだ。

 

「冬祝龍“ポワズラビエ”……幻の龍、“祝福龍”が一角…どうして、ここに…」

 

ポワズラビエ……?語源はもしかしてロシア語?поздравлять(祝福する)───でも、どうして?

 

【我に名はない───が、晩鐘と龍鈴の音を聴きながら堕ちず、共とはいえど明確なる意思を以てこの地に踏み入れた気高き龍共には───名乗らなければなるまい。】

 

空気が震える。直感は強い警鐘を鳴らす───ここに顕れているのは、“死”そのものだと激しく告げる。それは“獣”を刈ることができる程の“死”。“死”の極点、“冠位”に座する存在だと。

 

【我が名、“ハサン・サッバーハ”。ありとあらゆる“生”に対して“死”をもたらす者───“冠位”を戴く暗殺者なり。】

 

ハサン・サッバーハ───それも、ただの暗殺者(アサシン)ではなく“冠位暗殺者(グランドアサシン)”ということは。ドクター…ソロモンと同等の位置に存在する“暗殺者(アサシン)”のサーヴァント。

 

「……あなたが、私とミラちゃんを呼んでいたのですか?」

 

【晩鐘と龍鈴は汝らをこの廟まで導いた。晩鐘は汝らを見定めていた───片や人類に産み出された悪でありながら人類を護らんとする龍を宿す悪なる者。片や古の悪に選ばれ悪となった存在でありながら人類を護らんとする龍を宿す善なる者。漆黒の王と純白の妃が抱えし矛盾を問いながら、晩鐘と龍鈴は警鐘を鳴らしていた。】

 

晩鐘、というのは恐らく鳴り響いていた鐘の音のこと。龍鈴、というのは恐らく鳴り響いていた鈴の音のこと。……それと、気になったのが“漆黒の王”。この人は私のことを“漆黒の王”と呼んだ。“純白の妃”というのは恐らくミラちゃんだ。白き龍───祖龍“ミラルーツ”と融合している人間(存在)だから。なら、消去法で私が“漆黒の王”ということになる。……でも、私だって女の子なんだし、言うなら“漆黒の妃”じゃないのかな…いや、妃───王様の奥様っていうほど貴族感とお姫様感ないけども。

 

「ここに私とリッカさんを呼んだ理由はなんでしょう?」

 

【無論、見定めるために他ならぬ。龍共よ、晩鐘がここに導いたのならば我は問わねばならぬ。そして、この廟に足を踏み入れた者は例外なく死ななければならぬ。】

 

「「……っ」」

 

強い圧力。この人からだけじゃなくて、後ろに控える龍───ポワズラビエからも感じる。圧力だけで精神が潰されそうになるのを、なんとか保つ。

 

【証を示すがいい。我と龍に、汝らの真実を。汝らの決意を。汝らが抱く未来への望み、未来を守護せんとする在り方を。我が総てを以て、汝らの総てを見届けん。】

 

………私達の“総て”を、か…

 

「……“総て”…いや、“真実”か。私達の過去を語ればいいのかな?嘘偽りなく、特に私は今まで話したことのあることよりももっと深くまで。」

 

……え?

 

「そうでもしないと納得してくれないでしょう?…冬祝龍、特にあなたは。」

 

「リリリィィィィィ……」

 

鈴のような咆哮。当然だ、とでも言うかのような強い眼差し。方向性は示された、か…

 

「リッカさんが先でいいよ?……私のは、少し長くなるかもしれないし。」

 

「変わらなくない…?同い年だよね?」

 

「いいからいいから。」

 

……んー…まぁ、いっか。とりあえず、話すとしたら立っているよりも正座かな。

 

「私は───藤丸リッカ。見届けてくださる方々、私のこれまでを聞いてくださいますか?」

 

【───良い。聞かせよ。】

 

「リィ…」

 

了承の言葉と同時にハサンさんとポワズラビエが座る。…あ、ミラちゃんも正座してる。

 

「ありがとうございます。では───」

 

父と母に道具として産み出されたこと。期待に応えようとして無意識に無理をし続けていたこと。

 

無理を、病魔を押し潰した結果本来の人としての機能を喪っていたこと。中学校時代に警告を感じるようになったこと。

 

総てがつまらなかった時代にリナリアやアリウム、ニキ、星羅、月詠先生と出逢ったこと。様々な感覚を取り戻したこと。

 

