狩人達と魔術師達の運命、それからあらゆる奇跡の出会い 作:Luly
裁「Excelは?」
私のPC、office使えない……
所長室。
オルガマリー・アニムスフィアの自室でもあるその場所に、2つの人影があった。
「調子はどうですか、オルガマリーさん。」
1人は編纂者───ジュリィ・セルティアル・ソルドミネ。新大陸調査団の編纂者の1人であり、ルーパス・フェルトの相棒にあたるキャスターとハンターの複合クラスを持つサーヴァント。
「……調子がいい……と言いたいところだけれど、そうは言えないわ。紙の身体というのも不便なものね。生きているだけいいのだけれど。」
もう1人は当然、オルガマリー・アニムスフィア。編纂者の宝具によって命を救われた、本来ならば既にこの場に存在しないはずの者。
「あはは…すみません。私の宝具の本質は“記録”と“伝達”ですし、肉体の無い魂に肉体を持たせるには紙を媒体にするしかなかったんです。」
「怒ってなんかないわよ。レイシフトは出来ないけれど、リッカ達を支えられるのならいいわ。」
「擬似的に転送することはできそうですけどね。…やっぱり、紙の肉体は不便ですか?」
「生活に支障はないけれど……やっぱりお風呂に入りたいわ。といっても、どうにもならないのでしょうけれど……」
そう言ってオルガマリー・アニムスフィアがため息をつく。
「……では、新生してみます?」
「……新生?」
編纂者は頷いて、アイテムポーチから金色のカップを取り出した。
「……それは…聖杯」
「英雄王から預かったものです。預かった、というか貰ったというか…“貴様が使いたいように使うがいい”って言われたものです。」
「……そう。」
「オルガマリーさん。そんな状態にした私が言うのもおかしいと思いますが言わせていただきます。この聖杯を使って、新生───というか、新たな身体を得ませんか?」
「…できるの?死者蘇生は出来ないんじゃ……」
「英雄王曰く、生きた魂があるならば聖杯を使用した肉体の再構築はできるらしいですよ。英霊の受肉と同じような状態なのだとか。」
「……いいの?」
その問いに、編纂者が首をかしげる。
「聖杯を…私に使って、いいの?仮にも私は貴女の使い魔なのに。」
オルガマリー・アニムスフィアが編纂者の使い魔。それは、編纂者の宝具とオルガマリー・アニムスフィアの関係が原因だ。
覚えている人もいるかもしれないが、オルガマリー・アニムスフィアという存在そのものは編纂者の持つ本の中にある。編纂者の持つ本を英霊の座とし、今ここにいるオルガマリー・アニムスフィアをサーヴァントと仮定すると、その本を持ち、オルガマリー・アニムスフィアを呼び出すことのできる編纂者はマスターのような立場にあるのだ。現にオルガマリー・アニムスフィアの肉体となっている紙を維持する魔力を保っているのは編纂者だ。サーヴァントのサーヴァント、と言うのもおかしい気はするが、ハンターのサーヴァントのクラススキルである、“自立魔力”が自分のマスターに負担をかけずにオルガマリー・アニムスフィアのマスターとなることが可能になっている。
閑話休題。
編纂者はそのオルガマリー・アニムスフィアの問いにすぐに頷いた。
「“オルガマリーさんの幸せを。”それが、今の私の願いですから。」
「そう……」
そう言って、オルガマリー・アニムスフィアが聖杯を受け取る。
「……どう願えばいいのかしら。」
「さぁ…生きていたい、とかで良いのではないでしょうか。でも、永遠に生きていたいとかはダメですよ?流石に。」
「流石にそれはやらないわよ……そうね。」
オルガマリー・アニムスフィアは少し考えてからその望みを言葉にした。
「───リッカやセリア、マシュやロマニ……皆と共に、これからも生きていたい。」
その望みが受け入れられたのか、金色の光がオルガマリー・アニムスフィアを包み込む。
「……暖かい魔力ね。」
「未だ私は魔力等がよく分かってませんが……凄い力を感じます。」
「キャスターのサーヴァントなのに魔力が分からない…どんな矛盾かしら。魔力を知らない人間をキャスターに当てはめるなんて、どんな考えを持ってるのかしらね、世界は…」
話しているうちに金色の光が収まり、オルガマリー・アニムスフィアの姿が現れた。
「……どうですか?」
「……魔力に違和感は感じないわ。ただ……少し視点が低くなったような……?」
「……?調べてみますか?」
「お願いしてもいいかしら。」
編纂者は頷き、自分の持つ本を開く。
「ん…と。オルガマリー・アニムスフィア……ありました。」
「…本当にその本どうなってるのよ」
「さぁ……?えっと……とりあえず、身長は以前と変わりませんね。」
「なら気のせいなのね…」
「魔術回路は魔力量の数値が跳ね上がってますね。」
「恐らく聖杯と一体化したからかしら。私の中に聖杯の魔力を感じるわ。」
「そうですか…後……は」
編纂者の言葉が不自然に止まった。
「どうしたの?」
「……肉体年齢が若返ってます」
「え?」
「20歳にまで肉体年齢が若返ってます。はい。」
「……調子がいいのはそれが理由かしら。でもどうして……」
「恐らくですが、リッカさんと“共に”生きていたいと願った影響かと。元々近かったのでしょうけれど、更に年齢を近くしたのでしょうね…」
「そういうこと……」
オルガマリー・アニムスフィアは立っているのが疲れたのか、近くにあった椅子に座った。
「……そういえば、魔力パスはどうなっているのかしら」
「オルガマリーさんとの繋がりを感じるのでまだ存在はするようです。必要ないならば切断しますが……?」
「…いいえ、残しておきましょう。いざというとき、何かに使えるかもしれないわ。」
「わかりました。それでは私は失礼しますね。」
「えぇ───本当に、ありがとう。ジュリィさん。」
「……お礼を言うならば英雄王とミラさんに。私はオルガマリーさんの魂を回収しただけですから。」
そう言って編纂者は所長室から出ていった。
「……ギルとミラさんに、か。それでも、ジュリィさんがいなければ私はここにいなかったはずよ。だから、ありがとう。別世界から訪れた編纂者───ジュリィ・セルティアル・ソルドミネ。」
その言葉は、誰にも聞かれることはなかった。
ということでオルガマリーさんは無事に肉体を得ました。この後、早速お風呂に入りに行ったようです。
裁「そっか…」
さて、次回から第二特異点……ですかね。