〈艦これ×FGO〉神機残響海戦 七大洋 ~天地人の狭間~   作:やみなべ

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キャスト:提督、電、神通、陽炎


「出来なければ死ぬ、ってなればそりゃやるでしょ」

「え? 私の訓練が、ですか?」

 

「その……一部の方からそのような声が上がっているのです」

 

「まぁ、初雪とかは隙あらば怠けようとするところがあるから、あんまり気にしなくてもいいとは思うんだけどね。ただ、“訓練中の神通は鬼”って声はチラホラ……」

 

「鬼!? ……いいえ、それでも私は…すみません」

 

「なにか、考えがある感じかな?」

 

「…………戦場は、実力があれば勝てる、生き残れるというモノではありません。訓練通りに動くことすら難しく、運に左右される要素も多いことは理解しています。ですが、それでも日々の訓練が生存率に直結することに変わりはありません。私は、一人でも多くの仲間を生きて帰してあげたいんです」

 

「それで、訓練教官を名乗り出たわけか……」

 

「……実際、神通さんが教官を担当するようになってから、被弾率や破損率は微減傾向にあるのです」

 

「うん、神通の気持ちはわかる。大方、自分が嫌われることでみんなが生き残れるなら…とか思ってるんでしょ」

 

「……………………はい。厳しく指導すれば、どうしてもそうなります。それを恐れて中途半端になるくらいなら、心を鬼にして臨む所存です」

 

「気持ちはわかる。みんなに帰ってきてほしいのは俺も同じだ、その意味で言えば神通には感謝しかない。とはいえ、君一人を嫌われ役にするのはなぁ……」

 

「提督がご存じでいらっしゃいますから。私は、それだけで十分報われます」

 

「ん~……よし、とりあえず明日の訓練に俺も参加してみようか」

 

「司令官がですか!?」

 

「で、ですが提督にはお仕事が……」

 

「幸い、大淀の教練も一先ず目途が立ったし、ある程度時間は捻出できるはずだよ」

 

「それは、今までカツカツだったのが少しマシになる、という程度なのです。本来なら、その分の時間を休息に当ててほしいのですが……まぁ、言っても聞かないのですよね」

 

「ごめん。まぁ、そろそろ身体を動かしたかったし、体調管理には気を付けるからさ」

 

「…………はぁ。言い出したら聞かないのは良く知っているのです。ですが、くれぐれも無理はしちゃだめなのですよ? あんまり度が過ぎるようだと……」

 

「過ぎるようだと?」

 

「雷ちゃんを解禁するのです」

 

「……気を付けます」

 

「そうしてほしいのです。司令官をダメにされても困りますし」

 

「無自覚に人をダメにしようとしてくるからなぁ、雷は」

 

 ・

 ・

 ・

 

「いやぁ、やっぱり身体が鈍ってるなぁ。まさか40kgの荷物担いで20km走っただけで起き上がれなくなるとは」

 

「あの、普通はそれを完走できるものなのでしょうか? いえ、できないことはないのでしょうが、提督は確か昨日までずっと机にかじりついていたはずでは?」

 

「え? だって、みんなは倍以上の荷物背負ってたじゃん」

 

「いや、私らは艦娘だし。っていうか、人間なのに私らについてこれた司令がオカシイ」

 

「足腰は基本だよ、とりあえず走れれば何とかなる! 無理でも走る! それが生き残る基本じゃないかなぁ」

 

「なに、提督って実は脳筋なの?」

 

「スパルタになった覚えはないんだけど……実際問題、足止めたら死ぬし」

 

「スパルタ?」

 

「提督は紛争地域にでも行かれたことがあるのでしょうか?」

 

「それにさ、その後さらに各種筋トレを100回10セットやって、どうして1分休憩しただけでケロッとしてるわけ?」

 

「いつまでも倒れてたらそれこそ死ぬじゃん」

 

(なんか、滅茶苦茶実感籠ってるんだけど……)

 

「とりあえず、半日やってみた感想としては…………別に言うほどきつくなくない?」

 

「「「アレで!?」」」

 

「だって、訓練って基本“限界ちょっと先”を攻めるものでしょ?」

 

「なに、そのドS基準」

 

「手始めに“裸で豹と戦う”、とか言い出さないだけ神通は優しいと思う」

 

「それは“手始め”にやることではありません!?」

 

「まずは体験してみようってことで、手加減してるとはいえ“殺す技を当てるが死ぬなよ”なんて無茶振りもないし」

 

「それもう無茶とかっていう問題じゃないわ……」

 

「なにより、“出来なきゃ殺す”ってわけでもないんだからさ」

 

「「「(提督/司令)の基準がオカシイ!?」」」

 

「とりあえず……神通」

 

「は、はい!」

 

「訓練方針はこれで特に問題ないと思う。あとは、みんなの体力と相談だけど…なんならもっと厳しくしても……」

 

“ブンブンブンッ!!”

