狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
裁「そういえばギルは……?」
寝込んでる
こんにちは、観測者です。今回も引き続き、施設紹介行きましょ~
加工場
加工場。編纂者が新大陸の加工場を元にして作ってもらったとかなんとか。実は、加工場としての鍛治用のたたらとか以外にも色々併設されてる。今日も編纂者とルーパス・フェルト、そしてスピリスがいるね。
「……どう、ですか?相棒、オトモさん。」
「うん……新大陸に無かった武器種なのによくここまで作れるね。」
「この世界に来てからなんですけど…見たことのなかった武器でも、一度構造を調べれば作れるようになってるんです。」
「へぇ…どう、スピリス?」
「……問題ないですにゃ。ただ……」
いいにくそうにしてる?
「ただ?」
「…結構忙しかったのもあってすっかり忘れていましたがにゃ……私達の世界ってこの世界と少なくとも一度は繋がっていたんですにゃね……」
「「……あー……」」
編纂者とルーパス・フェルトが納得したような声を発した。まぁ、そうだよね。だって今のスピリスの装備、そのまんま“ジャンヌ・ダルク”だし……
「そういえばそうだね。私もアルトリアの剣と姿形が同じ“約束された勝利の剣”とか持ってたの思い出した。今はもう無いけど。」
「ほとんどベルナ村に置いてきたのと、最後に着てた武器防具は新大陸に来たときに壊れたにゃね。」
「そうだったんですか……あの、相棒?素材があれば作れるとは思いますが……」
その言葉にルーパス・フェルトが首を横に振った。
「いいの。あまりリューネに迷惑かけたくないし…自分の素材は自分で取る、が私の信念だから。」
「そう、ですか…」
「…ね、ジュリィ。食事…お願いしていいかな?」
「いいですけど……何か行くんですか?」
「この後、リューネと一緒に第二シミュレーションルームでネロミェールと戦うことになってるの。お願いしてもいい?」
ネロミェール…確か溟龍、だっけ?
「…分かりました。ご注文は?」
「ん~…野菜定食でお願い。」
「分かりました。とりあえず、食事場の方へ移動しましょうか。新鮮食材いくつかあるので使っておきますね~」
「ありがと、ジュリィ。」
そう言って二人は外に出る扉とは別の扉から出ていった。……次、行こうか。
食堂
食堂。さっき編纂者が言ってた食事場とは別の場所。ここはエミヤとタマモキャットが取り仕切ってるよ。
「…アルトリア、これでいいか。」
「はい。ありがとうございます、エミヤ。」
「やれやれ、君も真名呼びには慣れたようだね。」
「仕方ないでしょう、このカルデアには何騎ものサーヴァントがいるのです。クラス呼びでは誰が誰か分からなくなります。…ただ、あなたをエミヤと呼ぶのは少し変な感じがしますが。そうでしょう、シロウ。」
「…私は───いや、俺はお前のことをずっとセイバーと呼んでいたからな。それにしても……」
あ、エミヤがアルトリアの手元のものを見た。
「……それ、料理としては雑な部類なんだけど本当にそれでいいのか?いや、料理ですらないよな…“焼き芋”って…」
「いいのです。雑は雑ですがサー・ガヴェインのマッシュポテト程ではありません。ついでに言うと、あの英雄王を見ていると違和感で胸焼けというかなんというか…少しおかしくなりそうで……」
「……それには俺も同意する。いくら可能性存在だからって言っても限度があるだろ…」
……噂をすれば……
「贋作者!」
「のわっ!?」
影がさす、ってね。
「……どうした、英雄王。」
「貴様のアサリの味噌汁とか言うものを寄越せ!」
「……承知した。ホント何なんだこの英雄王……しかもよりにもよってアサリか…在庫あったか……?」
そうボヤキながらエミヤは厨房の方へと戻っていった。
「…普段金箔をかけて食べるようなあなたが日本のお味噌汁、ですか。それにあなた、エミヤのことは嫌ってましたよね?どういう気紛れなんです?」
「む?セイバー…いや、アルトリアか。なに、此度の我は機嫌がよく、様々なことを試しているだけよ。言ったであろう、我にも可能性というものは存在すると。贋作者そのものは気にくわんが、奴の力は多少評価しているのでな。慢心していたとはいえ、英霊ならざる人の身であり、贋作者のマスターであった小娘よりも未熟な魔術師であるというのにも関わらず、英雄王たる我と一対一で戦い勝つことができるのなど、あ奴くらいであろうよ。」
