狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
裁「前書き間に合ってないけどね」
第三シミュレーションルーム……私は、スタッフさんやサーヴァントさん達の鍛練の様子を見に、現在4つ存在するシミュレーションルームを回ってる。第三シミュレーションルームはサーヴァントさん達用。
……その第三シミュレーションルームで、私とジャルタさんは二人っきりになっていた。
「……少し、お話でもする?」
「……マスターが、そう言うなら。」
私はその言葉に苦笑してから、ジャルタさんと一緒にシミュレーションルームに張ってある結界の外に出る。シミュレーションルームは三重構造になっていて、まず最初に物質壁。次に、対物理衝撃結界。最後に、対術式衝撃結界。物理障壁と物質壁の間に5mくらいの空間があるから、そこが休憩所みたいな状態になってる。…というか、実際に休憩所って呼ばれてる。結界が動くのはシステム起動中だけだって聞いたことあるけど……思ったんだけど、お兄ちゃんどういうプログラム組んだんだろう。
閑話休題。
私とジャルタさんは休憩所に設置されている椅子に座り、備え付けてある急須からコップへとお茶を注ぐ。…少し時間経ってるから冷えてるけど。
「はい。」
「……ありがとうございます」
そのまま私達はお茶を飲む。……玉露だ、これ。実は何となくで分かるんだよね、私。
「……マスター」
「うん…?」
「……怒ってますか?」
「……怒ってるか、って聞かれると怒ってないんだろうね。強くなりたい、っていう気持ちは分かるから。……どうなんだろう。私は、怒っているのかな?」
実は、あまり“怒り”っていうものを感じたことがないんだよね。
「……私も、分かるよ。」
「え?」
「“強くなりたい”。その気持ちは痛いほど分かる。現に今、私は無力だもん。預言書の主なのに、預言書の力を使うことができない。私は預言書を知っているのに。私が使えることで、少しでも負担を減らせるかもしれないのに………そう考えると、私は強くなりたいと思う。」
「…マスター」
「マスターはサーヴァントに戦闘を任せればいい───そんな常識は分かってる。エミヤさんや、ドクター達にそう教えられたからね。…でも、それは嫌だ。私は、サーヴァント達と共に…一緒に、戦いたい。ただ見ているだけなのは、嫌なの。」
「……」
「主人と従者。だけど、対等でありたい───それが、私のサーヴァントさん達に対する想い。私は、主人だからといって従者を自分の下だと…自分の“物”だなんて、見たくない。」
これは私の本心。それが人の形をしていなくとも、私に従ってくれる存在を物だとは見たくない。
「……欲を言えばね?私は、大切な人を護りたいの。何かを護るためには何かを害する力が必要───そんなのは分かってる。そんなの、もう何年か前から覚悟してる。その上で言ってるんだ───誰かを護るための力がほしいって。」
「……そうですか」
「ジャルタさん。貴女はどうして力がほしいの?どうしてそんなに焦っているの?」
聞きたかったのは、その理由。ジャルタさんを召喚したのは一昨日。お兄ちゃんに報告しに来たアドミスさんによれば、召喚された後から消灯中の時間以外ずっとこの第三シミュレーションルームに籠りっぱなしらしい。それだけじゃなくて、部屋にいるときも休息をとろうとせずに異空間内で戦い続けてるらしい。今さっきも、今朝見かけたときも───その表情に、焦りが見えた。
「…一昨日」
「一昨日?」
「私は、マスターに言いました。“近日中に貴女の力になりましょう”、と。そのために、私はこの部屋に来て修練を積んでいます。……2日経った今、私の現状は。たかがワイバーン9匹にすら劣るという状態です。」
「……うん」
「それでは、約束を果たせません。マスターの力になることが、できません。霊基を磨け───それが、あの金ぴかに言われたこと。約束も果たせず、力もなければ───私がここにいる意味はないでしょう?復讐者というのに、その復讐の力も使えないようでは。」