 

「やめてください、死んでしまいます」

 

「提督の鬼、悪魔、人でなしぃ!?」

 

「……ということだから、まぁそこは様子を見ながらってことで神通に任せる。“生かさず殺さず”行ってみよう」

 

「「「え~っ!?」」」

 

「シャッラップ、新兵ども。死にたくなければとにかく走れ、影の国の女王じゃないだけまだマシと思い知るがいい」

 

「「「誰それっ!?」」」

 

「わ、わかりました」

 

「ああ、でも……」

 

「なにか?」

 

「昨日話を聞いた時から思ってたんだけど、厳しくしてばっかりはやっぱり良くないのかも。というわけで、こんなの考えてみたんだけどどうかな?」

 

「これは…カードでしょうか?」

 

「神通さん、裏に何か書いてあるわ」

 

「簡単に言うと、スタンプカードだね。訓練とか演習に参加したり、一定のタイムでクリアできればスタンプがもらえるっていうルールで」

 

「集めるとどうなるの?」

 

「そうだなぁ……一日非番とか?」

 

「「「っ! マジでっ!?」」」

 

「あとは、いろんなところで使える割引券と交換とかかな。そのあたりは、間宮とか明石とも要相談だけど」

 

「…………なるほど。つまり、飴と鞭なのですね」

 

「そう、成果・頑張りにはちゃんと報いないとね。まぁ、こんな場所だからお金貰っても使う場所が限られるから、“ここに合った報酬”を考えなくちゃなんだけど。

 うん、報酬大事、超大事。何が大事って、使えることが一番大事。いくらお金あっても、使い道以前に使えなかったら紙くずと同じだからね。まぁ、あの頃はその“使える場所”を取り戻さなきゃだったから、結果そのものが報酬みたいなものだったわけだけど」

 

「よくわかりませんが………すごく実感がこもっていることだけはわかりました」

 

「うちは勤務体制はブラックだけど、それ以外はホワイトを目指してるからね!」

 

「勤務体制がブラックなのは認めるのですね」

 

「何しろ人手が圧倒的に足りないからさ! ごめんねっ!!」

 

「まぁ、こうして報酬があるんなら、やる気も出るってものだけど」

 

「本当は非番だってちゃんと回したいし、残業とかの時間外労働もさせたくないんだけどさぁ。

 やっぱりほら、そういうのって効率落ちるでしょ。限られた時間だからこそ死力を尽くせるわけだし…いやまぁ、ある意味あの頃もみんな“限られた時間の中で死力を尽くしてた”わけだけど」

 

「「はぁ……」」

 

「あと、装備は今用意できる最高のものを配備するよ! どれだけ現場が頑張っても、道具が旧式じゃできることには限界があるからね。なんなら、人材が足りなくても道具とサポート体制が充実してれば案外行ける!」

 

「それはそれで極論のような……」

 

「大変タメになるお話だったのです。確かに、人手と合わせて装備の充実は急務なのです。ところで、その“最高の装備”についてお話があるのです」

 

“ギギギギギ……”

 

「ここの資材と経費の消費が帳簿と合わないのですが、説明を求めるのです」

 

「……」

 

「ついでに、さっきの間宮さんや明石さんとの話し合いについても詳しく」

 

「…………………………………さいならっ!」

 

「逃がさないのです!!」

 

「あれだけ走ってまだあんなスピード出せるんだ、スゴイのね司令って……」

 

「…………ふふっ、あははははは!」

 

「神通さん?」

 

「……そうですね。提督のおっしゃった通り、訓練内容以外のところも工夫してみましょうか。陽炎さん」

 

「なんですか?」

 

「丁度いい…というのもなんですが、相談に乗っていただけますか?」

 

「……もちろんっ!」




~鎮守府裏日誌~

…………実は、鎮守府で一番鬼なのは提督なのでは?

っていう密かな噂が広まるキッカケでしたとさ。いや、彼の場合ほとんどの事柄の基準が古巣のキチガイたちだから、艦娘たちがそう思うのも当然だろうね。本人としては、“アレ”を参考にするのは間違っているとわかっているから、下方修正した基準で考えているつもりなんだけど……やっぱり比較対象が悪いとしか言えないね。

ちなみに、20㎞くらいならかなりのハイペースで走り続けられる提督だけど、実は限界を超えると糸が切れたように唐突に気絶するよ。普通、疲労がたまってくればペースが落ちるものだけど、提督は死力を絞りつくす寸前までは全く緩まず、絞り切った瞬間に倒れるのさ。
これは事務処理なんかにも言えることで、徹夜しても能率はあんまり落ちないけど、突然意識を失うせいで外野にとってはすっごく心臓に悪いんだ。

まぁ、これも若い頃の経験の賜物かな。
凡庸な彼が生き残るには死力を尽くして当然。それに加えて、動けなくなるその瞬間までトップスピードを維持できないとお話にならなかったからね。というか、そこまでやっても気休め程度、なんなら意識的に“火事場の馬鹿力”が使えても誤差のようなものっていうんだから酷い話さ。
とはいえ、それでもできる限りのことをしなければ生き残れなかったし、できることを惜しまなかったからこそ今日の彼がいる。そんな提督がこういう考えになるのは、ある意味必然なのかもしれないね。

ネタバレ上等の設定集、いる?

  • いる
  • いらない
  • そんなことより続きはよっ
  • 全部晒してしまえwww
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