「…意外ですね。あの時はシロウの方が強いと認めたと聞きましたが、今でもそれは認めているとは。」
「勘違いするな、戯け。今は我の方が強い。慢心などせぬからな。だが、あの投影なる魔術を究極的に突き詰め続ければ……磨き続ければ。いずれ我と対等とは行かずともそこまでの差は無くなるであろうな。ところで───」
英雄王がアルトリアを見た。正確には、その手元。
「アルトリア。貴様が食しているそれは一体なんだ?」
「これ…ですか?“焼き芋”なるものだそうですが。」
「ほぅ?贋作者!」
「なんだ、英雄王!」
厨房の方からエミヤの声が飛ぶ。
「追加だ!焼き芋なるものも寄越せ!」
「焼き芋───あぁもう、ホントあんた何なんだよ!!」
「あ、エミヤ。私もお願いします。」
「分かったから待て、処理が追い付かん!英雄王、覚えてろ……!」
それから少しして、エミヤが厨房から出てきた。なんか、ビンを持ってきてるけど…
「味噌汁はもう少しかかる。その前に、英雄王。」
「む?」
エミヤが英雄王の前にビンを一本置いた。
「飲め。」
「……これはなんだ?」
「ルーパス達の世界の飲み物らしいが。店売りもされているらしい。」
「ほう?よい、味を見てやろうではないか。」
「エミヤ、私にもくださいますか?」
「あぁ、構わない。」
エミヤがアルトリアの前にビンを置くと、二人とも一気にそのビンの中身を煽った。
「「……──────!?」」
変化。そのあと、英雄王とアルトリアが噎せた。
「ゲホッ、ゲホッ……!貴様何を飲ませた贋作者ァ!!」
「“ホットドリンク”。寒冷地に行くときは持っていってたらしい。」
「寒冷地、だと……!?それにしてもこの辛さ、何が原料だ!!」
「すみません、エミヤ…今回ばかりは英雄王と同意見です。これの材料は一体……?」
「材料、か。トウガラシ100%らしい。」
………
「「………」」
「………」
「「…は?」」
「トウガラシ100%らしいぞ、これ。ルーパス達は10分毎にこれを飲んでたんだとか。」
「「は??」」
「付け加えると、ルーパスが偶然見つけた“ドストウガラシ”って言うのをホットドリンクの原料にした“ホットドリンクグレート”っていうのもあるらしい。」
うわぁ……
「英雄王でもそうなるということは分かったことだ、協力感謝する。」
そう言って厨房に戻り、ケーキを2ホール持って戻ってきた。
「やはりというかなんというか、ハンター以外ではホットドリンクが苦手な者も多かったらしい。それ故に、辛さ軽減の薬などというものもあるそうだ。このケーキにはその薬が入っている、何も言わずに協力させた詫び、というわけではないが自由に食べるといい。」
「ふん、まめなことよ。……しかし辛いな…言峰の麻婆ほどではないが。絶対に作るでないぞ、贋作者。」
「あんな外道麻婆作らねぇよ…」
なんか、お疲れ様…?次行こ、次。
第一シミュレーションルーム
ここは第一シミュレーションルーム。基本的には人間スタッフ達の鍛練場になってるの。英雄王とミラ・ルーティア・シュレイドの協力で、本当に様々なモンスターが仮想の敵として出るようになってる。内装を立体物質転写で変えることもできて、今は廃墟になってる。
「おぉぉぉぉぉ!!」
「……甘いよ!」
「…おわぁっ!?」
その廃墟の中心部にいる二つの人影。ミラ・ルーティア・シュレイドとジングル・アベル・ムニエル。召喚されてるのは、白兎獣“ウルクスス”。今みたいにサーヴァント対人間で行う鍛練もあるらしいの。今現時点でそれを担当してるのはミラ・ルーティア・シュレイドとマルタ。仮想の敵はあくまでも仮想。実際に敵がどんな動きをしてくるかは分からない、っていうことから実際にサーヴァントと戦うことがあるらしいの。とはいえ、英霊と人間とではそのスペックに差があるから英霊側はなんかリミッターかけてるらしいけど。
「うぅ…やっぱり英霊と人間の差なのか……こんな小さな子にも勝てないって……」
「英霊じゃないんだけど……まぁ、私は召喚師だから…」
関係あるのかな、職業って……次、行こうか
第二シミュレーションルーム
第二シミュレーションルーム。モンスターハンターシリーズの世界に出てくるモンスター達のみが相手になる場所。基本的にはハンター達しか使わないかな?