卒業してから視える世界が見違えるかのように広がったこと。ニキと星羅が行方不明になり、リナリアとアリウムが亡くなってしまったこと。それで暫くの間不安定になったこと。

 

リナリア達の導きでカルデアに来たこと。レフ・ライノールの策略でカルデアのシステムが瓦解したこと。

 

冬木で人の言葉を喋る不思議な猫ちゃんを見つけたこと。ルーパスちゃんやリューネちゃん、ミラちゃん達といった英霊として見ても規格外な“人間”と出会ったこと。ジュリィさんとミラちゃんにマリーを助けてもらったこと。ミラちゃんに時間を稼いでもらったこと。

 

フランスで預言書が目覚めて炎の精霊であるレンポくんと出会ったこと。ルーパスちゃんとリューネちゃんの息ぴったりな戦いを見たこと。ミラちゃん単体でも戦闘能力が凄く高かったこと。

 

ローマで森の精霊であるミエリちゃんと出会ったこと。マリーの固有結界の力強さに驚いたこと。アルの途轍もなく強大な心意に気圧されたこと。

 

大海原で氷の精霊であるネアキちゃんと出会ったこと。アリウムを思い出させてくれた大海賊と縁を結べたこと。“死”に対して全力疾走したこと。

 

ロンドンでルーパスちゃんとヴァルハザクの一度目の離別を見届けたこと。雷の精霊であるウルさんと出会ったこと。預言書の主である私は人類悪であると知ったことと。血は繋がらぬ心の母を得たこと。“母の怒り”を垣間見たこと。

 

アメリカでクーの全力を見たこと。死者を愚弄するような魔術に激怒したこと。リューネちゃんの歌に見惚れたこと。香月さん達の規格外さに驚いたこと。そしてそれ以上にミラちゃんとアルの神々しさに驚いたこと。

 

このエルサレムの地で、お兄ちゃんに怒りながらも呆れたこと。間違った円卓を割ることを再び決意したこと。欠けた太陽で預言書によって確約された滅びが近いことを知ったこと。

 

それから───

 

───童話。自らの定義(誰かのための物語)を捨て、“あなただけの物語になる”とまで言ってくれた優しい彼女。私が好きな、1人の女の子。…本人の本質では無性らしいけど、女の子でいいと思う。

 

彼女や正当なる復讐者、鋼鉄の天使に夢の人形───不思議なパーティで地獄を廻り、最奥にて私から産まれた人類悪を打破したこと。

 

未来の私が警告と教導を兼ねて私の前に姿を現したこと。まだ本気を出してなかっただろうけれど、なんとか打破して預言書での戦い方の基礎を学んだこと。

 

この旅路はまだ序盤に過ぎず、更に長く続くと思われること───

 

……結構、長くなったけど。今までの私を、喋り尽くした…気がする。

 

「私のこれまでは、これで以上です。」

 

【……藤丸リッカ。汝の真実、しかと受け止めた。決意は後程聞こう。…】

 

「リィィィィィ……」

 

ハサンさんとポワズラビエの視線がミラちゃんに向く。

 

「…次は私、か。少し長くなるけど、いいです?」

 

【良い。汝の真実、我が前に示せ。】

 

「リィ…」

 

「なら───遠慮なく、全部話すよ。」

 

姿勢を正して、深呼吸。目を瞑った後に一瞬どこか遠くを見る。

 

「───私の名前は“ミラ・ルーティア・シュレイド”。古に、まだ純粋な人間であった頃に名乗りし名前は“ミルティ・スティア・シュレイド”───今から話すのは私の始まり。」

 

歌うかのように、ミラちゃんは話し始める。……正座、辛くないのかな。




裁「誤解ないように言うけど当時の私って死霊魔術が嫌いなわけじゃないからね?」

あれ、そうなの?

裁「サーヴァント召喚自体が一種の死霊魔術みたいなものだし、そのマスターが死霊魔術が嫌いって言っちゃダメでしょ……ただただ本当に“支配する”、“利用する”、“使い潰す”といった腐りきった魂胆が見えてたのが嫌だったの。」


お知らせ↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=289109&uid=316165

運命の選択 聖都の正門と獅子王の裁き

  • どちらも原作通りにする
  • 聖都の正門への対処のみ原作通り
  • 獅子王の裁きへの対処のみ原作通り
  • どちらも原作通りにしない
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