狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い   作:Luly

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そういえばリカ。“心霊契礎石”って?

裁「あぁ、それ?えーっと…ミラちゃんの解説によれば“心霊契石としての正常な機能を持たない、こっちの世界で言えば鉄屑みたいなもの。普通の心霊契石と違ってリングコネクティアに加工できなくて、更に扱いが非常に難しい召喚触媒。一度使えば砕けて消えるから一時的な簡易契約に使われるもの”…って。」

はぇ……

裁「ポワズラビエさんが“汝ならば問題ない”って言ったのは“ミラ・ルーティア・シュレイドなら心霊契礎石であっても正常に召喚を実行できる”ってことだね。」


第330話 休息決定と沸いた疑問

「それで……西の村のハサンさん……百貌のハサンさんには協力をお願いすることができたんだ。」

 

私は西の村から帰ってきたミラちゃんから報告を受けていた。私の隣には呪腕さんもいる。

 

「うん、出来たんだけど……」

 

「けど?」

 

「……なんか怯えられてたんだよね。それのお陰もあってすぐに交渉は終わったよ。」

 

怯えられてた……?

 

「呪腕さん、原因とか分かる?」

 

「むぅ……恐らくは初代様の気でしょうな。リッカ殿の所有する…すとーる、でしたかな。それほどではありませぬがミラ殿も少なからず初代様の気を纏っていらっしゃる。我等山の翁、初代様の裁定には逆らえませぬ故……」

 

な、なるほど……

 

「とりあえず西の村の座標は分かったし、もしもまた襲われるなら即座に助けに行ける。ポワズラビエの言ってた砦も大体把握した。…それで、問題は……」

 

ミラちゃんが一緒に帰ってきたルーパスちゃんの方を向く。

 

「……さっきの彗星と龍閃…恐らく傀氣脈動状態の気にも当てられてルーパスさんとリューネさんがちょっとね。」

 

「ダウンしちゃったかぁ…」

 

「こればかりは慣れに近いから。一撃殲滅を目的にかなり強力な強化魔法使ってたのも原因だろうけど。…というか多分それが原因だけど。」

 

あ、あはは……

 

「だから私達が砦の方に行くのはちょっと無理かな……ごめんね、リッカさん。」

 

「ミラちゃん達も休んだ方がいいだろうしそれはいいと思うよ。ゆっくり休んで?」

 

ミラちゃん達、気づかないところで結構動いてるもんね。

 

「…そう?なら、お言葉に甘えて。でも、“劇毒の如き毒を操る者”……棘竜“エスピナス”の通常種ならともかく辿異種がいる可能性も十分にあるからその時は迷わず呼んで…ううん、辿異種がいた時点で呼んで欲しい。今のリッカさん達じゃ辿異種の相手は絶対に無理だから。」

 

そのミラちゃんの必死な表情に頷く。…やっぱり、少し圧強めな話し方だけど根本が優しいんだよね、ミラちゃんって。

 

「……あ、そうだ。さっきルーパスさんに“私に出来ることだったらなんでも言うこと聞く”って言われたんだけど何すればいいかな。」

 

「え?ええと……」

 

それってR18系に派生することが多いはずなんだけど……ミラちゃんはそういうの興味ないと思うし…うーんと……

 

「……素直に看病させてもらったら?ルーパスちゃんって少しの状態不調くらいなら特に気にせずに動き続けるタイプだと思うから。」

 

「……あぁ…なるほど。……分かった、そうする。」

 

ミラちゃんも何となくそんな気がしてたっぽい?

 

「……そういえばミラちゃんって看病…というか治療とかできるの?獣魔に対してじゃなくて人間に。」

 

「うん?できるよ?“超一流の召喚術師は一流以上の獣魔医師かつ一流以上の薬師であり、一流以上の治癒術師かつ二流以上の対人医師でなければならない”、だからね。これ、自分で言うのもなんだけど…私これでも割とトップクラスだし、その辺りは習得済みだよ。」

 

わぁ……って

 

「対人医師の要求は二流なんだ?」

 

「あくまで召喚術師の主要治療対象は自らの契約獣魔だからね。そもそも治癒魔法で基本はどうにかなるから物理的な対人医術はあまり重要視されてないの。」

 

あぁ、なるほど……

 