「……せぇぃっ!」
今もリューネ・メリスが戦ってる。相手は祖龍“ミラボレアス”───通称“ミラルーツ”。
「ガァァァァァァァ!」
「おっと…」
笛……笛?を担いでいるリューネ・メリスが小さく声を漏らしたかと思うと、リューネ・メリスが前転。直後に元々いた場所に雷撃が落ちる。
「やれやれ…ルルがいるとはいえ、やはりミラルーツにソロは疲れるか。」
〈……あの、リューネさん。聞いていいですか?〉
今ここのシステムを管制してたAI、アドミニストレータが声をかけた。
「なんだい?できれば手短に頼む。」
〈えっと、その……〉
「?」
〈リューネさんが持っているそれ……狩猟笛、なんですか?〉
「そうだが?」
〈……何処からどう見ても魔法の杖、魔法少女のステッキにしか見えないんですが〉
創り手からある程度情報貰ってるから私は分かるけど、初めてみたら困惑するよね……えっと、確か銘は……
「“マギアチャーム”のことか。仕方ないだろう、女性ハンター達の強い要望を受けてデザインされ、作られたのがこの武器だ。旧式だから龍属性だし、ミラルーツにはもってこいだ。」
〈旧式……ですか?〉
「防具も武器も、時代や場所によって形や性能が変化していく。マギアチャームの場合、龍属性から氷属性に、そして使用可能な旋律が変わる、という具合にね。この形式のマギアチャームの場合、標準旋律の他に緑と黄色の旋律。故に自分強化、体力回復【小】、回復速度【小】、精霊王の加護、雷属性防御強化【大】、属性攻撃力強化、高周波が演奏できるんだ。雷属性耐性強化に属性攻撃力強化など、雷属性を用い、龍属性に弱いミラルーツに担いで行けと言わんばかりだ。」
〈そ、そうなんですか……〉
「───まぁ、武器自体の攻撃力が低いから、あまり担ごうと言うものはいなかったが。」
あらら……そういえば、創り手がtwitterの方に出した検証でマギアチャームを創り手が使ってたね。
「この武器の説明聞くかい?」
〈説明なんてあるんですか?〉
「武器や防具の説明を考える者達がいるのさ。武器や防具の形を考える成形師…デザイナー。その設計を元に組み立てる加工師…マイスター。そしてその作り出した物品の説明を考える解説師…コメンター。さらにその武器や防具を使う狩人…ハンター、もしくは乗り手…ライダー。武器や防具だけでも4つの職業が関わるんだ。」
解説しながらミラルーツの攻撃を回避し、的確に弱点を殴る。魔法のステッキで。すごく生き生きとしてるよ…
「そうなんですか…マギアチャームの説明は何なんですか?」
「ふむ…“女性ハンターたちの熱い要望で作られたという狩猟笛。狩り場に響け、乙女チックサウンド!”…だったな。」
〈………わぁ〉
「似合わない、とか言わないでくれよ───っとこれで終わりだ!」
マギアチャームを振り上げ、頭にぶつけると同時に跳躍。マギアチャームとミラルーツの頭を繋ぐ、青い糸。
「鉄蟲糸技───“跳躍震打”!」
「ァァゥッ!───アァァァァ……」
糸を伝って流れた振動が、ミラルーツの活動を止めた。
「討伐完了、っと。」
〈お疲れ様です。60秒後にシミュレーションシステムは自動終了しますので、しばらくお待ちください。〉
「あぁ、分かった。ありがとう、アドミス殿。」
そう言った後、リューネ・メリスはミラルーツの身体を剥ぎ取ってた。
「……お、“祖龍の輝玉”が出た」
………はい?
じゃあ、今回はこの辺りで。本当は第三シミュレーションルームも解説しないとなんだけど……ちょっと、一騒動?あるみたいで。
ばいば~い
リューネが使ったのはオリジナルの鉄蟲糸技です。彼女の身体能力ならたぶん跳躍しながら“震打”使えるので。
裁「そっか…」