「……私の力に、か……」
「えぇ。力の足りない私が、心底悔しいのです。」
ふと、思う。
「……ねぇ、ジャルタさん。」
「はい……?」
「“他者の力になる”、って…どういうことだと思う?」
「他者の力になる……ですか?他者の障害を取り除くことでは…?」
その答えに、私は少しだけ首をかしげる。
「半分正解で、半分不正解。」
「半分…ですか?」
「そう、半分。“他者の障害を取り除く”。これも、確かに正解なの。例えば、障害となる敵を倒す、道を塞ぐ岩を破壊する。それだけで、他者の力になっていることには変わりない。けれど、それだけが正解じゃない。」
「というと?」
そう聞いてくるジャルタさんに、微笑みかける。
「リューネちゃんが言ってたんだけどね。」
「笛の狩人が……?」
「“何かを守るために必要なのは物質的な力のみにあらず。”…私も、そう思う。守るために必要なのは、筋力や魔力、霊力妖力神力といった物質的な───現実に影響を直接的に起こすような力だけじゃない。概念的な力───現実に直接的な影響を起こさない、でもそれは確かに守るために必要な力。その根底は、他者の力になるというのはどういうことか、というものと共通するの。それは───」
その、答えは───
「───“他者の支えになる”、ということ。」
「───他者の、支え?」
「うん。“他者の支えになる”。“他者の障害を取り除く”。偶然にもこの二つは、“戦うというのはどういう事か”っていうのと“守るために必要なもの”に共通する。そして、この答えが示してるのは、肉体と精神なの。」
「肉体と、精神……」
「“他者の支えになる”は精神を救う。“他者の障害を取り除く”は肉体を救う。どちらか片方でも出来ていれば、それは“他者の力になる”事なんじゃないかな。」
「───」
私はジャルタさんの手を握る。
「復讐者だからって、復讐しか出来ないとは限らない。狂戦士だからって、戦うことしか出来ないとは限らない。常識に囚われちゃいけないよ。貴女は貴女の守るために必要な力を見つけて───貴女が思う戦いをすればいい。戦うといっても、物質的な力を振るうだけじゃないんだから。」
「───戦うといっても、物質的な力を振るうだけじゃない…」
「……現に私なんて、サーヴァントさん達をよく見て、補助し、支えるのが私の戦いだからね。…まだ私は弱いから。アマデウスさんも、音楽を弾くのが戦いだから…ね。」
「……そう、ですか」
「強くなりたくても、焦らないで。…強くなりたいっていうなら…一緒に強くなろう。何かを守るための力を、自分の戦いを。一緒に、ゆっくりと探していこう?」
「……はい。ありがとうございます、マスター。」
そのジャルタさんが浮かべた表情は、何か吹っ切れたような表情だった。
「…うん。もう大丈夫だね。ちゃんと休んでね?休むことも戦いだし、修練なんだから。」
「はい。」
「それじゃあ、今日はこれでおしまい。部屋に戻ろっか。」
「…マスターは、先に行ってください。私は、少し考えを纏めようと思います。」
「ん。それじゃあ、先に失礼するね。」
そう言って、私はシミュレーションルームの扉の前に立った。
「マスター。」
「ん?」
私はその声に振り向く。そこには、晴れやかな笑みを浮かべるジャルタさんの姿があった。
「…貴女の力になります。絶対に。どれだけ時間がかかろうと、私は私の戦いを見つけてみせます。」
「……うん。期待してるね、ジャルタさん。」
そう言って、私はシミュレーションルームから出た。
「……終わったの?」
シミュレーションルームのすぐ外にいたのは、ナーちゃん…ナーサリー・ライム。すぐに私は頷く。
「…うん。ジャルタさんは、もう大丈夫。」
「よかったわ。とっても心配していたの。」
「…そっか。」
私はそのままナーちゃんと一緒に食堂の方へと向かった。
さて、次回はどうなりますかね……
裁「そろそろ第二特異点入るんでしょ?」
幕間も後1話かな……