「“私の短い時間で出来ることを”───それ故に得られる知識は片っ端から学んでたからねー。結果現在になってるわけだけど。」

 

そう呟いたあと何かに気がついたようにミラちゃんは自分の髪を見た。

 

「……あ、傀異克服状態解除しなきゃね。ファルのも。…ちゃんと傀異毒抜かないと。術式を介して狂竜化、極限状態化、獰猛化、傀異化、傀異克服したならちゃんと正常まで治せるのは利点だけどやっぱりあまりやりたくないねー…」

 

「え………治せるの!?ロンドンだと狂竜化治せない可能性あるって言ってなかったっけ!?」

 

私の言葉にキョトンとした表情で私の方を向く。

 

「?もちろん治せるよ?でも、それはあくまで自分の術式を介して個体異常状態にした場合。自然に……っていうのは少し違うか……自分の術式以外で個体異常状態にされた場合は治すのが難しいの。ただ自分の術式を使ったとしてもその個体異常状態の程度や術者の力量によっては治せないんだけど。」

 

そして、とミラちゃんは付け加える。

 

「個体異常状態化に限らず原種化、亜種化、希少種化、辿異種化、特殊種化、特殊個体化、二つ名個体化、ヌシ化…等々、“外見や能力”を変化させる術式なんかも同じように術者と対象の命を削る。“本来規定された姿”をねじ曲げて姿を変えようとしてるんだから当然と言えば当然。……“契約獣魔に特殊な負荷をかけるのならば契約術者も同じ負荷を背負うが当然。もしもその負荷を背負えないならば、そんな契約術者は死んでしまえ。身の程を弁えぬ術では自らの命すらも潰えるが定めである故に”───術者の力量が足りなければ当然術者は死ぬ。また、獣魔の力が足りなければ獣魔が死ぬ。そして、術者が途中で死んだ場合獣魔が生き残る確率は低い。…ないわけじゃないけど、低い。そんな術式だから、使う人はあまりいない。」

 

「なるほど……」

 

「……さ、長く話しすぎちゃったかな。私はルーパスさんの看病してるから砦の方は任せたよ。」

 

ミラちゃんの言葉に頷いて呪腕さんと一緒にお兄ちゃんのところに戻る。

 

「…いやはや、ミラ殿もかなり厳しい世界に生きておられたようですな…」

 

「…どう、なんでしょうね。暮らすだけであれば優しい世界なのかもしれませんし。」

 

……少なくとも、ルーパスちゃん達の世界よりは安全だと思う。対立ではなく共存を基本とするミラちゃん達の世界は、人とモンスターの争いが絶えないルーパスちゃん達の世界よりも…多分。人と人の争いはともかくとして。どんな世界にでもそれはあるだろうか…ら……

 

「…人と人の争い……」

 

……“どんな世界にでも人と人の争い(それ)はある”……か。

 

「お、戻ってきたか。こっちは準備終わってるぞ。」

 

「……お兄ちゃん」

 

いつの間にかお兄ちゃんの準備しているところに着いていた。

 

「…ごめん、お兄ちゃん。少しアルと……あとドクターと話させてくれるかな。」

 

「ん?…まぁ、いいが。」

 

そう言ってお兄ちゃんはアルを呼んできてくれた。…通信もちゃんと立ち上げて、と。

 

〈はいはいこちらロマニ、どうかしたのかい?〉

 

「……ドクター。それと、アル。」

 

「はい?」

〈うん?〉

 

「……ゲーティアを知る2人に聞きたいの。ゲーティアが人間を不要と認識するなら…そう判断するなら。その判断材料って、なんなんだろう。」

 

〈「……」〉

 

その場に沈黙が落ちる。…唐突な疑問が、困らせているのだと思うけれど。

 

「……彼は…ゲーティアは私とミラさんに伝えました。悲劇など無意味だと。死のある不完全な生命体は無価値だと。…“価値のないものを捨てる”、単純な思考だったのかもしれません。判断材料としては悲劇、不幸、死…その辺りではないでしょうか。」

 

……悲劇、か…

 

〈……このところ、思うことがあるんだよね。ゲーティア…いや、七十二柱の魔神。…彼らって、酷く純粋なんじゃないだろうかって。それこそ何も知らない子供のように。善と悪の区別がうまくできなくて、必要なものと不要なものの区別もうまくできない。自らの本能のままに動く子供。人間の子供は力がなくて何もできないけど、ゲーティア達は違う。力があって動けるからこそ今の現状になっている。“人間は不要”という凝り固まった油のような頑固な汚れに支配され、それを修正する存在がいないからこそ間違ったまま突き進む。…ボクが修正することはできたんだろうけれどそれに気づかなかったから…今、こうなってしまっているんだろう。〉

 

「ドクター…」

 

〈“貴方は何も感じないのですか。この悲劇を正そうとは思わないのですか”───かつて、ゲーティアに言われた言葉だよ。ボクはこれに対して“特に何も。神は人を戒めるためのもので、王は人を整理するだけのものだからね。他人が悲しもうが己に実害はない。人間とは皆、そのように判断する生き物だ”と返した。…この解答が間違っていたとはボクも思ってないし、後悔もしていない。…後悔するとすれば、ゲーティア達の認識を聞いてボクとの認識の違いを擦り合わせれば、結果は変わっていたんじゃないかなって。その結果例え今より悪い方向に転じるとしても、良い方向に転じるとしても、何かしらに変化はあったんじゃないかって。〉

 

そこまで告げてからドクターが静かに息を吐いた。

 

〈ごめんね、話を戻そうか。ゲーティアが人間を不要と認識するならその判断材料は何かってことだよね?結論から言うと数多の悲劇と数多の死だ。“必ず死という結末を迎える”という“完全ではない”生命体、“完全ではない”存在であることに“完全である”存在のゲーティア達は疑問を抱いた。自らが完全であるのに不完全な存在もこの世界に在るのは何故だ、みたいな感じかな。最初は細やかであった疑問は嘆きに変わり、怒りに変わり、失望に変わり───果てには人類を滅ぼさんとする脅威として変貌したんだろう。それでも、それは“人理補正式ゲーティア”として“より良い人類史にしたい”、“より良い人類にしたい”の現れだったんだろう。…ギルが言っていたように人類悪とは人類愛であり、愛なければ人類悪となり得ないのなら……ね。〉

 

数多の悲劇と数多の死……か。

 

〈…もしも〉

 

「?」

 

〈もしもゲーティアが不要と断じた“悲劇”が。不要と断じた“死”が。それが“寿命によるもの”でないとしたら。つまりは人間同士の争い故に起こっていたものだとしたら……原因はボクら人間にある、のだろうね。…リッカちゃんが気になっていたのは多分、こういうことだよね?〉

 

「え……なんで…?」

 

ドクターの告げたそれは私が本当に気になっていたことだった。私の思考を読んだかのように告げたドクターは小さく笑った。

 

〈ボクもちょっとだけ考えたことがあるからね。…人類悪を使役する主は同じことを考えるのかなぁ。〉

 

…ドクターはソロモンとしてゲーティアを。私は藤丸リッカとして預言書を。“人類悪を使役する主である”という条件は共通する。…けど、それが理由ではないと思う。多分、ゲーティアじゃなくて別の人類悪だったらそんなことは考えなかったと思うから。

 

〈…さ、あまり長く話すのもだし。そろそろ砦に向かった方がいいんじゃないかな?〉

 

「あ……そうだよね、ごめん…」

 

〈こっちこそ厄介者を扱うように言ってごめんね。…六花が準備を全部終えたみたいだからすぐに行けるだろう。〉

 

……お兄ちゃん、待たせてホンットごめん……そう思いながらドクターとの通信を閉じた。

 

「………え?星乃さん、どういうことですか?」

 

「アル?」

 

アルの呟きに私がアルの方を向くと、アルが困惑した表情で口を開いた。

 

「…今、星乃さんが……“世界に平和なんてあり得ない。人が人である以上、知的生命体が知的生命体である以上完全な平和なんて訪れない”…と。…それから、“とある見方によれば、ゲーティアは善にもなりうると思う”…と。」

 

……平和が、あり得ない…?




裁「これ、私当時あまりよく理解できなかったなぁ…」

分かりにくいだろうからね。…星乃も星乃で自分(人間)の持論でしかないから“私の結論が絶対に正しい”とは思ってないらしいけど。
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